100年後の牛乳のために
時代によって牛乳のイメージも変化している
牛乳のイメージも時代によってどんどん変化しています。例えば飛鳥時代に、百済から渡来人が搾乳の文化、医学の文化、仏教の文化を一緒に持ってきて、そこで日本の酪農の歴史が始まりました。当時は貴族の高級食というイメージだったと思います。一般庶民の方は牛乳を口にすることも多分なかったでしょうし、牛乳をそのまま飲むというよりは、加熱して蘇にして税として納めたりといった、本当に貴族だけの滋養強壮のための食べ物だったと思います。
その後だんだん時代が進み、戦国時代になると、武士は牛より馬が好きですし、また、動物性の食品を好まないというのが武士の掟みたいなこともあって牛がどんどんいなくなって、ここで日本の酪農の歴史は一度ほぼ途絶えてしまうということになりました。
戦国時代も過ぎ、戦がなくなったときに、武士も仕事がなくなってくるので、武士が酪農家になりました。皮肉というか、馬が好きだったのに最終的には牛を飼うようになったという歴史があって、すごくおもしろいなと思いました。その後明治時代になって文明開化が起きて、西洋からの文化として改めて牛乳が入ってきて、栄養豊富な栄養源ということで、とても最先端な飲み物というイメージで牛乳はとらえられていたと思います。
昭和初期、戦後になって、給食に牛乳が出されるようになって、そのときの給食のイメージが現在もずっと続いているような状況なのかなと思います。現代では、アンチという牛乳のネガティブなイメージというのも同時にあるんじゃないかなと思っていまして。
では、これから先の100年後の未来に、どういうイメージが残っていることがベストなのかなということを考えています。
アンチの勢いも大きいこの時代
やっぱりアンチの勢いというのもすごく大きい時代だなと実感しています。SNSが発達していろんな情報が拡散される時代になり、すごくネガティブな牛乳のイメージというのも目にする機会が増えました。例えばYou Tubeで牛乳と検索をかけると、ほぼ上位はネガティブな、牛乳は飲まないほうがいいみたいな、目にするのも辛くなるようなものばかりが出てきてしまいます。
一方、カフェラテと検索すると、ネガティブな情報ってほぼ出てこないです。カフェラテはほとんど牛乳ですよね。でもコーヒーに対するイメージの格好よさとかがあるのでしょうね。何かそれって不思議だなと思います。
でも、それも逆手にとって、もしそういういいイメージがあって、牛乳の消費自体を上げられるのであれば、そういうイメージもうまく活用していったほうがいいのではと思っています。
実際、いま中国とかオーストラリアでもカフェがものすごく発展していて、ちょっと最近話題になった中国で「豚の角煮ラテ」という、豚の角煮味のカフェラテが発売されました。それも要はラテなので8割9割が牛乳です。それに豚の角煮のエキスを入れて、スタバが出したのです。それも何で発売されたかといいますと、中国だと春節の日に角煮を食べる文化があって、その春節の中国の文化とカフェラテをかけ合わせて、「豚の角煮ラテ」というのを出したそうです。
その背景には、中国って今ものすごくカフェが増えているので、どうしてもほかのカフェとの商品の差別化をしないといけないということで、そのアイデアから生まれた商品らしいです。そのようにカフェの需要が増えれば、牛乳の消費量ってすごく増えていきます。オーストラリアもメルボルンとかすごくカフェが増えているのですが、それで牛乳の消費量がかなり回復しているというのを聞いたことあります。そういった牛乳単体のイメージプラスカフェのイメージをうまく活用することで、消費量を上げることができるのであれば、積極的に活用していいのかなと思います。
例えばJミルクさんの「牛乳乳製品に関する食生活動向調査」の結果で、「牛乳を飲むべきではないと思いますか」と質問をしたところ、「そう思う」という方が3%ぐらいいたんです。その割合が若干増えていて、「思う」まで含めると全体の17.6%と、10人に2人ぐらいの割合で、牛乳のアンチ、牛乳は飲まないほうがいいと思っている方がいます。
かといってこの人が、牛乳は飲まないけどカフェラテは飲んでいるという可能性も相当高いので、そういった感じで、いろんな食べ物の要素を組み合わせたりして消費を上げていくというのも大事なのかなと思ってます。
忘れられない光景
2月の真冬の北海道のコンビニの前の写真です。海外の観光客の方がコンビニで何を買って来たかというと、牛乳をみんなで買ってきて、めちゃめちゃ寒いのですが、外で乾杯をしてたんですね。それがすごく感動したといいますか、すごくびっくりして。
海外の、特に中国の方ですけど、日本の牛乳を飲むことがある種ステータス、本当に日本の高品質な牛乳を飲みたいという方が非常に多くて、訪日の観光客の方がコンビニで購入する商品売り上げベストテン、これは2017年のコロナ禍前ですが、1位と2位が牛乳なんですね。それくらい海外の方って日本の牛乳がすごく大好きで、これは将来の目指す日本の牛乳のイメージだなと思っています。
