- 講演後の質疑応答 -
- Q1.政府の対応・対策をうかがっていますと、やっぱり経済的な援助がほとんどで非常に目立ちます。ただ、これはいつまでも続けられるものではない気がするんですね。何も乳業の問題に限ったことじゃないですが、日本は借金だらけの国ですし、そういう意味でも経済的な対応だけではなくて、まさに乳製品の消費拡大に力を入れることが必要なのではないかと思います。そういう意味では先ほどのモー君ですが、さかなクンの場合には、単に魚を消費してほしいと言っているわけではなくて、むしろ魚についてのいろいろな情報を徹底して提供しているわけですね。ですから、もっと単に「もう1杯」ではなくて、もっと牛乳・乳製品についての情報を徹底的に社会に訴える、説明するという機会にされたらいいのではないかと思いました。
- A1.
- 私たちとしてもやはり今回はどうしても緊急的に困っているのだということを強くアピールするために、ちょっと直球のやり方が強かったかなというところがあります。ただ、消費拡大というのは食育という形でもやっていますが、やはりしっかりと生産現場の情報、流通の情報、そういったものを理解してもらって、そして消費につなげていくということが基本であろうかと考えています。ご指摘頂いたようなことも踏まえ、進めていきたいと思います。また、こういったYouTubeというようなツールを使いますと、様々な声がダイレクトで、その反響もありますので、こういった反響もしっかりと受け止めながら今後の改善に努めていきたいと考えています。
- Q2.対策の一つとして、輸入量を減らすということで対応されていると思うのですが、一定量の輸入というのはどうしてもしなければならないと決められていると思います。その点を少しご説明いただきたいのと、輸入量が減少すると、デメリットはないのか、将来にわたって問題は出てこないのかということも教えてください。
- A2.
- 輸入量が減っていった場合のデメリットですが、基本的には需給がある程度緩和している。要は買おうと思えば買える状況であれば、一時的な輸入量の減少があっても、またマーケットに買いに行けばいいというような状況もあろうかと思います。一方で、非常にこれがタイトになってきた時には、一定の継続的な取引のつながりがないと、なかなか輸入を行うことが難しいということも考えられます。まずは国内の需給の状況、需給調整の状況を第一義的に考えながら、この数量を考えていくのが現時点では必要ではないかと考えています。
- Q3.日本は幸いなことに発症者も少なかったり、いろいろな意味で皆さんのご努力でそれほどひどいことにはなってなく、酪農の状況もいろいろなヘルプがあったり、乳牛を減らすことにもならなかったと思います。今までの段階ではそうだと思うのですが、一方で酪農が盛んなヨーロッパの国とかはロックダウンだったり、状況が悪くなっています。あちらでは酪農家たちが困ったり、そういう状況は起きているのですか。
- A3.
- 最新の情報ではなく、またヨーロッパの状況ではないのですが、春先に北米では生乳の廃棄があり、それをどうにかして補償できないかということを業界団体でも議論をするなど、やはり一定の影響はあったと考えています。日本においては、関係者のご努力もあり、比較論で言えば恵まれたのかなとは思いますが、まだまだ乳業メーカーは在庫が多くなるなど影響が生じていますので、この冬、また春を乗り切れるように知恵を絞っていきたいと考えています。
- Q4.この1人プラスワンと言うか、そういうプロジェクトの成果か、本当に廃棄がなくて良かったなと思っているのですが、そうは言ってもずっとプラスワンというわけにもいかないと思うので、結局在庫もなかなか掃けないとなると、輸出を考えているところかと思います。国の方も農林水産物5兆円という計画もありますが、乳製品の輸出というのは、あまりできていないのでしょうか。
- A4.
- 乳製品の輸出については、例えばアイスクリーム用の原料とか、また牛乳の中でも高い温度で殺菌をし、空気とかを通さないような特別な処理をした包装容器のLL牛乳がありますが、こういったものの輸出は伸びています。乳製品全体としても、このところ毎年2割ずつぐらい増えている状況です。また5兆円という政府としての輸出目標を立てていますが、この中でも乳製品で700億円を超える目標を立てさせていただいていまして、農水省としても後押ししていきたいと考えています。
- Q5.チーズは輸出できないのでしたでしょうか。
- A5.
- 相手国によってどのような条件で輸出できるかというものは異なっていますが、実際にチーズ・牛乳、またはアイスクリーム用の原料といったようなものは輸出実績があります。こういったものをより多くの国で受け入れてもらえれば、その分だけ販路の可能性が広がると考えています。そういった体制を、事業者とも連携しながら作っていきたいと考えています。
- Q6.育児用粉乳というのはどういった国で売れているのでしょうか。途上国が中心なのでしょうか。
- A6.
