- 講演後の質疑応答 -
- Q1.これまで指定団体を通じて交付されていた補給金は、年間どのくらいで、個々の酪農家にすると乳価の何%ぐらいに当たるのか、また、改正畜安法が成立後には、一定の生産計画などを出して、条件を満たせば補給金をもらえるが、その補給金は全体では年間いくらぐらいになると想定されていて、個々の酪農家に対しては乳価の何%ぐらいになるのか。
- A1.
- 補給金の額は、現在1kgあたり11円から12円ぐらいで、毎年変わる。生乳生産のコストなどに合わせて上がったり下がったりするが、最近は1kg大体11円か12円ぐらいで推移している。これは乳製品向け生乳1kgあたりの11円、12円で、乳製品向けが多い地域だと当然多くなる。北海道で言うと、ホクレンが扱っているのは大体8割ぐらいが乳製品なので、補給金は10円ぐらいとすると酪農家が受け取るのは1kgあたり8円。今北海道の酪農家の乳価は大体100円ぐらいなので、100円の中で言うと8円(8%)ぐらいになる。都府県だともっと低い。都府県は乳製品がほとんどないので、1円(1%)ぐらいになる。
新しい制度になると、補給金の価格を決める仕組み自体は今と変わらない。実際に受け取る酪農家が、自分の作っている生乳を乳製品向けにどれぐらい回すかによって受け取れる額が当然変わってくる。おそらく、指定団体に生乳を出荷していない酪農家は、基本的には牛乳向けに売っている酪農家が多い。その場合はもともと乳製品がほとんどないので、受け取ったとしても大きな額にはならないだろうと言われている。
- 補給金の額は、現在1kgあたり11円から12円ぐらいで、毎年変わる。生乳生産のコストなどに合わせて上がったり下がったりするが、最近は1kg大体11円か12円ぐらいで推移している。これは乳製品向け生乳1kgあたりの11円、12円で、乳製品向けが多い地域だと当然多くなる。北海道で言うと、ホクレンが扱っているのは大体8割ぐらいが乳製品なので、補給金は10円ぐらいとすると酪農家が受け取るのは1kgあたり8円。今北海道の酪農家の乳価は大体100円ぐらいなので、100円の中で言うと8円(8%)ぐらいになる。都府県だともっと低い。都府県は乳製品がほとんどないので、1円(1%)ぐらいになる。
- Q2.国としてどのぐらいこの制度に補給金として税金を出しているのか。また、改正後は。
- A2.
- 昔の脱脂粉乳・バターが対象の時代は、総額で250億円ぐらい。今は、チーズと生クリームも入り320~330億円ぐらい。改正後もほとんど変わらないと考えていい。
- Q3.諸外国、先進国の中で、日本のように乳製品に対して割合高いお金を出している国はあるのか。
- A3.
- 日本の様な制度を採用している国は、今は基本的にはない。お金は出しているが、乳製品向けの生乳に出すというやり方でやっているところはあまりない。ヨーロッパだと直接支払いと言われているが、酪農家の所得を直接支えるために、例えば農地に対していくらという形で払っている様な国がむしろ多いと思う。
よく言われる話だが、酪農家の収入のうち、国からの補助金の比率を出して比べることもできるが、日本はそんなに高くない。ヨーロッパやアメリカの方が高いと言われてる。
- 日本の様な制度を採用している国は、今は基本的にはない。お金は出しているが、乳製品向けの生乳に出すというやり方でやっているところはあまりない。ヨーロッパだと直接支払いと言われているが、酪農家の所得を直接支えるために、例えば農地に対していくらという形で払っている様な国がむしろ多いと思う。
- Q4.補給金のない国はないのか。
- A4.
- 何らかの形で国から出ている国は多いが、ニュージーランドやオーストラリアは出ていない。厳密に言うと出ていると言えるかもしれないが、基本的にニュージーランドにはそれはない。世界の中で、一番コストが低い国なので。そういうところと国際競争をしようとなると、その他ヨーロッパ・アメリカも含めて不利な国々は、やはり支えてやらないと競争ができないということ。
- Q5.新しい制度の中でうまく行くようにするにはどうすればいいと考えればいいか。
- A5.
