MEMBER

ミルクの未来を考える会

第1回ヨーグルトにおける乳・クラフトマンシップの価値訴求の可能性

講演後の意見交換

委員

(意見)

ヨーグルトの情緒的価値とか、そういったことを伝えることの大切さというのを本当に改めて実感しました。

お取り寄せのハードルについて、牛乳1本取り寄せる場合も、例えば250円の牛乳を取り寄せると送料、例えば2000円とかかかる場合が有ります。そのときに、そこの生乳を使ったヨーグルトの味も楽しんでみたいなと思って、ヨーグルトも一緒に購入する時があります。ある程度まとまった量を買わせていただくと満足感も全然違います。そうやって牛乳とヨーグルトとか、ご当地ならではの、その地域の生乳を使った乳製品、牛乳やヨーグルト、チーズとか、いろんな乳製品が横のつながり、商品同士のつながりが、またパッケージング化されていると、また魅力も広がるなと思います。

そのお取り寄せしたときに、例えばパンフレットも一緒につけてくださったりして、そこで改めて牛乳だったり、ヨーグルトがどういう思いでつくられているかという情緒的な情報というのも知ることができて、本当によりおいしく感じます。情緒的おいしさというのはすごく感じました。

委員

(意見)

「ヨーグルトが、より豊かな乳食文化の一部へと進化していくために」というところでは、年代によって伝える言葉だったり、伝え方が違うのかなと思ったりしています。例えば主婦の方に伝えるポイントだったらこういう言い方になるとか、お子さんが本当に小さいころから地域の乳食文化、地元の牧場でとれた牛乳を実は飲んでいるとか、地元でとれた生乳を使ってヨーグルトがつくられているとか。

お子様向けでは、例えば給食で出ているご当地ヨーグルトにPOPを給食のときに付けてあげたりとかしても、そういう情報、情緒的なところを子供たちに伝えることができるのかなとお話を聞いて思いました。

委員

(質問)

デザートとして食べるだけだと消費に限界があるので、ご当地の食材と合わせてお料理とかで活用するとより消費のシーンが増えると思うし、生活にも浸透していくと思うんですけれども、そういったアプローチなどはしていらっしゃるのでしょうか?

講師

ご当地ヨーグルト界では、既にご当地の食材とセットになった商品が非常に多く開発されています。例えば、山形県に行けばラ・フランス、茨城県に行けば干し芋などを活用したヨーグルトがあります。あとは、プレーンヨーグルトはどんどん加工して、普段の食事に取り入れていきたいなと思っています。

私のワークショップでは、ヨーグルトのテクスチャーや味わい別に、これは酸味が立っているから、例えばニンニクと岩塩とハーブを合わせるとこういうふうに使えるよとか、これは非常にとろとろしているからポタージュに使うととてもいい質感になるよとか、そういう商品特徴と合わせた加工方法をお話しすることが多いです。

委員

(質問)

料理でもどんどん取り入れてみたいなと思うのですが、どういうふうにしたら、そういう情報に巡り合えるんでしょうか?

講師

ヨーグルトのレシピって、検索するとチーズケーキみたいなのばかり出てくるんですよ。私は酪農専門誌でずっと連載を持たせてもらって、そこでヨーグルトや脱脂粉乳のレシピを連載させてもらっているんですけれど、どうしてもそれは酪農家さんしか読まないものなので、SNSで月1回、メーカーさんとコラボして、ヨーグルトを提供していただいて、レシピのリール動画をアップしたりしています。

意識しているのは、ヨーグルトってやっぱり加熱しちゃだめと思っている人がすごく多かったりとか、水切りした後のホエーを捨てちゃう人がいるとか、そういうあるあるがいろいろあるんですけれど、それを打ち破るレシピ、例えば、肉みそをつくるときにヨーグルトをたっぷり入れてコクを出すとか。何かそういう、みんながやってこなかったような使い方をどんどん提案して、加熱しても全然いいんだよ、ということを説明までつけて広めていくようにしています。もっと目につくように頑張ります。

委員

(質問)

ヨーグルトとか牛乳は賞味期限がとても短いですが、販売のときに、どのように意識とか管理をされていますか?