- 各メーカーによって強い国というのがあるのですが、東南アジア・東アジアが多かったかと思います。そういったある程度人口があって、日本という国をよく知っていて、ブランド価値を理解している消費者が多い国で、もちろん乳業メーカーも営業努力が一番にあると思いますが、販売が伸びている状況もあろうかと思います。
- Q7.乳製品の消費がいい状態に日本では今回は行ったという結果のようですが、これからまだまだ続く時に、どうしても原料を上手に消費することは難しいテーマになると思います。例えば日本の女性はいつも骨折とか、特に老齢化に向けて対策を採りながら行っているわけですが、そういう時にある程度保存ができるチーズは有用かと思います。ところが、日本の皆さん方がよく召し上がるのは、ソフトタイプが多く、保存も利かないし、作るのが面倒だったりします。もう少ししっかりとした保存が利く、それでいておいしいチーズの製造を指導してほしいと思います。日本もこの頃はとても上手になって、いろいろなものを作っておられる方がいらっしゃいますが、その方々のチーズは自分の嗜好のために作っていらっしゃるようなものが多いので、もっと保存のためのしっかりとしたベーシックなものを、日本のいろいろな状態に備えるための食というようなものをご指導なさってほしいなという気がしました。
- A7.
- ご承知かもしれませんが、ヨーロッパの方ではやはりチーズは保存食として食べられています。また生乳の仕向けの半分程度はチーズということで、文化として生活にも根付いていると思います。そういった面からも、また保存期限が長いというようなことからも、需給の調整がしやすいアイテムであると思っており、さらに国内消費を拡大していく余地もあると思います。農林水産省としても、この振興ということは非常に重要だと考えています。またこういった手づくりのもので、おいしいものがたくさん出てきていまして、チーズを作る中小の工房も非常に右肩上がりで国内でも増えてきている状況です。こういった支援をさせていただいた結果かもしれませんが、先般もチーズの世界コンテストで、ある業者の銘柄が10本の指に入るほど、日本のチーズは国際的にも認められるものも出てきているところです。この灯を消すことのないように、しっかりとチーズの生産の方も推進していきたいと考えています。ただ、フレッシュとハードについては、少し日本の消費者の嗜好というものも考慮しながら、そこについてはどのような推進、方策が望ましいのか検討していきたいと思っています。
- Q8.コロナ禍での食と栄養のコンサルティングを行っているのですが、非常に要望が多かったのが、コロナ太りと免疫力を高めるために何を食べたらいいのという二つの質問です。新聞の取材の依頼とか、あとは社員向けのオンラインのセミナーで、コロナ太りを改善するのに何を食べたらいいのですかという要望が非常に多かったです。今でもそれは続いていると思うのですが、食生活とか自分の体を守らなければいけないという意識が非常に今高まっている中で、皆さん何を食べたらいいのだろうかということをすごく考えていらっしゃると思います。
そういった意味で、もちろんプラスワンもインパクトはあるのですが、一方で牛乳やヨーグルトという乳製品をどのように摂ると、例えばダイエットに少しプラスになるとか、もちろんそれを食べれば痩せるということではないと思いますが、料理をする人たちも増えていますので、これを機会にもう少し牛乳・乳製品を健康維持増進のためにこういうふうにうまく取り入れていきましょうという情報がもう少し有ってもいいのかなと思っています。すごく今逆にチャンスでもあると思います。同じような情報の繰り返しになるかもしれないのですが、やはり情報を必要としている方にはなかなか伝わっていないというのをつくづく感じていますので、これを機にいろいろな年代の方たちに、例えばもう少し免疫力を上げるために牛乳を毎日飲みましょうとか、ヨーグルトを毎日食べましょうとか、そういったことを継続していくことがものすごく必要だと思いました。 - A8.
