MEMBER

第110回 牛乳のイメージをリ・デザインする。~100年後の牛乳のために今できること~

牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

牛乳の魅力を伝えるために

牛乳の個性をわかりやすく消費者に伝えてあたらしい需要を掘り起こす

牛乳の個性をわかりやすく消費者に伝えてあたらしい需要を掘り起こす

牛乳の主な消費層というのは、やっぱり小学生や中学生の若年層、若い方が消費していると思うのですが、人口も、特に若い方が減っていて、さらに植物性ミルクとか、代替ミルクを含めていろんな飲料が出てくる中で、では牛乳の消費を上げていくにはどうしたらいいかというときに、やっぱり今までと違うアプローチで考えていかなければいけないというのは必然的なことかなと思いました。
こちらは本当にプロトタイプで実際に発売して、売れる、売れないとかはあるとは思うんですけれども、牛乳の一つの可能性としてデザインしてみたものです。
「noon(ヌーン)」という牛乳のネーミングを考えたのですが、あえて牛乳という言葉を入れない商品名というのを一つ提案として出しました。先ほどのお米のササニシキとか、お酒の八海山のように種類別の表記を入れなくても、「noon、おいしいよね」とかそういうふうに商品名でしっかり言ってもらえるような、きちんと差別化できるような商品になってほしいということで考えました。
この「noon」という言葉は、お昼という意味ですが、牛乳って、給食ではお昼に飲むのですが、何となくやっぱり朝に飲む牛乳というイメージが結構強いと思うのですね。それをあえてランチタイムに飲む牛乳、例えばサンドイッチと一緒に飲む牛乳とか、パンと一緒に飲む牛乳、そういうお昼も何か頭の中に牛乳という選択肢が入るような商品にならないかなというコンセプトで考えてみました。

「パッケージ」を替えて購買層を広げる

「パッケージ」を替えて購買層を広げる

パッケージを変えて、買ってくれる方を広げることができないかなと思っています。給食で出るから子どものための飲み物というイメージが強いので、もっと幅広い方に手にとってもらえるきっかけを作りたいというので、何となくカフェラテとかカフェオレとか、もっと大人の方が買いやすいようなパッケージのデザインにすることで、大人がランチタイムに手に持っていても違和感がないといったものを考えてみました。
もう一つは、パック型ではなくてペットボトル型というのをコンセプトにしたのですが、このボトルを考えた2000年代初めというのが、ちょうどペットボトルのお茶がものすごくシェアを伸ばしていた時期でした。お茶も昔は家で飲む、急須で入れるのが普通、スタンダードで、外でお金を出してお茶を買うなんてという考えが多分あったと思うのですが、お茶のシェアがどんどん伸びたことで、それが牛乳のシェアと入れかわるように変わってきました。

「売り方」を変える

「売り方」を変える

売り場を見ると、やっぱりお茶とかミネラルウオーターとかと、牛乳の売り場って違うんですよね。それはもちろんいろんな流通とか法律とかで決められているので、そこは分けなければいけないのですが、もしお茶と水の隣に牛乳を並べたときに、勝負するとすれば、そういった中からちゃんと選択肢として選ばれるようにするためにはペットボトルの牛乳っていうのもあるのかなと。消費者の方の選択肢にまず入れてあげる、土俵に上げてあげるような形を変えることで、ペットボトルタイプの容器を検討しました。
これを考えていた当時は、法律でペットボトルの素材は禁止されていたのですが、その後、2007年に乳等省令(乳及び乳製品の成分規格等に関する省令)が改正されて、ペットボトルも使用可能になって、現在ではペットボトルの牛乳も販売はされています。

新しい「イメージ」をデザインする

新しい「イメージ」をデザインする

要は、新しい牛乳のイメージをデザインしたいと思いました。多分、皆さんが普通に考える現在の牛乳のイメージでいうと、やっぱり給食で出るもの、牧場とか、朝食で何となくシリアルと一緒に食べるもの、あとはカルシウムとか、恐らくこの5つぐらいではないでしょうか。実際インタビューとかしたわけじゃないのでわからないのですが、「あなたにとって牛乳のイメージって何ですか」と聞くと、恐らくはこういった答えが返ってくると思っています。
目指した牛乳のイメージは、もちろんそのイメージを大事にしつつ、それを消すわけではなくて、新しい牛乳のイメージを頭の中に入れることができないかなと思いました。
私がもともと持っていた牛乳のイメージは「牛乳って存在自体がかわいい」なのですが、なかな共感してもらえないんです。