- 生乳の流通に関しては、基本的には完全に自由競争というと牛乳の安定供給を損なう恐れがあるので、現状の農協共販の仕組みを維持していくということが大事になってくると思う。経済合理性がなくて無理矢理維持するという話ではなくて、既に農協共販には経済合理性があるわけで、きちんと残していく。特に農協共販は、組合員が皆で助け合って安定供給していく意識を持っていくことが大事になってくるのではないかと思う。
酪農は地域として初めて存在できるということをきちんと認識しておかないといけない。農地を使う産業なので、一番極端な例で言うと大規模酪農家だけ残ればいいのかという考え方もできるが、やはりそれだけだとなかなか問題が大きい。多様な酪農経営が一つの地域にいろいろ存在することが大事だと思う。例えばメガファームだと、病気とか事故を起こしてしまった場合、一気にそれだけ全部出荷停止になってしまう。そこの地域から出荷できる生乳が極端に減ることになる。たくさんいれば、どこか1戸だけなくなっても大したことはないが、大きいところが少数しかないとそういう問題もある。
家族経営もいろいろな方向性を目指している酪農家がいるが、今、乳牛の数が非常に足りない。牛の値段が高いので、乳牛に和牛を種付けして、肉牛生産をやるという、短期的な収入は大きいので、やっている人が多いが、その結果ホルスタインの数が減っている。メガファームみたいな大規模農場ほど肉牛をたくさん作って、借金を一杯して、たくさん収入を上げないといけないので、肉牛を種付けして肉牛として売っている。その代わりに乳牛は買ってくるというパターンが多い。買ってくる乳牛は、家族経営が作っている。規模をあまり変えない家族経営が当然生乳を回すために子牛を産ませるが、あまり規模を拡大しないので、一定程度外にも売れる。持ちつ持たれつの関係がある。単純にメガファーム、大規模農場だけでうまく行くともなかなか言えない。
特に本州で考えてみると、メガファームだけになってしまうと、酪農家はものすごく遠い存在になる。関東だと都市近郊酪農と言うと、そんなに規模が大きくない酪農家だが、やはり消費者に酪農生産の現場を見てもらうという面で言うと、都市近郊酪農はそういう役割もあるのではないかなと思うし、これが全部大規模酪農になったら相当遠くまで行かないと、酪農家に会えない。一番極端な例で言うと、北海道だけになると、消費者からすると酪農家というのはすごく遠い存在になってしまう。
多様な酪農経営を残していくということがやはり大事で、そのために共販という仕組みは非常にいいものである。いろいろな小さいものから大きいところまでまとめて皆で助け合いながら販売していく仕組みが酪農経営にとっても大事だし、牛乳・乳製品の安定供給という面でも大事と考える。
- 生乳の流通に関しては、基本的には完全に自由競争というと牛乳の安定供給を損なう恐れがあるので、現状の農協共販の仕組みを維持していくということが大事になってくると思う。経済合理性がなくて無理矢理維持するという話ではなくて、既に農協共販には経済合理性があるわけで、きちんと残していく。特に農協共販は、組合員が皆で助け合って安定供給していく意識を持っていくことが大事になってくるのではないかと思う。
- Q6.個別の1軒1軒の私たちになじみの深い、遊びに行きたいような酪農家と、企業的に酪農をやっているところとの割合は。
- A6.
- やはり家族経営の酪農家が依然として多いが、メガファームと言われているようなところも結構増えてきている。生乳生産に占めるシェアで言うと、そういうところが北海道でも4割近くになってきている。都府県でも3割台ぐらいになっている。生産の担い手としては結構重要な存在になってきていることは確か。
- Q7.乳業だけの経営ではなくて、他のものを生産している企業が酪農に参入してきて持つケースもあるのか。
- A7.
- 今あるのは肉牛経営をやっていたところが酪農も始めるというところは聞いたことがある。全くやったことのない企業で北海道で酪農をやってみたいという話もある。しかし採算が合わず、やるのであれば生乳生産ではなくて、流通や加工のところをやった方がメリットがあるかもしれない。
- Q8.これから先、5年、10年先、日本の食生活で牛乳・乳製品の扱いはどうなっていくのか。
- A8.