講師

ご当地ヨーグルトの賞味期限は、短いもので7~8日ぐらい、長いので1カ月ぐらいある商品もあります。さらにご当地のメーカーさんは、週に1回しか作っていないということがすごく多くて、曜日もバラバラで揃わないです。なので、もう「揃いません」と言っています。

羽田空港の羽田産直館は、月曜から土曜にかけて22商品がバラバラの日に入り、週末ぐらいに揃いますよというようなアナウンスをしたり、百貨店の催事の場合も、2週間ぐらいの期間をもらって、前期・中期・後期で分けて、どんどんグラデーション的に商品が入ってくるようにしています。そうすると前期の方の売れ行きを見ながら後期も調整していけます。そういうような形で、揃わなくて当たり前で、何回か来てねという売り方をしています。

委員

(質問)

ヨーグルトの賞味期限が商品によって異なるのは、容器によって違うのですか?、メーカーによっても違うのですよね?

講師

検査をしていて、何日たって菌数が増えてなかったというようなところをクリアした日数でやっていたりします。

委員

(質問)

長くするにはどういう方法が有るのですか?

講師

長くする方法もいろいろありますが、菌が入らないように徹底しているところは1カ月ぐらいあったりします。

委員

(質問)

栄養成分表示について100gあたりとか100mL当たりで表示されていて、実際の商品の容量は90gであったり150mLであったり。消費者の立場では、1本当たりとなっていた方がわかりやすいと思うのですが?

講師

おそらく、メーカーさんでサイズ違いの商品やドリンクタイプとかたくさん展開しているので表示を統一したというのもあると思います。(参考:「食品表示法に基づく栄養成分表示のためのガイドライン」…食品単位は、100g、100ml、1食分、1包装等のその他の1単位のいずれかを表示する)

委員

(意見)

情緒に訴えかけるという意味では、具体的な方法として、QRコードを商品に付けて、生産者さんの情報に飛ぶみたいなことをご当地ヨーグルトでもやればよいのではと思いました。チーズでも、パンフレットにQRコードがついているのがあって、そこに飛ぶと、動画とかで生産者さんがチーズを作っているところとかを見られたりするのがあります。

委員

(質問)

クラフトマンシップの見える化というところで、日本人はちょっとその辺が不得手というようなお話をされていたんですが、例えば酪農王国とかの海外でそういうところをうまく打ち出しているような事例はありますか?

講師

ちょっと海外の調査までは及んでいません。どなたかご存じであれば教えてください。

委員

(回答補足)

チーズに関してですが、例えばフランスですと48種類に及ぶAOCと呼ばれる原産地呼称という、この土地で、この牛で、この作り方で作らないとこのチーズとは名乗れないという、そういった認証というか、法律のようなものがあります。そういったものに則って作っている伝統的なチーズで、何百年という歴史のものがあります。

フランスだとコンテという生産量ナンバーワンのチーズがありまして、そこは本当に上手なプロモーションをしていています。コンテの生産者協会がミルクを全部買い上げてコンテを作って、例えばミルクを売るとかではなくて、コンテのミルクはコンテだけというような形でやっているところもあります。日本でやるのは難しいと思いますけれども、参考になる部分があるかなとは思います。

委員

(質問)

これから情緒で売る、アピールするというのは、本当に一番大事かなと思うのですが、やはり消費者としては価格というのが結構かなり大きいですよね。イベントとかで商品の説明を聞いて、すごく素敵と思って買っても、それを日常使いできるかとなったら、なかなか難しい人が多いのではと思います。商品なので売れないとダメだし、でも価格は安くできない。そこについてはどのようにお考えですか?