例えば、何か牛乳をモチーフにしたグッズも、たくさん世の中にあって、それはやはり牛乳自体が持っているかわいらしさとか、愛着とかがきっとあるからではと思っています。牛乳って飲むだけじゃなくて、本当に存在としての親近感だったり、かわいさだったりといったものがあるなと。そういったことがイメージの中に取り入れられないかなと思います。
あと、楽しさ。牛乳があることで本当に生活が楽しくなる。牛乳があることで、いろんなスイーツだったりお菓子だったりいろんなものが作れるわけです。それこそヨーグルトも、チーズもいろんなものに変化して食卓を彩ってくれる存在。それが食卓にあると、やっぱり楽しいと思います。牛乳がもたらす生活の楽しさというところを、もっとみんなの中にイメージとして持ってほしいなと思っています。
次は個性ですね。先ほど言ったように、牛乳ってひと括りではなくていろんな個性があって、相棒のような、牛乳があることで何となく楽しくなる、何か頼れる、そういった相棒みたいなイメージを新しくつくれないかなと思いました。

人生の目標が決まる!

人生の目標が決まる!

先ほどの課題をやることで、人生の目標が一つ決まったような感じがしまして、一般の方が知らないような牛乳の魅力だったり楽しみ方を発信することで、牛乳のイメージを新しくリ・デザインしていき、そうすることで、もっと広い、子どもだけじゃなくて、大人でも牛乳のファンは増えるんじゃないかなという、何となくそんなことを思って活動をし始めました。

実施した牛乳のイメージリ・デザイン活動

牛乳の持っている可愛さ、楽しさを感じられる場所をつくろう!

牛乳の持っている可愛さ、楽しさを感じられる場所をつくろう!

ここからが実際に私がやった牛乳のイメージ、リ・デザイン活動です。先ほど言ったように、牛乳の持っているかわいさだったり、楽しさを感じられる場所をまずは作ってみようということで、世界中から牛乳にまつわる雑貨を集めた雑貨店というのをいきなり始めました。
この雑貨店を始める前に、4年間会社員やっていたのですが、会社員時代の貯金を全部使い切って、これで一発勝負するぞと立ち上げたお店です。牛乳ってかわいいですよと言葉で言ってもなかなか伝わらないので、実際にこんなに世の中に牛乳をモチーフにしたグッズがあって、やっぱり牛乳って何となくかわいいんだねという空気をつくりたいなと思って、いろんな商品を取り扱いました。

ケビンミルク

ケビンミルク

牛乳型のライトとか、あと牛柄のカトラリーとかコップとか、やっぱり牛とか牛乳とかそれ自体がかわいい、「あ、牛乳ってかわいい」、何かそういう直感的に手にとれるもので感じてほしいなということで作りました。でも、このお店はちょっと時代を先取りし過ぎまして、、、すぐに潰れました。

牛乳ひとつひとつが持っている個性の違いがわかる体験を提供しよう!

牛乳ひとつひとつが持っている個性の違いがわかる体験を提供しよう!

その後にやったのが、牛乳一つひとつが持っている個性の違いがわかる体験を提供しようということで、「ミルク道」「ミ道」というのを始めました。
これは、お茶の茶道とか生花の華道とかいったように、牛乳の楽しみ方を一つの作法にすることで、牛乳のおいしさだったり、牛乳それぞれの味の違いだったりをもっと深く知ってもらおうという体験です。
畳の和室でみんなで牛乳を飲むんです。この牛乳はどういう個性があって、どういう酪農家さんが育てた牛で搾ってとか、実際に酪農家さんとオンラインでつないで、牛乳に込めた思いとかを説明していただきながら、実際に搾られた牛を見ながら飲むという体験をさせていただきました。

実施した牛乳のイメージリ・デザイン活動

実施した牛乳のイメージリ・デザイン活動

茶道であれば茶菓子がありますが、例えば牛乳と合わせるお菓子、これでいうと「ミ菓子」と呼んでいるんですが、そういうお菓子と合わせることで、牛乳のおいしさがさらに広がったりとか、牛乳単体ではなく何かと混ぜて飲むか、どういう器で飲むかとか、牛乳の奥深さというのを体験してもらうという活動です。

