乳酸菌を初めて本格的に調べたのは、発酵微生物学の始祖、フランス人のパスツールです。
1857年に酸っぱくなった乳の中に微生物が存在することを発見しました。
乳酸菌は自然界に広く存在し、人や動物の消化管内にも生息しています。そしてヨーグルトやチーズ、みそ、しょうゆ、漬物など伝統的な発酵食品の製造に大切な役割を果たしています。
乳酸菌にはたくさんの種類があり、形態・発酵形式・発育条件によって分類されます。
※ビフィズス菌も当初は乳酸菌に分類されていましたが、多くの点で性質が異なっていたため独立してビフィズス菌となりました。
形態
・乳酸球菌:丸い球状の形をしています。
・乳酸桿菌:細長い棒状の形をしています。
・ビフィズス菌:棒状の桿菌ですが、増殖するときに枝のように分かれY型になります。
乳酸球菌・乳酸桿菌・ビフィズス菌
発酵形式
・ホモ型乳酸発酵:糖から乳酸のみを生成します。
・ヘテロ型乳酸発酵:糖から乳酸と酢酸またはアルコール、炭酸ガスを生成します。
発育条件
・通性嫌気性菌:空気(酸素)がある所でも増殖します。
・偏性嫌気性菌:空気(酸素)のある所では増殖しません。
乳酸菌・ビフィズス菌の特徴と主な菌種
乳酸菌(乳酸球菌)ラクトコッカス Lactococcus | |
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発酵形式 | ホモ |
酸素存在下で発育 | + |
主な菌種と利用分布 | ラクチス、クレモリス:バター、チーズ、ヨーグルト |
乳酸菌(乳酸球菌)連鎖球菌 Streptococcus | |
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発酵形式 | ホモ |
酸素存在下で発育 | + |
主な菌種と利用分布 | サーモフィルス:ヨーグルト、チーズ |
乳酸菌(乳酸球菌)ペディオコッカス Pediococcus | |
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発酵形式 | ホモ |
酸素存在下で発育 | + |
主な菌種と利用分布 | ハロフィルス:みそ、しょうゆの醸成、漬物(耐塩性) |
乳酸菌(乳酸球菌)ロイコノストック Leuconostoc | |
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発酵形式 | ヘテロ |
酸素存在下で発育 | + |
主な菌種と利用分布 | メセンチロイデス:発酵食品 |
乳酸菌(乳酸桿菌)ラクトバチルス Lactobacillus | |
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発酵形式 | ホモ |
酸素存在下で発育 | + |
主な菌種と利用分布 | ブルガリカス:ヨーグルト、乳酸菌飲料 ヘルベチカス:チーズ、ヨーグルト、乳酸菌飲料 ガセリ:ヨーグルト、乳酸菌飲料、乳酸菌製剤 アシドフィルス:ヨーグルト、乳酸菌飲料、乳酸菌製剤 カゼイ:チーズ、発酵乳、乳酸菌飲料、乳酸菌製剤 |
発酵形式 | ヘテロ |
酸素存在下で発育 | + |
主な菌種と利用分布 | ファーメンタム、プレビス、発酵産物 |
ビフィズス菌 Bifidobacterium | |
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発酵形式 | ヘテロ |
酸素存在下で発育 | - |
主な菌種と利用分布 | ブレーベ、ビフィダム、インファンティス、ロンガム、アドレスセンテス 乳児または成人の腸管、発酵乳、乳酸菌製剤 |
ヨーグルト製造に用いられる乳酸菌は、ブルガリア菌、サーモフィルス菌、ガセリ菌、アシドフィルス菌など、また乳酸菌飲料にはカゼイ菌が使われます。これらの菌の組み合わせや発酵温度などにより、製品の特長を出しています。
さらに最近では、乳酸菌の機能性についての研究が進み、様々な菌がヨーグルトに添加され、プロバイオティクスとして販売されています。
プロバイオティクスとは「腸内細菌のバランスを整え、ヒトの健康に有益な働きをする微生物およびそれを含む食品」を示します。
手軽に摂取できるプロバイオティクスの代表格が乳酸菌やビフィズス菌です。
ヨーグルト中の乳酸菌のはたらきをまとめると以下のようになります。
1:保存性の向上…乳酸により他の菌の増殖を抑える
2:風味の向上…乳酸や香気成分生成により風味を良くする
3:整腸作用…腸内バランスを整え便通を改善する
4:消化吸収の促進…乳糖分解、乳たんぱく質の分解により促進する
5:免疫力を高める…腸を介して免疫機能に働きかける