MEMBER

第94回 環境配慮設計の取組について

牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

第94回 環境配慮設計の取組について
日時
2018年11月19日(月) 15:00~17:00
会場
乳業会館3階A会議室
講師
森永乳業株式会社 コミュニケーション本部
CSR推進部 環境対策グループ長 遠藤雅人
【 出席者 】
「牛乳・乳製品から食と健康を考える会」出席委員
消費生活アドバイザー 碧海 酉葵
食卓プロデューサー 荒牧 麻子
毎日新聞記者 今井 文恵
江上料理学院院長 江上 栄子
消費生活コンサルタント 神田 敏子
評論家・ジャーナリスト 木元 教子
元日本大学教授 菅原 牧子
ジャーナリスト 東嶋 和子
産経新聞文化部記者 平沢 裕子
(50音順)
乳業メーカー:広報担当
日本乳業協会:岡田専務理事、本郷常務理事、後藤常務理事他
専門紙記者
【内容】
今回は、日本乳業協会が取り組む事業活動に関するテーマのうち、環境部が担当する「環境・リサイクル対策の推進」についての講演を企画した。乳業メーカーが商品及び容器開発の段階から、どのような環境配慮設計をしているかを中心に、森永乳業株式会社で長年に亘って環境対策に係わる仕事をされている遠藤氏にご講演を頂いた。
  • 出席者
  • 出席者
【 要旨 】
1)海洋ゴミ問題等をきっかけに使い捨て社会の見直しの機運が高まっている。
2)国内では容器包装リサイクル法の審議会の中で様々な課題が明らかとなった。
3)牛乳に関して容器包装技術の進歩とともに、安全性や賞味期限の延長を向上させてきた。現在は使用される場面や保存される条件等を想定し、最適な容器を選択して使用している。
4)容器そのものの環境負荷だけでなく内容物のロスも合わせた環境負荷を考慮する必要がある。
5)事業者は取り組みについてさらなる情報発信をしていく必要がある。

本日は環境配慮設計の取り組みということで、昨今容器のごみ問題がクローズアップされていますが、この講演の話を受けた半年前は、今ほどプラスチックの海洋ごみの問題などが連日のように報道される状況にはありませんでした。問題としては潜在的にあったのでしょうが、あるきっかけで顕在化してきたと思っています。そのあたりも当初の内容に加えてお話ししたいと思います。

海洋プラスチック問題の現状(概要)

海洋プラスチック問題の現状として、まず、海岸漂着物で海岸にプラスチックごみがたくさん打ち上げられていることと、そうすると海の中にもプラスチックごみがかなり浮いているとされている問題です。
これは日本の山形県と長崎県の海岸の状況ですが、海洋ごみに取り組んでいるNPOからは、日本や中国・韓国などから出たものがハワイやアメリカ西海岸まで流れ着いて、そこで日本の容器が見つかるという話を聞いています。
ただ、では容器包装が全部悪者かというとそうではなく、半分ぐらいは漁具だとか、容器ではないものだったりするという話も一方で聞きます。環境省でやっている会議でも、容器包装というのがどれだけこの問題に関わっているのかについて実態がよく分からない、もう少し調査をすべきだという意見が多く出ていました。

それと近年は、海洋中のマイクロプラスチックの問題がクローズアップされています。これはもともと歯磨きだとか洗顔剤だとかに入っているスクラブ剤(研磨剤)がそのまま海に流れ込み、それが生態系に影響を及ぼすと言われていましたが、最近は大きな容器なども紫外線だとか波で浮いている間に少しずつ削れたり割れたりして小さなプラスチック片になり、それを魚が食べると食物連鎖で大きな魚に取り込まれていって、最後は人間に入ってくるとされています。それもどんな影響があるかよく分からないというところで不安が募っているというのが昨今の状況です。

海洋プラスチック問題の現状(海洋に流出するプラスチック)