講師

ヨグネットが取り組んでいるのは、量産品との価格帯の分離なので、量産品のヨーグルトが皆さんの日常を支えてくださっている。ご当地ヨーグルトについては、経験とか、別の価値があるものとして、そこは価格帯が分かれているので、そこは干渉しないという考え方をしています。

委員

(質問)

ご当地ヨーグルトは、地元ではどのような形で消費、どのような受け入れられ方をしているのでしょうか?普段使いではないと思うので、例えば学校給食に卸しているとか。

講師

ご当地ヨーグルトというか、ヨーグルトの特性として一つ、まず生産者の方々、本来は牛乳の味そのままで届けたいという思いがあります。そうすると低温殺菌牛乳とかになるわけですが、そうすると消費期限が非常に短くて、地元消費しかできないとなります。

より遠方の方に楽しんでいただきたいんだけれども、なるべく牛乳に忠実な味で、なおかつ何も捨てたくないというときに、賞味期限を延長する技術としてヨーグルトを使っていますというメーカーさんがとても多いので、まず地元消費に限らず遠方出荷まで考えているというメーカーさんが多いというのが一つあります。

ただ本当に地元と密着されているメーカーさんもあって、例えば6次化された牧場さんで、地域の方々に搾乳体験をしてもらったりとか、地元の方々にとても愛されている牧場産のヨーグルトとなると、高価格帯にも関わらず地域のスーパーで一番売れる商品であるという話もあります。あとは給食用に安価なものをつくっていらっしゃるメーカーさんもあって、それぞれというところですね。

委員

(質問)

海外のヨーグルトと日本のヨーグルトとで、味とか機能とか販売方法とか、決定的な違いというのは何かありますか?

講師

私は海外に行くというよりは、海外から来られた方にヒアリングをした経験しかあまりないので、ちょっと多くを語れないんですが、一つは日本のヨーグルトは全く酸っぱくないってみんなに言われます。本当に日本人はヨーグルトの酸味が苦手で、どんどん甘くする、発酵の酸味を抑える傾向になっているなというのが一つ。

あとは、例えばブルガリアみたいな、ヨーグルトが国民食でいらっしゃる方々から見ると、日本のヨーグルトのバリエーションの広さがすごい、すごく自由な国だねというふうにおっしゃっていただけることがあります。

あとは、普段から食事に取り入れられている国々の方から見ると、甘いヨーグルトは子供向けの商品だと思っていたというようなご意見があったりしますね。

委員

(質問)

そうすると、食事に取り入れているというところの割合がかなり違うように感じましたが、そうなんでしょうか?それによってはいろいろ開拓の余地があるなと感じました。

講師

そうですね。日本人は、蓋を開けてすぐ食べられる状態のものを朝食の一つに添えるみたいな感覚がまだ強いですね。海外のいろんな食べ方も、情報としては入ってきているんですが、まだあまり普及していないというところですね。

委員

(質問)

牛乳だと東南アジアにロングライフ牛乳を輸出したりとかして、現地で割と人気があるという話を聞いたことがありますが、ヨーグルトを海外に輸出するという企画や事例はあるんでしょうか?

講師

例えば九州のメーカーさんだとアジア圏に出されることが多くて、シンガポールとか、香港とかで高値で売れると聞きます。あとは青森のメーカーさんが、飲むヨーグルトをうまく冷凍する技術ができてそれをハワイに持っていったら売れたというような事例とか、いろいろありますね。

委員

(質問)

やっぱりヨーグルトって、いろんな機能性があるというのもすごく魅力だと思うんですけれど。今、気になっているヨーグルトの機能性って何かありますか。

講師

気になっているものは、少しヨーグルトからずれてしまうんですが、ビフィズス菌で乳を発酵させると酸っぱ過ぎる、あまりおいしくないと言われて、ヨーグルトには添加するみたいな形で使われてきたものを、チーズづくりで出たホエイをビフィズス菌で発酵させてお酢飲料にしたという商品があります。そういうふうな菌の使い方であれば、とても私はそこにはクラフトマンシップを感じまして、もっと知ってほしいなというふうに、すごく興味が湧きました。

