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第104回 国内外の酪農乳業の持続可能性に向けた取り組みと課題について

牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

- 講演後の質疑応答 -
  • 質疑応答
Q1.「日本の生乳生産における環境負荷」にある、総GHGに対する生乳生産GHG排出量のなかの「ニュージーランドでは34.6%」ってすごいですけど、その理由を教えてください。
A1.
  • 試算ベースという形ですが、ニュージーランドは酪農が第一の産業であり、酪農と乳製品の輸出については国を挙げた事業になっていますので非常に大きな割合になっています。
Q2.需給のアンバランスが時々起こって、今回も問題になりましたが、こういったことは諸外国でもあるのでしょうか。あるとしたらどう対応しているのか、ないとしたら日本特有の理由なのでしょうか。
A2.
  • 生乳廃棄の海外の事例ですが、パンデミックが起きたコロナの話でいえば、日本では学校給食が急に3月に止まり、ミルクサプライチェーンの関係者全員で何とか廃棄しないように緊急的な体制を組んで、乳製品加工工場で受け入れ何とか乗り切ったのですが、海外の場合は、相当の生乳を廃棄したというニュースも流れています。
    これは私の勝手な想像ですが、恐らく売れないものをつくって在庫を持つよりも、多分生乳段階で廃棄したほうが、酪農家の収入の保証の問題はあるにせよ、恐らく経済的に見れば一番ダメージが少ないのかもしれません。海外は比較的サプライチェーンが多分どこかで行き詰ってしまうので、廃棄したのではと思います。日本で生乳廃棄をせずに済んだというのは、日本のミルクサプライチェーンが非常に強靭なものだったのではないかと考えています。
  • 質疑応答
Q3.「酪農乳業におけるSGDsに関する取り組み例」の社会のところで、今後の課題として「女性がさらに活躍できる環境」とありますが、これは具体的にはどういうことを指しているのでしょうか。「女性がさらに活躍できる環境」の具体的な例のようなものを伺いたいです。
A3.
  • 特に酪農生産の場合は、女性の経営者が増えてきているのは事実で、こうしたことを地域を挙げて支えていく、男女関係なく酪農生産をやれる環境を構築してく必要があると考えています。乳業は、女性の管理職、役員の方が何人いるとか何割になったという数値目標を示しているところがあると思いますが、こうしたことを社会の課題とあわせて推進していく必要があるのではないかと思います。
Q4.長野県の休耕田で粗飼料をつくっているというお話ですが、粗飼料といっても具体的にはどういうものを作られているのでしょうか。
A4.
  • 長野は飼料用のトウモロコシを細かく細断して、それをラップで巻いてロール状にしたコーンコーンサイレージを作って県外(愛知県)に販売する取り組みです。
Q5.「多面的な”持続可能な食“に関する情報発信」で情報をいろいろご紹介いただきましたが、これは例えばJミルクのホームページなどで入手することができるのでしょうか。
A5.
  • 質疑応答
Q6.「持続可能な酪農に向けた取り組み事例」に輸入飼料と自給飼料の話があるのですが、食べるほうの牛の場合は、飼料によって肉の味が結構変わってくるから、なかなか変更できないみたいなことを聞いたことがあるのですが、牛乳の場合は、例えば輸入飼料をお米に、輸入は多分コーンとかそういうのですかね。日本で自給するとしたらお米にかえたりとかしたら、やっぱりミルクの味も変わってきたりということがあるのでしょうか。飼料が一番結構お金もかかるし、環境ということを考えたら、国内で自給できると一番いいのにと思うのですがいかがでしょうか。
A6.
