- 講演後の質疑応答 -
- Q1.アレルギー体質は、両親のどちらかが体質を持っている場合、子どもに遺伝するのでしょうか。
- A1.
- 明らかな遺伝傾向はないのですが、お母さんに例えばアトピー性皮膚炎や気管支喘息があると、お子さんに何らかのアレルギーが出やすいのを家族歴と言いますが、その傾向はあります。元々日本人の遺伝子が、アレルギーを起こしやすかったのかということはなく、どこかで環境との相互作用によってスイッチが入ったのです。それが次の世代に受け継がれていくという現象が今起きているのです。エピジェネティクスと難しい言葉で言い、私達の遺伝的な素質が環境とが相互作用を起こして、次の世代につながっていくということがあります。
- Q2.海外に移住してアレルギーが出たという人の話を聞いたことがあるのですが、関係があるのでしょうか。
- A2.
- 例えば、日本でスギ花粉がある人が、ヨーロッパとかアメリカに行くと、スギ花粉がないので、症状が出なくなったりします。環境要因が影響してということはあります。ヨーロッパのスイスから北の地域に行くと、シラカバの花粉がとても多いので、ヨーロッパに移住するとシラカバアレルギーになって、果物アレルギーを発症したりします。だから、私達の身のまわりの環境というのも、とてもアレルギーの発症に関係してくるので、遺伝子プラス環境要因を併せてご理解をいただけるといいかと思います。アレルギーは、先進国での非常に大きな問題になっていて、発展途上国はまだそれほど大きな問題にはなっていないです。また、食物アレルギーに対して未だ良い薬がないです。
- Q3.離乳食で卵や乳を避けさせることがかえって良くないような話が出てきていると思いますが、今、日本でガイドラインとして、食べさせた方が良いとなっているのでしょうか。
- A3.
- 日本小児アレルギー学会から、先日鶏卵のアレルギーの発症予防について提言を出させて頂いています。血液検査や皮膚テストが陽性というので、すぐ簡単に除去することをしないでくださいと申し上げています。ただ、実践していくのは少し難しく、卵を例に出すと、250分の1ぐらいの卵を赤ちゃんに摂らせれば最初は安全で、9か月ぐらいになったら50分の1ぐらいの卵、1g位を摂らせていくと、1歳になった時に卵アレルギーの発症は80%ぐらい抑制できるという研究データも出てきています。卵アレルギーでIgE抗体を見つけたからすぐに除去という様に一般の先生方はしがちですが、何とかしないようにして頂きたいと考えます。ただ、それを実行していくのはなかなか容易なことではありません。専門医療機関にかかっている人なら、負荷テストを受けて食べられる範囲を見つけてあげることはできます。学会では単に血液検査だけが陽性とか、湿疹がわずかにあったという人に関しては、何も症状が出ていないのであれば、普通に離乳食は進めていって頂き、離乳食を遅らせる理由にはならないとしています。
授乳・離乳の支援ガイドがあるのですが、今年度改定予定で、そこでは多分卵や牛乳を無意味に避けたりしないでくださいと記載されると思います。問題は何らかの症状が既に出ている人やすごい湿疹があって、血液検査が陽性になった人に対して、今後、どの様に発症予防をいくかが課題になると思います。今、牛乳に関してはまだエビデンスがなくて、勧告はしていません。卵については出ています。ピーナッツアレルギーが多い国では、ピーナッツを逆に摂っていきましょうと。でも、日本ではピーナッツを摂りましょうと言っても、あまり食べる習慣がないので、なかなか難しいです。イスラエルのスナック菓子に、ピーナッツが含まれていて、それをイギリスの先生方が使って、生後4か月から11か月の赤ちゃんに定期的に食べさせて行き、5歳になった時にピーナッツアレルギーにならなかったという論文を出されています。ただ、ピーナッツをある程度の量、定期的にそれだけ摂って行って、他に例えば将来の肥満につながらないのか、そのような懸念はあります。アレルギーの発症予防だけで子どもの食生活をどうこうするというのは、あまり好きな考え方ではなく、そこだけに特化して、良い予防方法があればいいのですが。日本人が昔から普通に行なってきている習慣を大きく変えて何かしていくというのは、現実的ではないと思います。
- 日本小児アレルギー学会から、先日鶏卵のアレルギーの発症予防について提言を出させて頂いています。血液検査や皮膚テストが陽性というので、すぐ簡単に除去することをしないでくださいと申し上げています。ただ、実践していくのは少し難しく、卵を例に出すと、250分の1ぐらいの卵を赤ちゃんに摂らせれば最初は安全で、9か月ぐらいになったら50分の1ぐらいの卵、1g位を摂らせていくと、1歳になった時に卵アレルギーの発症は80%ぐらい抑制できるという研究データも出てきています。卵アレルギーでIgE抗体を見つけたからすぐに除去という様に一般の先生方はしがちですが、何とかしないようにして頂きたいと考えます。ただ、それを実行していくのはなかなか容易なことではありません。専門医療機関にかかっている人なら、負荷テストを受けて食べられる範囲を見つけてあげることはできます。学会では単に血液検査だけが陽性とか、湿疹がわずかにあったという人に関しては、何も症状が出ていないのであれば、普通に離乳食は進めていって頂き、離乳食を遅らせる理由にはならないとしています。
- Q4.アレルギーがその食品ではなくて、その食品の何の成分でということは分かっていないのですか。タンパク質の何がという研究がもしあるとすると、例えばそれに直接作用する薬を使うとかということがあるのかどうか。また、除菌とか清潔マニアであればあるほど、むしろアレルギーが起こるというような実態はないのでしょうか。
- A4.
