先ほど「循環型社会形成推進基本法」のところでもお話ししましたが、容器包装のリサイクルについての責任がどこにあるのかについては「拡大生産者責任」が原則となっています。これはOECDが提唱したもので、生産者は生産した製品が使用され廃棄された後においても、当該製品の適正なリサイクルや処分について一定の責任を負うという考え方です。通常、メーカーからお客様に物を売った時点で、物の所有権はお客様に移っていますので、そこから先はお客様の自由だと思いがちですが、そうではなくて、お客様が使ってその容器を捨てようというところについてもメーカーがある程度一定の責任を負うのだという考え方です。
この責任の負い方には、「物理的な責任」と「経済的・財政的責任」というのがあります。「物理的な責任」は回収をちゃんとやるということ、「経済的・財政的責任」はそのリサイクルに掛かる費用についてはメーカーの責任ということで、これが「拡大生産者責任」の考え方となっています。
実際にメーカーは、環境に配慮して設計の段階でリサイクルしやすい容器にしようとか、何で作られているか素材が分かるように識別マークを付けたりとか、リサイクルの費用をメーカーが負担しながら、拡大生産者責任を果たしているのが今の状況です。
この容器包装リサイクル法の仕組みですが「特定事業者」が製品を売っているメーカーにあたり、容器包装リサイクルは反時計回りで流れます。
モノは消費者に行って、消費者は市町村に使った後の容器を分別して出し、市町村はそれをリサイクル業者に出して、リサイクルを依頼します。
お金の流れはまた別にあって、市町村が集めてそれをリサイクル業者に渡し、その時にリサイクル業者からリサイクル費用を請求されるのですが、それを特定事業者である我々メーカーが指定法人を介してリサイクル業者に支払うという流れになっています。
先ほどの拡大生産者責任ということからすると、リサイクルのループ全体を特定事業者が負うべきということも考えられますが、実際にこのループを回すためには、消費者に分別排出をしてもらわなければいけませんし、市町村に分別収集をしてもらわなければ成り立ちません。
消費者の役割と市町村にはそれぞれ役割が決められていて、消費者は分別してごみを排出する、市町村は分別収集をするということが法律で定められています。ただ、アルミ缶・スチール缶・紙パック・段ボールというのは、この容器包装リサイクル法ができる以前から「資源物」とされており、リサイクル業者へ持っていくと価値があるものだと買い取ってもらう仕組みが出来ていましたので、わざわざこの法律で規制しなくても自動的にリサイクルループが回るだろうということで、容器包装リサイクル法では費用負担の対象外とされています。
基本的にリサイクル業者からお金を請求されるものについては義務があるということで、ガラスびん・ペットボトル・紙・プラスチックは義務化と決められていましたが、最近ではペットボトル・紙・ガラスびんもかなりの部分が有価で引き取られるようになっており、この枠がなくても、もしかしたら回るのではないかと言われ始めています。
実際にどのくらいの単価かというと、メーカーがこの紙の容器、ガラスの容器、プラの容器として何kg分販売しているということを税金と同じように申告をして、それについてお金を支払うことになります。その時のkgあたりの単価がガラス・ペットボトル・紙容器は数円~10円以下、プラスチックだけが約28円となっています。中味が飲料なのか食料なのか洗剤なのかで計算が違ってきますが、これは食料品の例として挙げています。それを取ってみても、プラスチック容器のリサイクル料金は突出して高いということが分かるかと思います。
上の図がお金の流れです。「特定事業者」(メーカー)から、日本容器包装リサイクル協会を通して協会の費用が差し引かれた383億円が「再商品化事業者」(リサイクル業者)に支払われます。
もう一つは「拠出金」で、市町村の努力があってより綺麗に分別されているということで、市町村にもお金が行くようにしようということで25億円ぐらい回っています。
あとはペットボトル・紙などは有償で市町村が集めてリサイクルするのですが、逆にこちらのリサイクル業者からもらえる分は、ぐるっと回って80億ぐらい市町村に戻る仕組みになっています。我々はこれと合わせて400億円ぐらい業界全体で払っていることになります。
これは容器包装リサイクル法の現在までの流れです。平成7年に成立し、平成12年4月に完全施行されました。完全施行というのは、要は散乱するということで、先行してもともとガラスびんとペットボトルだけが容リ法の対象でしたが、そこに紙製容器とプラスチック容器が加わって、今の4素材になったのが平成12年ということです。