実際に海洋プラスチックはどこから来ているのかについて、この調査結果では、主にアジア系が多くて、中国・インドネシア・フィリピン・ベトナム・スリランカということで、日本は30位で、それほど上の方ではなく、その他の国に比べると少ない状況と言えます。
別の資料によると、大きな川がある流域で、中国では黄河・揚子江、インドではガンジス川だとか、そういう大きな河川を通じて海に流れ込み海洋プラスチックになるのがほとんどだという調査結果もあります。
では、川に捨てているのかというとそうではなくて、ポイ捨てされたものが雨などによって川に流れ、さらに海に流れ込むというのが主な海洋プラスチックの原因だと言われています。

シャルルポアG7サミット海洋プラスチック憲章

こういう状況を踏まえ、先日行われたシャルルポワG7サミットで、EUから、海洋プラスチック憲章に皆で署名してこれに取り組もうという提案がありましたが、日本とアメリカは署名していません。
この憲章には以下のことが書かれています。

・2030年までに100%のプラスチックが再使用可能、リサイクル可能、または実行可能な代替品が存在しない場合は熱回収も可能となるよう産業界と協力する

・2030年までにプラスチック製品において、リサイクル素材の使用を少なくとも50%増加させるべく産業界と協力する

・2030年までにプラスチック包装の最低55%をリサイクル、または再使用し、2040年までにはすべてのプラスチックを熱回収も含めて100%有効利用するように産業界及び政府レベルと協力する

一つ目は、リサイクルをもっと推進しよう、熱利用も含めて世の中に出たプラスチックについては再利用しようということです。二つ目は、リサイクル素材を少なくとも50%増加すべきということで、これは日本でも課題になっていますが、使用済みプラスチックからリサイクルの素材までは持ってきたとしても、それを使える場所が意外と少ないという問題があります。
日本とアメリカがこれに署名していないのは、日本は産業界への影響が不透明ということと、G7という先進国の間だけでこの話を進めても、実際にはG7に入っていない国の方が発生源としては多い、もっといろいろな国を巻き込まないと実効性がないということが理由と考えられます。

来年日本でG20がありますので、そこで日本発のプラスチックの削減について提案をしたいという狙いもあり、現在環境省でプラスチック資源循環小委員会が開かれていますが、シャルルポワG7サミット以上の提案ができればということで、意見をまとめていきたいという話が出ていました。

各種容器リサイクルの状況

では実際に、日本で容器包装はどのくらいリサイクルされているのかというのが上の表になります。
容器包装については、段ボール・ガラスびん・アルミ缶・スチール缶・ペットボトル・プラスチック・飲料用紙容器・紙製容器包装の8素材あり、それぞれにリサイクル協議会を作っており、それらの協会でリサイクルの活動や状況調査をやっていますが、一番右端にあるのが2016年度の日本での実績です。アルミ缶・スチール缶・段ボールは90%を超えていますし、ペットボトルは83.9%、プラスチックは46.6%、飲料用紙容器が44.3%、紙製容器包装が25.1%で、比較的高いと思っています。先ほどの「プラスチックのリサイクルを55%に」を考えると、ここで言うとペットボトルとプラスチック製容器になりますが、55%という目標は難しい数字ではないと思います。

循環型社会を形成するための法体系

こういった状況の中、日本はこれまでどういう容器包装の法律で、どういう施策を採ってきたかについてお話しします。
それが容器包装リサイクル法で、平成12年から始まった法律です。この法律に基づいて容器包装のリサイクルを進めようということで取り組んでいます。
容器包装リサイクル法の位置付けとして容器包装リサイクル法に至るまでの法体系をご紹介しますが、一番上が「環境基本法」、その下に「循環型社会形成推進基本法」というのがあります。これが基本的な枠組みとなり、ここで3Rの原則(リデュース・リユース・リサイクル)、リデュースが最優先ということ、拡大生産者責任・排出者責任というものを決めています。
この下にあるのが「廃棄物処理法」と「資源有効利用促進法」で、「廃棄物処理法」は衛生的なごみの処理の仕方について決めています。「資源有効利用促進法」は、リサイクルを推進しようということを定めており、製品の種類によって個別のリサイクル法があります。
容器包装リサイクル法はこの中の一つです。平成7年12月に試行、平成12年4月に完全施行、直近では平成25年から28年の3年間を掛けて見直しの議論が行われました。