コロナ禍における生活者の意識と行動変容を追う
本調査はインターネットを活用した全国1万人の大規模消費者調査です。調査の目的は、我が国における牛乳・乳製品の価値向上を推進し、戦略の構築と改善を行うための基本情報を得ること、また、Jミルクのマーケティング関連事業の効果検証の基礎とすることなどです。
調査は毎年10月から11月に実施される第1次調査と、それからその第1次調査を補完する第2次調査(翌年の1月)の2回行われています。2020年度はコロナ禍による食生活への影響を確認するために、1回目の緊急事態宣言下、まさにコロナが感染拡大をしてきた4月、それから、第2波が懸念され始めた8月の上旬にも緊急で追加調査を実施しました。
本日ご紹介する資料は、これらの4回の調査結果を取りまとめたものであり、例年の調査報告とは若干趣が異なっていて、人類を脅かした新型コロナウイルス感染症のパンデミックが、食生活にどのような影響を及ぼし、消費者はどのように行動したかについて分析したものとなっています。なお、Jミルクではこのような調査結果は、ホームページで業界関係者や研究者の方々に対して広く公開していて、このデータについても後日ご紹介、公開させていただく予定です。
調査手法はインターネットを活用した消費者パネルに対するアンケート調査です。
調査時期は4月、8月、10月、1月の4回です。特に4月、8月については、通常の調査とは異なって、コロナ下での緊急調査ということで、コロナの影響を見ようという調査を行いました。
調査対象は全国の15歳から79歳の男性・女性(4月の調査では25歳から69歳の男女)となっています。
サンプル数はそれぞれ4月500人、8月5,000人、10月10,500人、1月1,000人となっており、国勢調査の人口構成データなどを参考にし、性別・年代・地域で割付を行っています。
コロナ禍による社会構造や消費構造の変化
コロナ禍の中、自国を優先した食料の輸出制限や、自給政策を推進する動きがあるとともに、富裕層と低所得者層の格差が拡大する二極化が今後も継続していくことが見込まれます。また、社会構造においては、感染症リスクを避けるために、オンラインによるコミュニケーションが加速し、これまでの大都市集中型から地方分散型に変化してきました。また、コロナ禍によって経済活動や生活行動は制限され、外食を中心とした業務用需要が落ち込み、今後も外食の完全な回復は見通せない状況です。
一方で、家庭内の需要は、直接食事をするまたは家で調理をして家族で食べるといった内食と、外で料理を購入してきて家の中で食べるという中食、それから宅配を利用して家で食べるといったものが増加しています。今後の感染症の状況によっては、供給システムの柔軟な対応が求められます。
さらに、消費行動においては、食品ロスを減らし、環境に優しく地域で生産・供給されるフードシステムを利用するなど、エシカルな消費行動を取る動きが広がっている状況です。また、生活行動においては、三密を避けるとか、マスク着用・手洗いなどの衛生面に配慮した行動や、免疫機能や栄養バランスを意識した食選択行動が増加している傾向です。
こういった社会の構造や消費構造の変化について、生活者の意識や行動がコロナ禍によってどのように変化してきているかについて調査結果を一つずつたどっていきたいと思います。
COVID-19に対する「不安・恐怖」の意識変化
これは2021年1月時点の調査結果です。「今現在あなたが新型コロナウイルスについて不安だ、怖いと思う気持ちは昨年の4月、5月の全国的な緊急事態宣言時からどのように変化をしていますか」です。要するに、緊急事態宣言下でコロナ、これはちょっと普通ではないなという社会の状況になっていた時から比べて、半年ちょっと経った1月の時点で、どのように意識が変わりましたかというところです。
この図はその結果であり、2021年1月の時点において、不安とか恐怖に思う気持ちをまとめた結果です。その結果、性別では女性、それから年代では65歳以上と10代、さらに職業では専業主婦の方々においては、依然として不安とか恐怖への意識が強まっているということが確認されました。
COVID-19に対する「不安・恐怖」の意識変化(地域別)
北海道とか九州においては、新型コロナウイルスに対する不安・恐怖の意識が強まっていることが確認されました。一方で、東京都とか大阪府のような大都市圏の居住者においては、意識の強まりが弱くなっているのではないかということもこのデータから確認されました。
COVID-19を意識した具体的な取り組み(推移)
次に、この図は、4月、8月、10月、1月と今回4回調査を行ったその毎回において、「新型コロナウイルスに対してあなた自身、それからご家族が実際に取り組んでいること」について聞いた結果です。ここでちょっと取り組みの内容を二つに大きく分類しています。一つは接触回避系という表現です。このグラフの左側の黄色いところを示していますが、これはウイルスとの接触自体を避けるための取り組みという意味です。もう一つは、リスク低減系。緑色の領域ですが、これはたとえウイルスと接触しても、感染や重症化のリスクを低減させるための取り組みということで分類をしていまして、これらの様々な取り組みについて、それぞれの時点でそれぞれの消費者の方々にどのような取り組みをされていますかというのを聞いた結果でございます。
その結果、新型コロナウイルスを意識した具体的な取り組みの推移を見てみると、2020年4月の緊急事態宣言下(白抜きのバーで示されている)、接触回避系の取り組みや、リスク低減系の取り組みは、8月、10月に向かって若干減少していく傾向がありました。要するに、取り組みはだんだんと数、割合が下がっていく傾向でしたが、赤のバーで示される2021年1月の時点、緊急事態宣言がまた発令されたタイミングですが、その時点においては取り組み意識が増加の方に転じています。白抜きの方から水色、青と若干減少してきた傾向が、赤のバーにおいてはさらにまた増加に転じています。
なお、赤のバーを確認すると分かるのですが、特にリスク低減系、つまりウイルスに接触したとしても、感染や重症化リスクを低く抑えようという取り組みですが、4月の白抜きのバーと、それから1月の赤のバーとは、かなり近寄ってきているということで、この接触回避系に比べてリスク低減系の方が1月においては再度増加しているというところが現れていると考えます。これはどういうことかというと、接触回避という意味では、外出しないことが大事だと思うのですが、今年の1月時点では、たとえ外出したとしても、ウイルス感染のリスクを抑えるといった取り組みへの意識が強まっているということです。具体的に、外出をしても、少し接触してしまうかもしれないという状況であっても、免疫力ですとか栄養バランスを整えて、体をそういったウイルスに対してきちんと抵抗を持たせていこうというような取り組みのところが、この1月においては強まっているということが分かりました。
コロナ禍での食事のスタイルの変化(推移)
先ほどの4つのパターンで、消費者の皆さんにその食事の機会はどうなっているのかを聞いた結果であり、自宅で食事を作って食べる内食、それから外でお惣菜やお弁当などを買ってきて家で食べる中食、それからデリバリーや宅配を利用して自宅で料理を食べる、そして外食という4つのパターンです。その結果、2020年の4月以降、自宅での内食や中食の増加者、赤い部分ですが、左側の自宅での内食・中食が徐々に減ってきているという傾向がありました。また、右下の外食については、外食が減ったと感じている方々が減少しているということですから、要するに外出を控える気持ちが少しずつ抑えられる、下がってきているという状況でしたが、この1月の時点では中食・内食に関しては再び増加、それから、外食については控える気持ちがまた増えてきているというところが傾向として現れていました。