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第103回 牛乳パックのリサイクル
~現状と今後~

牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

予備知識 その2

廃棄物について

廃棄物について

牛乳パックはリサイクルすれば資源ですが、捨てれば廃棄物ということで、廃棄物の話を少ししておきたいと思います。
廃棄物というのは、廃棄物処理法で細かく決まっています。分類としては、産業廃棄物(産廃)、事業活動に伴って出るごみですが、我々には直接関係はありません。そして、一般廃棄物、一廃と言われる産廃以外のものですね。家庭から出るごみです。また、オフィスビルから出るごみは事業系一廃と言われます。
産業廃棄物の廃棄物量は高度成長期にどんどん増えていって、このグラフでは1975年の2億3,600万トンが、あっという間に倍近くに増え、現在も4億トンを切るか切らないぐらいの数量になっています。一般廃棄物も4,000万トンぐらいが5,000万トンを超えるところまで増えてきました。

廃棄物について

ごみは選別されるものもあるのですが、基本的には燃やされて埋め立てられます。埋め立て場所を最終処分場と言いますが、あと10年したらゼロになると言われて、増やせばいいのではないかということで実際に増やすアクションをとったのですが、そうじゃないだろうということになりました。一廃の方は市民が出すごみですから、国が方針を出さなければいけないということで、とにかく嵩が大きいものを減らそうということで調べたら、6割が容器包装だということが分かったので、これを減らそうとなりました。これが契機になって容器包装リサイクル法の制定に結び付きました。

廃棄物と容器包装リサイクル法

循環型社会形成の推進に関する日本の法体系

では、容器包装リサイクル法とは何かということですが、これは容器包装リサイクル法にかかわる容リ協(指定団体)というところが資料を出していますので、これを使って説明します。
これは法体系です。環境基本法、循環型社会形成推進基本法の下に廃棄物処理法と資源有効利用促進法の二つがあります。廃棄物処理法は廃棄物の適正処理、資源有効利用促進法は再生利用の推進と、識別表示の義務付けがその目的です。

識別表示の義務付けについて、紙とプラについては容リ法で決まったのではなくて、資源有効利用促進法で決まっています。紙マークがある製品、プラマークがある製品があるということはお気づきになっていると思います。他のものは容リ法ですから、製品には識別マークはありません。それから個別リサイクル法や、グリーン購入法があります。

容リ法制定の経緯

一般廃棄物の最終処分場が7年から9年であふれてしまう状況を鑑み、家庭から出るゴミの60%にあたる容器包装を何とかしようということになり、容リ法が制定されました。

容器包装リサイクル法の目的

容器包装リサイクル法の目的

家庭から一般廃棄物として排出される容器包装廃棄物のリサイクル制度を構築することにより、一般廃棄物の減量と資源の有効活用を図るということです。
このために何をしたかというと、いわゆる三者の役割が定められました。
消費者には「排出抑制・分別排出」、市町村には「分別収集」、事業者には「再商品化(リサイクル)」が求められています。

廃棄物の区分

廃棄物の区分

容リ法が対象とするのはこの黄色いところで、一般廃棄物のごみの中の家庭系のごみです。細かく言うと、事業系一般廃棄物は対象外です。

消費者、市町村、事業者の役割分担

役割分担

消費者・市民に対しては排出抑制と分別排出。ごみを出す量を減らしてくださいと、分けて出してくださいということです。
市町村は分別収集。ちゃんと分けて収集してくださいということです。
事業者は再商品化・リサイクルをしてくださいということです。有り体に言うとリサイクル費用を払うという制度であります。

拡大生産者責任(Extended Producer Responsibility)

拡大生産者責任

拡大生産者責任(EPR)とは、もともとはOECDが定義した用語です。容器包装を含む製品の設計・製造に最も影響を与える生産者に対して、物理的・金銭的責任を当該製品の廃棄後まで全面的もしくは部分的に拡大する環境政策の手法です。
日本では、容リ法の施行により、従来自治体が行っていた容器包装廃棄物の処理の責任のうち、「再商品化」を切り離して、事業者が責任を負う、つまりお金を払うということになりました。

