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第94回 環境配慮設計の取組について

牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

2紙パックの取組(啓発活動)

屋根型紙パックは日本乳業協会が中心となって、全国牛乳容器環境協議会というものを作り、リサイクルの啓発活動・調査活動をやっています。いろいろなイベントを通じて紙パックをリサイクルするとトイレットペーパーになるとか、地球環境にも貢献をするといった啓発をしたり、いろいろな場所に出掛けていって、自治体の担当の方とお話をして、どうやったらリサイクル率を上げられるかといったディスカッションもしています。

2紙パックの取組(端面処理)
2紙パックの取組(バリア―容器)

容器の方の取り組みとしては、紙パックそのものの密閉性を上げて、賞味期限を長くしようという取り組みをしています。
紙パックは開くと1枚の紙になっていますが、一番端のところがのり付けをする面になっていて、折りたたむと紙の端っこが内側の液と接するところがあり、紙と牛乳が直接接触するとこういうところに菌が残りやすいので汚染することがあります。スカイブド加工というのはそれを一旦折り曲げ、折り曲げることでポリエチレンの層としか牛乳が接しないようにしています。こういった技術によって賞味期限を延ばしています。
これは特に、香りの付いた果汁などに使われますが、通常の紙パックは真ん中に紙の層があって、内側と外側にポリエチレンのフィルムが貼ってあり香りなどの通気性が少しあります。その通気性をなくすためにここにバリア層という特殊なプラスチックを入れることでジュースの香りが抜けないように工夫している容器もあります。

2紙パックの取組(500ml原紙軽量化)

紙パック自体にも軽量化の工夫をしており、もともとは500ミリリットルの物も1リットルの物も同じ紙を使っていたのですが、500ミリリットルの方が小さいので強度が弱くても大丈夫ということで、薄い紙を使って紙の使用量を減らす取り組みをしています。

3アルミ付紙パックの取組(LL研)

アルミ付紙パックについては、アルミがあるので分離しにくく、アルミなし紙パックと一緒に集められずにいるのですが、アルミが付いていてもアルミなしの紙パックと一緒に回収しても大丈夫とおっしゃる再生紙業者が最近は増えてきています。例えば店頭回収ですと、そういう業者に行くことが分かっていますので、そこで大丈夫だと言っていただければアルミ付きも一緒に集めることができるようになるため、そういったところを啓発しています。
こちらは与野フードセンターさんでやっている表示です。こちらはいなげやさんだったと思いますが、アルミ付き紙パックも回収できるようになりましたと、チラシの片隅に載せていただいたりしています。最近だとイトーヨーカドーさんにもアルミ付紙パックの回収をやっていただけるようになってきています。

アルミ付紙容器の回収拠点検索(日本テトラパック)

アルミ付き紙パックってどこで回収しているのか分かりにくいのですが、テトラパック社が作ってくれている回収拠点検索をご紹介します。地図の東京の部分をクリックすると、コモディイイダさん、サミットさん、マルエツさんなどのスーパーマーケットがアルミ付き紙パックの回収拠点となっているということが検索できるようになっています。

1ヨーグルトが付着しにくいフタ

牛乳以外の容器でも乳業メーカーはいろいろな工夫をしています。
例えばヨーグルトが付きにくい蓋ということで、昔はこの絵の通りヨーグルトを開けると蓋にべっとり付いていて、取るのが面倒だったり、この蓋に付いた分が無駄になるといったことがありました。これを付かない蓋にしたいというのはみんな考えていました。

1ヨーグルトが付着しにくいフタ

これについては、ヨーグルトに接する側の面を工夫しています。ハスの葉は水をはじくのですが、同じような加工をするとヨーグルトをはじくということで、そういった加工をした蓋に変えています。

環境配慮設計事例紹介(農林水産省)

こうしたさまざまな容器についての工夫というのは、いろいろな製品についてやっているのですが、これを先ほどの最初の容リ法の議論にもあったように、一般に公表して啓発しようという話になっています。そこについてはいろいろな方々や業界団体で協力しあって公表しようということで進めています。農林水産省は食品ロスの削減に資する事例集ということで、容器そのものの削減ではなく、食品ロスの削減に着目し、容器を工夫して食品ロス削減を実現している事例を紹介していただいています。

森永乳業

その中で紹介されている乳業メーカー各社の工夫をご紹介します。
まずヨーグルトの蓋に付かないというのが一つ。

雪印メグミルク

これは雪印メグミルクも同じで、蓋に付かないヨーグルトということで紹介されています。

森永乳業

森永乳業ではカフェラッテ。これはちょっと見ると単一のプラスチックでできているように思うのですが、70日間の賞味期限を冷蔵で実現しています。単一のプラスチックですと少しずつ香りが抜けて、コーヒーという製品特性からすると味が落ちるのですが、これをプラスチックを5層構造にして防いでいます。ちょうど中心部にバリア層と言って通気性の少ないプラスチックを配合し、液に接しない部分については再生品ということで、一旦市場に出たものではないのですが、工場の中で端材になったものを再利用してその外側の層を作っています。内外両表面にはバージンプラスチックを使っていますが、結局このバリア層があることで、70日間おいしくいただけますということを担保しているとご紹介いただいています。

