MEMBER

ミルクの未来を考える会

第2回日本のナチュラルチーズが「Culture」になる日を夢見て

講演後の意見交換

委員

(意見)

僕は牛乳をずっと飲んできたのですけど、やっぱりチーズはなかなか触れる機会がなくて、今日は改めてお話を聞かせていただいて、チーズに関してもこれからもっと知っていきたいなという、本当にきっかけをいただきました。牛乳を煮込んで古代チーズの蘇をたまにつくるのですけど、あれは本当に牛乳だけの味わいで、牛乳が本来持っている甘さだとか、うまみというのが凝縮された味わいがあると感じております。

委員

(質問)

コンテもそうなのですけども、ヨーロッパは原産地呼称というのがすごくしっかりされているとお伺いしたのですけれども、その中で、何かつくり方とかもかなり制限があったりとか厳しい基準があったりして、例えば牧場さん同士、その中で違いを出したりとか個性を出したりとか、そういうのはヨーロッパの中でもあったりするのでしょうか。

講師

例えばコンテですと、コンテの生乳を生産する方は、コンテの生乳だけをつくる、だけどそのゾーンの中にも小さなチーズ工房というのがたくさんあります。うちはコンテの生乳は出さないけれどもチーズをつくっている、実はそのアペラシオンをとるためには結構お金がかかるので、そのアペラシオンに入っていないチーズ工房さんもいっぱいあります。

私がいた山のトム・ド・サヴォアというチーズも、アペラシオンがあるのだけど、山小屋の方はアペラシオンをとってなかったですね。その分のマージンが取られちゃうというのがあって。なので、そういう形で個性のある酪農家さんはいっぱいありました。

委員

(質問)

チーズのラベルのデザインだったり表記だったり、そういった工夫とかはそれぞれの牧場さんで出していたりするのですか。

講師

あります。それこそ日本のチーズ工房さんもそうですけど、デザイナーさんに頼んでラベルを自分のところでつくり、コンテならコンテで大きな組織としてラベルをつくるのですけど、それはもう大小様々で、すごくかわいい、今も輸入してくるチーズで小さな工房さんは、一個一個すごくかわいい、とっておきたいと思うラベルが実際にたくさんあって、ファイリングしているのがたくさんあります。

委員

(意見)

僕もデザイナーなのでパッケージングとかもちょっと気になります。そういったところも注目して見ていきたいなと思いました。ありがとうございます。

委員

(質問)

最初にプロフィールのところで、フランス全土の伝統チーズ産地をめぐるというお話があったのですが、これは何かつてとか紹介とかあって行かれたのですか、いきなりぽんと、お1人で周られたのですか。

講師

そのときは全く何もなく、登録は学生ビザというのをとり往きました。今だったらもっとスマートに、スマホで生産者さん検索してアポイントとって、SNSもいっぱいあるので、いろいろできると思うのですけど、当時はスマホもなかったですし、国際電話は超高いみたいな時代だったので、何もなくて。

ただ『チーズ図鑑』を持って、住所とか産地、例えばサンマルスランという町に行けば、サンマルスランというチーズをつくっているのだろう程度の浅はかな考えで、大体あちらのほうだと週末にマルシェという市場が開かれて、小さな生産者さんがチーズを持って売りに来ているのです。売りに来ているのを食べておいしいと思ったら、すごくあなたのチーズがおいしいのでつくっているところを見せてくださいと言って、次の日、突撃で訪ねるみたいなことをひたすら1年半、ちょっと変わっているなと思うのですけど、やっていました。そのときはどうしてあんなに突撃していたのかわからないですけど、とにかく全部行ってみたかったのですよね、産地に。そういうことをやっていました。

委員

(質問)

すごい、大和田さんの行動力がめちゃくちゃ格好いいなと思いながら聞かせてもらっていました。私も日本のご当地ヨーグルトの工房さん、メーカーさん、いろいろ回らせてもらっているのですけど、皆さん口をそろえておっしゃるのは、チーズをやっているところは変態だというのは。ほんとそうですね。(笑)

