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第102回 コロナ禍における生活者の意識と行動変容を追う
~Jミルク・牛乳乳製品に関する食生活動向調査2020より~

牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

- 講演後の質疑応答 -
  • 質疑応答
Q1.「COVID-19に対する「不安・恐怖」の意識変化」で、東京よりも九州の方が不安感が多いというのはどう理解したらいいのでしょうか。
A1.
  • こちらのデータは「コロナウイルスに対する意識」であり、2021年1月のデータです。2020年の4月、5月の緊急事態宣言、それから夏に第2波、秋以降には第3波ということで、年末に掛けて東京などは2,000人ぐらいまで増えました。東京や大阪のような比較的感染者が多い大都市では、少し慣れた感覚があって、不安とか恐怖への意識というのは、この1月の時点では少し下がってきているのではないかと思います。一方で、他の地域では、感染者数が少し多くなると、地域を挙げて取り組みましょうといった情報発信があったと記憶しています。北海道や九州の方々は、感染者を出してはいけないという感覚が強かったのではないかと思われます。
  • 質疑応答
Q2.2ページ目の「牛乳を和食の材料として利用する乳和食調査結果」で、若い男性の方が、乳和食について女性より知っているというのがすごく意外だったのですが、何か原因として考えられることがあれば教えてください。
A2.
  • 2020年の4月、5月の緊急事態宣言のさなか、自粛生活ということで、家庭料理に牛乳・乳製品を使うレシピがSNSやメディアで拡散されていました。これは乳和食ということではありませんが、北海道の知事が牛乳とヨーグルトを混ぜて飲んでいるような動画ですとか、牛乳を使った料理の提案も出てきていまして、それらの情報にすごく敏感に反応している世代ではないかと考えています。
    男性の意識が高いという見方もあるかもしれませんが、男女の違いと言うよりも、若い世代が、そういった情報を敏感にキャッチしていることが、このようなデータに反映されているのではないかと考えています。
  • 質疑応答
Q3.サンプル数を分けて科学的に抽出したとおっしゃっていたのですが、7ページの職業分類で、ホワイトカラー・ブルーカラー・専業主婦という分類を私は初めて見ました。ほとんど女性は専業主婦になっているのか、見るとブルーカラーは男性に多い、ホワイトカラーは女性も少しいるけれども、男性に多いというように感じたのですが、「牛乳を何と混ぜて飲用(「混飲」)していますか?」などでは、職業分類に学生とかその他、それからインフルエンサーが入ってきています。この分類と、冒頭の「COVID-19に対する「不安・恐怖」の意識変化」の分類の違いについて教えてください。
A3.
  • 職業や立場の違いについては、基本的にはこの調査において、性別・年代・地域という3つのポイントで分類をしています。若い人のなかには、もちろん働いている方もいるし、学生もいるということでそれらの選択肢を設けています。成人に関しては、職業や立場をそれぞれ聞いており、ある程度サンプル数が確保できたところで表しています。
Q4.購入量の変化で、例えばほぼ毎日とか、3リットル以上というのは多分専業主婦の方の購入されている量なのかと思います。料理で増えたというのは、専業主婦の方で増えたのだとすると、例えばホワイトカラーの男性が月に2~3回とかは、料理をしている男性もいるかもしれないのですが、ちょっと同じ土俵では言えないのではないかという疑問を感じたのですが。
A4.
  • 牛乳をどなたが消費するために購入するのか、といった観点でも調査しています。ご自身が買うのか、ご自身が買ってご自身が飲むのか、家族で消費するために買っているのか、それから、自分は全然飲まないけれど家族のために買っているのか、などです。しかしながら、データの解釈が難しいところもあって、そのような結果は割愛しました。ご質問いただいた見方でデータを分析することも可能と思いますので、今後検討してみたいと思います。
  • 質疑応答
Q5.3ページ目の「コロナ禍前と比べた、牛乳乳製品の利用意向と選択基準の変化」で、家庭でのヨーグルトをこれからも利用したいというのが出ています。実際にいろいろなヨーグルトの種類も出ていますが、利用の比率というのは右肩上がりなのでしょうか。
A5.
