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ミルクの未来を考える会

第5回小さな牛乳屋が目指す、“ニュー”ソリューション

3. 本日のメイントピック ミルクの飲み比べ

本日の牛乳

本日は4種類のミルクを用意しましたので、ぜひ飲み比べをしてみてください。
東京農工大学の牛乳、八丈島のゆーゆー牧場の牛乳、玉名牧場のジャージーミルク、そして岩手の菊池牧場の牛乳です。

搾乳牛10頭ながらフリーバーンでストレスフリーに

搾乳牛10頭ながらフリーバーンでストレスフリーに
東京農工大学(府中)

まずは東京農工大学のミルクです。
うちのお店でも放牧のミルクが人気です。牛が自由に動き回ってストレスフリーと言われますし、牛が伸び伸びしていていい風景です。他方で都市部のように土地が限られてるところではなかなか放牧は難しく、都市部の牧場はいろいろ工夫しながら運営されています。大学で牧場を運営しているところは各地にありますが、東京の大学だとほとんどが郊外の別のキャンパスで牧場を営んでいます。

比較的広いパドックも有する

比較的広いパドックも有する
東京農工大学(府中)

東京農工大学の府中キャンパス内に牛舎や堆肥処理場、畑などがあり、全部その場で完結しています。牛は10頭だけですがつなぎ飼いではなく、フリーバーンという自由に動ける贅沢なスタイルで飼われています。自由に遊べるパドックがあって、そこで牛たちが比較的のびのび過ごしています。
ただし非公開で、塀で囲まれてるので、ほとんどの人はその存在を知りません。地元の一部の人が「なんか臭うな」ってうっすら気づくような場所です。

租飼料はほぼ自給している

租飼料はほぼ自給している
東京農工大学(府中)

さらに牧草とデントコーンという飼料用のトウモロコシを自給しています。「耕畜連携」といって、畑と牧場の連携も大事にしています。ここの畑で牧草やデントコーンを作り、牛が食べ、うんちが出たら堆肥化して畑に還元するという自然循環をキャンパス内で実践しています。

大学の研究とも連携

大学の研究とも連携
東京農工大学(府中)

しかもここでは人工授精の研究も進んでおり、そういう実験場としても使われている牧場です。そのような様々な取り組みの結果、ミルクとしては乳脂肪分が高く、とてもクリーミーです。

ゆーゆー牧場
ゆーゆー牧場(八丈島)

二つ目は八丈島の「ゆーゆー牧場」です。
特に5~6月ごろの牛乳がおそろしいほど美味しく、ほぼソフトクリームを飲んでるような感じで、砂糖が入ってるのではと思うくらいのすごいミルクです。もちろん他の季節でも美味しいですが。東京農工大学の牛乳は一般的な白黒柄のホルスタイン牛でしたけど、こちらはジャージー牛です。元はゴルフ場だった場所で放牧しています。しかも海が目の前にある放牧地のため、潮風を浴びた牧草を食べるので少しミネラル感も感じるミルクです。
そんなに広い放牧地ではないのですが、ヤシの木があったりして面白い光景です。

玉名牧場
玉名牧場(熊本)

三つ目は熊本の玉名牧場。
牛は基本、草を中心に食べることが多いですが、穀物もけっこう食べます。ただし、ここでは草しか食べさせない、かなりストイックな放牧をしています。自分が知る限りでは、こういうやり方をしている牧場は日本で数カ所しかないです。
ミルクもかなり特徴的で、飲んでみると若干ミネラル感があると思います。ジャージー牛乳は濃くて甘いというイメージがありますが、八丈島も含めて、こちらのミルクはすっきりした味に感じます。放牧でよく動いているということですっきり感が強いのかなと思います。チーズもすごくおいしいです。

菊池牧場
菊池牧場(岩手)