ご当地ヨーグルトがたくさんつくられ始めたのは大体90年代、生乳生産量が頭打ちをするようになったころから、大手さんとの差別化でミルクをどう売っていくかというところで、付加価値をつけたい。なおかつ廃棄も出ないし、すぐに製品としてお金にできるというところで酪農家さんが集まってつくったというようなご当地ヨーグルトが割と多いのですけど、チーズの場合は年代がちょっとずつ違うのかなと思っていて。どういうモチベーション、憧れなのか、もともとチーズが好きとか、そういう違うモチベーションの方が多いですか。

講師

いろんな方がいて、本当に変態だなと思うのですけど(笑)。それは本当に、本当にそれなりという感じなのですけど、皆さん、様々ですね。酪農家さんでヨーロッパに行ってチーズに魅せられて、ヨーロッパにチーズ研修に行って帰られて、牧場をやりつつチーズをつくり始めた方が聞く限りでは多いのです。やっぱり一番初めは皆さん、何もないところからヨーロッパに行かれて始め、デンマークに行かれた方もいらっしゃるし、清水さんもフランスに行かれていましたし、共働学舎の宮嶋さんはウィスコンシン州ですかね、アメリカへ行かれていましたし。ほとんどの方が、海外に出られて勉強して戻り、チーズをつくり始めたという印象です。

委員

(質問)

日本の工房が約300中、北海道が100以上というふうなお話をされて、地域性というか、それぞれの国内工房の地域による違い、地域性というのはあるのでしょうか。

講師

すごくありますね。特に北海道と都府県は酪農形態が全く違うじゃないですか。生乳の価格も違うので、北海道に行ってチーズ工房を始める方も多く、北海道と都府県の違いが非常にあると思いますね。酪農のスタイルも様々で、今日ご紹介したようなチーズ工房の方は放牧されている方が多くいますけど、都府県の酪農というのは、フリーストールといった形で舎内であり、もちろん北海道もそういった方のほうが多いですけど、舎外で放牧している方も多くいらっしゃるので、そのミルクを求めて北海道に移住したという方もいらっしゃいますし、あとは酪農家さんで自分のところのミルクを差別化といいますか、チーズにして売り始める方もすごく多いですね。

委員

(質問)

先ほど新利根チーズ工房さんが共働学舎のご出身ですよとお話しされていて、今おっしゃったように、やはり北海道で学ばれて、日本全国に移られてやっておられる方というのは結構いるのですか。

講師

いらっしゃいますね。共働学舎チルドレンという人たちがいっぱいいらして、日本全国に散らばっています。共働学舎さんが、本当にたくさんの方を育てていると思います。誰でも受け入れてくれるといいますか、チーズをつくってみたいという方に門戸を開いていて、そこで学んだ方がたくさんいますね。それでその後、チーズ工房を開いて、チーズの世界のコンテストで受賞している方があまたいらっしゃいます。

あと私がおもしろいと思っているのは、例えば清水牧場さんの羊がいろんな関東の酪農家さんのところに里子に出されているのですけど、それを追いかけて、あの牧場の牛がここに行っているとか。全然チーズと関係なくて申しわけないのですけど、磯沼さんで生まれた、例えばちょっと変わった牛、磯沼さんは6種類も7種類も牛の品種、飼っているので、それは酪農の現場では、大変言いにくいのですけどお金にならない牛たちですよね。全然肉にしてもお金にならないけど、おもしろいと言って肉牛として育てて、出荷されている方がいらっしゃったりするので、磯沼さんで生まれたミルキングショートホーンがあそこで大きくなって肉になったとか、そういうのを追いかけるのも、チーズと違いますけど、おもしろいと思っています。

委員

(意見)

チーズは多分若い女性とかスポーツをしている人たちからすると、太るというイメージがすごく強いのです。選手たちは、試合前に、鶏肉とかをビュッフェで出したりして、ちょっと目先を変えるためにチーズをのせたいとか思ったりするのですけれども、そのチーズ、太るからやめてというふうに言われたりします。

