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第109回 世界で拡大を続けるプラントベースとプラントベースミルクについて

牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

伸びている背景

伸びている背景

では「伸びている背景」を大きく三つで見ていきます。

環境配慮/SDGs/エシカル志向

環境配慮/SDGs/エシカル志向

まず環境配慮/SDGs/エシカル志向が高まっているというところです。具体的にどういうことかというと、一つは環境的な視点ということで、例えば生産地の水がプラントベースは少なくて済むという研究データがあったりします。それから顕著なのはカーボンフットプリント、温室効果ガスが肉類とかと比べるとすごく少なくて済むというデータがあります。
次に食糧問題的な視点というところで、穀物の問題が海外では言われていて、例えば1キロ生産するのに牛だと11キロ、豚7キロ、鶏4キロの穀物が必要です。ただその食物を人が全て食べられるようにすることで、人口扶養力がすごく上がるというようなデータもあります。
それから倫理的な視点というところで、これは結構ヴィーガンの方々の理由で多かったりするのですが、動物実験とか経済効率性を重視した飼育環境とか方法というところに今海外だと結構敏感で、そういったものをなるべくやめようという方向になっています。狭過ぎるケージだったり、デビークといってちょっとくちばしを切ってしまったりとか、あとホルモン剤の投与とか、人工受精、殺処分みたいな、そういったところの視点からプラントベースフードというものが注目を浴びている背景にもなっています。

エシカル消費

エシカル消費

エシカル消費というものがどのように環境に貢献するのかです。例えばエコマークつきの商品とかオーガニックマークのついた商品を使うと、結局農薬みたいなものを使わずに作った製品なので、地球への負荷も減らせるということだったり、生物多様性みたいなところにも貢献できるというような流れになっていて、そういった消費の仕方も消費者という視点から、最近ではこういうふうに注目を浴びています。

消費者:エシカル消費や菜食に興味を持つきっかけ

消費者:エシカル消費や菜食に興味を持つきっかけ

消費者がエシカル消費とか、例えば菜食みたいなことに興味を持つきっかけとして結構よく皆さん聞くとおっしゃるのが、Netflixで「ゲームチェンジャー(FUELED BY THE TRUTH THE GAME CHANGERS)」を見たという方が結構多くいらっしゃいます。内容はスポーツ栄養学ですが、菜食のアスリートたちをドキュメンタリーで取材していて、菜食と肉食になったときのパフォーマンスの比較をしています。それをきちんと科学的に血液検査だったり生殖機能の変化だったりを計測していって、こういうものを見てそういったエシカル消費とか菜食という分野に興味を持つ若い方々も今たくさんいらっしゃいます。

他業界では

他業界では

他の業界はどうなのかというところで、世の中への流れの反応が早いファッション業界でも、エシカルな視点でサステナブルな特集が次々と組まれています。『ELLE』とか『WWD』というのは必ず業界の方々が読む雑誌として有名で、このようにサステナブル、持続可能という特集が今組まれています。ファッション業界が今そういった取り組みが早いので、そういったところからだんだん食の分野へも勢いが流れてくるのではないかなと言われています。

パリ協定とカーボンニュートラルの潮流(参考資料)

パリ協定とカーボンニュートラルの潮流(参考資料)

生活の中に菜食を取り入れる選択肢もあります(参考資料)

生活の中に菜食を取り入れる選択肢もあります(参考資料)

日本は2050年に「カーボンニュートラルを目指します」と宣言をしました。それによってカーボンフットプリントという温室効果ガスの排出が少ないと言われているプラントベースフードというものを、環境省のほうも環境という視点ですごく推していたりということもあります。

朝日小学生新聞によるプラントベースフードの記事

朝日小学生新聞によるプラントベースフードの記事

小学生も「プラントベースフードを食べて温暖化から環境を守ろう」という視点で、プラントベースフードを学んだりしている時代になっています。宿題でプラントベースフードの何かを家でつくってもらったり食べてきて、感想文を書くとか、そんなような小学校も今たくさんあるそうです。