  • 餌の問題は、日本の酪農の持続可能性を高める上で大きなポイントになるかと思います。ご指摘のとおり、餌を変えることによって風味が変わることがあるかもしれませんが、こうしたことは生産者団体の方も注意をして管理されてると思いますし、今回トウモロコシのサイレージはラップで巻いて運びますが、ラップサイレージが非常に良質な餌ができるということで、かなり安心して運べるような事例がございます。
    今はで円安で、海外の海上輸送が非常に滞っていることもあり、粗飼料の価格が非常に上がっていて、それをどう確保するのかというところで、北海道産の粗飼料のニーズが都府県でかなり高まってきていることもございます。配合飼料でいえば、トウモロコシを初めとした穀物単価が非常に上がっていますので、こうした飼料を国内で飼料をつくることによって、価格を安定的に維持していくという部分でも、国内で飼料をつくっていくということは非常に重要であるかと思います。
    さらに、地域の社会的な側面でいえば、農業をやる方が減っているので、特に中山間地は畑が使われなくなってしまいます。こうした畑に、野菜とか米ではなく、飼料作物をつくることによって、畑や水田を持続的に地域で活用できることにもつながるのではないかと思われます。
    ただ、これはまだまだ行政とも一緒にタッグを組んでやらないといけないことも多々あるかと思いますし、地域でいえばほかの産業や畜種・作物の方とも連携しなければいけないので、こうやって東京だけで議論していてもどうにもならないことだと思います。今回の国産飼料のモデル事業は、長野の伊那市で実施していますが、伊那は開拓をされて飼料作物を作られている方、水田もやられてる方、両方いらっしゃるので、来年度は水田もさらに活用できるような取り組みができないかということを少し探っていけたらいいかなと考えています。
  • 質疑応答
Q7.今の質問に関連してですが、いま実際に日本で飼料というのはどのぐらい、本当にこのモデルケースぐらいしかないのですか。
A7.
  • コーンサイレージは茨城県でやっている事例はあります。あとは北海道で子実トウモロコシを流通させていることは聞いたことがあります。この飼料は栄養価が高いので北海道で行われているようです。
    他の地域ではあまりトウモロコシサイレージを流通しているところ少なくて、どちらかというと稲ホールクロップサイレージがどちらかというと多いと思われます。あとは、飼料用米といって、牛に食べさせる実だけを収穫して、白米というか玄米のまま潰して牛に給与するというような取り組みは見られます。
    ある地域で、WCSにしても飼料用米にしても、つくられる方は、トウモロコシもできるが、あまり水田から畑に変えたくないという意識があるという話は一部聞いたことがあります。畑にしてしまうともう水田に戻せなくなるのではないかというご心配をされているところもあると聞いていますので、やはりそういった、お米を大切にする気持ちあるのではないかと思います。あと水田には水路がありますので、その権利も影響していると聞いたことがあります。水田から畑に転換するといったことを思い切ってやれるかどうかといったところが非常にかかわってくるかなと。稲の餌は、給与量を増やすことが難しいと聞きますので、トウモロコシにすることによって、さらに輸入飼料からの依存度というのを下げられるのではないかなと思われます。
Q8.SDGs・エシカル消費や動物性食品・植物性食品のところで、牛乳から豆乳に、消費者の今のSDGs関連のエシカル消費とかそういうので、あるいは動物性対植物性というような意識で置きかわっている傾向が見られるというのは明らかだと思います。
それで、牛乳を例えば豆乳に置きかえた場合、どのような変化が起きるのかというのを分析したらいいと思います。栄養面では先ほどそういう分析がありますというのを教えていただきました。ほかに例えば環境負荷、これも温室効果ガスのみならず、環境負荷というのはその土地へのさまざまな、窒素の流出だとか、あとそれから土地の侵食だとか、いろいろ総合的な意味での環境負荷があると思いますし、また温室効果ガスでも、ライフサイクルで見ると、輸入をしているとやっぱりその分温室効果ガスの排出が多くなるので、そこのところが原単位指数で牛乳と豆乳を比べるべきだと思うんです。
それともう一つは、国産の割合ですけど、国産が多いと産業振興にもなりますし、また土地利用という意味でも、有効な土地利用、それから環境への貢献ということが考えられますよね。そうすると、飼料は7割ぐらい輸入されているということがどこかに書いてありましたが、豆乳は、自分が読んでいる範囲での感じとしては、アメリカ、カナダとか中国の輸入が多いように感じ、国産の豆乳ってそんなに多くないように感じます。
そうすると、そういった意味でも、国産が多いほうが消費者にもめぐりめぐっていいのではないかと考えますので、そういった観点で比較していただけると、今後本当にどちらがエシカルな商品なのか、あるいは栄養以外でもさまざまな面でどういった影響があるのかというのが比較しやすいので、そういうことを今後教えていただけるようにしていただければと感じました。
A8.