10年ごとに見直していくため平成16年から1回目の見直しがされました。そこで決められたのが市町村に行く拠出金で、市町村の努力も認めると決められたものです。
その後、2回目の見直しが平成25年9月から28年6月に行われましたが、法律的に変更はありませんでした。なぜかというと、容リ法には、メーカー、市町村、リサイクル業者、消費者などと多くの関係者がかかわってきており、また経産省や環境省の考え方もあり、利害関係や納得感、お互いの主張もあって結局まとまらなかったということと思っています。
今回の容器包装リサイクル法の見直しにおける主な議論として、まず一つ目は「役割分担の変更」についてがありました。先ほどご説明した拡大生産者責任の原則から、容器包装の処理責任がもともとメーカーにあるのであれば、市町村に収集させて、そのお金を自治体が払うのはおかしいのではないかと言う自治体がありました。それに対しては、今の仕組みで容器包装のリサイクルが進んでいるから今のやり方で機能しているのだということと、収集に掛かっている費用が自治体によって大きく違うため、支払うのはメーカーとすると収集段階の合理化が進まず費用だけが使い放題になりかねない、ちゃんとその辺の決まりを作らないうちは事業者が払うことはできないという議論がされました。
二つ目に、「プラスチックの再商品化手法」についてです。プラスチックには、マテリアルリサイクル・ケミカルリサイクル・サーマルリカバリーというのがあり、マテリアルというのは溶かしてプラスチックに戻すもの、ケミカルというのは一旦化学分解して小さな分子にしてプラスチックなどに再合成するというもの、サーマルは燃やして熱利用ということですが、今はマテリアル優先枠というのがあって、プラスチックを溶かしてプラスチックにすることに一定枠が設けられています。プラスチックと一言で言うと同じもののように思いますがいろいろな種類があります。用途によって固いもの、柔らかいもの、溶けやすい等いろいろあるわけで、それを全部まとめて溶かしてリサイクルすると、また同じように様々な用途に使えるものになるかというとそんなことはなくて、混ぜることで劣化して、特定の用途にしか使えないようなプラスチックにしかならないのが現状です。さらにリサイクルコストも高いためにそれを優先して進めるべきなのかという問題がありますが、今はまだ技術発展途上なのだから、もうちょっと待ってくれということになり話があまり進みませんでした。
三つ目に、今日のテーマである「環境配慮設計の推進」についてです。これは市民から、いろいろな容器を市場で見るけれど過剰包装が多いのではないかというご指摘があることに対して、我々事業者からは容器を減らす努力はしており、これ以上包装を簡略化すると漏れたり中身が腐ったりいろいろな問題が出る可能性がありますという話をしています。議論の場におられた有識者からは、もっとちゃんとやっていることを説明しなければいけないのではないかというご指摘がありました。これに関しては、後でも説明しますが、包装の最適化に関するJISもできて、それに沿って説明できるようにすればいいのではないかという話になりました。
もう一つ、本日の本論から離れるかもしれませんが、「紙」の容器識別マークについて。今日配られている牛乳にもこの「紙」マークが付いていると思いますが、実は通常スーパーなどで売られている屋根型の容器には「紙パック」というマークが付いています。今日の牛乳容器にはアルミが入っているので「紙」マークが付けられていますが、「紙」マークが付いているから紙としてリサイクルできるのかというと、実は紙のリサイクル業者からは、ポリエチレンのラミネートは異物であるからリサイクルしにくい、だから一緒にしないでくれということを言われています。そこでラミネートされた紙は「紙」と別なものとして別なマークをつけようという提案がされました。ラミネートされた紙のうち牛乳パックなど一部は既に「紙パック」マークがつけられ別収集されていますが、これらはポリエチレンを除く技術がある再生紙業者に持っていけるのでリサイクルできていますが、アルミが付いていると再生紙にした時にアルミが残る可能性があり、再生紙としての商品価値を下げるということで、「紙パック」からも除外され、現在のところ結局「紙」に戻っているというところです。ただ、お客様にしてみれば、紙だけで何種類もマークがあるとわかりにくいのではないかとか、そんな議論があったところです。