ドローダウン 地球温暖化を逆転させる100の方法

ドローダウン 地球温暖化を逆転させる100の方法

2022年に話題になった書籍です。190名の専門家による研究と温暖化防止策100が載っているもので、地球の温暖化の防止に向かってやるとインパクトが強いよという順番が、1位から10位まで並んでいて、冷媒とか風力発電みたいな発電系と、あとフードロスですね。第4位にプラントベースな食生活ということで、これをやると地球温暖化の対策としてはインパクトが大きいというようなデータが出ました。

3位のフードロスと4位のプラントベースを合わせると、例えば自動車を電気自動車にかえることの10倍以上のインパクトがあったり、プラスチックだったらバイオプラスチックにかえることの30倍のインパクトがあったりというデータが出たということです。プラントベースフードとフードロスというのは、やはり消費者が日常的に取り組めるものとしてすごくメリットだったりするので、こういったものが話題になりました。

背景に健康志向/ヘルシー思考の高まり

背景に健康志向/ヘルシー思考の高まり

プラントベースが伸びている背景として、カゴメさんのデータですが、食べている理由として大きいのが、「健康促進のため」とか「野菜摂取のため」というようなところです。

Newsweek「発酵食品文化や食材への敬意」の記事に

Newsweek「発酵食品文化や食材への敬意」の記事に

「日本料理はコロナ危機でさらに発展し、世界に広がるだろうと、ニューヨークの著名フレンチシェフが言いました」ということで、コロナ禍でも野菜をうまく生かした和食みたいなものがすごく人気だったそうです。和食は自然免疫力を高めるみたいな、そんな働きがあるので、プラントベースの分野でさらに海外でも注目され、評価が高まっている状況です。

コロナ禍でますますプラントベースフードが注目を浴びている理由

コロナ禍でますますプラントベースフードが注目を浴びている理由

海外では食中毒とか動物由来の感染症のリスクも低減できる可能性が高いというのが理由になっています。
ヨーロッパだと、イギリスとドイツがとても大きな市場になっていて、代替肉と言われるプラントベースミートの市場でいうと、ドイツでは2018年から2020年の2年間で、何と226%も伸びたという、そんなふうに言われています。

ドイツ大手のスーパーの売り場

ドイツ大手のスーパーの売り場

友人に写真を撮ってもらったものです。左上の写真がミルクのコーナーで、基本的に常温のコーナーになっています。左側が通常の牛乳と言われるミルク、右側がプラントベースミルクの棚だそうです。ヨーロッパとかだと生乳ではない常温で置けるミルクが結構たくさん売っていたりするので、常温でこういうふうに置いてあります。
肉とかチーズの棚も、去年一昨年に比べるとすごく売り場が広がったと言っていました。具体的な商品では、簡単に開けたら食べられるもの、チキンだったりというのが3ユーロぐらいなので500円ぐらいで買えるような状況です。

日本のスーパーの売り場

日本のスーパーの売り場

日本でも売り場は今すごく増えていて、例えばイオンさんとかでも「いつものお肉を大豆に代えてみて」といたコーナーができていたりとか、お肉を使わないもの増えていたり、カゴメさんからも野菜だしとか豆乳のカルピスとか、それからプッチンプリンが植物性でできていたりとかで、プリンなんかはアレルギーがあるお子さんにもすごい人気だそうです。
卵も、キユーピーさんとかネクストミーツさんというベンチャーの会社さんから、植物性のこういった簡単に温めるだけで食べられる卵みたいなものが、最初B to Bで出していたのですが、今は普通に消費者の方も買えるような状況になっています。

日本のスーパーの売り場
日本のスーパーの売り場

ほかの商品でも棚を見るとすごく簡単に食べられるものが増えています。豆腐でできたお肉とかが200円、300円ぐらいで買えたり、あと冷凍のコーナーでも牛丼だったり大豆のお肉でつくったものがたくさん売っていたりします。

地域性を活かした商品、スタートアップの会社増加

地域性を活かした商品、スタートアップの会社増加

伸びが大きいドイツでは、地域性を生かした商品とかスタートアップの会社さんが増えていたりということで、現地の日本人向けのフリーペーパーから抜いてきたものですが、EUだとヒマワリが結構日常的に食べるものだったりするので、日本のソイミートみたいな感覚で、こういったヒマワリの種のひき肉みたいなものが出ていたりします。