逆にリコッタのように乳清を使ったチーズは、要はいわゆるプロテインパウダーに使われて筋肉づくりに非常にいいと言われているものなので、本当にちょっと特別な人たちですけれども、例えば太りたくないとか、筋肉をつけたいとか、多分高齢者の方たちもそういうものを効率よくとるということが、日本でいますごく重要視されているので、こういうものも、すごくおもしろいなというふうに今日は思いました。

委員

(意見)

ふだん話をしている中で、やはり皆さん、カルシウムが不足しているということはよく理解していて、それには牛乳とヨーグルトをとればいいというところまでは何となく理解されているのですけど、チーズというと、「え、チーズ?」という反応が返ってくることが多いです。このチーズが牛乳、乳製品の中のグループというふうに理解されていない方も多いのではないかなというのを、ちょっと感じていたので。そんなところも伝えていくといいのかなというふうに感じました。

委員

(質問)

チーズは奥が深いなというのは何となくはわかっていたのですけど、本当に今日のお話を聞いて、いろいろ皆様の努力と文化の上に成り立っているなというのをすごく感じました。何も知らずに赤ワインにはチーズだなんて食べていた自分がちょっと恥ずかしくなりました。今回は牛のお話が中心だったのですけど、きっかけが山羊だったというお話が有ったので、山羊のチーズはどうなのかなって思い、日本のチーズ、ナチュラルチーズの中で、山羊のチーズというのはどのような形になっているのでしょうか。

講師

今日は、ミルクの未来を考える会ということで、あえて牛の話だけしかしなかったのですけども、山羊のチーズ工房さんが最近ものすごくふえていて、山羊のチーズだけでチーズ工房をやっているところもありますね。多分、日本全国で、山羊だけでやっている方はそんなに多くないと思いますけど、山羊のチーズもつくっている方というのは、30はあるだろうと思います。

チーズ王国でも販売しているのですけど、東京のあきる野で山羊だけ飼っていて、あきる野市の養沢というところなのですけど、養沢ヤギ牧場さんというところは山羊のミルクだけでやっています。東京で就農するのは大変なことなのですよね。牛は大きいじゃないですか。山羊の10倍ぐらい大きいですし、酪農家として就農するのはとんでもなく大変なことなのですけど、山羊だとそのハードルがちょっと低いというか、ということをおっしゃられていて。その方はそんなに大きな土地がなくてもできるということもありまして、山羊舎もそんなに大きくなくても、結構ふえて。静岡とかでも山羊だけの方もいらっしゃいますし、ふえていると思います。

昔は信州でも山羊を飼っていたおうちが、いっぱいあったですね。戦後、たんぱく源ですとか、犬を飼うみたいな感じで。うちのおばあちゃんも、山羊を飼っていたみたいに。

信州には、佐久だったかな、家畜改良センターみたいなところがあって、山羊中心のところがあるのですね。なので、そこから結構、全国の方が山羊を買われたりしていて、かなり増えています。山羊乳は人乳、人の母乳に一番近い成分だということで、山羊乳業界でいま最も熱い話は、やっぱり皆さん、ペットのためにお金を惜しまないらしく、犬とか猫とかペット用の山羊ミルクが、大変高価に売れているようで。

委員

(質問)

私ごとなのですけど、2年前に大きな病気で倒れました。退院したときに先生に言われたのは、エネルギーとたんぱく質をとるようにと言われたのです。私は大体そういう計算ってあまりしないのですけど、エネルギーとたんぱく質だけは書いているのですよね、一括表示とかそういうところを見て。たんぱく質6.8とか、エネルギー137キロカロリーとか。

先生にとにかく乳製品をとってくださいと言われて、本当に牛乳アレルギーとか牛乳嫌いじゃなくてよかったなと思いました、乳製品に助けられたですね。そういう機会があったものですから、今回も非常に楽しく聞かせていただいたのですけれども、日本の話ではなくて世界全体で見て、チーズの売り上げというのはどうなっているのでしょうか。

講師

私、基本的にはヨーロッパのチーズを扱っているので、オセアニアとかアジアとかアメリカのチーズの事情にはあまり詳しくないのですけれども、ヨーロッパのほうではチーズの生産量は増えています。というのは、国内需要ではなくて海外需要で。ワインもそうなのですけど、中国の方が大変今伸びていて、ワインもチーズも買われていて。牧草もそうですけれども、みんな行ってしまって、日本で買うのが大変だという話は聞きますね。

