- はじめに -
今回は、新型コロナウイルス感染症が、皆さんの食卓にほぼ毎日上ると思われる牛乳・乳製品、その生産、加工、需給調整などにどういった影響を及ぼしたのかということについて、また、牛乳・乳製品は、皆さんに大事な栄養をもたらすだけではなくて、食の多様性、楽しさなどをもたらす効果もありますので、皆さんの食卓、生活から無くならないように、関係者がどのように頑張ってきたのかなどにも触れながら、お話をさせていただければと思います。
今日は3つに分けてお話をさせていただきます。
まず、今回の新型コロナウイルス感染症の発生と感染拡大によって、酪農乳業にどのような影響があったのか、2つ目は、政府、関係する民間企業や団体が協調しながら行った対応と対策、3つ目は、今後の課題と対応について、経験則的に想定されるようなことも踏まえてお話をさせていただければと思います。
生乳はどのように牛乳・乳製品に振り向けられているか
まず少し基本的なところですが、牛から生乳が搾られた後、どのように牛乳・乳製品に振り向けられているのかについて簡単に触れておきます。
この棒グラフの一番下、ブルーのところですが、こちらが「牛乳等」と呼ばれる、飲用の牛乳またはヨーグルトといった分類です。こちらについては、大体毎年同じような割合で推移していまして、半分強がこういった飲用の牛乳やヨーグルトに仕向けられています。
その上の赤いところが生クリームです。こちらも2割弱仕向けられています。
そしてうすい緑色がチーズで約5%。黄色の脱脂粉乳やバター等が2割ぐらいになっています。
棒グラフの一番上にそれぞれ書かれている数字がありますが、昨年度であれば736万tですが、こちらが生乳生産量の全体量になります。平成8年頃にこちらの生乳生産量は860万t程をピークに、減少傾向で推移してきたのですが、酪農家の皆様のご努力等もありまして、昨年度は736万tと増加となり、今年度もプラス数%と増加傾向で今のところ推移しています。こういった生乳生産量の増加傾向に水を差さないためにも、しっかりと乳業会社が、このできた生乳を廃棄等することがないようにうまく需給を調整していくことが非常に重要となっています。
というのも、牛乳につきましては、日々生産されるというだけでなく、非常に栄養が豊富であるという性質があります。我々のようなヒトだけではなくて、病原微生物にとっても当然ながら栄養が高い。そうすると、病原微生物が増えやすいということで、それがどういうことかというと、いい方向に進めば発酵ですが、通常は腐敗するということで、なかなか生乳そのままでは長く持たない、賞味期限も短いということになります。こういった性質のあるものをどうにか需給調整していこうということで、生乳が余っている時期には、賞味期限の長い製品に一部振り向けて加工する。牛乳でいっぱい飲んでいただける時には飲用牛乳に仕向ける。そういった形で調整をし、生乳が無駄にならないようしています。
酪農乳業に起きた影響
今回のテーマである新型コロナウイルス感染症における影響ですが、皆さんもご存じのとおり、2020年の1月に我が国で初めて感染者、陽性例が確認されて、そしてその後全国、多くの県へ広まっていき、今では全県で確認されている状況です。
- 学校における全国一斉の休業要請 -
そういった中で、まずは学校において全国一斉の休業要請がありました。2020年2月27日の政府の対策本部において、クラスター対策により感染拡大防止を図る観点から、小中学校、夜間高校、そして特別支援学校などの学校が、春季休業開始までの間、全国一斉で臨時休業となりました。当然、授業がない、学校に行かないということですので、給食用牛乳の方も必要なくなってしまい、それによって牛乳のキャンセルが発生してしまいました。
2月29日に安倍前総理からお話があったことですが、一番下の青字のように、全国すべての小中学校等について、まずは春休みに入るまで臨時休校の要請がありました。その後、4月に緊急事態宣言が出され、それが5月に延長されたことにより、6月になるまで学校の臨時休業が継続された形になります。また、6月になって学校給食が始まったのかというと、すぐにはいつもどおりには戻らずに、分散登校というような形でその影響が以降も続きました。
学校給食用牛乳は、子どもの体位の向上など様々な部分でいい影響を及ぼしており、小学校で言えば99%を超える生徒に飲んでいただいています。
こちらは一番左の「計」が飲用牛乳の全体量です。これに比べて学校給食用牛乳は大体1割を占めているということです。2019年度飲用牛乳中の給食用牛乳の割合は、昨年度に比べて0.8%減っていますが、こちらが3月に減った分と考えていただければと思います。量としては約2万キロリットルとなりますので、1リットルの牛乳パックで言えば、30日平均で考えて計算すると1日あたり60万本といった膨大な量の牛乳が突然行き先をなくしてしまいました。そして、先ほど申し上げたとおり、牛乳というのは、そのままの形では賞味期限が短い。この点にどう対応していくかと、関係者の皆さんが頭を悩ませました。
一方で、こうしてキャンセルとなってしまった学校給食用牛乳を、スーパーや生協等で販売をしていただいたり、JA愛媛では無料配付していただいたりと、無駄な食材が出ないように、様々な方に応援・支援をいただきました。