大豆以外の植物性たんぱくを活用したソイフリー商品への広がり

大豆以外の植物性たんぱくを活用したソイフリー商品への広がり

大きな流れとしては、今、大豆以外の植物性たんぱくを活用したソイフリー商品へと幅が広がってきています。その背景としては、環境配慮とか健康志向の広がりというのがあります。大豆は遺伝子組み換えが多くてGMO Freeのトレンドと関係して嫌がる方が海外だと増えてきているというのが一つになっています。それから大豆をつくるための新たな森林伐採みたいな課題もあって、そういった懸念からもソイフリーのプラントベースの商品にどんどん今、広がりを見せています。左側の写真はじゃがいものプロテインをうまく使ったプラントベースチーズで、右側もソイフリーのプラントベースバターといったものがふえてきています。

多様な価値観、インバウンド

多様な価値観、インバウンド

三つ目が、訪日ベジタリアンが増加していて、日本も力を入れましょうというような流れが来ています。訪日ベジタリアンの中では台湾人がすごくベジタリアンが多い国と言われていて、それを試算すると大体450億から600億円の市場の規模になると言われています。

ベジタリアン等対応資料

ベジタリアン等対応資料

海外から日本に来るベジタリアンの方々は、まず食べるところを探すのがまだ日本だと難しいので、食べるところを探してからその近くに宿をとるという方が多いそうです。そのときにこういったプラントベース系のお店の専門の検索サイトのHappyCowとかGoogleマップ(Google Maps)を活用しているそうです。

ムスリムフレンドリーも

ムスリムフレンドリーも

日本でもそういった多様な方々へ向けて、こんな商品が2020年に出ました。東京ばな奈さんがムスリムフレンドリーなお土産をつくったということで、こういった商品ピクトグラムという絵ですぐわかるような工夫をして、お土産を売っていました。

プラントベースフードの強みと弱み

プラントベースフードの強み

プラントベースフードの強み

強みとしては、さまざまな方々へ対応しやすいということです。宗教的に動物性がNGな方々、身体的に動物性がNG、例えば食物アレルギーで乳アレルギーだったり卵アレルギーだったりという方々に対応ができたりとか、アレルギーではないけれども不耐症といって、ラクトース不耐症とかいろいろありますけれども、そういった方々に対応しやすいというような強みがあります。
動物性がNGではないけれども、食べないと決めている方々、宗教以外のある価値観や信念、目的なんかで食べないと決めている方々で、例えば先ほどの玄米菜食のマクロビアンであったりヴィーガンという完全菜食の方々にも、こういった商品が適用できるということで強みの一つであります。
動物性がNGではないけれども、健康とかいろいろな目的から関心があるという方々がたくさんいらっしゃいます。健康というところでいうと結構ヘルシーだったりすることが多いので、ギルトフリー(罪悪感フリー)みたいな感じですごく興味を持たれてる方だったり、環境というところだとやはり先ほどのエシカルな視点でこういったものに興味があるというような方々へも対応できるという強みです。

プラントベースフードの弱み

プラントベースフードの強み

一方弱みでは、栄養面では結構摂取が難しい栄養素がどうしても出てきます。例えばビタミンB12とか、鉄分、亜鉛、カルシウムみたいなものは非常に摂取が難しいので、偏るとバランスを崩してしまうという弱みはあります。
それから環境負荷という視点でも、先ほど伸びている背景でお伝えしたポジティブなニュースはたくさんあったのですが、一方で豆腐は逆に肉よりも加工のプロセスがすごく多いので、その時点で石油とかいろいろなものを使って排出して環境に負荷をかけてしまうといった研究をされたりデータを出している方々もいらっしゃいます。
それから味やテクスチャーというところでは、代替と捉えてしまうとやはり全く同じではないし、再現をするのがすごく難しかったりというところがあって、まだまだ発展途上というところが一つ弱みとしてあります。