講演時の写真

メーカー1

独自の乳酸菌を使ったり、ストーリー性を持ったものだったり、ご当地というほどではないですけど、ちょっと地場を意識した商品を出しています。レシピも結構出しているつもりではあるのですが、あまり伝わってなく、やはりチーズケーキのイメージが強いんだなというのも感じました。

『ヨーグルトの本』を読んで食べると印象が違うというお話があったかと思うのですが、例えばチョコレートでは、原料であるカカオ豆の産地や、実の特徴から、苦味やコクや香りなどをチャートに模式化してテイスティングすることで、より一層おいしさを実感してもらったり、その背景を知ることで価値が伝わるというようなやり方があります。これをヨーグルトや牛乳でもできないかと思いました。例えば、ここの生乳の特徴はこうだとか、乳酸菌こういうのを使ったらこうだというのがチャートにできて、それを見ながら食べられたりとかしたら、もっと価値が伝わったり楽しみ方が広がったりするんじゃないかなというふうに思いました。

メーカー2

起点がヨーグルトに対する味覚の解像度を上げるというのがすごく素敵ですし、最終的に辿り着きそうなところが、ご当地ヨーグルトを軸に立場を超越した交流、ユニオンシップ的なものかなというのはすごくいいなと思います。農産物を主原料とした食べ物は、すべからくそうあるべきじゃないかというふうに個人的には思っています。その一方で、汎用性を大量生産しているメーカーは、対立軸というよりは、お子さん用とかにも、手軽に買っていただいて、ヨーグルトに入門的に手を伸ばしていただいて、裾野を広げて、そして少し大人になったら大人の買い方というか、農業を知りつつ、それを一つの選択理由にしていくというのがあると思っています。

植物性商品もヨーグルトと言っていて、カテゴリー区分でいくとちょっと幅ったい名前になるのですが、ベネフィットはヨーグルトだと思っています。

ヨーグルトが持っているベネフィットって、いろいろあると思っていて、乳の優しさであったりとか、やはり原料が動物性ではないですけれど農作物というところに思いを致すというマインドになります。そして、バターとマーガリンのように、物性も原料も全然違うんですけれども、同じ利便性というか使い勝手が違って代替として成立していて、これはすごく大事なことだなと思っています。根っこ部分で、酪農に辿り着いて酪農を大切にするという発想とは相反しないと思っています。

やはり地産地消だし、地元でつくっているという強みを生かして、酪農推しでいくのがいいかなと私は思っています。今の方たちに、酪農の需給の大変さだとか、乳製品を供給することの価値というのは、まだまだ伝え切れてないところがありますので、そういったところを一緒になってやっていければと思っています。

メーカー3

情緒的な価値というところは非常に重要だなというふうに思っています。実際、牧場で販売されているヨーグルトはそもそも生乳の風味や製法などに違いがありますので、その影響が、ヨーグルトの味にも影響が出てきます。牛の個体差、飼料、季節性等、さまざまな条件や背景があって、それぞれの牧場で作ったものの特長や差別化ができるのではと思っています。

特長を表現する手法としてフレーバーホイールというものがあり、どういう風味を感じたか、どういうテクスチャーなのか等を円盤状にしたものですが、コーヒーや紅茶等、特に飲料では風味評価で使われています。世界的にも使われている手法なんですけれども、ヨーグルトでも作ってみて、正解・不正解ではなく、自分が好きなヨーグルトの特長を見える化できて、普段のコミュニケーションのみならず、通販でヨーグルトを購入するときに自分の好きそうな味かどうかを視覚的に知ることができることで購入につながりやすくなるのではないかと感じました。