- 一つ目のご質問は、例えばピーナッツの中の非常に重要なアレルゲンのタンパク質がありますが、タンパク質を遺伝子組換えで少しアレルゲン性を落とした研究はあるのですが、ただそういうことをすると、GMOの遺伝子組換え食品に該当したり、食品自体の性質が変わってしまったりするなど、なかなか実用化は難しいです。牛乳に関しては、酵素処理をして、カゼインを分解して、低アレルゲンにした育児用の粉乳があり、治療として使われています。牛乳ではいろいろなメーカーが、そういうものを作って、乳アレルギーの治療として提供してくれています。
二つ目のご質問の過剰な清潔志向は確かに衛生仮説という考え方に相当します。第二次世界大戦から20年ぐらいして高度経済成長時代に入ってきて、ほとんど寄生虫もいなくなり、細菌感染も減ってきて、栄養が良くなり、抗生物質を使って感染症を治療して、私達が戦う相手が身の回りからいなくなってしまい、アレルギーや自己免疫性疾患が増えてきたのだろうという考え方を衛生仮説と呼んでいます。
さらにもっと細菌除菌とか、余計に綺麗な方向にというのは、行きすぎている面も多々あるかなと思います。今の日本の居住空間は、十分に綺麗すぎてアレルギーを増やすのに非常に適した環境であります。例えばドイツの研究では、酪農をやっている家で育った子どもは、圧倒的にアレルギーが少ないという研究報告があります。またアメリカでアーミッシュ(Amish)という電気も使わない、例えば保存のための冷蔵庫も使わない生活をしている方は、アレルギーが非常に少ないです。また、家畜が身の周りにいて、細菌毒素などに触れたり、どちらかというと清潔な環境じゃないところで暮らしたりしている方はアレルギーが少ないのではないかという考え方はあります。ただ、皆さんが今そういう生活に逆戻りができますかというと、なかなか難しい問題とは思います。
- 一つ目のご質問は、例えばピーナッツの中の非常に重要なアレルゲンのタンパク質がありますが、タンパク質を遺伝子組換えで少しアレルゲン性を落とした研究はあるのですが、ただそういうことをすると、GMOの遺伝子組換え食品に該当したり、食品自体の性質が変わってしまったりするなど、なかなか実用化は難しいです。牛乳に関しては、酵素処理をして、カゼインを分解して、低アレルゲンにした育児用の粉乳があり、治療として使われています。牛乳ではいろいろなメーカーが、そういうものを作って、乳アレルギーの治療として提供してくれています。
- Q5.子どもの時からアレルギーで、特にアトピーだとか何もなかったのですが、成人して働き始めてから、目が腫れたとか、のどがイガイガするとか、いろいろな症状が出ている。解熱鎮痛剤を服用した時や、物凄くストレスが掛かった時に免疫が下がって起こりやすくなるのはかなり結びつきがあるのですか。
- A5.