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先日お邪魔していろんなチーズをたくさん食べさせていただいて、本当においしかったし、保管の方法とか熟成に至るまでいろんなこだわりがあって、まさにバリューチェーンそれぞれのポイントでこだわることによってチーズのおいしさが引き出されているのだなということを、大和田さんのお店へ行って感じた次第です。

私はメーカーの広報マンなので、あまり理化学的な見地でチーズを語るのはすごく難しいと思っていますが、やはり文化ということになりますとチーズ固有のストーリーかなと思っています。先ほどバリューチェーンという言い方をしたのですけれども、ワインなんかで、場合によってはコーヒーなんかとも同じかもしれませんが、土壌とか地形とか気候、テロワールという言い方をしたりしますけれども、こういった部分とかタイプごとに違う製法、保存方法とか切り方、カッティング、そういう全てのプロセスに様々なストーリーがあると思っています。

一方でプロセスチーズとナチュラルチーズがどうも対立軸的に語られることも多いかなと感じているのですけど、私は全然そんなことはないなと思っていて。前回の向井さんの講演のときも似たような話をしたのですけども、やはりどなたが食べても同じコンディションで年間を通して維持されているプロセスチーズ。このプロセスチーズにしても、原料となるナチュラルチーズの原木がきちんと管理されておいしいものでないと、やっぱりおいしいプロセスチーズってできないので、そこの相関はあるなと。というのと、やはり入門的にプロセスチーズを召し上がったお客様が次、ナチュラルチーズに卒業していって、どんどんマニアックな世界に入っていく、これは健全な流れじゃないかなと思っています。お酒とかコーヒーとか、ヨーグルトなんかも同じかなと思っていますが、極めて純度の高い加工品ですので、いろいろ加工はされているのですけど、生乳に寄っている食べ物だなと思っています。その中でストーリーというところを語れるのが、チーズ固有の文化につながっていくのではないかなと思っています。

この間、とある映画が上映されまして。「フロマージュ・ジャポネ」という映画なのですけれども、今日、大和田さんがご紹介していただいたようなチーズ工房をたくさん紹介している反面、私ども乳業メーカーの大量生産のチーズのプロセスチーズのほうも紹介していただいていて、まさにそれぞれのよさ、食べ方があって、それぞれにストーリーがあって、そこはもう共存していくのだ、みんなで高めていくのだということをPRしている映画でございます。機会があればぜひ皆さん、見ていただきたいと思っています。

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私はまだチーズを担当させていただいて日が浅いものでして、非常に貴重なお話を勉強させていただけたなと思っております。

弊社のチーズ研究センターは、十勝工場の中に設立しました。八王子にあるイノベーションセンターというところでさまざまな商品の研究開発を行っていますが、このうちナチュラルチーズの研究開発機能の一部を十勝チーズ研究センターに移管しまた。チーズだけなぜ十勝の工場内につくったかというところですが、まず十勝でとれた新鮮で高品質な生乳を、商品開発の時点から使用できるのは大きなメリットです。十勝工場内につくることで新鮮な十勝の生乳を使って商品開発を行うことで、開発と生産の距離を縮めることでき、商品化スピードも向上することできます。

こちらの十勝チーズセンターの研究でつくられた商品が、明治北海道十勝カマンブルーという商品で、実は数量限定で販売されております。こちらは大量生産というのがなかなかできないのがですが、職人のように本当に十勝工場の担当者が一つ一つ魂心を込めてつくっている商品になります。販売先も限定になるのですが、スーパーなどでも一部販売しておりますので、ぜひ、お手にとっていただけたらうれしいなと思います。

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私もチーズの担当になってからまだ日が浅くて勉強中の身なので、今日ご紹介いただいたこのコンテというチーズも正直初めて食べたのですが、本当においしくて。これはどこで買えるのだろうと、帰りながら調べようかなと思っているようなところです。