  • おっしゃっていただいたとおり、まだまだ調べなければいけないこととか、事実を突きとめなければいけないことがたくさんあります。今はGHGの話だけしていますが、例えばウオーターフットプリントで見ると、アーモンドって1粒つくるのにものすごい水の量が必要になってくる場合やもあり、あまりそういったことが知られずに、GHGだけが頭の片隅にあって、環境によさそうだな、じゃ買おうかなということでいいのかを考える必要があります。
    例えばそういったことを比較検証しながら選択していただける、正しい食の選択をしていただけるような情報をしっかり発信していくことが大切だと思っております。ご意見を参考にさせていただきながら今後も対応してまいりたいと考えています。
  • 質疑応答
Q9.やっぱり自給率とか、どこの国の紙を使っているかということで、どうしても飼料輸入が多いとかというのがあると、国産を使うということは理想的だと思うのですが、いま林業をやる人が少ない、それから農業をする人も少なくなってという事情もあると思うし、その辺のところはどうなのでしょうか。コストも考えて。国内でつくったものを使うためにコストが高くなったら、そこに輸入品が入ってきたら、消費者の人は本当に国産のものを手にとってくれるのだろうかというような心配もあるのですが、そのあたりどのように考えていらっしゃいますか。
  • 質疑応答
A9.
  • 輸入と国産という部分でいうと、特に餌だけ考えれば、国産に振れたほうがいいとは思うのですが、恐らく7~8年前は、かなり飼料価格が上がったときがありました。そのときは国産飼料をつくろうという動きがかなり出てきましたが、最近は、規模拡大と生産量を増やす取り組みを進めたところで、大規模農場で飼料を輸入して経営される方も多いのかなと思います。今さらに餌が上がってきておりますので、国も含めて業界においても国産飼料をつくっていこうという流れをつくっていく必要があると考えています。生産者の方に話を聞いたり、SNS等で見たりしていると、国産飼料が肝だねというようなことをおっしゃる方も結構多いですし、北海道は飼料基盤があるので、持続可能な経営をされている方が多くいると思います。
    いっぽうで、都府県では、地域にもよりますが、100%購入でやられている方もいらっしゃいますので、この先どういう経営をされていくのかは、酪農家の皆さんそれぞれが考えるきっかけになる時期ではないかなと思います。自給率を高めようと言いながら、消費者が安い輸入食品に流れてしまうことも、仕方ないところもあるような気がします。
    ただ、日本はよくニュースにもなっていますが、給料が全然上がらず、ずっとデフレのなか、国民の皆様の理解を得ながら、給料を上げる、国産のものへというような流れができてくると、ここはまた違った流れも出るかなと思います。
    牛乳製品の場合は、輸入原材料の価格が上がり、大手メーカーさんは輸入原材料が使われているものは値上げしようということになりましたが、国産のほうは生産者へ支払う乳価は変わらないということで、いま生産者の皆様は飼料が上がった、資材が上がった、非常に経営的には苦しい状況になりつつあるところもあります。こうした状況であっても牛乳乳製品の価値やサスティナビリティの取り組みなどもご理解いただいた上で、経営も国際的にもこうした状況に置かれているということをしっかり発信しながら、また本日ご参加の先生方のお力も借りながら、生産者の皆様が意欲を持って生産できる環境をつくることが乳業側にとっても重要なポイントではないかと思います。
    ぜひ引き続き、先生方には国産牛乳乳製品の価値をお伝えいただけることをお願いしたいと思います。
  • 質疑応答
Q10.日本はこの20年デフレが続いていて、物の値段が上がらない、賃金も上がらない状態がもう25年続いています。ただ今、小麦とかが値上がりしていて、牛乳はこの25年、そういえば値段が上がってないですよね。牛乳は価値のあるものだということは認識しているので、買っていくと思います。だからそこを皆さん、これからちょっと価格のことはすごく大事なので、いろいろ検討されるとよろしいのではないでしょうかと思いました。
A10.
