- 講演後の質疑応答 -
- Q1.脱脂粉乳・バターに関して(資料2)既存のWTO枠の約束数量13.7万トンに2015年度は15.6万トン追加輸入しているわけですが、WTO枠を今後も継続(変更せず)ということですと約束数量13.7万トンとTPP枠6万トン(6年目7万トン)を加えても不足する場合は今までどおり追加輸入をするのでしょうか。
- A1.
- 今後、平成15年度と同じような状況だと仮定すると先ず13.7万トンはWTO枠で輸入します。それにプラスして6万トン(6年目7万トン)はTPP枠として輸入されます。それでも不足する分は追加で輸入します。
- Q2.TPP枠でユーザー、商社等による輸入(民間貿易)とありますが誰がどのように輸入するのですか。上限が7万トンと決まっていますのでどこが、どれ位輸入してよいのでしょうか。
- A2.
- 詳細についてはこれから決めます。一般的に、関税の割当の制度中では例えば、7万トンをどのようにするかと言いますと、申請された数量がそれ以内であればそのまま関税の割当を認めることになります。それ以上の場合では、いろいろなやり方が考えられます。一つはくじ引きという方法、一つは上限を設定してその範囲で輸入を認める、そして申請された数量に対して比例配分する方法等があると思います。今後、農水省としては動向に注意を払いながらきちんとした手続きで決めていくことになると思います。
- Q3.輸入を希望する場合は、一定の期限内で申請を上げていくことになるのでしょうか。
- A3.
- 他の関税割当と同じです。TPP枠の関税割当の申込み期間を設定します。その間に申請を上げていただくことになると思います。
- Q4.チーズの輸入に関してですが、現在、日本ではフランスやイタリアといったEU諸国から沢山のチーズが輸入されていますが、この関税はどうなっているのでしょうか。
- A4.
- EUから現在輸入されているチーズは現行関税率の29.8%です。プロセスチーズですと40.0%の関税率です。現在、日本とEUはEPA交渉が進捗中です。その結果でEU製品がどのように扱うかが決まってきます。
付け加えますと、TPP関連諸国からのチーズの輸入はどうなっているかと言いますとオーストラリア・ニュージーランド・アメリカからプロセスチーズの原材料となるチーズが輸入されています。クリームチーズも輸入されていますが、これも直接消費より原材料として使われているほうが多いと思います。他にシュレッドチーズに使っているものはオーストラリア・ニュージーランドから多く輸入されています。これは外食産業や大手量販店で使われているのではないでしょうか。
- EUから現在輸入されているチーズは現行関税率の29.8%です。プロセスチーズですと40.0%の関税率です。現在、日本とEUはEPA交渉が進捗中です。その結果でEU製品がどのように扱うかが決まってきます。
- Q5.資料14牛乳乳製品の輸出に関して。平成22年の東日本大震災以降原発の問題もあって輸出が激減しています。また、輸出先の国々を見てもTPP関係諸国が少ないことがわかります。輸出を考えますとこのようにTPP以外の国への輸出が多いのでアジア諸国やEUへの農産物の輸出する貿易交渉を推進しないとならないのではないでしょうか。
- A5.
- TPP交渉の結果関税が下がることで乳製品を輸出できる可能性のあるのはアメリカへのアイスクリームでしょうか。アイスクリームは今回の大筋合意で関税が下がりますからメリットは出てきます。輸出全体での金額は大きなものではありません。牛乳乳製品の輸出に関しては、国内の生乳生産が伸びておらず輸出できるものが少ないことがあります。今後は国内生産と輸出のバランスをどのようにしていくのか検討課題です。
輸出に関しての追加説明
主な輸出関心品目の内容ですが、牛肉の輸出はアメリカでは15年で枠外税率撤廃、カナダは6年、メキシコは10年で撤廃となります。今回のTPP交渉大筋合意の中で畜産物輸出に関しては大きな成果が得られたと考えております。
- Q6.バターの質問です。現在居住している近所のスーパーでは今でもバターの売場に「お一人様一点限り」というポップが貼ってあります。夏に出かけた所では売場にバターが豊富にありました。地方によってバターの供給に差があるのでしょうか。また、売場に販売制限のポップを貼ることはお店独自の判断なのか他からの指示があるのでしょうか。
- A6.
