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第103回 牛乳パックのリサイクル
~現状と今後~

牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

学校給食用牛乳パック(学乳パック)の現状

学乳パック

学乳パックは紙パック全体の6%なのですが、最近は学校で処理をする量が増えています。ただ、増えた分が回収に回らずに廃棄に回っています。従って、前年の回収量と当年の回収量があまり変わっておらず、逆に減っているぐらいです。乳業メーカーの引き取りもどんどん減っているのですが、乳業メーカーが引き取ったものはほぼリサイクルに回しているので、学校のリサイクルが減った分、学乳の回収率が減っているという状況が続いています。

リサイクル製品の種類と量

リサイクル製品の種類と量

リサイクル製品は、このグラフでわかるように、主にトイレットペーパーやティッシュペーパーです。

回収されている紙パック飲料の内訳

紙パック飲料の内訳

左の円グラフは種類別ですが、飲用牛乳が7割弱となっています。次に多いのが清涼飲料や果汁飲料で、合計で2割を超えています。
右の円グラフはサイズ別です。約8割が500mlより大きいパックで、500mlより小さいのは1割強です。牛乳だけ見ると、500mlより大きい牛乳は全体の半分です。それから、全体の6%が学乳ということで、学乳と500mlより大きいものを合わせると6割近くになります。

課題と今後

リサイクルがうまく行かない原因

リサイクルがうまく行かない原因

まず市民に関しては、他の容器より手間が掛かる、処理が面倒くさい。これが一番大きいと思います。それから、せっかく処理をきちんとしても、出し先を間違えている。最近多いのは、雑がみの紙袋に入れて出している。それから、いざやってみたら引き取り手がいない、あるいは出し先が分からないので仕方なくごみとして捨てる。それから、これは深刻だと思うのですが、活動がスタートした頃一生懸命やっていた方が高齢化してできなくなってきて、その後に続く若年層があまり取り組まない、取り組んでも継続しないことです。
2番目の回収業者については、量が集まらないので儲からない。従って集めたくない、引き取りたくないということです。
3つ目の再生事業者については、パルプは良質なのは分かっているのですが、再生後にプラスチック残さ(主にポリエチレン)が出ます。これまでは燃料にしていたのですが、中国が分別しないプラスチックを輸入しなくなり、余剰となった残さを産廃業者に引き取ってもらうのですが、その価格が高騰しています。従って残さが出ないパルプ、ひと頃パルプの価格がグッと下がったものですから、こちらを購入して、結果的に牛乳パック・紙パックを引き取らないという動きが一時期ありました。
行政の中には今でも、「1リットルの牛乳パックしか出さないで」と言っているところがあります。さきほど1リットルの牛乳パックが全体の半分という話をしましたが、残りの半分にあたるジュース等の紙パックは集めないものと市民が思って捨ててしまうことになります。500ml牛乳パックすら引き取ってくれない市町村もまだあります。

学乳については、学校の先生に話しを伺うと、手開きが難しいとか、アレルギーの子どもがいるとか、時間が忙しいとかいろいろの理由でうまくいきません。学校の校長先生をいかに説得するかに集中していろいろアプローチしています。
容環協のカウント漏れもあります。

注ぎ口の付いた紙パックについては、市町村での取り扱いが、そのまま付いたものを出してもいいところと、切ってくださいと言うところといろいろあって、我々はそれ以上踏み込めない。あとは新型コロナで止まったという話があります。直近の数字では、両方とも約3ポイント低い数字が報告されています(2020年度紙パック回収率38.8%、使用済み紙パック回収率29.7%)。
以上の原因を踏まえて、今までいろいろなことをやってきたのですが結果的に回収率の向上に結び付いていません。

2015~2020年度の容環協活動の総括(PLAN2025より)

2015~2020年度の容環協活動の総括(PLAN2025より)

容環協として組織的にこれを整理しました。自主行動計画「PLAN2025」の中で過去5年間の総括をしています。
1番目の市民に向けた課題としては、まず紙パックが資源だという意識が低下傾向にあること。若年層はSDGsネイティブとも言われていますが、社会課題には関心が高いものの、紙パックリサイクルと社会課題が結び付いていないのではないか。従って、紙パックリサイクルが社会課題の解決に貢献するということを納得感のある形で訴求することが我々の課題ではないかと整理をしています。
次に、「洗って開いて乾かして」が難しい屋外飲食などでの処理のあり方。これについては今まで提示をしていませんでしたので、今後は必要と考えます。
さらに、生活様式の変化を踏まえ、特に出前授業については今までは対面だけだったのですが、今後はオンラインやデジタルツールの活用をもっと進めてもいいのではないか。
2番目の、地域による回収インフラ、輸送の課題として、量が少ない、再生紙工場が遠いなど、状況に応じた提案が必要です。
3番目の処理に関する課題としては、今までは、紙パルプについてしかリサイクルを考えていなかったわけですが、プラスチック処理についても動向を注視する必要があるということです。
4番目の再生品の課題として、再生品の価値向上や利用・使用促進も必要だろうと考えています。

