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第73回 牛乳・乳製品の最新の有用情報(生活習慣病関連)

牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

- 講演後の質疑応答 -
  • 質疑応答
Q1.学校給食で、「牛乳はいらない」論の理由は何でしょうか。
A1.
  • いろいろ聞かされていますが、原子力発電所事故があった後は、「『放射能が心配なので、うちの子には牛乳を出さないでくれ』というお母さんがいるのですがどうすればいいですか?」という相談をたくさんいただきました。
    また、今、ご飯給食が増えていますが、「ご飯には牛乳は合わない」と親が言うようです。
    さらに、数年前に「病気にならない生き方」という本がベストセラーになり、「アトピーの子供が増えたのは牛乳を飲むようになったからだ」等が書かれていて、お母さん方からは、敢えて飲まさなくてもいいという意見が出ています。
Q2.図1と図2(2ページ目)の骨量を示した棒グラフの骨量の単位は何でしょうか。
男女に効果の違いが見られますが、どのようなところから違いが出ていると考えられますか。
A2.
  • 図1の男子の場合、超音波で踵の骨を測定した場合のデータが「ステフネス」となっており、無単位です。「アキレス」という名前の測定器で測定しているため、「アキレスで測定したステフネスの値がいくつでした。」というデータです。
    図2の女子大生の値は、同じ超音波の機械ですが、違うメーカーのもので、OSIという単位になっていますが、これも相対的な値です。
    男女差に関しては、ホルモンの違いとかいろいろなことが考えられますが、明確な原因はまだわかっていません。
Q3.図1の男子のデータで、100~200mlで値が下がっていますが、この理由は何かありますか。
A3.
  • ややデータがデコボコしておりますが、差がないとみております。
Q4.牛乳と言いましても、脂肪分に違いがあるものがたくさん出ていますが、データに示された牛乳の脂肪分はどのレベルのものでしょうか。また、脂肪分の違いによるカルシウムの吸収率の違いに影響があるのかどうかお願いします。
さらに、カルシウムの吸収率に関し、個人差があると言われましたが、単なる個人差なのか年齢等によるものなのか、人種間、男女間はありますか。
A4.
  • 寄与率のデータ等に使った牛乳は、普通の牛乳ですので脂肪率で3.7%位の無調整の牛乳です。
    日本で脂肪率の違いによるカルシウムの吸収率の違いを調べたデータはありませんし、世界的にも殆どありません。カルシウムの吸収に関わってくる成分に、脂肪は寄与しないと考えられているので、脂肪の違いによるカルシウムの吸収率は変わらないと思います。
    バラツキの理由はわかりません。一つ確実なのは、平均年齢が20歳くらいの女子大生のデータですが、この試験を70歳の女性で行うと、吸収率のデータは全体的に下がってきます。普通の食事のカルシウムの吸収率は若い人で25%程度、70歳くらいになると10%程度に下がります。年齢と共にカルシウム吸収率は下がってきます。このことから、高齢になるほどたくさんカルシウムを摂る必要があるのですが、それよりも、若い時にカルシウムをしっかり取って、骨にしっかり溜めておくことが大切です。
    カルシウムの吸収率に影響するものとして、ビタミンDの栄養状態があります。しっかり日光に当たり、ビタミンDがしっかりできている人、また魚などを食べてビタミンDが摂れている人は、カルシウムの吸収率が高いかも知れません。皮膚でのビタミンDの生合成は人種によって異なるため、人種差もあるかもしれません。
Q5.図18(4ページ目)の「カルシウムの食品群別摂取構成比」では、年齢が高い人でカルシウムを結構たくさん摂っていますが、吸収率が年齢とともに低下することを考えると、決して高い摂取量とはいえないということですか。
A5.
  • このデータは国民栄養調査の結果で、「どれだけ摂っているか?」のデータで、60~69歳の方が1日600mgのカルシウムを摂っていることであり、10%吸収されたか、20%吸収されたかは個人差がありますが、少なくとも600mgが身体の中に摂りこまれるという数字ではありません。
  • 質疑応答
  • 質疑応答
Q6.アメリカでのデータと先生方の日本のデータのメタボの改善状況を比較すると、アメリカで1とした摂取群が516mgで、日本の場合だと殆どの方がこのレベルに入ってしまう。アメリカの最も高いグループの1586mgになると、有意差がはっきりと出てオッズが低くなるのですが、これを日本に当てはめて、600mgを目標にされているのは栄養面からだと思いますが、メタボ予防という意味から1000とか1500mg摂取すると、よりメタボ効果が期待できるのではないでしょうか。
A6.
