MEMBER

ミルクの未来を考える会

第4回酪農をめぐる情勢 ~生乳需給の安定に向けて新しい酪肉近の概要~

3.需給調整機能

生乳の需給構造

生乳の需給構造

令和3年には生産拡大が進みましたが、その後は生乳事業の緩和、コスト高騰、猛暑による影響などにより、非常に厳しい経営環境が続きました。こうした情勢の変化に対して、持続的な生産を可能にする環境や仕組みを構築することがとても重要です。日本では、用途ごとに年間の安定取引が構築されており、指定団体と乳業者との間で年間契約に基づく乳価での取引が行われています。この仕組みは、需給が緩和した際にも調整機能が作用するよう意図されています。

生乳需給の動向

生乳需給の動向

このような需給調整の取り組みが最も試されたのがコロナ禍を含む過去数年間でした。生乳生産量は765万トンまで拡大し、脱脂粉乳在庫が大幅に増加、需給ギャップが深刻化しました。こうした状況に対して、業界が一体となり、値下げによる需要喚起、脱脂粉乳の飼料転用や輸入調整品との置き換えによって在庫対策を講じ、乗り越えてきたという経緯があります。

脱脂粉乳在庫低減対策の概要

脱脂粉乳在庫低減対策の概要

乳製品が過剰になって価格を下げる場合、その値下げ分は必ず誰かが負担することになります。
令和4年以降、全国の乳業者さんと生産者が協力して、この負担を分け合う取り組みが始まりました。具体的には、乳業者さんと生産者が1対1で拠出し合い、余剰分の脱脂粉乳を輸入調製品などに置き換えていく対応です。

令和2年度~6年度 脱脂粉乳在庫低減対策の実施状況

令和2年度~6年度 脱脂粉乳在庫低減対策の実施状況

こうした取り組みには、全国の生産者・乳業者・国が費用を負担しており、対策費は累計で約520億円。うち国費は192億円と全体の約4割を占めています。Jミルクやホクレンを通じて実施されてきた対策は、今後Jミルクで「酪農乳業需給変動対策特別事業」として整理され、さらに発展的に運用されていく予定です。

令和2年度~6年度 脱脂粉乳在庫低減対策の実施状況

消費者に牛乳を通年安定供給するために

消費者に牛乳を通年安定供給するために

農水省としては、牛乳の安定供給には年間を通じた安定的な取引が重要だと考えています。
これは牛乳に限らず、加工向けの取引、脱脂粉乳や牛乳といった原料についても同様で、こうした取引の安定化に取り組む必要があると認識しています。そのためには、関係者全員が拠出金の制度にしっかり向き合っていく必要があると考えています。

この資料は令和5年からスタートした取り組みをまとめたもので、現在、系統出荷者・系統外出荷者の皆さんと一緒に、生乳の需給安定に向けて必要な対応策について会議を重ねながら整理・検討しているところです。最後の部分では、全国的な視点から、生産者や事業者が取り組むべき内容を、国のさまざまな政策ツールを活用して後押ししていくという趣旨を示しています。

改正畜安法施行後の需給調整の在り方等にかかる対応状況

改正畜安法施行後の需給調整の在り方等にかかる対応状況

酪肉近の中で「クロスコンプライアンスの導入」として、生産者や乳業者が参画・拠出することを主要な補助事業の申請要件と位置づけました。つまりJミルクなどが進めている対策に拠出しない場合、補助事業を受けにくくなる可能性があるということを説明させていただきました。この点については、また改めて詳しくご説明いたします。

生乳需給安定クロスコンプライアンスの導入

生乳需給安定クロスコンプライアンスの導入

現在この枠組みの中で8つの事業を想定しています。
たとえば、国産チーズ生産奨励等事業や、少しわかりづらい名称ですが中小酪農等対策事業、これは資機材を導入するための支援です。さらに畜産クラスター事業も含まれており、酪農分野の拡大は難しい状況にありますが、施設整備などを進めるための枠組みとして活用されています。
こうした事業については、Jミルクなどが実施する対策への拠出がなければ補助事業への申請が困難になるという仕組みを、政府として今まさに整備しているところです。

生乳需給安定クロスコンプライアンス拠出要件

生乳需給安定クロスコンプライアンス拠出要件

クロスコンプライアンスの手続方法です。

生乳需給安定クロスコンプライアンスによる確認フロー

生乳需給安定クロスコンプライアンスによる確認フロー

現在さまざまなスキームを組んで動き出しており、事業者の皆さんにも説明を進めているところです。すでに具体的に動き始めている状況で、最後のポイントとして「生産基盤の安定」と「食料安全保障」の確保に向けた取組みの重要性に触れています。