自主行動計画「PLAN2025」の概要

自主行動計画「PLAN2025」:回収率目標50%

回収率目標は50%ですが、紙パックを通じて持続可能な社会づくりに貢献すると標榜しています。そのために、ここにある5つの柱で活動します。紙パックリサイクルの正確な現状把握と、ステークホルダーとのコミュニケーションをしっかり行います。そして、回収率向上のための啓発、紙パック回収・再生インフラの整備支援、次世代を担う子どもたち環境マインド向上に取り組む中で、活動を定期的にレビューすると共に、これを公表し、ステークホルダーの共感を得るというサイクルを回していくことで、様々な課題を解決しながら、回収率を高めようと考えています。

飲料容器回収ボックスの配布場所

回収ボックスの配布場所

これは情報公開の一例で、容環協が配布した回収ボックスの配布場所をプロットしたものです。この回収ボックスがどこにあるかという事が一目で分かると思いますが、どこにないかも一目で分かります。このようなツールを整備し、例えばスーパーや市町村の回収拠点、拠点回収しているところを載せてホームページにアップをすることで、リサイクルしやすい行動に結び付くのではないかと考えています。

紙パックリサイクルでコロナ時代のサステナビリティを考えるきっかけに

紙パックリサイクルでコロナ時代のサステナビリティを考えるきっかけに

2020年度は新型コロナで、今までリサイクルをやっていたところ、市町村やスーパーでも一時期回収が止まり、学乳は今でも止まっているところが結構あります。これをまた戻して回収率を高めるために、今までは環境関係のことしか訴求していなかったのですが、これだけでは限界があるのではないかと考えています。学乳については、リサイクルの効果として、学乳パックだと1クラス36人だったら、1日でトイレットペーパーが2個できるという話をすると、ああなるほどとうなずく先生もいるのですが、これだけではなかなか難しいと感じています。

今日はお手元にお配りしていませんが、学乳パックに特化した「リサイクルの手引き」を作成しています。今後は学校だけではなく、市町村の教育委員会・環境対策課、市民団体などと一緒にやっていかなければいけないのではないかと考えています。今、川崎市で少しずつ取り組んでいますが、来年成果が出ればと思っています。
また、プラスチック資源循環の流れもありまして、ラミネートプラをどうするか、考えていかなければいけないということです。

海洋汚染対策という観点では、屋外で飲まれたあとの紙パックがポイ捨てになるリスクになりますから、何かしら考えていかなければいけない。ポイ捨てされないように、快適なまちづくりとか地域活動とか生涯教育とか、こういったことも考慮しなければいけないのではないかということです。「PLAN2025」で定めた現状認識と、関係者との情報共有を行いながら、地道に取り組んでいかなければならないのかなと考えています。確実に社会課題の解決に貢献するようなことも、なるほどと納得できるような形で、紙パックリサイクルの再構築をしていかなければいけないのではないかと思っています。

我々は地球という場所を借りて、資源を使わせていただいて生活をし、活動をしてなにがしかの成果も出しているわけですが、同時に不具合なものも出しているわけです。従ってその不具合を修復するなりして、「次の世代に渡す」ことをやっていかなければいけないのだろうなという思いを持っています。

紙パックリサイクルでコロナ時代のサステナビリティを考えるきっかけに

最近の若い人はSDGsが小学生の時から染み付いていますので、SGDs目標を関連させながら、やっていかなければいけないのかなと思っています。今後は目標の2「飢餓をゼロに」、6「安全な水とトイレを世界中に」、11「住み続けられるまちづくりを」、14「海の豊かさを守ろう」も新たに考えて、意識しながらやっていかなければいけないと思っています。
回収率を上げるためには、うまく回収できていないところに手を打てばいいわけですが、容環協のマンパワーには限界がありますので、いかに効率よく対応していくかだと考えています。
皆さんご自身のリサイクル継続実施と、ご友人へのお声がけをよろしくお願いいたします。