もう一つ、酪農家の方が6次化事業で作った乳製品を販売する活動をしているのですが、商品を販売するだけでなく、この取組みを通してつながった牧場にパティシエさんとそのご家族をお連れし、実際、酪農を学んでもらった上で、その牧場の乳製品を使用したスイーツを作って店頭で販売していただくという取組みを実施しました。作り手の方が、酪農の現場を見ることで、牧場でのこだわりのイメージが湧きやすいですとか、店頭でお客さんとコミュニケーションする中で、その牧場について話をしていただき、ストーリーを伝える手段として非常に有効であることを実感しています。ヨーグルトを作っている牧場に料理人の方などに来ていただき、一緒に体験したことを料理などに反映していただく取組みをしてみてもおもしろいのかなと思いました。

メーカー4

新しい第4のフェーズ「日本の一次産業の持続可能性」という中で新たな価値を見出していこうというところに大変共感させていただきました。

食料・農業・農村基本法も改正になり、これからやはり食料の需給の関係も非常に大事になってきますので、こういう社会性を含んだ支出、こういうところがかなり重要になってくるのかなと思っています。

ヨーグルトについては、機能性訴求を色々とやっていますが消費拡大は一朝一夕にいかなくて、いろいろ頭を悩ましているところです。

脱脂粉乳は低脂肪、高タンパクでカルシウムも豊富にあるということで、アスリートにとって最高の食材だということを聞いたことがあります。その辺のところでうまく活用しながら、ヨーグルトに限らず、脱脂粉乳を使った商品というのが開発できていければいいなと思っています。

メーカー5

今までどちらかというと脱脂濃縮乳を積極的に売ってきたということがありますが、脱脂粉乳の需要というものも、ヨーグルトに限らず増えてはきていると思います。

ヨーグルトは機能性を訴求することが多いですが、おいしさを訴求した商品を限定販売したことがあります。これが瞬間的に爆発的に売れたので、そういったこともおもしろいなと思っています。

あと、産地でいうと、北海道で工場が有る地域の地域性を出している商品もあるので、それにプロモーションを組み合わせて展開できればと思いました。

メーカー6

名水という一つヒントが出ましたけれども、ヨーグルトの工場が長野県にあり、いわゆる信州の水を使っています。そこは特段謳ってはいないのですが、長野県は酪農が盛んな地域ですので、ここで作っているヨーグルトは信州産生乳使用と謳わせていただいています。全国展開の製品ではありますが、一つのご当地ヨーグルトと言えるのではないのかなと思っています。

生乳の産地を謳っているヨーグルトはこの工場だけですが、牛乳には各産地名を謳った商品があります。こういったように各地で産地生乳を使用し、産地指定のヨーグルトとして売っていけば、大量生産製品ではありますが、一つ売り方のヒントにはなるのかなと思いました。

オンライン牧場体験について、当社は「酪農家の仕事を知ってもらいたいとの想い」「コロナ禍で子供たちが外出できなくなった」ことから、取り組みを始めました。オンラインにすることで、小学生を中心に多くの方を招待することができて非常に好評をいただいています。例えば野菜とかですと、誰々さんがつくった野菜、人参だとかジャガイモだとかがあるんですけれども、牛乳ってなかなか生産者の顔が見えない商品です。酪農家さんは普段消費者と直接触れ合う機会が少ないので、消費者の方に、自分がこれだけ頑張っている、自分たちが日々乳牛をかわいがることによって、皆さんに美味しい牛乳を飲んでもらっているということを知ってもらうことを非常に喜んでくれているのが感じられます。

この企画はまだまだ続けていくつもりですし、ヨグネットでもぜひ広げていって、いろいろな酪農家さんにスポットライトが当たるようにしていただけるといいなと感じました。

メーカー7

菓子のカテゴリーで、「ご当地〇〇」という名前で全国8地区で売っている商品があります。もともとは「地域限定〇〇」という名前だったんですが、それを「ご当地」というふうに変えました。なおかつ限定なので、その地域で作られている物しか原料に使っていないというところで、生産者さんにスポットを当てて、ホームページで、どのようにつくっているのかとかこだわりとか、そういったことを紹介したりしています。