  • 2020年度において食べるタイプの方は比較的販売が伸びていて、ドリンクヨーグルトは、食べるタイプに比べるとそれほど伸びていないというデータもあります。いろいろな理由があると思うのですが、今回、特にコロナ禍ということで調査をしており、消費者の目線では、低価格や、400gとか500g程度の容器に入っている大容量でお得感があるようなヨーグルトを、比較的好まれて購入されているのではないかと思います。
    ヨーグルトは免疫も含めた機能性という期待感を持って消費者は購入されていると思いますが、一方で、日常的にヨーグルトを摂取したいというニーズが、今年の特徴として表れているのではないかと考えています。
Q6.同じく3ページ目の「コロナ禍における牛乳乳製品の利用意向の変化(地域別)」で、北海道とそれ以外とが10ポイントぐらい差があります。いくら北海道が生乳大生産地と言っても、すごいなと思いました。これはやはり知事のパフォーマンスみたいなこともあって、こんなふうに北海道での消費、飲用意向が強いということなのでしょうか。
A6.
  • もちろんパフォーマンスもありますし、あとはいわゆる生産地としての特徴もあると思います。
    右下に小さな数字で、1,000、143、320、83、41、101とあるのは、各地域においてサンプル数として抽出した数です。北海道は41サンプルしか抽出できませんでした。サンプル数が少ないため、北海道だけが高いと言い切れるかどうかは分かりません。
  • 質疑応答
Q7.同じく3ページ目の「牛乳という食品への認識・イメージについて」は、どのような質問の仕方をされているのでしょうか。例えば3つだけ選ぶという答え方なのか、そう思うとそう思わないで丸を付けるとか、5段階の形で聞かれているのかを教えてください。
A7.
  • 7つのイメージごとに、とてもある、ある、ほとんどないといった形で5段階に分けて尋ねており、その中で「とてもある」と回答した人を抽出したものです。
Q8.裏にはもっと詳細なデータがあるのだろうと思いつつ読ませていただきました。免疫機能ということで購入される方が多いとおっしゃっていたのですが、実際に免疫機能ってよく他の食品でも言われたり、健康食品でも怪しいもので効き目がないのに売り付けたりという問題も起きているのですが、実際に牛乳の免疫、乳製品の免疫機能というのはどういうものなのでしょうか。
A8.
  • 牛乳・乳製品で言うと、ヨーグルトに含まれるプロバイオティクスのような、乳酸菌やビフィズス菌では、免疫機能がよく謳われていますので、免疫機能を期待して買われている商品としては、やはりヨーグルトが多いのではないかと考えています。
  • 質疑応答
Q9.「コロナ禍における食品市場」で、植物性の代替の食品についても調査をしておられましたが、これは今回初めてでしょうか。もし初めてでしたら、今後もこれは定点観測的に調査を継続されるのでしょうか。
A9.
  • コロナ禍の前の2019年度に、消費者に対して、牛乳から、利用がシフトしている食品にはどういうものがありますかということを聞いた調査がありました。そこでは、牛乳から、植物性の食品である豆乳や豆腐、いわゆる大豆系の食品へ移行している方々が増えてきているというデータがありました。
    動物性食品対植物性食品という位置付けではなく、植物性食品の良さや、動物性食品とのバランスという観点で、消費者がどのように考えているかを調べいます。
  • 質疑応答
Q10.すごく消費者のニーズと言うか、考えが非常に分かりやすくてとても参考になりました。どちらかというと今後、ある程度落ち着いた後に、先ほどご質問にあった植物性食品。今、やたらとプラントベースドダイエットと言って、特に欧米で家畜とか牛肉をたくさん食べるような国では、できるだけ牛肉を食べないようにとか、牛から搾った牛乳を飲まないようにという、ものすごいそういう流れがあります。特にアメリカなんかですと、若い人たちの間でビーガンとか、植物性のものを食べましょうと。なぜそういう食事をするのですかというアンケートをすると、若い人たちの場合はやはり環境になるべく負担を掛けないような食べ方をしたいとか、動物になるべく優しい、動物愛護の観点であったりとか、それと健康的ということが返ってきて、若い人たちの中でやはりできるだけ環境に良いものを選んで食べていこうという、そういう考え方がすごく増えていると聞いています。
先ほど和食と牛乳・乳製品のことに対して、若い日本人もSNSで非常に敏感に反応しているというのを見た時に、やはりこれから日本の若い人たちも、環境のことを考えると、牛乳は環境にいいのですか?と聞いてくると思うんですね。そうなった時に、やっぱり単純に海外で生産している家畜の量であったり、消費している肉の量とか、牛乳の量は日本とは全然比較にならないとは思うのですが、やっぱり人が納得するための見せ方と言うか、日本はもともと牛乳の消費量が海外に比べるとどれだけ少ないのかとか、そういう客観的なデータがないと、何となく若い人たちの間でも、あまり牛肉とか食べない方がいいんですよねとか、牛乳を飲むよりは豆乳の方がいいですよねというそういう流れがすごく増えてきている気がします。
このデータはコロナ禍での現状ということなのですが、今後はやはりもう少し環境のことも考えて、皆さんいろいろなものを選択するようになると思うので、その時に、なぜ日本では牛乳とかヨーグルトとか、今までのように積極的に摂っていいんですよということが言えるようなデータとか見せ方があると説明しやすいなと感じているので、そういうのが今後長期であったり、データであると非常に助かると思います。
A10.
