ご講演
プラントベースフードとは
言葉の定義としては大きく二つあります。一つ目が動物性の原料を使用せず、植物由来(プラントベース)の原料でつくった食べ物ということです。それから二つ目が、菜食が食習慣のルールではないというところです。
今まで「菜食」というのは結構厳格なルールがあって、絶対食べてはいけないとかという決まりがあったのですけれども、「プラントベースフード」は好きなときに好きなだけ食べてくださいという、そういう意味が込められています。したがって、一つの食のスタイルとか、食の選択肢といった捉え方が入っております。
これが「ヴィーガン、ベジタリアンとの違い」になってくるのですが、完全菜食とヴィーガニズムという価値観、思想、信念がセットになった方々を「ヴィーガン」と呼んでいます。「ベジタリアン」の方々も、菜食というところでは重なるのですが、主にジャイナ教だったりヒンズー教だったりとかの宗教がベースの理由となっています。
そういった菜食生活というものが、一般の方々にとって取り入れるにはすごく壁があったりというので、言葉の定義の二つ目の、菜食が食習慣ではないという、好きなときに好きなだけ食べてくださいという定義にそういった意味が込められています。
「プラントベースフード」は、Plant Based Foods Associationという海外の組織が、マーケティングの発想でつくった言葉と言われています。一部、ヴィーガンという言葉だとやはり動物由来のものを食べている方への若干抗議の意味合いも含まれていたりするので、一般の方々に多く普及していただくという意味で「プラントベースフード」という新しい言葉が生まれましたという背景です。
「菜食」の方の食べるもの別分類
ヴィーガンとかベジタリアンとか一般的な世の中で言われる「菜食」を、何を食べる食べないという軸で分類したものになります。ちなみにベジタリアンの方々ですと、乳製品がOKという方々がいらっしゃるというようになっています。
プラントベースフード(PBF)というワードが徐々に使われるように
そういった背景があって徐々に日本でも今使われるようになってきているということを感じます。
日本でもヴィーガンラーメンというものは何年か前からあったんですが、2021年に一風堂さんがプラントベース赤丸という名前で発売をしました。チャーシューのようなものはインゲン豆でできていたり、不二製油さんとスープを共同開発をしたりということで、ポルチーニとかニンニクとかそういったいろんなものを使ってコクがある工夫をしているラーメンになります。
『ELLE gourmet』という、『ELLE』というファッション雑誌のグルメバージョンの雑誌でも大きく紹介をされるようになってきています。
実際のプラントベースな食生活一例
実際のプラントベースな生活ってどんな感じなのだろうということを少しご紹介をしたいと思います。
外食も今、すごく豊富になっていて、ラーメンだったりそれからこういったソイミートを使ったミートボールみたいなものだったり、それからカレーもプラントベースのカレーということで、食べても満足感があるものがたくさん出ています。それからパンも、チョココロネパンみたいなものも、言われなければ、「これ、プラントベースなのかな?」というような本当においしい味になっています。昔だと味の面で結構「何かやっぱりちょっと違うな」というものがすごく多かったのですが、最近は言わなければわからないような、そんなおいしいものが増えています。
Uber Eatsというデリバリーでも、数年前と比べると選択肢がすごく増えているなと感じます。結構おいしそうなヴィーガンミートドリアとかあったりします。お菓子づくりなどでも、牛乳の代わりに今日は豆乳で作ってみようとか、豆乳ヨーグルトで作ってみようみたいな方や、お子様がアレルギーをお持ちでそんな工夫をされている方も多いです。
バターも今、プラントベースバターという、すごくおいしいバターが出ています。お弁当づくりなんかも、今はプラントベースで作ろうと思うと結構簡単にできたりというのもあって、インスタなんかでハッシュタグで「#週1プラントベース」とか、そういうので結構タグづけしてお子様とか旦那さんのお弁当を週1プラントベースにしてみるみたいな、そういうのを楽しんでる主婦の方々もたくさんいらっしゃいます。
それから旅行に行くと、写真右上のようにラーメンとか餃子とかが空港でも食べられるようになっています。海外に行くとインスタント食品も豊富にあって、日本でも今ネットで買えたりします。
ふだんお肉もお魚もたくさん食べるという方々が、プラントベースの食生活をリトリートみたいなプログラムに参加したときに初めて体験したという友達とかも私の周りだと結構いたりします。その方々に聞くと、皆さん口をそろえて胃腸とか翌日の体が軽くてびっくりしたということをおっしゃっていて、それをきっかけに体調に合わせて、ちょっと風邪を引いたり消化にあまりエネルギーを使いたくないなというときに活用したりみたいな、そんな方々も今はたくさんいらっしゃいます。
拡大するプラントベースフード市場
プラントベースフード市場(世界)
数字で少し見ていきたいと思います。まず世界のプラントベースフード市場というところは、やはり右肩上がりに伸びています。2022年は約5兆9000億円だったものが、2030年だと予測で21兆超えになるという試算が出ています。年平均成長率でいうと19%の伸びというデータもあります。
プラントベースフード市場(国内)
では国内はどうなのかなというと、国内もこれは予測ではなくて実際の数字で伸びていて、年平均で22.5%の伸びというデータも今はあります。