日本人のために情報発信をするというのももちろん大事ですが、海外の方がすごく日本の牛乳を評価してくださっていることを考えると、国内と国外同時に、日本の牛乳の魅力を発信していくというのも大事なのかなと、日本の消費が減っている中で、海外の方の購買を取り入れるというのも一つ大事かなと思います。
海外の方は日本の牛乳に対してポジティブなイメージを持っている方が多い印象
牛乳を買う目的としては、品質に対する評判が高くて、朝と夜ホテルで飲むためにコンビニで買って帰る方が多いそうです。なので、海外の方というのは、日本の牛乳に対してすごくポジティブなイメージを持っている方が多いと思います。日本の高品質な牛乳が一つの日本の文化として根づくことも目標になり、「日本って牛乳おいしい国だよね」というようになるまで、こういった情報発信を続けていくことも大事かなと思っています。
現在進行中の企画
今現在進行中で、牛乳を盛り上げていく企画としてやっているのが、「ご当地牛乳トレカ」というのをやっています。これは、牛乳パックの広告欄を活用したトレーディングカードゲームです。昔の子どもたちが給食の牛乳瓶のふたを集めていたように、今の子どもたちにもそういう牛乳の何かモチーフを集める楽しさというのを提供できないかなと思って、いま地方のご当地のメーカーさんと一緒にやっています。
この牛乳の広告欄にカード型のモチーフがついていまして、それを切り取って遊べるという。集めて遊んだりとか、いろんなルールで遊んだりとか。このカードを切り取るときに、必然的に紙パックを開く必要があるので、自動的にリサイクルへの理解醸成も進められるのではと思って進めています。
もう一つが、牛乳大賞というのを今年やる予定でおります。こちらは本屋大賞のようなもので、牛乳ファンのような方が、今年一番輝いた牛乳を表彰するイベント、それをニュース性のあるトピックとして、業界全体の活性化につなげられないかなと思っています。
つながりで広く発信
こういった活動も私1人では全然発信力が弱いです。そこで、2022年に「牛乳でスマイルプロジェクト」という業界で一丸となって牛乳のPRをしていこうという活動が始まりまして、いろんな業界の方とつながれる機会もいただきました。酪農家さんや同じ志を持つ牛乳ラバーの方、乳製品ラバーの方と一緒に活動の機会をいただけて、個人では難しい課題も、同じ志を持っている方と一緒なら解決できるのではと思ってます。
業界全体で共通のメッセージ
ファッション業界とかですと、今年のトレンド色はもうこの色にしましょうと決めるらしいのですね。今年はライムグリーンにしましょうというのを、業界全体で垣根なく一つのテーマを決めて発信するというところがあります。
例えば、今年は「ミルクリスマス」というテーマにして、全てのメーカーさんや業界団体さんが連携して一つのテーマでやってみましょうというのが提案です。
欧米だと、サンタさんに牛乳とクッキーをあげるという文化がありますが、日本であんまり牛乳とクリスマスって結びついている方は少ないと思います。それを一つの日本の文化として取り入れてしまって、「サンタさんには牛乳とクッキーを」みたいな一つのテーマを作るとか、バレンタインデーにチョコレートというのも、最初はそういったイメージづくりから始まってると思うので、そういった形でクリスマスといえば牛乳というのを、やっぱり年末年始で消費が落ちる時期にも重なるので、そこで盛り上げる企画として、年末に一気に牛乳の消費を上げる企画としてできないかなと思います。「牛乳でスマイルプロジェクト」も始まって、垣根を越えやすくなっているタイミングだと思うので、そういった垣根を越えることで強力な発信ができるのではと思います。
イメージを変えていくには長い時間がかかりますが牛乳の魅力をいっぱい詰め込みたい!
こういった感じでいろんなことをやっていって、イメージを変えていくというのはすごく長い時間がかかると思いますが、作ったものとかは消えてしまっても、人の頭の中というのは消えたりしないので、ずっと残っています。こういった感じでずっと長い時間かけて、いろんな人の頭の中に牛乳の魅力というのをいろんな形で詰め込みたいなと、新しくデザインしたいなと思っています。
私は牛乳のおかげでここまで元気に育てていただきました。
本当に私は牛乳のおかげでここまで元気に育てていただきまして、笑った日も泣いた日も牛乳がそこにあって、本当に励まされました。100年後の子どもたちにも、私みたいに牛乳が相棒になる子どもが絶対いると思いますので、人生の相棒になるように、そんな未来を目指して、これからも牛乳に恩返しをしていきたいなと思っております。