最終的に取りまとめられたのは、それぞれの主体が次の見直しまで動けることはやろうということで、国が中心になって有識者や関係者と連携しつつ検討するもの、審議会のサブグループなどで検討するもの、国が中心となって取り組みを実施するもの、指定法人(容器包装リサイクル協会)が中心となって実施するもの、あとは事業者・消費者・自治体が中心となって取り組みを実施するものに区分され、我々事業者にやってくださいと言われたことは「E」のグループに書いてあることです。
環境配慮設計に関する情報提供ということでは、先ほどの紹介の中にあったようなものが必要だということがありました。
あとは、リユースびんの利用促進のための利便性向上の工夫というところで、リユースびんを使うところにこだわりがあるのですが、その辺についてもそれなりの対応はしているという説明はしていますが、こういった背景があるということです。
ここからは、牛乳容器について乳業界はどのように進んできたかを説明します。
牛乳容器は、昔はこういった大きな乳缶に入ったものを量り売りしていました。それを明治14年頃に少し小さな容器に入れて売るようになり、その後明治32年に今の形に近い牛乳専用のガラスびんが登場しました。昭和3年にはこの当時は衛生環境も悪く、食中毒が起きたり、腐ってしまったということが多々あったと想像されますが、警視庁令で牛乳びんに紙キャップという形ができました。1930年代になって紙パックが登場して、1960から70年代になって1リットルや500ミリリットルの屋根型の紙パックがスーパーで売られるようになりました。1980年代になってレンガ型紙パックという、中にアルミが貼ってあって密閉性と遮光性が高いことから、これに詰めた牛乳は長期保管ができるということで、常温保存認可がされました。
容器の進歩と同時に、実はこの後ろには殺菌技術の進歩があります。初期の頃はおそらく低温で殺菌していたと思われますが、紙パックが登場した頃からHTSTだとかUHTといった短い時間で温度を高くし、殺菌を強くしながら風味がなるべく残るような殺菌の仕方が普及し、それに容器の進歩が相まって賞味期限が延びていきました。言わば、牛乳容器の歴史と殺菌技術の歴史があいまって賞味期限を延ばしていったということです。
現在主に使われている容器は、ガラスびんと通常スーパーで売られているような屋根型の容器、アルミ付きの紙パックです。
ガラスびんはリターナブルなので何度も繰り返し使えますが、紙パックとアルミ付き紙パックはワンウェイで繰り返しの使用はできません。ただし、それぞれ利点があって、紙パックは軽量で輸送効率が高い、もともと紙は木から作られるのでバイオマス素材だということがあります。アルミ付き紙パックも同じような利点はありますが、アルミが入っているばかりに紙パックと一緒にリサイクルしにくいところがあります。一般のスーパーではアルミなしの屋根型の紙パックが最も効率がいいということでよく使われています。
ガラスびんはリターナブルなので繰り返し使えることから環境性が良いと思われていますが、長所と短所があります。ちゃんとこれが回収されて、100%に近い形でリユースされれば効率はいいのですが、運搬にあたっては紙容器より重く不利な点となります。従って、工場からある程度近距離で、しかもリユースのために、びんの回収がある程度確保できるところで使うと環境的にも利点があります。そのため、びんは宅配牛乳で主に使われています。一般的にスーパーなどで売られている牛乳は、リサイクルをお願いしてもなかなか100%までは行かないところがありますので紙パックを採用し、輸送効率とか軽量という利点を生かした使い方をしています。
アルミ付き紙パックについては、特徴として常温で長期間、60とか90日とか置いておけるので、買い置き需要だとか離島あるいは災害現場など、生鮮品を置いておくことが難しいところでうまく活用していただいています。
では、それぞれの容器についてそれなりに工夫しているところをご紹介します。
ガラスびんは、昔よくメガネが牛乳びんの底のようだという表現がされた通り、とても肉厚でしたが、最近は各社ガラスの厚さを減らしてきています。弊社の場合、244gだったものが130gになっていますが、これはどうやって実現したかというと、びんの外側に樹脂コートを施しています。
牛乳びんが駄目になる原因は、びん同士がぶつかって小さな傷が付き、そこから亀裂が入るといったことですが、そこに薄い樹脂コートをすることで、これまで30回のリユースしかできなかったものを倍増させ、軽量化とリユースの回数の改善をしています。
びんの重量が軽くなったので、クレートという、牛乳を運ぶためのプラ容器も同時に軽量化できて1,510gだったものを1,300gにしました。
積み段数も増やすことができて、1台あたりのトラックで積める量が1,960本だったのを2,520本まで増やすことができたというように輸送効率も上げる工夫をしています。