  • 応援いただきましてありがとうございます。我々としても本当にコストの上がったものがちゃんと価格に反映されて、乳製品価格もこれから上がっていけばいいなと思っています。
    価格を上げるにはいろいろな条件があって、物流コストが上がっただけではなかなか流通が納得してくれません。価格を引き上げるときの根拠にしているのは、生乳の取引価格が上がることで、それに合わせて一緒に小売価格も上げるというのは、これまで何回もやってきています。
    かつて乳価が5円とか10円とか上がったとき、平成20年度頃から乳価が大きく上がったときに、例えば製品価格を10円上げようという取組みを行っています。そのときは一旦は製品価格が上がるのですが、その後、競争条件が厳しいせいか、次第にまた元の価格に戻ってしまう。そして、戻った後にまた乳価が上がり、また小売価格を上げる、こういうのを何回か繰り返してきています。
    どんなに生乳需給がタイトになっても、牛乳には最初に生乳が供給されるため足りないということはあり得ないのでどうしても価格競争に流されやすい構造なっているのだろうと思います。
  • 質疑応答
Q11.乳製品の液状化について、生産するときに加熱をしてエネルギーを使うから脱脂粉乳等をつくるのにたくさんエネルギーを使うという話だったのですが、でも、水分が多いと輸送時にエネルギーがかかるから、ライフサイクルで考えるとどうなのかなと思ったのですがいかがでしょうか。
A11.
  • 輸送にエネルギーがかかるというのは事実ですが、トータルで見たときに液状の方が燃料を使わないという判断をしています。具体的なデータを揃えようとしているところです。
Q12.何となく、液状化だと粉末よりも腐りやすいような気がするのですが、そういうことはないのでしょうか。
A12.
  • もちろん賞味期限を考えれば粉の方が長いです。だから必要な量だけ液状化するというのが基本だと思います。使う量だけ液状化して運んで使うというのが現状で、増やすことには限界があると思います。
  • 質疑応答

液状化を進めたのは、もともとはCO2排出削減ということを言われていた時代ではなく20年以上も前の話で、当時、ウルグアイ・ラウンド後の国際化の流れの中で、乳製品が輸入されてくる可能性が非常に高くなってきたことから、液状の原料を使っていれば賞味期限が短いため輸入はできませんので、なるべく国内の原料は生に近いものを使っていこうという流れがあったというのが一つあります。もう一つは、商品の品質とか味という観点で、粉から戻したりバターから戻すよりも、生クリームを使ったり、脱脂濃縮乳でつくったほうがおいしいし風味もよくなる、そういう二つの観点があったと記憶しています。
(注:当時バターの過剰在庫も課題となっており、生クリームの生産・消費を拡大することにより、バターの在庫削減を図ることも目的の1つだった。)

Q13.牛乳パックの紙も国産の森林を使っているかと思ったのですが、北欧とか北米の紙だということで、やはり日本の紙は牛乳パックには使えないものなのでしょうか。高いのでしょうか。
A13.
  • 実態としては北欧や北米の紙を使っているということで、ごく一部、国産化され始めているという情報は聞いています。