プラントベースミルク市場
「ミルク」というところで見ると、まず世界の方から見ていきます。世界のプラントベースミルクの市場規模は年平均で予測も含めて9%の伸びと言われています。アメリカのPlantBased Foods Associationの2020年の記事によると、2021年のプラントベースフードの市場が96億円で、そのうち絶対額として一番大きかったものの1位がミルクで、33.8億円を占めたというデータもあります。ミルクは3年間に限っていうと、そのとき33%の成長率だったそうです。割合でいうと、アメリカですとアーモンドミルクが6割ぐらいを占めて、その次にオーツミルクが大きく占めているというような、日本とは少し違ったような状況になります。日本だとソイミルクがまだ主流かなと思います。
プラントベース乳製品の市場
こちらがアメリカのデータで、プラントベースの乳製品の市場の全体を見たものです。2019年から2021年の変化で、絶対額が多い順に上から並んでいるのですが、ミルクがやはりダントツ多い市場になっています。それから乳製品系でいうと、アイスクリームとかヨーグルトとかチーズとかバター、こういったものもずっと伸びているという状況です。
それから金額としてはまだボリュームが少ないのですが、卵というところも海外ではベンチャーの会社が今すごく伸びていて、市場伸び率が高くなっています。健康志向でコレステロールゼロみたいなところで、ダイエットしたい方とかそういった方にこの卵が今売れているそうです。
アメリカのプラントベースミルクの棚
結構もう種類も豊富でたくさん並んでいるという、こんなような状況です。
アメリカのプラントベースヨーグルトの棚
オーツミルクのヨーグルトだったり、いろんな選択肢がすごく豊富になっています。ココナッツミルクのヨーグルトを買ってみたのですが、味もすごくおいしかったです。
アメリカのチーズの棚
一番上の黒いパッケージの写真のちょっと違った形のは日本でも販売されていますが、こういったたくさんのチーズの商品が並んでいます。1ドル99セントと書いてある、手軽に買えるようなものがたくさんあります。
アメリカのアイスの例
棚に20種類とか30種類ぐらい並んでいるような状況で、DAILY FREEと乳製品を使っていませんと書いてあったり、あとは健康志向の方が買われることが多いので、NO SUGAR ADEDD、お砂糖を添加していませんという表示もあったりします。
先ほど伸びていると言った卵は、液体がボトルに入っていてフライパンで簡単にスクランブルエッグみたいなものがつくれる、そんな商品になっています。
アメリカのお肉のコーナー
テンペみたいないわゆるお豆を使ったお肉風のもの
豆腐でできたソーセージみたいな形のもの
それからカレー味とかスモーク味、ベーコン味とか、味がついていて簡単な調理で食べられるみたいな、こういったものがすごく並んでいます。
最近はこういうツナ風みたいなものも出てきていてすごく人気だそうです。
国内:消費者にとってもプラントベースミルクが浸透しつつある
実は国内でもプラントベースミルクは、消費者に結構浸透しつつあるということがわかります。
左側のグラフは消費者が「試したことがあるプラントベース食品は何ですか」という質問に対して、「プラントベースミルク」が最も多かったというデータで、右側はアーモンドミルクがすごく伸びているというグラフです。今アーモンドミルクはすごく日本で伸びている市場になっています。スターバックスさんでは、2001年からソイミルクはずっと導入していて、2020年からアーモンドミルク、2021年からオーツミルクを取り扱っています。今までは植物性ミルクへの変更追加料金がかかっていたのですが、2022年の4月から一切かからなくなっています。ますますお客様にとって選択肢の一つとして「今日はアーモンドミルクの気分だわ」と言って、アーモンドミルクにラテを変更したりみたいな、そんなふうに身近に選択しやすくなるという状況になっています。
国内の棚(ビオセボン)
国内の棚も写真で見ていきます。ビオセボンさんというフランス系のオーガニック系のスーパーですが、こんなふうに海外から輸入した、ソイココナッツ、ライス、オーツ麦、アーモンド、カシューナッツ系のそういったミルクがたくさん並んでいます。
国内の棚(ビオセボン)
こういった小さいサイズもたくさん豊富に並んでいて、1パック158円とか200円くらいで試せるようになっています。
以前は、こういったビオセボンさんみたいなところに行かないとなかなか選択肢がなかったのですが、最近は普通のスーパーさんでもいろいろと買えるようになっています。
158円で250ミリリットル入ってるイタリアのミルクになります。ライスミルクでココア風味がついているのですが、プラントベースミルクの弱みとしてカルシウムが足りなかったりというのがあるので、海外の商品だとこのようににカルシウムを添加していたりみたいなものが多く見受けられます。
国内(一般的なスーパー)
国内の一般的なスーパーさんの売場です。今は乳業メーカーさんも参入するほど伸びている市場になっています。国内で手に入るヨーグルトがちょっとまだ選択肢が海外に比べると少ないかなとは思います。
以前だったらビオセボンさんで本当に小さい1回分の量のヨーグルトで600円みたいなものしかなかったのですが、今はスーパーに行くとホリ乳業さんがこういったアーモンドミルクの大きいパックのヨーグルトを400円ぐらいで販売していたりというような変化があります。