4つ目は岩手の菊池牧場。
八幡平の麓にあって携帯の電波もまったく通じないのですが、すごくきれいな場所です。そこで白黒柄のホルスタインを飼っています。ここはミルクだけではなく、ミルクの役目が終わった牛たちをソーセージにしています。そのソーセージがすごく人気です。そのように牛を全部うまく活用している牧場です。
今の時期だと草は減ってるはずですが、それでも草のうまみがしっかり感じられて、すっきりしておいしいミルクだと思います。

一気に飲まず、飲み比べは少しずつ

この4種類の牛乳は、一般的なホルスタイン牛もあればジャージー牛もあるし、飼い方も昔からの繋ぎ飼いではなく、放牧だったりと違いがあります。あとは牛の食べ物ですね。放牧だと牧草を育てるだけじゃなくて、自然に生えてくる草も食べるので、それによって風味が変わります。八丈島だと自生するアシタバを食べますし、レモンがとれる時期にはレモンのカスを食べさせたりしています。そういう味の違いも、皆さんの舌でいろいろ感じてもらえると思います。

シングルオリジンのミルクにこだわる理由

斉藤牧場
斉藤牧場(北海道)

ここまで牧場ごとのシングルオリジン(放牧を中心にこだわりをもった牧場単一の牛乳の意)の話をしてきましたが、ではなぜこれをやってるのかという話に移ります。

ありがとう牧場
ありがとう牧場(北海道)

一般的な牛乳は乳業メーカーがつくっているものがほとんどですが、大規模な牧場から小さい牧場まで各地の牧場の数十戸〜数百戸の牛乳を混ぜられて作っています。私も全部を把握しきれてないですが、数十~数百カ所の牧場の生乳を集めて、それを効率的に加熱殺菌して販売するっていうのが一般的です。コーヒー業界でいう「ブレンド」に近い感じかなと思ってます。

シングルオリジンのミルクにこだわる理由

クラフトミルクという個性

薫る野牧場
薫る野牧場(神奈川県)

北海道の斉藤牧場や、ありがとう牧場などを先にご紹介しましたが、こちらは神奈川県山北町にある薫る野(かおるの)牧場です。びっくりするくらいの急斜面で放牧をしている牧場ですが、放牧以外も含めていろいろなこだわりやスタイルがあります。そういうミルクは味もすごく個性的です。牧場単一の牛乳は、数は少ないけど一定数あって、それらを「クラフトミルク」と呼んでいます。
牧場ごとに育て方が違っているため味が違うのですが、必ずしも味のためにやってるわけではありません。各地域ごとに効率的でなるべく安く手に入る飼料を使いながらそれぞれのスタイルを目指す中で、結果として、牧場ごとに味に違いが出るということだと思います。

「クラフトミルク」で新しい市場を

「クラフトミルク」で新しい市場を

味の違いを「価値」として捉えるために「クラフトミルク」と呼んでいますが、そのことでミルクに新しい市場をつくれないかなと取り組んでいます。
広告代理店での新人のときに長くビールの仕事をしていたのですが、10年以上も前の頃なので、ビール市場がどんどん下がっていき「もう誰もビール飲まなくなる。どうしよう」という時期でした。そこにポートランドやブルックリンなどのクラフトビールが出てきて、大手メーカーもそのムーブメントに乗っかる形でいろいろな面白いビールをつくっていって、結果的にビール市場が盛り上がったのを感じました。
これをミルクの市場でもできないかと思っています。スーパーで売っている一般的な牛乳だけでなく、クラフトミルクがある「おもしろさ」を見せることで牛乳市場を底上げできるのではと考えています。
実際に来ていただくとわかりますが、うちの牛乳は決して安くない。自分もこれを日常生活に全部取り入れるかと聞かれたら正直なところちょっと厳しいなと思います。ですが「ハレとケ」っていう言い方があるように、日常と特別なときと分けるような、いろんな形でミルクに触れてもらえたらとこのシングルオリジンのクラフトミルクに取り組んでいます。