  • そのようなエビデンスが無いので、はっきりは言えませんが、おそらく無理だと思います。1500mgにするには、今より1000mgプラスする必要があり、牛乳であれば後1リットルとなるとエネルギーが700kcal上がってしまいます。カルシウムの効果があってもエネルギーの方が増えてしまうと思います。アメリカのデータは、アメリカの食生活の中での数字であり、日本でこの数字が生きてくるかとなると、決してそうではないと考えます。日本は日本の食生活の中で数字を決めないといけないと思います。600mgは本来、骨に関しての数字であり、その値で更にメタボの予防につながる可能性もあるので、600mgを目標にすることはいいことだと考えます。
Q7.アメリカ人はどの位のカルシウムを摂っているのでしょうか。カルシウムの摂りすぎに関しては心配いらないのですか。
A7.
  • 図10(2ページ目)でカルシウム摂取量が5群に分けられていますが、各々20%ずつに分けているため、平均で800mg以上、1600mgレベルも20%程度おられることになります。
    カルシウムの摂りすぎですが、日本人の場合2300mgを摂取量の上限にしています。これを超える量はお勧めしていません。サプリメントで摂った場合、心臓欠陥疾患のリスクが高くなるという報告がヨーロッパから出されていて、カルシウムの関係者間で問題になっています。アメリカの高い摂取群の方々が、牛乳で摂っているのであれば心配はないのですが、サプリメントであれば心臓疾患が心配されます。サプリメントは、おそらく小さなタブレット状のものに高濃度のカルシウムが入っているため、一時的に吸収され血中濃度が上がることで心臓に負担がかかるのではないかと考えます。
  • 質疑応答
Q8.メタボ抑制効果の中で、満腹感が出るためと言われましたが、であれば食事前が効果的なのでしょうか。吸収率の違いもあるのでしょうか。ヨーグルトなんかは、デザートとして食後に摂っていますが、食前に摂った方がいいのでしょうか。
A8.
  • その方がいいと言われています。カルシウムの吸収率に関しては食事の前後に違いはないと思います。
    ヨーグルトに関しては、理想的なのは、デザートとしておいしく食べて、メタボにならなければいいと思うのですが、最後に食べたデザートの分だけ食べすぎたとならなければいいと思います。
Q9.牛乳は1日1本いただくのですが、それ以上はお腹がいっぱいになるので、チーズを良く摂るようにしています。
お陰さまで、高い骨密度を維持しております。メタボにチーズがいいという話題にはならないのでしょうか。
A9.
  • サプリのようなものを摂るくらいなら、北海道や長野でいいチーズができていますので、摂るようにした方がいいと思います。チーズの摂取量も増えては来ていると思いますが、まだ日本の食事に対し、チーズの存在感が十分でない。もっと増やすことはできると思いますが、あまり食べてないのが実情かと思います。健康面から言うと、今日の話は牛乳だけではなくヨーグルトもチーズも含めた話ですから骨に関しては効果がありますし、メタボにも効果があるものと考えます。
    おっしゃる通り、サプリより優れていると思います。
Q10.IT企業の男性の調査(3ページ目)で、結果的に、体重が適正な人に牛乳をプラスすると血圧が低下し、高運動の人で牛乳で血圧低下の効果が大きかった。このメカニズムは何なのでしょうか。
A10.
  • まだ十分に解析できてないのですが、血圧に対する運動療法というのが既にあるように、適度な運動プラス牛乳・乳製品の成分が合わされることでより高い効果が得られるということだと考えています。メカニズムはさらに解析を進める必要があり、まだわからない部分が多いです。
- 参加者からのコメント -

●講演の最後の「あと一本、あと一杯の牛乳を飲みましょう。」実践します。多くの示唆に富んだお話しありがとうございました。今の若い人をみていると、お茶を飲み、お腹がすくとポテトチップスのようなお菓子を食べている。これで将来の自分の体をしっかり維持できるのかが、イメージがわいてないように感じます。

●私は北海道生まれで、生まれた時から牛乳を飲んでいて、牛乳がない時は母がヤギの乳を用意してくれていました。母は、いつもカルシウムが摂りたいと言っていました。このようにカルシウムを意識して生きてきて、今同年輩の方と比較して、(自分で言うのも変ですが)若く見えると思っています。体型も曲がってないし、よく歩きます。年齢の自覚症状もありません。なぜそうかというと、牛乳・乳製品と関係あるのではないかと自分でははっきりそう思っています。仕事が多忙で不規則な食生活でも耐えてこられたのは、基礎的な身体ができる年代にしっかりカルシウムを摂っていたことが土台にあるのかなと強く思っています。若く見えるということは牛乳を飲んでいるからではないかと思うので、牛乳を飲むと若さを維持できる、と言っていただきたい、是非証明していただきたいと思います。