どうしてその地域でそれを作ろうと思ったのかとか、どんなふうに広めていこうとしているのかとかというようなところを取材して、単なるおいしい味の限定だけではなく、その背景を伝えて商品の紹介をしています。

やはり生産者さんの顔が見えると、その背景で買ってくれたり、思いに共感して買ってくれたり、「ご当地菓子」決して安くないのですが、希少価値があるのではと思っています。

例えば、地域限定の、地域の方と弊社の牛乳と一緒にコラボして何か新しい味をつくるとか、それも別に全国で売る必要はないと思うので、地域で売るとか。そういうコラボを、例えば通年で売れなくても期間限定でできるんじゃないかなと思っています。

講師

クラフトマンシップって、本当はメーカーの皆さんはいろいろ持っていらっしゃって、でもそこがまだ消費者に伝わっていないというところがいっぱいあるなと思います。

脂肪ゼロのプレーンヨーグルトってあまり好きじゃないと思っていたんですけれど、とてもおいしい商品があって、なぜだろうと思っていたのですが、パッケージに小さく、脂肪ゼロでもおいしくなるように乳酸菌を選んでますみたいなことが書いてありました。普通のプレーンと脂肪ゼロのプレーンで菌を変えているんですよね。そういう工夫って、いろんなメーカーさんもやられていると思うんですけど、そこを語らないということで、おいしいんだけど理由がわからないので、どんどんそこを語っていってほしいなと思いました。

委員

(意見)

牛乳、乳製品ってたんぱく質を含んでいますが、腎臓の数値があまりよくない人はたんぱく質をたくさん摂ってはとってはいけないのかという気になると、毎日コーヒーに牛乳を入れていたのを、ちょっと牛乳やめようかとか、ヨーグルトを朝食べていたのをやめようかみたいなふうになってしまいます。たんぱく質を減らした乳製品というのは需要ないでしょうか。お米とかパンとかではそういう商品が有ります。逆に今は「たんぱく質増強」商品はたくさん有りますが、日本でCKD(慢性腎臓病)の検査が厳しくなって、かなり健康な人でも数値が出てしまうようです。そうすると、気になるので。たんぱく質はたくさん、本当はとらなきゃいけないんだけど、そうはいっても体調的にとれないとなります。そういう人のためにたんぱく質を抑えた乳製品とか、それでおいしさそのままという商品が、脱脂粉乳を使って商品開発できないでしょうか。

乳協

少なくともヨーグルト(発酵乳)は無脂乳固形分が8%以上なければならないので、なかなかたんぱく質を減らすというのは難しいところではあります。たんぱく質だけとると、無脂乳固形分のうち残るのは乳糖だけになってしまいますし、たんぱく質がないと乳が固まらなくなってしまいます。乳糖だけでつくったヨーグルトが食べられるかどうかという問題もあると思います。今、たんぱく質を強化した商品がたくさん出ているのは、たんぱく質系の原材料が余っているということも一つありますが、筋肉増強に関心のある方々が、高齢者も含めて増えてきているという背景も有ります。いずれにせよ、脱脂粉乳を使った低たんぱく質の商品開発というのは、非常に難しい課題だと思います。

委員

(意見)

普段選手たちを見ていて、どういうふうにたんぱく質をとっているかというのを、ちょっと振り返ってみたのですが、確かに、例えばラグビー例にすると1日5000kcalぐらいを消費しているので、それだけ食べなくてはいけないんですね。たんぱく質の量にすると、体重当たりで考えると1人250gぐらいたんぱく質をとらなくてはいけない選手がいます。そうすると、とても1日3食ではたんぱく質がとり切れない。そうすると、1日5食6食と、「補食」というのがものすごく大事な食事になってきます。選手たちが何を食べているかというと、やはりギリシャヨーグルトが非常に人気がありまして、なぜかというとやはり手軽にたんぱく質がとれることです。