  • 確かにそういった植物性食品の台頭があるかもしれませんし、マスコミもメディアもいろいろと取り上げる機会が増えてきています。
    植物性食品が増えてきたからといって、動物性食品が悪く見られるのではなく、植物性食品と動物性食品のそれぞれの良いところをきちんと説明していくような情報発信を心掛けていきたいと思っています。
    牛乳・乳製品の側だからと言って、植物性食品を取り上げないのではなく、植物性食品の側からの情報も含めて、今後も調査をしていきたいと考えています。
  • 質疑応答
Q11.今回の場合はコロナ禍における生活者の意識と行動の変容ということで、コロナ禍を前面に出されています。最初の調査手法のところで、この調査時期と感染者のグラフとのクロスのようなものがあるともうちょっと何か分かっていることがありそうな気がしました。それともう一つは、やはりインターネットによるアンケートというのは、やはりあるバイアスが掛かるわけですね。特に日本の場合には、まだいわゆるデジタル化に対するベースが全く遅れています。そういう意味でインターネットによる調査というのをどのぐらい続けていらっしゃるのでしょうか。今までにもやっていらして、今回もそうだったのか、あるいは、今回はインターネットでやられたのかということもあると思いますが。非常にそういう意味で、何かちょっと不足していると言うか、もう少し違うのではないかという感じを今日のお話をうかがってやはり感じてしまいます。
もう一つ、やはり非常に重要なことは70歳以上を調査対象にしていないことで、日本の今の人口構成の中で、70歳以上のしかも乳製品との関わりというのを抜かしてしまうというのは、これは非常に問題ではないかと思いました。つい最近、昨年ですが、高齢社会を良くする女性の会という樋口恵子さんがやっている会ですが、あそこが大々的に高齢者とITの問題のアンケート調査というのをやられました。その調査結果はまだ報告されていないのですが、多分そういうものを見れば、高齢者が本当にそういったITとどう今かかわっているのかということの結果がでてくると思います。そういうものをやはり参考にされて、もうちょっと高齢者のことも調べる方法を考えた方がいいのではないかと思います。特にコロナ禍で見ておりますと、我が家の周辺なんかは段ボールが確実に増えているんですね。だから宅配便がものすごく増えていることは確かです。それから、生協の配達員が言っていましたが、コロナで生協の加入者は40%増えたと言っていました。昨年の秋ぐらいで。だからいわゆる宅配とか生協の加入者の変化とか、そういうところにもっとコロナ禍の影響というのは大きく出ているはずなんですね。何かそれとの関係と言うか、その部分がもうちょっと知りたい気がしました。また、高齢者がそんな69歳から上というのは、一律ではないんですよね。戦争体験者であるとか、どういう経験をしたかによって大きく違います。だから、何とかしてそこも調べる方法を考えられたらいいのではないかと思います。スマホ利用者は非常に増えていますが、スマホは利用しているものの全く使えない、使い方が分からないという高齢者が多いことは確かで、インターネットの利用者が非常に少ないことも確かです。でも、やっている人たちもいるので、その辺を参考にしていただければと思います。
A11.
  • 高齢の方々のデータというのは確かに重要です。一方で若い方々のデータも含めて、それらを一律に一つに割り付けられるかというと、それ自体は難しいと考えられます。高齢の方々のデータと、それ以外の世代の方々のデータとを、きちんと対比できるように意識して調査をしていきたいと思います。