弊社のフレッシュモッツァレラは、確かにシェアは市場ナンバーワンということでご好評いただいております。今はいろいろな食べ方の提案をして、もっと裾野を広げていきたいなと強く思っているような商品です。まだヨーロッパに比べると日本人のチーズの摂取量は非常に少ないので、まだまだ伸び代が多い分野ではないかと弊社も考えております。新しいナチュラルチーズの開発というところも、もちろん検討はしていきたいなと研究員も考えているとは思うのですけれども、まずチーズの喫食の機会というのをもっとお客様にふやしていって、日本の食生活にもっとチーズを浸透させていくというところをやっていきたいなと考えております。

委員

(質問)

コンテの原産地呼称をするに当たってのいろいろな条件がありますよね。ワインでも、シャンパンなんかもそうなのですけど、非常に条件が厳しいですよね。これ、拝見しましたところ、特に牛の種類も限定されて、その生乳を原料とすると書いてあるのですけれども、餌もこれ、こういう干し草を飼料とするとかいろいろありましたけれども、チーズをつくるに当たって牛の種類というのが味とか風味に非常に影響するのでしょうか。微生物が影響するのかなと思っていたものですから、生乳から牛を連れてきてつくってらっしゃるというところに、もしかしたら微生物よりも生乳のほうが何か味や香りに大きな貢献をするのかしらとちょっと疑問に思ったもので、教えていただければと思いました。

講師

カイエドシャージュと呼ばれるルールブックに書かれているように、コンテの生産地域の中でこのモンベリアルド種というのがもともと原産地というのもあって、コンテに合った牛として生産の基準の中に入っています。牛の品種でミルクの質というか、成分値は結構違いますね。日本だと基本的にはホルスタインが多くて、牛乳用に、飲用乳としてホルスタインを飼われていますけども、一番メジャーなところではジャージーという牛、茶色いかわいい鹿のような見た目の牛は、乳脂肪分がとても高いことで知られています。

スイス原産のブラウンスイスは、たんぱく含量が大変多い牛として知られていまして。それでチーズつくる方たちは標高が高いところで育つ、寒いところに適した牛としても知られています。そういう意味では牛、乳種による乳成分の違いって結構あるのですね。ノルマンディーで育っているノルマンディー牛も、浜中町の海からの風を受けて、潮風を受けた牧草を食べて育つノルマンディー牛の乳からつくるカマンベールというのが、とてもおいしいとされていまして、乳質がチーズに及ぼす影響というのもとても多いですね。

それとまた先ほどお話しした中では、その土地の微生物、これは本当にヨーロッパにはヨーロッパの微生物があって、これがテロワールというものを表現する一番のことではないかと思うのですが、ミルクの種類、牧草、それから微生物がありますが、日本の場合は、多くの方がヨーロッパの生成された乳酸菌ですとか酵母ですとか、そういったものを使って乳酸発酵させています。一番多いのはクリスチャン・ハンセンさんだと思うのですけども、そちらの乳酸菌をお使いになってチーズをつくられている方が多いです。昨今ではご自身で乳酸菌を起こしていらっしゃる方も多く、日本酒の酵母ですとか、山卸しされる生?造りの日本酒ですと乳酸菌が大変有用です。そういったところから種を起こして、ルヴァン(発酵種)のようなイメージで、自分の起こした乳酸菌でチーズをスターターとして使われる方も多く、そういった観点でも大分土地の香りというのが少しずつ表現されるようになってきました。牛の乳種によるチーズの味の違いというのは大変大きいと思います。

委員

(意見)

牛の乳種による違いとともに、微生物の影響も大変あるとよくわかりました。そうしますと将来、例えば遺伝子組み換えというか、いろいろな方法で、簡単に新しい種がつくられ、そういった菌種もいろいろとできてくるかもしれませんね。お酒の世界なんかでもできていると思いますから、例えばヨーロッパのある種のものを再現したいという場合、微生物はもしかしたらつくれるのかもしれませんね。ありがとうございます。

講師

大手メーカーの皆様に日本チーズミュージアムみたいなのをぜひともつくっていただいて、中小メーカーさんのナチュラルチーズも並べて、大小の垣根を越えたそういう、いろいろなチーズが販売できる場所ができたらとてもいいなと思います。