そういった意味で各メーカーさん、ヨーグルト以外にもたんぱく質を入れた補食をいろいろ作られていますので、そういったものがスポーツの世界でも必要だと思いますし。あとやはり高齢者の方でひとり暮らしの方も非常に多いので、補食というのがものすごく大事になっています。そこで何かうまく活用できたらいいのかなと思いました。

委員

(意見)

脱脂粉乳について、災害があったときに現地に行っていろんな活動をしているDMATに参加している栄養士の方と話をしたときに、災害時の食料備蓄で問題になるのがやはりお子さんが牛乳が飲めなくなるということで、LL牛乳が備蓄してあったらいいというのはよく聞ききます。

LL牛乳って、店で探してもなかなか見つからなくて、冷蔵の売場に置いてあるんですよね。冷蔵の売り場で売っていると、冷蔵庫で保管しなくちゃいけないのかと思ってしまうんですよね。そうではなくて、常温で備蓄しておきましょうという訴求をしてもよいのではと思います。高齢者やお子さん向けに、備蓄ができる、脱脂粉乳を使った、カルシウム、たんぱく質がとれるような商品が開発できないかなと思います。

乳協

残念ながら日本のLL牛乳は90から100日程度が賞味期限なので、備蓄するには回転が忙しくなってなかなか難しいという課題が有ります。海外では半年から1年くらいというのが普通だったりしますので、まだ開発の余地はあるかなというふうにも思います。

講師

脱脂粉乳をどうやって使うのかなとレシピを調べたら、水に溶いてシチューにするみたいな、牛乳の出番を奪っちゃうようなレシピが結構多くて。それはそれで備蓄しておいて、好きなときに乳製品のレシピがつくれるというメリットはあるんですけれど、もっと粉であるからこそできることがいろいろあるかなと思って。

レシピの仕事を受けるようになってから、粉であることに意味があるレシピをいろいろ作っています。一つはプレーンヨーグルトに脱脂粉乳を入れて混ぜるとめちゃくちゃ甘くてミルキーなヨーグルトになるんですよ。それが結構意外で、お砂糖を使わなくて、ミルクだけで甘いヨーグルトが食べられるっておもしろいって、フォロワーさんが喜んでくださったりとか。あと、100均でふりかけの容器みたいなのを買ってきて、脱脂粉乳と粉砂糖とシナモンと入れておいて振っておくんですよ。朝起きたらバタートーストを焼いて、上からサーッとかけると、すごくミルキーで甘い香りのするトーストになったりするんです。そういう遊びをいっぱいやっていて、そういうのも広がってくれば、また脱脂粉乳のイメージが変わったりとか、家に置いといたら便利だなと思ってもらえることが増えてくるのかなと思いました。

そんな感じで、まだまだ、ヨーグルトにしろ、脱脂粉乳にしろ、使い道・遊び方ってめちゃくちゃいっぱいあると思っています。なので、いろんな楽しさを作っていきたいなと思っているので、ぜひ一緒にやろうぜという人がいたら、いつでも声をかけてください。よろしくお願いします。

【出席者】

「ミルクの未来を考える会」委員(50音順)

  • ・チーズプロフェッショナル 大和田 百合香 氏
  • ・消費生活コンサルタント 鷺 仁子 氏
  • ・グラフィックデザイナー ミルクマイスターR高砂 氏
  • ・科学ジャーナリスト 東嶋 和子 氏
  • ・北海道新聞社 編集委員 中村 公美 氏
  • ・株式会社Food Connection 代表取締役 橋本 玲子 氏
  • ・産経新聞社 文化部記者  平沢 裕子 氏
  • ・フリーエディター 宮村 美帆

乳業メーカー広報担当者他

酪農・乳業 専門紙記者

日本乳業協会

【開催日時】 2024年6月10日(月)

【会場】 乳業会館会議室