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第101回 新型コロナウイルス感染症拡大が酪農・乳業へもたらした影響と対応について

牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

政府や関係する団体等の対応と対策

2.政府の対応、対策

続きまして政府等の対応です。学乳の休止、また業務用の需要が減ってしまった一方、生乳生産量が増加したことに対して国としてもやはり様々な措置を講じることが必要ということで、酪農家・乳業者に対する措置を講じています。まず大きく分けてこの4つがあります。

2.政府の対応、対策

まず1つ目が、学校給食用牛乳が行き先を失ってしまったことから、酪農家・乳業者を支援するための事業を講じました。それぞれの事業については後ほど詳しくご説明します。また、その後のイベント・外出の自粛、緊急事態宣言等の影響への対策を講じるとともに、生産量が増えていくことにも対応ができるようにしました。
また、酪農家の方々・農場におきましては、大規模化が進んでいると言っても家族を中心とした経営がまだまだ多いです。こういった中で1人が感染してしまうと、同居家族は濃厚接触者になってしまい、餌をやったり牛の管理をする人がいなくなってしまいます。このような場合に外部の方に応援をしていただきやすいようにといった対応事業を組みました。また、酪農家・乳業者向けだけではなくて、持続化給付金ですとか、持続に資するような様々な融資制度を活用可能な形にしています。

- 学校給食用牛乳の供給停止に伴う需給緩和対策事業 -
学校給食用牛乳の供給停止に伴う需給緩和対策事業

酪農家への支援として、普段から酪農家が乳業メーカー等に牛乳を売った場合に、その用途によって生乳の値段が変わるという形になっています。飲用牛乳用に売る場合が一番高く、そしてバターとかチーズなどの加工用に仕向ける分には少し安くという形になっています。したがって、学校給食用で飲用牛乳用として納めていた価格と、バター・脱脂粉乳に振り向けられた時の生乳の納入価格には差額が出てきますので、こちらの差額を埋める事業を行いました。また地域によっては、バター・脱脂粉乳等に加工する施設が近くにないこともあります。このような遠い加工施設へ生乳を輸送する際の、普段より余計にかかった輸送費についても一部を支援させていただきました。

乳業者への支援として、もともとが生乳が増えて需要が減るという時に、賞味期限の長い脱脂粉乳・バター等をどんどんと作り続けると、保管余力がなくなって作り続けることができなくなり、廃棄につながりかねないということになります。そのような保管余力を残す観点から、脱脂粉乳を飼料用に用途変更して販路を拡大する支援をさせていただきました。また学校給食用牛乳として既に生産してしまった分についてやむを得ず廃棄した場合の処分費用の支援を考えていましたが、こちらは幸いなことにそれほど多くは使わずに済みました。先ほどのスーパー等のご協力もあったかと思います。

- 生乳需給改善促進事業 -
生乳需給改善促進事業

こちらも先ほど上記の事業と同じようなことをやっています。脱脂粉乳を飼料用等の需要がある分野で活用してもらいましょう、という事業です。こちらは学校用給食だけではなくて、緊急事態宣言等もあって不需要期が延びていったことに対応するための支援事業です。

- 生乳需給調整緊急支援事業 -
生乳需給調整緊急支援事業

脱脂粉乳・バターだけの事業ではなくて、チーズやヨーグルトに生乳を使っていく量・割合を増やしていくことを促すための支援もさせていただきました。乳業メーカーも製造能力には上限がございますので、やはりこの上限を超えてしまうことがないように、飲む牛乳の量を増やしてもらおうと消費拡大の取り組みを支援したところです。
つまり、全体としては飲用牛乳としての消費を増やす、そして増やしきれなかった部分については、賞味期限の長い製品へ振り向けていく。そのような支援を行ってきています。

- 新型コロナウイルス感染症の発生畜産農場等における経営継続対策事業 -
新型コロナウィルス感染症の発生畜産農場等における経営継続対策事業

こちらは先ほど申しました通り、飼料等を給餌する方がいなくなってしまうことがないように、そういった方を外部から連れてくることと、外部から連れてくる方が来やすいように農場の消毒をしっかりすることなどにも使える事業です。ひとつは代替要員の派遣を支援する。2つめは少し発想を転換させて、そこにお世話ができる方がいないのであれば、お世話ができる方がいる農場に牛を移動させる経費を支援する。そして3つ目は発生農場を消毒等する。4つ目はもし乳業工場でクラスターが起きてしまって操業が停止し、生乳の受け入れ先がなくなってしまった時に、生乳の廃棄に必要な経費を支援する予算も用意しましたが、幸いなことにほとんど使わずに済みました。

政府としては、プラスワンプロジェクトとして牛乳乳製品課の職員がYouTube等に出て、「牛乳をモー1杯」飲むとか、「ヨーグルトであればもう一つ食べてください」といったプラスワンへの協力を省をあげて呼びかけました。メディア等にも取り上げられ、例えばマツコデラックスさんなどが出演されている番組でも取り上げていただきましたし、有名なユーチューバーともコラボしながら、反響をいただきました。