- 非常にそれは強く感じており、重要と考えています。ただ、栄養の専門の方には釈迦に説法だと思いますが、やはり一番重要なのはバランスであり、ここを土台に考えていく必要があると思います。そのバランスの中でも乳製品がどうインパクトを持った形で、食生活の中で多く取り入れていただけるかというのは命題だと考えています。農林水産省だけで取り組んでいるわけではないのですが、様々な生産者団体、乳業メーカーが集まるJミルクをはじめとした団体で、そのような健康にどう生かしていけるか、そして生かし方の発信を行っているところです。
- このような乳製品の効果がありますよというようなことを打ち出したとしても、やはり一方通行でそれが届いているのかがなかなか見えてこない。情報は出しているというところで終わってしまっている面もあるのかなと感じています。そういったものをしっかりと必要としている人は誰なのか、そして、その人に伝わっているのかというようなきめ細やかなところまでやるためにはどんなことができるのか、検討していきたいと思います。
- Q9.どう訴求していくのかということですが、なかなかYouTubeは見る人見ない人もいたりしますので、子どもたちには訴求したかもしれないですが、高齢者の方々は見ない方が多いかと思います。私は今消費者団体にいまして、いろいろな消費者の方と接する機会があるのですが、日本人は割と低栄養なのではないかなと思っています。若い女性は牛乳を飲むとカロリーが高い、だから飲まないという方が多いです。高齢でもこんなに痩せているのに、牛乳は太るのではないかとか、あとはカロリーの低いものとか、カロリーオフとか、そういうものをどうしても摂る方が多いので、そういう栄養の話をきちんと皆様に伝わるようにしないといけないかなと思っています。「消費者の部屋」というのも有りますが、訴求の仕方をもっと工夫して、テレビ番組で取り上げてもらうとかも効果があるのではと思いました。
- A9.
- お年寄りの低栄養についてですが、厚生労働省の方で「必要なタンパク量」について、少ないのではないかということで、近年、多くする方向で改訂された部分があります。牛乳・乳製品は、たんぱく質の含量も多く、一定の量を摂りやすいです。タンパク質の1日の必要量というと、「とんかつ3切れ」程度だったかと思いますが、高齢の人には多い部分もありますが、牛乳であれば液状でそのまま飲用として飲めますし、量としても多く摂れますので、牛乳を低栄養の改善のために使っていけないかということも検討しております。こういったことをまた関係の団体とも協力をしながら、広めていければと考えています。
- Q10.酪農のところで、最初の11ページとか13ページのところなのですが、13ページでは出産後1~2か月が乳量が多いということで、前は子どもが生まれて2~3年後に乳が多く出るというような話でした。実際には出産は1頭で、牛もやっぱり初乳が必要だということを聞いたことがあるのですが、実際に母牛の乳を飲みながら育つことはできるのでしょうか。
- A10.
- 生乳を1頭あたり一番多く出す時期というのは、子どもを産んでから1か月から2か月たったあたりが一番ピークで多くなります。2年後と言ったのは、その生まれた子牛が大きくなって、乳を出すようになるまでの時間が2年ほど掛かるという意味です。
- Q11.13ページの絵で、3頭描いてありますが、これは母牛1頭について1頭ですよね。
- A11.
- その面から言えば、イラストは正確ではありません。申し訳ありません。基本的には牛は1産あたり1頭生まれます。たまに2頭の時もありますが、その場合はだいぶ難産になりやすいところもございます。
- Q12.脱脂粉乳を飼料用に活用するということですが、具体的にはどんなふうに使うのですか。
- A12.
- 子牛をどのように育てるのかということからお話ししますと、まず最初、子牛が生まれた後は、母牛は黄色い免疫グロブリンをたくさん含んでいる初乳と呼ばれる乳を出します。これが日にちが経つにつれて普通の白い牛乳になっていくのですが、子牛はその黄色い初乳のうちに生まれてから1日経たないくらいまでにちゃんと飲んでおかないと、子牛は免疫を持たずに生まれてくるため、母牛から免疫をもらえないという形になります。というのが、免疫グロブリンは子牛の腸内では生後1日ぐらいまでしか吸収できず、それ以降は消化されてしまいますので、しっかりとその初乳を早く子牛は飲まなければいけません。ただ、それ以降については、普通の栄養としての、成長するための栄養としての牛乳ですので、こちらはお母さんから牛乳を必ずしも飲まなくても、他の餌で代替することができます。そういった時、お母さんからの牛乳は人が飲むために出荷しますので、子どもが飲む用のお乳がありませんので、そのお乳の代替のために粉の餌として人工的に作ります。それをお湯で溶かして子牛に与えるのですが、その飼料の中に脱脂粉乳が使われます。また、最初の5日ぐらいは黄色っぽい初乳の形が多いと思いますので、その期間は牛乳としては出荷しません。
- Q13.今のところコロナが要因で酪農家廃業とか、そういった事態は起きていないのでしょうか。またクラスターが発生したというのは今のところは大丈夫なのでしょうか。
- A13.
- 国内でも農場の中で従業員で感染が確認された例はありますが、クラスターとしてその農場が立ちゆかなくなったという状況は今のところありません。また、コロナを原因として廃業した酪農家は今のところ聞いておりません。