講師

ホエイの問題なのですが、とても皆さん困っていらっしゃって、ヨーロッパで見てきた中ではコンテをつくった後のホエイは、あるメーカーに使われていたり、そういった形で皆さん、結構有用に使われてます。ボーフォールというチーズなんかは、このボーフォールで使ったときのホエイをバイオマス発電に使っていて、ボーフォールの村はその電気で賄っているというような話もあります。雪印さんの大樹工場でバイオマス発電をされて、電気を生み出しているというのも聞いてます。今、ホエイの問題というのは皆さん、乳業メーカーさん、頭を悩まされているところじゃないかなと思うのですけど。私も全然関係ないのですけど、それを今、皆さんどうしているのかなというのを聞いてみたかったのですが、お答えいただける方はいらっしゃいますでしょうか。

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私ごとなんですけど、いろいろな部署を渡り歩いていまして。その際、私も実はチーズもちょっとつくったことがございます。そのときにカマンベールとかブルーチーズとかはやったことがあるのですけど、とんでもないものができ上がってしまいまして。まだまだ未熟な中でつくったもので、赤い色のものが出てきたり、黒っぽいものが出てきたりとか、いわゆる食に値しないようなものができたという経験がございまして。そういった部分を少し懐かしいなと思いながらお話をお聞かせいただきました。

先ほどのホエイについてなんですけども、基本的には、大手3社さんもそうだと思うのですけども、ホエイパウダーというものを生産しております。用途といたしましては、皆さん一番イメージしていただきやすいのが、食パンですとか製菓ですね。お菓子の脱脂粉乳の代替品というのが一番大きな用途としてあります。というのも、やはり脱脂粉乳と比べて価格帯が非常に安価になっておりまして。その中に含まれているたんぱく質ですとか、一番多いのは乳糖になります。乳糖というのはやはり製菓の中で非常に有効な成分でありまして、そういった用途として十分活用されております。ただ、今どうしても実際の需要と供給のバランスが崩れておりまして。そこの部分で恐らく大手3社さん、皆さん、悩まれているということだと思います。

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何度か浜中という言葉をいただきまして、今、浜中の牧場に60頭ほど飼育しております。

それを使ったブリーズ・ドゥ・メール・シリーズといって、フランス語で潮風という意味だそうですけれども、まさにノルマンディーと浜中が似た風土があり、浜中もちょうど潮風が吹いてきて適した土地というようなところで、そこでブリーズ・ドゥ・メール・シリーズのカマンベールチーズを牧場の中の工房でつくっています。

それがJapan Cheese Awards 2022で、おかげさまでグランプリをとることができまして。昨年2023年には、本場フランスのモンディアル・デュ・フロマージュで銅賞をいただいて、これもまた輸出することがすごく大変で、そこからすごく大変だったのですけど、とにかく我々が大手3社とはちょっと違って、そういったとがった、どちらかというと変わったほうでやっています。チーズではないのですけど、モンディアル・デュ・フロマージュでは発酵バターが銀賞をいただきまして、銀賞と銅賞をいただいたということで、非常にこれは喜ばしいことだなと思っております。

そんな中で変わった人間も多いのですけども、困ったことにうちの変わった技術者がチーズ工房に何人か転職してしまったということがありまして。それはそれで困ったなというふうに思っておりますけれども、これからも日本のテロワール浜中というようなことで当社は、そういった方向でやっていけたらなと思っております。

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やはり当社、酪農家の会社として我々、すごく意識しているところであります。生産者が搾っていただいた生乳というのは一滴たりとも無駄にはできないという観点で、いただいた生乳は全て製品をつくるという観点で考えております。

その中でハードチーズに関しましては、この先、酪農生産者の負託に応えるためにも、こういった今日お話しいただいたような家庭用のチーズ、フレッシュ系のチーズというのは、海外と比べてもまだまだ価格に対抗でき得るものだというふうに十分考えておりますので、そういった部分で市場を広げていけば、まだまだ可能性はあるのかなと考えております。