なぜ人は牛乳を飲むのか?牛乳は人生のパートナー

なぜ人は牛乳を飲むのか?牛乳は人生のパートナー

次にやったのが、「なぜ人は牛乳を飲むのか?牛乳は人生のパートナー」をテーマに、「ミルクのケビンTHE MOVIE」という牛乳のアニメを作りました。これは、先ほど言ったような、大人にも牛乳の楽しみを伝えようというのとはまたちょっと真逆で、改めて子どもたちに牛乳の魅力を伝えようということで考えた企画です。

実施した牛乳のイメージリ・デザイン活動

実施した牛乳のイメージリ・デザイン活動

小学校に入って、1年生から給食で牛乳と毎日つき合うことになる子がほとんどだと思うのですが、そのときに牛乳って何者なのだろうと感じると思います。家で牛乳飲んでなく、初めて学校で牛乳に出会う子どもたちもたくさんいると思います。そういう子どもたちに、牛乳が敵じゃないという、牛乳は相棒だよというのを優しく伝えるようなことが何かできないかなと思って作りました。
私自身、ずっと家でアニメを見て育ったような子どもでしたので、アニメに映っている食べ物がすごくおいしそうに見えたり、アニメの主人公が食べてるどら焼きがすごくおいしそうに見えるとか、アニメから子どもが受ける印象ってすごく大きいなと思しました。したがって、アニメーションという手法を使って、子どもたちが給食を食べるタイミングで、給食の牛乳の良さを伝えられないかなと思ったアニメーションです。
アニメ自体は私の幼少期がそのままアニメになったようなものです。私は両親が共働きということもあって、祖母と過ごす時間が結構多かったです。この映画の主人公も祖母と過ごしているのですが、そこに牛乳という存在があらわれて、2人が相棒になっていくという物語なんです。
何で牛乳を飲むのかという問いに対して、この映画で出した答えが、やっぱり強くなってほしいからという一つの答えは出しています。それはなぜかといいますと、牛乳にはいろんな魅力があると思いますが、牛乳と全く同じ飲み物が出たときに、例えば味わいだけをまねしたようなものとか出たときに、牛乳にしかない魅力というのは、やっぱり牛の力だと私は思っていて、自然の生き物の力を自分の中に吸収して、だから元気が出る、、力が出るいうといったことを私自身感じるんですね。
牛乳を飲むと何か力が湧いてくるというのは、やっぱり牛の力だな、自然の力だなと感じましたので、そういったことを映画の中でも、「何で牛乳飲むの?」みたいなときに、強くなってほしいから給食で出るんだよ、健康とか栄養とか含めて強くなってほしいという願いが込められています。また、いろんな酪農家さんや乳業メーカーさんの皆さんの思いが、この牛乳という存在になっているんだよということを映画では伝えています。

映画を見た感想

映画を見た感想

実際この映画を見たお子さんから頂いた感想です。
「映画を見て、牛乳が嫌いではなかったけど、あまり今まで飲まなかったけど好きになりました。映画のおかげで、友達に『何で給食で牛乳が出るの』と聞かれたら、答えられるようになって、友達に『よく知ってるね』と言われるようになりました」
という、すごくうれしいお手紙をいただきました。こういった子どもたちの感想をいただけたら、本当につくってよかったなと思いました。たくさんの方に見てもらえる機会というのはあまりないのですが、本当に草の根活動といいますか、1人でも多くの子どもたちに見てもらえる機会を今後も作っていきたいと思っています。

身近な存在だからこそそのありがたみを感じてほしい

身近な存在だからこそそのありがたみを感じてほしい

次にやったことが、「サンキュー★牛乳」という牛乳の唄を作ったことです。牛乳は身近な存在だからこそ、そのありがたみを感じてほしいなという思いで作りました。スーパーの鮮魚売場でよくかかっている唄があるように、牛乳売場でずっとかかっているというイメージです。
歌詞は、やっぱり牛乳があることで、例えばクリスマスケーキに使われている生クリームも牛乳ですし、ピザに使われるチーズだって、元をたどれば牛乳ですし、牛乳って意識してないけど、実はみんなの周りにこんなにたくさんあって、生活の中にすごくあるんだよ、そういったありがたみを知ってほしいということを歌詞に入れ込みました。

銭湯でリリースライブ

銭湯でリリースライブ

やっぱり牛乳といえば銭湯だと思いますので、銭湯を貸し切りにして、銭湯でリリースライブをさせていただいて、お客さんと一緒に歌うということをしました。今のところ「サンキュー★牛乳」をかけてくださっているスーパーはありませんので、絶賛募集中です。