「社会環境性」について
容器包装の取り組み
4つの具備要件のうち「社会環境性」は近年特にクローズアップされており、「人」と「環境」への配慮の2つの側面があります。人への配慮には「ユニバーサルデザイン」が、環境への配慮には「環境配慮設計」と「ライフサイクルアセスメント」があります。
ユニバーサルデザインへの取り組み
- 誰でも公平に使用できる
- ・常温保存可能なロングライフ飲料は、食品を頻繁に購入できない場所に住む人や避難時など冷蔵保存できないときでも飲用できる。
- 使う上での自由度が高い
- ・缶入りの「練乳」をチューブ入りにすることで、簡単に開けられるようにし、キャップで閉じることで自由に少しずつでも使用できるようになっている。
・粉ミルクをスティック化して、外出先でも容易に使用できるようにしている。 - 簡単で直感的に分かる使用方法
- ・カップ入りデザートなどのフタの端に取っ手をつけ、剥がしやすい場所が一目でわかるようにしている。
・ブリックパックのストロー口の周りの印刷を白抜きすることで、ストロー口が一目でわかるようにしている。 - 必要な情報がすぐ理解できる
- ・500ml以上の牛乳パック上部開封口の反対側に切り欠きを入れて、誰でも中身が「牛乳」であることを理解できるようにしている。
- うっかりエラーや危険につながらない
- ・びんのキャップを紙栓からポリキャップに替えることで、容易に開けやすくなり、中身をこぼすリスクを低減している。
- 無理な姿勢や強い力なしで楽に使用できる
- ・牛乳びんを軽量化して、持ち運びの負担を軽減している。また、びんに「くびれ」を入れることで弱い握力でも握りやすくしている。
・4ポットヨーグルトのポット間に手で容易に切り離しやすくする「くぼみ」を入れている。 - 接近して使用できる寸法、空間である
- ・牛乳・乳製品では接近するのに困るほど大きな製品はありません。
環境配慮設計への取り組み
リデュース(発生抑制)、リユース(再利用)、リサイクル(再生使用)の取り組みです。
リデュース【排出抑制】
- 軽量化・薄肉化
- ・層構成、紙厚を削減できないか
・容器の薄肉化はできないか
- 簡素化
- ・包装形態を単純化、簡素化できないか
・包装形態を変更できないか
・部品点数削減、シングルウォール化
- コンパクト化
- ・中身自体を省容量化できないか
・容器の寸法(紙容器のりしろ等)を削減できないか
・空間容積率は適切か
リユース【再利用】
- リターナブル化
- ・宅配びん回収など何度でも再利用できないか
- 詰め替え・付け替え
- ・親容器を永続使用するために、詰め替えパウチなど容器の簡素化で廃棄しやすくできないか
・付け替え部品を永続使用することで、本体容器を簡素化して廃棄しやすくできないか
リサイクル【再生利用】
- 昜リサイクル
- ・単一素材化できないか
・分別しやすい構造、工夫はされているか
・使用後、容易に洗浄、乾燥できるか
- リサイクル素材の利用
- ・再生パルプ、再生紙を利用できないか
・B to B※など再生プラスチックを利用できないか
※B to B=ボトル to ボトルの略。使用済みのペットボトルをリサイクルして新たなペットボトルに再生すること。
- リサイクル適性
- ・容器、製品が散乱することはないか
・廃棄の際、たたむ、つぶすなどの減容化がしやすいか
・単一素材でできているか
- 排出容易性
- ・埋立で土壌安定性を損なわないか
・分別排出量の容積を小さくできるか
・焼却時に有毒ガスは発生しないか
- リサイクル推進
- ・リサイクル活動を推進しているか
・森林認証など環境表示を意識して素材を選定しているか
ライフサイクルアセスメント
LCA(ライフサイクルアセスメント)手法を活用し、環境負荷を定量的に算定する指標として、CFP(カーボンフットプリント/Carbon Footprint of Products)があります。
商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算して、商品やサービスに分かりやすく表示する仕組みです。ただし、環境負荷はCO2排出量だけではなく、水の使用量、大気中、水中、地下などへの汚染物質の排出量、枯渇資源物の使用量など多岐に渡ります。
LCA手法を活用したCFPの具体的な例では、2011年度に当協会および全国牛乳容器環境協議会が申請し、牛乳のPCR(商品種別算定基準)が認定されています。このPCRを決める際に試算した1リットル紙パック入り牛乳のCO2排出量の内訳を見ると、乳牛を牧草飼料で育成し、得られた生乳をローリーで搬送するまでの、生乳調達段階のCO2排出量が最も大きいですが、この原材料調達段階から、生乳の調達段階を除いてみると、容器包装調達段階(紙パック調達段階)のCO2発生量の割合が無視できないほど大きくなります。
環境負荷をCO2排出量だけで論じることはできませんが、水使用量、富栄養化物排出量、大気汚染度、資源枯渇など様々な観点から評価するべきであることを踏まえた上で、上記のような評価をすることが「ライフサイクルアセスメントを行う」ことでもあります。
- LCA(ライフサイクルアセスメント)とは
- 製品の資源採掘から原材料、製造、充填、冷蔵保管、製品の使用、そして廃棄にいたるライフサイクル全てにおける環境負荷を総合して科学的、定量的、客観的に評価する手法で、その活用により環境負荷を効率良く、経済的に低減することが可能となります。
- PCR(ピーシーアール/Product Category Rule)とは
- 同一商品又はサービスの種別ごとのLCA算定基準のことです。製品やサービスの環境負荷を測るには通常LCAが用いられますが、LCAの手法は非常に複雑であり、前提条件(機能単位、システム境界、データの取得方法)によって、同じ商品であっても大きく結果が異なってくるという性質を持っています。そのためPCRはこの前提条件を一定に定めて、算定の基準となるルールの役割を果たします。