森永乳業

次に絹ごし豆腐です。通常、街の豆腐屋さんでお買いになると、1週間ないし2週間程度の賞味期限しかないと思いますが、このアルミ付き紙パックを使って10か月の賞味期限を持たせています。これ以前は冷蔵で10か月だったのですが、つい最近常温で保管することが認められましたので、今後は常温で保管して、例えば災害現場とか買い置き需要、そういったところに使っていただけると考えています。

明治

これは明治のメイバランスですが、紙パックからプラパックに変更しました。それ自体は容器の環境負荷というところではプラが増えていると思いますが、それによって賞味期限を9か月から12か月に延ばしているということで、容器だけに着目するのではなくて、中身のロスを減らすところも含めて農林水産省からは評価をいただいています。

明治

これは明治のチーズで個包装をしたということです。それ自体もプラスチックの使用量は増えるのですが、個包装がないと、開封後は4本いっぺんに使い切らないといけないのですが、1本ずつ食べられることで、小家族などで使い切れない方にとっては使い勝手が良く、結果的には中身のチーズのロスを少なくできるということで取り上げていただいています。

環境配慮設計事例紹介(日本乳業協会)

こうした事例紹介の取り組みはいろいろなところでやっていまして、日本乳業協会のホームページでもいろいろな容器の工夫を紹介しています。
雪印メグミルクの軽量びん。森永乳業のMOWはポリエチレンのフィルムのコーティングを以前は内側と外側と両方していたのですが、内側だけにしたというもの。グリコのビフィックス。カルピスは段ボールの使用量を減らしたというものです。この辺も容器の重量を減らしたということで挙げています。グリコの朝食ヨーグルトは中のプラスチックのカップは同じものを使っていて、周りにフィルムでそれぞれの品種別包装をして効率化していると取り上げていただいています。

環境配慮設計事例紹介(食品産業センター)
環境配慮設計事例紹介(プラスチック容器包装リサイクル推進協議会)
環境配慮設計事例紹介(紙製容器包装リサイクル推進協議会)

同様に食品産業センター、プラスチック容器包装リサイクル推進協議会、紙製容器包装リサイクル推進協議会、経済産業省などで容器包装の改善事例が紹介されています。

環境配慮設計事例紹介(経済産業省)

経済産業省では、500ミリリットルの紙パックを減らしたという内容です。

エコパッケージガイド
エコパッケージガイド

最後に当社森永乳業の取り組みをもう少しご紹介します。エコパッケージガイドということで、パッケージについて環境に配慮しようということは以前から考えていまして、2005年にエコパッケージガイドというものを作って、こんなルールで容器包装を作るというガイドライン的なものを社内で運用しています。
今年JISで容器包装システムの最適化というものが決められましたので、それに合わせて改定を行いました。基本的にはこういったことで考えています。

容器包装に要求される機能

これは、JISで紹介されている容器包装に要求される機能です。容器包装はなければいいというものではなく、なければならないものです。容器包装には法規制もあるし、安全もあるし、情報を表示しなければいけない、消費者の受容性や、お店に並ぶための機能、運ぶ時にちゃんと強度がなければいけないといった必要とされる機能があります。あとは充填できないとか、こういうものは機械で作るわけですが、機械で詰められる構造になっていないといけないとか、包装の製造プロセスや、包装自体を薄くすればいいといっても、容器メーカーで作れないと駄目です。あとは先ほどから申しました製品の保護機能をちゃんと持っているかというところです。
こういった条件を満たしつつ、社会環境性を配慮し、要求事項が見合うところで容器包装を決定しています。また、経済性が成り立つことも前提で、環境負荷の低い容器があっても、あまりにも高いコストの容器になってしまうとお客様に受け入れていただけないため、経済性も考慮して、この条件を併せ持った容器を考慮しているところです。

まとめ

海洋ごみの問題などをきっかけに、使い捨て社会の見直しの機運が高まっています。容器包装リサイクル法審議会の中でさまざまな課題が明らかになっています。牛乳に関しては容器包装技術の進歩とともに、安全性や賞味期限の延長がなされてきており、今は商品の使われる場面・条件を想定して、最適な容器を選択して使っています。今後は容器そのものの環境負荷だけではなく、内容・中身のロスも含めた環境負荷に考慮する必要があります。私たち事業者については、さらに情報発信をしていく必要があると考えているところです。

これで終わります。ありがとうございました。