講師

浜中町に行って、日本にいるノルマンディーの牛を見たいとずっと思っているのですけれども。素晴らしくおいしいのですよね、カマンベール。それと同じくフレッシュなフェッセルのブリーズ・ドゥ・メール・シリーズでつくってらっしゃるフロマージュ・フレ、素晴らしくおいしいのですよ。それがやっぱり日本でももちろん召し上がっていただきたいですけど、こんな素晴らしいものを日本の、工房製チーズもそうですけど、メーカーさんのつくられる、牛乳もそうですしヨーグルトも、海外に輸出できたらいいと思います。原発の問題とかいろいろあったので難しい部分がたくさんあると思うのですけど、海外輸出をしたらどうなのだろうかと常に思ってまして。そういったものも視野に入れて皆さんで、工房もメーカーさんも関係なく、切磋琢磨しながら酪農と乳製品を盛り上げていけたらいいなというふうに思っています。

そしてよつ葉さんの製品でホットケーキミックス(パンケーキミックス)が素晴らしくおいしくて、それにホエイパウダーが使われています。酪農ショックのときもそうでしたけど、ホエイパウダーが余っているという事は結構知らないですよね。認知が上がれば、例えばパン屋さんですとかお菓子メーカーさんが使うということもあるかもしれないですし、皆さん、メーカーさんごとにたくさん認知を上げようとして、ホームページですとかSNSとかいろいろやっていると思うのですけど、なかなか認知されないのが現状かと思います。

私がこういう世界にいるから一生懸命情報をキャッチしに行こうと思いますけど、例えばウクライナのニュースは毎日流れるのに、酪農家さんが大変ですよという話は流れてこないので、そういった意味でも情報発信ということを皆さんで力を入れていったらいいのではないかなというふうに今日思いました。

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質問というより私が考えていますのは、こういったチーズのミュージアムもあればいいんですけれども、最大の課題は、いわゆる産業にしていくのはどうすれば良いのかという点と考えてます。

実際にCultureといい言い方をされていて、大手メーカーでは固めるために乳酸菌と凝乳酵素のレンネットを入れるのですけど、それをCultureといいます。まさに培養という意味でCultureを添加すると言います。約350の工房さんができてきて、素晴らしく技術も上がってきて、いい流れだと思うのですけれども、4万6000トンから増えない日本のナチュラルチーズの製造量の中で、酪農の問題もあるのですけれども、これを超えるにはやはり大手さんと小規模事業者がアライアンスを組む、こういったことをやらないとチーズ工房は、産業としては成り立っていかないのかなというふうに思っています。

毎年チーズ普及協議会で中堅社員をヨーロッパやアメリカに視察に連れていっており、2019年にはイタリアとスイスに行きました。スイス、EUじゃないのですけど、スプリンツという伝統的なチーズ(AOP)があります。彼らいわくパルメジャーノ・レッジャーノは俺たちが教えたチーズだと。おらが村のおらがチーズは、ナンバーワンなのだと向こうの人はよくおっしゃっています。スプリンツには専用の熟成庫(セラー)があるのですが、山の上で先ほどのお話ででてきましたアルパージュでつくるのですけど、熟成は3年間かかるので、地元に持ってきて湖のそばの熟成庫(セラー)で寝かすのです。

これには実はスイスエミーが資本を出しているということで、スイスエミーのマークも入っている熟成庫です。外側は新しいのですけど、中はとても古くて、200年前から使っているセラーです。こういった形が一つの、大手と小規模事業者が手をつなぐことによって産業化をしていくということなのかなと思います。

イタリアでパルミジャーノ・レッジャーノの工房を見たのですが、行く前は釜が一つか二つしかないのかなと思っていたら、36個ありました。チーズの釜が36個あって、AOPとかDOPって面倒くさくて、レッジャーノは1日に1回だけしか作ってはいけないという規程があります。ですので、釜を増やさないと産業として成り立たないということで、そういう規模集約が伝統的な商品でも進んでいるということです。そういったことが、今日あえて、私もここにご参加の方々の会社の出身ですので、大手の方々とアライアンスを組むということが一つの方策かなというふうに思って、私の所感とさせていただきます。