- 今日は原因物質側の話を主にしたのですが、私達の体の側の要因も、とても影響しています。成人だと仕事の疲れやストレスも影響します。ホルモンのバランスでも違ってきます。女性は性周期の生理前や生理後でアレルギーが出やすくなったりします。そこで解熱鎮痛剤を飲むと、さらに余計に出やすくなることもよくあります。
ですから、食物依存性運動誘発アナフィラキシーの診断がなかなかつかない時に、薬を前投薬してそれで負荷試験を行うことがあります。アスピリンやバファリンなど、解熱鎮痛剤を飲ませておくと、腸からの原因物質の吸収が増します。それによってアレルギー症状が出やすくなります。色々な薬でも影響があり、年齢が上の方だといろいろなタイプの血圧を下げる薬が影響します。精神疾患だと、抗うつ薬を飲んでいると余計に出やすくなります。あとは精神的な状態も影響しますし、運動や体を動かしたり、お風呂に入っても出やすくなります。経口免疫療法で無理矢理原因物質を摂ってもらっている方が、摂った後おとなしくしていれば何ともないのですが、動いたり、ふざけ合っていたりして症状が出ます。ですから、体のコンディションや薬、血流の変化によっても非常に影響があると思います。
あとは原因物質がなかなか見つからないことが、大人の人でよくあります。その場合には、何か共通のものがないかと探していくのが非常に重要です。あとはタンパク質ではない予期せぬ物質が、原因となることもあります。例えば、糖アルコールがあるのですが、エリスリトールが甘味剤として使われています。これはメロンなど自然食品の中にもあるのですが、必要以上にダイエット志向で過剰に使う場合にアレルギーの原因物質となる場合があります。原因が分からなくて、よく調べたらエリスリトールアレルギーだったという報告が最近ありました。
- 今日は原因物質側の話を主にしたのですが、私達の体の側の要因も、とても影響しています。成人だと仕事の疲れやストレスも影響します。ホルモンのバランスでも違ってきます。女性は性周期の生理前や生理後でアレルギーが出やすくなったりします。そこで解熱鎮痛剤を飲むと、さらに余計に出やすくなることもよくあります。
- Q6.IgE抗体は、もう予防というのは難しいのだろうかということと、個人によって出方が違うというのは、何かそこに原因があるのでしょうか。なる人とならない人の違いは何かあるのでしょうか。
- A6.
- 免疫の反応の遺伝的な背景としてIgE抗体を作りやすい人と作りにくい人がいるのは事実です。IgE抗体が多く作られる人というのは、症状がなくてもIgE抗体が作られやすい人がいます。個人差があります。私達が持っている免疫の素質です。免疫応答の違いもあるし、あとは原因物質にどこでどう接してくるかも影響があります。今日のテーマである食物では、どこで原因物質と接触して、その後どうなって行くかというのは、100%理解されていません。例えばピーナッツアレルギーだと、外国の研究では、イギリスでピーナッツ由来のオイルを赤ちゃんの皮膚に塗っていた場合、その中にはピーナッツの残留タンパクがあるわけです。そうすると、それをスキンケアの保湿剤として塗っていて、皮膚を通してピーナッツのIgE抗体が作られたこともありました。
これに似たようなことは、日本でも茶のしずく石鹸と言って、女性の方々が悠香という会社から茶のしづく石鹸を買って、それを使って泡立ちがいいと言って使っていたら、小麦の運動誘発タイプの健康被害が多発して、今訴訟になっています。それは顔の薄い皮膚とか粘膜から原因物質が入ったと思います。
あとは職業性アレルギーと言って、おそば屋さんのご子息でそばアレルギーが起きてしまうことがよくあります。和菓子屋さんやパン屋さんで小麦アレルギーが起きたり、あとは動物実験をやっているような方が、モルモットをずっと触って使っていたら、モルモットアレルギーになったりなど、元々の私達の体プラス環境要因と、それが複雑に絡み合って発症します。
あとダニのアレルギーも、国ごとにダニアレルゲンがどれだけあるかが違います。日本はアジアの一部で高温多湿ですから、ダニはとても多く生息しています。でも、ヨーロッパのドイツから北のスウェーデン辺りに行くと、ダニはもう生きていられないのです。ですので、スウェーデンでは喘息の主要原因は猫です。日本ではダニが喘息の原因として多くて、子どもが布団の上で暴れたりすると発作を起こしたりするのですが、スウェーデンだとお友達の家に行って猫がいると、そこで発作を起こして帰ってくるわけです。
あと私達の元々持っている素質とか、湿疹があり、皮膚が荒れていると皮膚から原因物質が入ってきたりということも、IgE抗体が作られやすくなることにつながります。ですので、今は赤ちゃんの湿疹を早くからきちんと管理することを、専門医は指導を行っています。どこから原因物質が入ってきてIgE抗体が作られるかということを考えていくのが極めて重要なのと、あとは環境中にどれだけの原因物質があるかとか、その人がどれだけのIgE抗体を作りやすいかとか、そのような要因によって相当変わってくると思います。
口腔アレルギー症候群で、もともとは花粉に対しての抗体を持っていて、症状は出なかったのが、出産を経験して症状が出てきた例もあります。
子どもも成長発育していくところに従って、消化器系の発達や免疫の発達とかいろいろなことがあって、小さい時に食物アレルギーは基本的に治っていきます。
- 免疫の反応の遺伝的な背景としてIgE抗体を作りやすい人と作りにくい人がいるのは事実です。IgE抗体が多く作られる人というのは、症状がなくてもIgE抗体が作られやすい人がいます。個人差があります。私達が持っている免疫の素質です。免疫応答の違いもあるし、あとは原因物質にどこでどう接してくるかも影響があります。今日のテーマである食物では、どこで原因物質と接触して、その後どうなって行くかというのは、100%理解されていません。例えばピーナッツアレルギーだと、外国の研究では、イギリスでピーナッツ由来のオイルを赤ちゃんの皮膚に塗っていた場合、その中にはピーナッツの残留タンパクがあるわけです。そうすると、それをスキンケアの保湿剤として塗っていて、皮膚を通してピーナッツのIgE抗体が作られたこともありました。
- Q7.今衛生の非常に文明化された中で暮らす私達は、もうアレルギーとはうまく付き合っていくしかないのですか。予防は難しいのでしょうか。
- A7.