- 最近下げ止まっているという話があるが、やはりかなり長期的に見ていくと、飲む牛乳という形での消費は減っていくだろうと思う。飲む人と飲まない人の差が激しい。チーズとヨーグルトが中心になっていくのではないか。
しかもチーズが今のままだと輸入で、今でも既に7割以上輸入だが、その比率がもっと高くなってしまうかもしれないという懸念もしている。
- 最近下げ止まっているという話があるが、やはりかなり長期的に見ていくと、飲む牛乳という形での消費は減っていくだろうと思う。飲む人と飲まない人の差が激しい。チーズとヨーグルトが中心になっていくのではないか。
- Q9.生乳の直接販売は難しいという状況が変わらないとすれば、そのことが一体どれだけ今回の改正の時に議論がされたのか。
- A9.
- 政府が思い描いている日本の酪農・乳業の姿は、チーズは例外で、牛乳・生クリーム・脱脂粉乳・バターに関しては国内で消費するものは国内で作るという考え方でずっと来ていたのが、どうやら最近の規制改革の話とか、TPPとかEPAを見ていると、そういうのではない産業の姿を思い浮かべているのだろう。
基本的に安い乳製品に関しては輸入。バター・脱脂粉乳にせよ輸入でやって、国内でしか作れないのは牛乳・生クリーム。これも技術が進歩すればもしかしたら輸入できるようになるかもしれない。高品質なものは輸出。そういう世界農業の中での考え方。今までは日本のものは日本で作るのが原則だったが、世界中の分業体制の中に日本の農業も巻き込まれていくような姿を考えているのかなと思う。そうすれば、農業が自立できるようになり、補助金も出さなくてもいいということになる。
その場合に日本の消費者にとって、酪農に限らず、日本農業はものすごく遠い存在になってしまう。農家がいてものを作っているけれども、農家が作っているものは海外の富裕層向けの農産物を作っていて、国内の消費者は安い輸入品を食べる。それも国内の消費者と言っても格差の問題があり、いい方は国産のものを食べて、そうでない方は輸入品を食べる、そんな世界にそのままにしておくとなるのかなと思う。そういう産業の姿が良いのか悪いのかいろいろな見方があると思うが、そういう農業のあり方としては大きな問題がある。これは単純に農家の所得が減るとかという話にとどまらない話である。
- 政府が思い描いている日本の酪農・乳業の姿は、チーズは例外で、牛乳・生クリーム・脱脂粉乳・バターに関しては国内で消費するものは国内で作るという考え方でずっと来ていたのが、どうやら最近の規制改革の話とか、TPPとかEPAを見ていると、そういうのではない産業の姿を思い浮かべているのだろう。
- Q10.国内生産と海外生産とのバランスをどの様に考えていったらいいのか。消費者にとってのデメリットにどういうものがあるのか。
- A10.
- 国産と輸入のバランスは、基本的には今の考え方がいいと思う。国産ベースで、補填として輸入を使うという考え方。しかしTPPとか日EU・EPAの話は、必要な量だけ入れるという話ではなく、安いものがどんどん入ってくる、それを止める術がないという話。そうなると、国内生産の持続性にかなり悪影響が出てくる可能性があり、問題がある。
輸入に完全に頼ってしまうとどういう問題が起きるかというと、乳製品の世界市場の価格変動を見るとものすごい。ヨーロッパの乳価、これはオセアニアも、国際市場と連動した乳価になっていて、20セントが40セントになったり乳価がものすごく変わる。消費者価格も当然それに連動してかなり大きく動くことになる。あとは量がきちんと輸入できるのかという問題がある。特に今、国際的にバターの値段がすごく上がっているが、価格が上がるだけでなく量も足りない。
世界的に人口がどんどん増えてきて、日本以上に豊かな国もどんどん生まれている中にあって、限られた食料。今までは日本はそれなりに世界的に見ると豊かな国だったので、輸入量に困る、必要な量が取れないということはなかったが、これから先は今みたいな状態が続くか分からない。輸入に食生活の大部分を頼りすぎることは、リスクもある。
価格が下がるというのは、消費者にとって大きなメリットだと思うが、それで持続的な食生活を支えていけるかどうかというのは、輸入品のリスクは考えなければいけない。
- 国産と輸入のバランスは、基本的には今の考え方がいいと思う。国産ベースで、補填として輸入を使うという考え方。しかしTPPとか日EU・EPAの話は、必要な量だけ入れるという話ではなく、安いものがどんどん入ってくる、それを止める術がないという話。そうなると、国内生産の持続性にかなり悪影響が出てくる可能性があり、問題がある。