分別収集及び再商品化の対象となる容器包装

分別収集及び再商品化の対象となる容器包装

容器包装のどの種類に対して費用を払うかですが、8種類の容器包装のうち、PETボトル・プラスチック製容器包装・ガラス瓶・紙製容器包装の4種類に対して再商品化義務を定めました。言い換えると、紙パック・段ボール・アルミ缶・スチール缶には再商品化義務は与えられていません。これはなぜかというと、この4つは有価で売れるので、リサイクル費用を払わなくてもリサイクルされる状態だと見なされ、再商品化義務の対象から外れたわけです。

プラスチック資源循環促進法

プラスチック資源循環促進法

プラスチックの資源循環について少し触れておきます。プラスチックの資源循環については、2021年6月に法律が制定され、2022年4月に施行されることが決まっています。
ポイントの1番目は、製品プラスチックを、容器包装プラスチックと同じ仕組みで一括回収するということです。同じ仕組みでリサイクルしますが、容器は事業者負担で、製品プラは市町村負担ということになっています。
2番目は、商品の販売または役務の提供に付随して、消費者に無償で提供されるプラスチック使用製品の削減です。コンビニでのストロー、ファミレスでのプラスチック製マドラー、宿泊施設での櫛とかカミソリとか歯ブラシ、クリーニングに出した時に来るハンガーや衣服用カバー等12品目です。これらを有料化やその他の方法で削減しようということです。
3番目は、廃棄物処理法の免除規定で、これはリサイクル目的が明確であれば、業務許可を免除されるということです。
最後に、環境配慮設計の推進で、これはどちらかというと3番も4番も事業者向けですが、設計認定品の表示とグリーン調達法による優先調達とかです。

現状について

紙パック回収率の推移(目標:50%以上)

回収率の推移(目標:50%以上)

紙パックリサイクルの現状について、このグラフは回収率の推移です。50%以上の目標を掲げていますが、なかなか到達せず、むしろ最近は下がってきています。
紙パック回収率の数字は2つあります。上の赤いグラフは、製紙メーカーの損紙や飲料メーカーの古紙も含んだもので、これが公表値です。下の青いグラフは、市中に出た製品の使用済み紙パックで、消費者が出してくれた紙パックです。32~33%ということは、3人に1人しかリサイクルをしてくれない、3人に2人はごみで捨てている可能性があるということです。

紙パックの流れ ~原紙使用から消費者の排出まで~

紙パックの流れ(原紙使用から消費者の排出まで)

紙パックの重量ベースでのマテリアルフローです。スタートの原紙使用量は21万6,000トンです。ここから損紙と古紙が出て、これは比較的リサイクルがきちんとされているのですが、乳業メーカーに渡った紙パック18万7,000トンのうち、ごみとなるものや回収されないものが12万6,000トンもあります。このうち家庭系が9割弱です。家庭から出るものの多くが、再活用や他の古紙、可燃ごみへの排出と考えられます。再活用というのはまな板などに再度活用することですが、ここからリサイクルに戻される量は非常に少なくて、大半が可燃ごみに入っていくことが分かっています。

紙パックの流れ ~回収から再生まで~

紙パックの流れ(回収から再生まで)

回収されたもののうち、家庭系は店頭回収・市町村回収・集団回収の3つに分けて集計しています。事業系は後で出てきますが、学校給食の学乳パックがメインです。
これらが製紙メーカーに受け入れられているのですが、製紙メーカーの処理能力はまだ余力があるので、紙パックを1万t以上輸入して、製品を作っているのが実情です。

家庭系回収の推移

家庭系回収の推移

家庭系回収の推移のグラフです。水色部分が店頭回収で約半分、残りが集団回収と市町村回収です。店頭回収も市町村回収も減少傾向にあります。集団回収等だけは2010年ぐらいから増えているのですが、これは、原料問屋が独自に回収している量があることに気が付いて、調査をして数字を加えたため、濃い青い部分は途中から少し膨らんでいます。

市町村回収と集団回収の推移

市町村回収と集団回収(市町村把握のみ)の推移

約1,700市町村の住民1人が1年に紙パックを市町村回収に出した量を横軸に、集団回収に出した量を縦軸にプロットしています。「全体」というところを見る、年々左下に落ちています。直近の2019年では、市町村回収の紙パックは85gということで、1リットル紙パックでは約3枚弱、集団回収は2枚弱となっています。