- 予防が見つかったらノーベル賞ものです。自己免疫性疾患とかⅠ型糖尿病とか、文明の発達と共にずっと増えている病気って、別にアレルギーだけでなくて、潰瘍性大腸炎とかいろいろな病気があります。感染症タイプは昔の病気になったのですが、非感染性の病気というのは、免疫が関係していて世界的に増えてきています。
- Q8.食べるものの量をコントロールするということと、経口免疫療法というものの大きな差はどこにありますか。今実際にやっている色々な対応の仕方と、この経口免疫療法との差はどこにあるのでしょうか。
- A8.
- どこまでが経口免疫療法で、どこからが負荷試験で、指導していくかというのは病院ごとに違います。私達も経験を積み重ねて、少ない量に止めていても、体が治していく方向の力を獲得できるということが分かってきました。少ない量も摂れない人を経口免疫療法でやって、少しでもいいから摂れるようにしてあげて、そこからあとはもう1年間そのままにして負荷試験を行うと、結構症状が出なくてやっていけるという経験があるので、患者さんには無理矢理に大量に増やしてということは今行っておりません。その辺が経口免疫療法と経口負荷試験の違いです。
あとは低年齢の人たちは、どこでどれだけの量が大丈夫になるかというのは、負荷試験をやっていかないと分からないものです。負荷試験をやってここまで摂れたねと言ったら、それに対応してどれだけのものがいろいろ摂れると言って食生活の幅を広げてもらって、どんどん乳製品とかの味に慣れてもらったり、いろいろなことをしてもらっています。味覚の発達が非常に重要で、やはり小さいうちから摂っていくのがとても大切です。小さいうちに徹底的に避けていると、そういうものをすごく嫌いになる子が結構います。アレルギーだけでなくて、味覚とか食感とかに慣れてもらう観点からも、できたら早いうちから部分的に少しでもいいから摂っていくということを心掛けてもらっています。
- どこまでが経口免疫療法で、どこからが負荷試験で、指導していくかというのは病院ごとに違います。私達も経験を積み重ねて、少ない量に止めていても、体が治していく方向の力を獲得できるということが分かってきました。少ない量も摂れない人を経口免疫療法でやって、少しでもいいから摂れるようにしてあげて、そこからあとはもう1年間そのままにして負荷試験を行うと、結構症状が出なくてやっていけるという経験があるので、患者さんには無理矢理に大量に増やしてということは今行っておりません。その辺が経口免疫療法と経口負荷試験の違いです。
- Q9.テストなど精神に負荷を掛けるような状況になるとアレルギーが出る人は結構いるのですか。
- A9.
- 湿疹なのかじんましんなのかによっても違うかもしれません。ストレスが掛かった時にじんましんが出やすくなったり、そういう精神状態とアレルギーは密接につながっているということはよく経験します。すごく顕著に出る人と出ない人がもちろんいるとは思います。
- Q10.牛乳・卵、果物も含めて、いろいろなものを3歳ぐらいまできちんと煮たり焼いたりして食べさせることである程度予防できるのでしょうか。
- A10.