(参考)プラスワンプロジェクト ポスター

こちらは農水省の女性職員に参加いただいて、ポスター等を作成しています。こちらはYouTubeの実際の映像です。このような形で農水省の役人が着ぐるみを着る機会もないものですから、注目を集めました。特にお子さんが非常に好意的に受け入れてくれまして、そして「牛さんを助けよう」という思いを持っていただき、このプロジェクトの効果がさらに高まったのかなと考えています。様々な方々にご協力をいただきまして、感謝申し上げます。
こういったこともあって、行き場のない生乳を発生させず、乳牛も減らすことなく乗り切れたと考えています。

牛乳類販売状況の推移

プロジェクトは2020年4月21日から開始したのですが、開始してすぐに1割ほど飲用牛乳の販売状況が改善しました。それまでの巣ごもり需要も合わせれば、前年に比べ、23%ほど消費が多くなりました。
また飲用牛乳として飲んでいただこうという形でしたが、需要の減を補いきれない分は脱脂粉乳・チーズ等に振り向けましたので、それらの在庫を減らしていくという観点から、プラスワンプロジェクトのセカンドステージとして、「アイスクリームは1日1個、ヨーグルトやチーズ等は普段より1個多く消費いただく」ということを推進したところです。

こちらは再度着ぐるみを着て、消費者の皆様にご協力の感謝を述べている動画です。このように農林水産省としても、皆さんと一緒に一体となって、より分かりやすく、伝わるところや見てもらえるところに情報を置き、促していくことに努めてまいりたいと思います。

2.政府の対応、対策

先ほど申しました脱脂粉乳・バターについては、国内の生乳需給の最後の調整弁になっています。輸入によってこの脱脂粉乳・バターがだぶついていると、生乳が余ってきた時に、脱脂粉乳・バターを自由に作ることが難しい状況になります。このため、脱脂粉乳・バターの在庫状況や需要状況を見て、毎年1月に翌年度の全体の輸入数量を事前に皆様にお示しし、そしてその数量に基づき輸入を行っていく形をとっています。また、年に1回だけですと、年度途中に様々な状況の変化がありますので、こういった状況の変化にも対応できるよう5月、そして9月に、この1月に入れた数量の検証を行って、そして必要な量が適切に輸入できるようにという体制を取っています。

(参考)脱脂粉乳・バターの輸入枠数量

2020年5月の検証です。バターの生産量は増えていたのですが、一部店頭での欠品があり、枠数量2万tを維持しました。脱脂粉乳は在庫が溜まっていましたので、750tに下げたところです。9月末の検証では、バターの在庫がたくさんあることから、1万4,000tに見直しました。

2.政府の対応、対策

事業継続に関するガイドラインとして、もし乳業メーカーなどでコロナ感染者が確認された場合、その業務をどうやって継続していくか、各社の経営継続計画のひな形となるようなものを作りました。ここには具体的なことを書いていませんが、要素としては、従業員に感染者を出さない予防のための取り組みとして、毎日体温を測っていただくとか、検知しやすいような体制を作っておくこと。そして万が一感染者が確認された時には、事業を継続できるマニュアルを作って、従業員の方々ですぐに対応できるよう共有しておく。こういったことが定められたガイドラインを作らせていただきました。このガイドラインを元に、業界団体でも乳業関係であれば、食品産業センターのものが一番参考になると思うのですが、予防ガイドラインを策定していただいて、各メーカーや各農場で発生してしまった時にどう業務を継続するのかということに備えました。

今後の課題

3.今後の課題

2020年も昨年と比べ生乳生産が増加しているとともに、これから冬に向けて飲用需要が減少する時期になります。そのため需給が緩和し加工品を多く作る時期に入りますが、普段であればあまり加工をしない夏場に在庫が減って冬場に増えるという対応ができたのですが、2020年は夏場に在庫が減りきらず、在庫水準が高いまま冬場を迎える状況になっています。

3.今後の課題

生乳生産量自体は増加傾向で推移しており、冬場も生乳生産量が増えてくるのかなという状況です。一方で、Go Toキャンペーン等で少し需要が戻ってきているように聞いていますが、最近、第3波かと言われることもございまして、外食等における業務用需要が回復しきらないまま先行きが見通しにくい状況になっています。

3.今後の課題

国家貿易の適切な運用と、酪農家の増産意欲が失われることがないように、引き続き、牛乳・乳乳製品の消費拡大を呼びかけていきたいと考えています。感染症の動向は完全には正確には見通せない状況にある中、どのような対応が必要なのか、酪農家、乳業メーカー、消費者の皆様等と情報共有・情報交換を行いながら、その対応についても連携しながらしっかりとやっていきたいと考えています。
こうすればいいという特効薬はなかなかないと思いますが、その都度走りながらやっていくことが必要になってくると思いますので、連携が重要になってくると思います。その際には皆様のご協力等をいただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。