先ほどご質問がありましたチーズの生産量は、世界で伸びているのかというのは、世界酪農連盟というところが出しているデータでいうと、2022年で前年比101%という報告があります。ただその前の2年間はコロナの影響があり、頭打ちでした。加盟している国だけのデータということなので、インドとかのパニール、水牛でつくっているようなチーズのデータは入ってないというふうに思われます。

それからさっき清水牧場さんのリコッタは、チーズと言えないよねと大和田さんがおっしゃっていたのは、食品衛生法の乳等命令の中に「チーズとは」という定義がありまして、そこでミルクを凝固させるという前提なので、ミルクを凝固させて排出したホエイを固めてつくったものはチーズと言えないということになります。実際イタリアでもチーズの分類には入っておりません。

それから最近ノルウェーのブラウンチーズというものもチーズではなく、あれもホエイを煮ているので日本ではチーズとは言えない、国内法が優先されますので、そういうような区分になっております。

それと、先ほど橋本さんがおっしゃっていましたが、チーズを食べたら太るのではないかと若い子は考えているというお話ですが、これは実際に私、宇都宮大学で4年連続寄附講座をやらせていただいているのですが、アンケートをとると1割ぐらいの子がジャンキーな食品だと思っているのです。そうではないのだということを一生懸命説明しておりまして、低糖質、高たんぱくな食べ物です。東京都もフレイル予防にいいということで、そういうふうに勧めていただいています。糖分は、チーズを作る時に排出されるホエイに全部流れますので、さっきのリコッタは、ほのかに甘いという味がします。

最後に、山羊の話がありましたけど、日本ではシェーブルといいますが、最大の難点は4月から12月しか妊娠しないということで、基本的にはそこしかミルクが出ないということになりますので、牛と比べれば乳量が少ない。

先ほど牛の種類の話も出ていましたけれども、じゃあ日本もたんぱく質が多いブラウンスイスを育ててチーズつくりゃあいいじゃないのという話なのですが、ほとんどホルスタイン。なぜかというと乳量が多いからです。1頭当たりの乳量が多いので、ホルスタインを育てることのほうが経済的によいという視点からです。スイスでも茶色いぶちのホルスタイン、多かったですけど、そういったことがございます。

講師

ミルクの未来を考える会というので、この委員に選定していただいたとお話しいただいたときに、一体私に何かできることがあるのでしょうかと純粋に思ったのです。というのは、牛乳やヨーグルトというのはそれこそケの日の毎日の食卓に上るものだと思うのですけど、ナチュラルチーズというのはやっぱりお値段も高いですし、どうしてもハレの日のワインとチーズというふうな位置づけになりやすく、私の仕事もクリスマスケーキを買うような高いチーズをたくさん売っていますので、申しわけない気持ちもあります。

だけれども、酪農家さんを回ったりチーズ工房さんを回ったりする中で見えてくることや、現実のお話などもできるかなと思ってお受けした次第なのです。皆様とディスカッションをさせていただくことで、この会議室だけではなく現場レベルにさまざまな影響があるようなミルクの未来を考える会になっていったらとてもいいことだなと思いながら、お話を聞いておりました。

今日は貴重な機会を頂き、全くこういうしゃべるということをやったことがないので、大丈夫だったのだろうかと今になってまだ不安になっていますけれども、お話を聞いていただきまして本当にありがとうございました。

【出席者】

「ミルクの未来を考える会」委員(50音順)

  • ・作家・エッセイスト 神津カンナ 氏
  • ・消費生活コンサルタント 鷺 仁子 氏
  • ・グラフィックデザイナー ミルクマイスター 高砂 氏
  • ・科学ジャーナリスト 東嶋 和子 氏
  • ・北海道新聞社 編集委員 中村 公美 氏
  • ・株式会社Food Connection 代表取締役 橋本 玲子 氏
  • ・フリーエディター 宮村 美帆 氏
  • ・一般社団法人ヨグネット 代表理事 向井 智香 氏

乳業メーカー広報担当者他

酪農・乳業 専門紙記者

日本乳業協会

【開催日時】 2024年10月7日(月) 15時~17時

【会場】 乳業会館会議室

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