- 卵は通常生で小さな子どもに与えると、サルモネラの感染症が1,000件に1件ぐらい起きます。だから当然のことながら、熱を通さないと駄目だというのは、常識です。牛乳については、もちろん殺菌されている状態で提供されていますから、全く問題ありません。あとは、例えば蜂蜜を0歳児に与えると、先日のような乳児ボツリヌス症の問題が発生する可能性もあります。イクラの生とか、例えばユッケとかの肉を熱を通さないと、やはり感染症の問題が発生します。通常は普通に熱を通してとか、殺菌して調理していただければ何も問題はないはずです。
- Q11.例えばすりリンゴとか、果物のジュースとか、そういうものも避けた方がいいのでしょうか。3歳ぐらいまでは加熱した方がいいということだと、フレッシュジュースではなく、何でも加熱した方がいいのでしょうか。
- A11.
- 感染症のリスクのないようなものであれば、もちろんすってそういうものを離乳食に提供するのは問題はありません。リンゴは、胃の中に入ればアレルギーを起こす力は弱まるほどの弱いアレルゲンなので、全然生で与えても問題はありません。感染症的な問題もあるし、アレルゲンの問題から言うと、例えばイクラは熱が通っていない魚卵でアレルギーが出てきたというのは、やはり最近の話なので、きちんと生で与えないのが一つの考え方だと思います。イクラがどうして発症するのかというのは、まだよく分かっていません。ただ、患者さんで、妊娠中に沢山イクラを食べていて、生まれた赤ちゃんは0歳の時からイクラに対してIgE抗体が検出された経験があります。妊娠中の食事は別に普通にしていていいと言うのですが、過度に摂るとか、やはりよろしくないのだろうと思います。
- Q12.子どもの頃にアレルギー症状があった人は、大人になって別の原因物質でアレルギーになりやすい体質という因果関係はあるのでしょうか。アレルギーは、国毎に民族的に、原因物質の違いはあるのでしょうか。例えば日本人はお米を食べてきているので、原因物質の違いが、それまでの食生活との因果関係があるのかどうなのでしょうか。
- A12.
- 子どもの時のアレルギーと、大人になってからの新規に発症してくるものの関係というのは、まだ食物アレルギーが出てきてから30年位なので、結論的なことは言いがたいです。必ずしも関係しているケースは多くないと思います。食生活については、世界で子どもを見ると、どの国もやはり卵・牛乳は多いものです。3番目に例えば日本だと小麦が来ますけど、アメリカに行くとピーナッツが多くてという国ごとの違いはあります。シンガポールや香港に行くと魚介が多かったりとかあります。だから、生活習慣・食習慣も関係してくるのだろうと思います。そばは日本に比較的独特なアレルギーです。最近はニューヨークやフランスでもおそばを食べてアレルギーを起こしたという人も症例報告ではいる様です。やはりどうしてそういうものからなるのかは、まだ100%きちんと理解はできていなくて、余計なものを皮膚に塗ったとか、環境中に過剰にあったとか、そういうことも影響してくるだろうということは推定されています。
- Q13.食物アレルギー薬の研究も進んでいるのでしょうか。
- A13.
- IgE抗体を抑える薬は、今喘息とじんましんに使われています。ただ、それを食物アレルギーに応用しようかという動きは、少し値段が高すぎてなかなか難しいようです。アメリカの会社がその薬を持っているのですが、それを食物アレルギーの方に持ってこようという動きは、今は止まっている様です。
- Q14.アナフィラキシーという症状の場合は、救急車で病院に運び込む以外にはないのでしょうか。放っておくとどういうことになってしまうのでしょうか。
- A14.
- エピペンというアドレナリンを自分で太ももに打つことができる薬が今日本でも使えるようになっています。食物や蜂毒、薬物のアナフィラキシーを起こす方はお持ちになっている方が多いです。このタイミングだったら使うべきというところで的確に使用し、その後医療機関を受診していただければ、生命的に大きな問題に至ることはないとは思います。ただ、アレルギーのアナフィラキシーは、うまく対応しないと最悪死亡事例にもつながります。人口動態統計をみると、日本では食物アレルギーで年間最大5人ぐらい亡くなっています。蜂アレルギーが大体年間20人から30人、薬も大体それぐらいです。1年間でアナフィラキシーで亡くなる方が70名ぐらいおられるので、そういう方は本来うまく対処してあげれば、命を落とさなくて済む方々です。アナフィラキシーの際には安静に横に寝かしておくというのがとても重要です。アナフィラキシーになっているのに、いきなり起き上がったりするのは血流動態からするとよろしくないです。起こしたり、体位変換したりするのは良くないです。アナフィラキシーの患者を見つけたら横に寝かせて、本当にショックまで行くような人だったら、足を脚上して、足の血液をなるべく脳の方に行くような対応をしてください。あとは太もものところにエピペンをきちんと打てればリスクは下がると思います。