- 地方のバター供給の偏りということは、メーカーによると基本的にはありません。メーカーは人口や自社シェア等に基づいて出荷しています。売場では曜日や時間帯によって販売数量が変わります。たまたま売場に無かったのか長期間無かったのか、24時間監視できないため判断がつきかねます。もう一つのご質問ですが、ポップは小売店が独自のご判断で貼っていらっしゃいます。小売店の方によりますとお客様になぜ売場に無いのかと聞かれるためポップが必要だということです。また、業務用で必要な方が大量に購入されると家庭に行き渡らないことが起きるためポップははずせないそうです。しかし、今ははずしているお店も多くなってきています。
- Q7.バターに関して。現在、不足分はALICが一元的に輸入しています。そして、それをメーカー等に売り渡している情況だと思います。今後TPP枠で商社等が輸入した場合、いろいろな種類のバターが売場に並ぶのでしょうか。その時価格はどうなるのでしょうか。
- A7.
- 価格に変化は出てくると思います。民間貿易にすることの違いはマークアップがあるか無いかと言うことになります。11年目以降はマークアップがなくなり関税だけになります。輸入する商社等も値段が分かり価格を決定し易くなると思います。形状についての制限も無くなりますので家庭で使う大きさのバターも輸入できるようになります。売場に並ぶのは消費者の嗜好にかかってくると思います。現実には一部ALICが輸入したバターも小売店頭にあります。
- Q8.バターについて。マークアップは77円/kg~649円/kgで非常に幅が広いと思います。ご説明では市中の需給状況によって決まるということでしたがこの幅の広さについてお伺いしたい。
チーズについて。なぜオーストラリアやニュージーランドから直接消費用のチーズが輸入されてこないのですか。 - A8.
- マークアップの幅は入札の結果でこの幅となっています。バターは需要に大きく左右される商品ですので、バターが余っている場合にはマークアップまで支払って落札する必要は無いわけです。逆の場合は高いマークアップを支払ってでも落札することになるのです。
チーズに関しては、現在でも関税だけで完全に自由化しております。従って、輸入する業者と仕入れるチーズ小売店等が消費者の嗜好を踏まえて決定すると思います。
- マークアップの幅は入札の結果でこの幅となっています。バターは需要に大きく左右される商品ですので、バターが余っている場合にはマークアップまで支払って落札する必要は無いわけです。逆の場合は高いマークアップを支払ってでも落札することになるのです。
- Q9.バターについて。TPP大筋合意を受けた農家の反応はどうなのでしょうか。また、農家からお金を徴収してPRをしていく、チェックオフというのでしょうか、それを考えているということを聞きました。そうすると、農家はこのチェックオフをどのように考えているのでしょうか。
- A9.
- 農家の反応ですが、北海道のように主に乳製品中心の酪農家の方は不安に思われています。TPP大筋合意で脱脂粉乳・バターは影響を限定的だということはご理解いただいています。チーズは影響があるし、ホエイは脱脂粉乳とどれくらい競合が発生するのか現時点ではわからないため、10年後、15年後どうなっていくのか心配だということも言われています。実際の影響度合は内閣官房で検討しています。チーズは16年目に関税が無くなるため生産者への影響はある程度出てくる可能性があると思います。但し、16年という長い期間がありますのでその間に生産性を向上させたり関税が残る商品に生産をシフトいくやり方とか考えられます。今後の対策については我々も考えていかなければならないと思っています。次に、チェックオフについて酪農は前からやっています。生産者団体が酪農家から徴収し自ら消費拡大事業に拠出しています。
- Q10.バターの生産量について。酪農家の減少が止まらない状況の中で生乳生産量は今後バターの需要を十分賄える量になるのでしょうか。また、日本の酪農で残るのは北海道と都道府県では1県くらいになるのでしょうか。
- A10.
- 約束数量とTPP枠を加えた分で、一昨年、昨年の状況、つまり追加輸入を18.8万トン、15.6万トンするようだと不足します。その場合は追加で輸入します。この制度の一番大切なことは供給を安定させることです。消費者の方に迷惑をお掛けすることが最も避けなければならないことです。従って、バター不足のような事態は今後決して起こしてはならないことだと思っております。TPP交渉に際して農水省で影響試算をしてみました。その試算の前提は関税が無くなるということでした。今回の大筋合意の内容では脱脂粉乳・バターで7万トンとなりましたし、チーズでも一定の関税は残せました。今後どのような影響が出てくるのか、きちんと試算していきます。また、新たな対策を打ち出していく予定ですし日本の生乳生産が大きな影響を受けないような措置をしていこうと思っております。