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第90回 食物アレルギーの基礎知識

牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

文部科学省 今後の学校給食における食物アレルギー対応について最終報告(平成26年3月26日)
学校におけるアレルギー疾患対応資料

調布の学校給食の事故を受けて、平成26年3月26日に文部科学省から、今後の学校給食における食物アレルギーの対応についての最終報告が出されている。平成27年3月末に全国に資料を配った。文部科学省のサイトの中にある「学校給食における食物アレルギー対応」についてというホームページにアクセスすると出てくる。このホームページには映像資料で、例えばエピペンの正しい使い方、救急要請のポイントをミニドラマで示している。適切にエピペンを使えなかった例とか、どこが間違っていたかとか、ドラマ形式で解説している。学校給食における食物アレルギー対応指針も文部科学省で作成している。

給食での食物アレルギー対応の考え方

今できるだけ原因物質を摂らせようと考えて患者に指導しているが、学校給食で大量調理する場合は、安全に食を提供することが第一優先である。子供は風邪をひいたり、運動したりで、アレルギーの症状が出やすくなることがよくあるので、学校では完全に大丈夫になってから解除するというのが、学校側が給食を提供するためのルールにしてある。

生活管理指導票(アレルギー疾患用)
<財団法人日本学校保健会>学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)はこちら
<厚生労働省>保育所におけるアレルギー疾患生活管理指導表はこちら

家ではできるだけ摂らせていこうと実践しているが、学校や保育園で給食を出す時には、リスクマネージメント、つまり安全性を考えること、給食を提供する立場の方になって考えることを、ガイドラインでは書いてある。保育所や幼稚園・学校では、「学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)」があり、どういうアレルギーがあって、どういう理由で食物を避けているのかということまできちんと書くようになっている。

特異的lgE抗体測定の原理
代表的なプロパピリティカーブ

診断や管理を今どうやっているかということについて、簡単に医学的な話をする。
血液を持ってきて、原因物質にくっつくIgE抗体があるかないか測定するのがIgE抗体を測る検査の原理である。特異IgE抗体は、牛乳を例に取ると、血液検査で0.3 (UA/ml)は陰性で、100 (UA/ml)は強陽性。縦軸に0~100%というのは、牛乳のアレルギーが起こる可能性を示している。例えば0歳の子どもだと、IgE抗体がクラス3という数字を持っていると、9割方牛乳アレルギーの診断がつくが、1歳になると50%、2歳以上になると30%。同じ牛乳の検査の数字が、ある子供が持っていたとしても変わってくる。同時に皮膚テストをする。どれぐらい腫れるかを見て、例えば3mm以上蚊に食われたようなのが出ると陽性と簡単に言うと言うわけである。そういう検査で、その子がアレルギーを起こす素質があるのかどうかを見ることがある。もちろん検査する時は、何かを摂った時に症状が出た人を対象にして行なう。何ともない人を対象にして検査は行なわない。例えばとても重いアトピー性皮膚炎があり、食物アレルギーを合併していそうだとか。また、離乳食を安全に進めていきたいがどうしたらよいかという人とか。あとは何かを食べたらアレルギーの症状が出たが、卵なのか牛乳なのかどちらか分からないとか。そういう時に検査を行なう。

食物経口負荷試験とは

そして検査と病歴を組み合わせて診断する。最終的に診断が決まらない時は、食物経口負荷試験を行なう。これは医師が立ち会って、お子さんが原因物質が入っているものを少しずつ食べて、症状が出るか出ないかを見ることを行なう。いろいろな方法があるが、1回だけ摂って安全に摂れるということを確認する方法や、何回かに分けて行なう方法もある。

牛乳負荷試験の総負荷量毎の陽性率

次に検査の横軸に陰性から強陽性を表している。縦軸の0.0から1.0というのは100%。グラフカーブの上から、牛乳200mlを摂れるか摂れないかというカーブ、100mlを摂れるか摂れないかというカーブ、牛乳25mlが摂れるか摂れないというカーブである。これは、例えばIgE抗体が牛乳に対して30という人がいたとすると、その人は間違いなく200mlは絶対に飲めないが25mlだったら少しは摂れる可能性が出てくる。3mlになると相当摂れる可能性がある。3ml摂れるというのは、牛乳の製品で言うと、バター10gぐらいに相当する。だから調理にバター炒めとか、バターを使えるということになる。牛乳200mlは駄目、100mlも駄目かもしれない、加工品も駄目かもしれないが、バターは摂れるかもしれないと言える。
今どの様な指導をしているかというと、検査データのところでざっと話したが、加工品が摂れる人は加工品まで摂らせている。バターが摂れる人はバターを摂る指導をしている。摂れるところまで摂らせておくと、最終的には牛乳アレルギーが治っていくことにつながって行く。重い人や、やめざるを得ない人はもちろんいるが、完全にやめることはなるべくしないようにしている。例えば3mlを目標の負荷試験、25mlを目標の負荷試験を行っている。

管理栄養士との連携

もう一つ大切なことは、加工食品が摂れる人の場合には、どんなものが摂れるのか教えてあげないといけない。その場合に非常に味方になるのが管理栄養士である。病院では医師が診断をして方針を決めると、栄養士がこういう食品だったら牛乳がどれぐらい入っているから、あなたはこれを摂ることができると、指導をすることができる。患者も医師と話す時間は医学的な話をするが、食物の方の話は栄養士と時間を掛けて話す。食物アレルギーの管理には、患者と家族、医師と栄養士のチームプレーが重要である。

経口免疫療法の概要(研究段階)

経口免疫療法は一般診療ではなく、研究段階なので、患者に利益と不利益を説明した上で、それでも行なうかを説明して、同意書を戴いて行なう。少しでも摂れることは、治っていきやすさにつながる可能性があるので、更に研究をより小さな子どもたちターゲットに考えている。

栄養食事指導

経口免疫療法は、原因物質を本人に分からせて摂らせていくことなので、ある程度の年齢に到達していないと、自分が積極的に摂っていこうという気にならない。あとは運動が加わったり、風邪をひいたりすると症状が出たりするので、簡単な話ではなく、年単位の治療になる。毎日摂ったり、定期的に摂ったりが必要になる。一旦治療を中止して、効果が持続しているかどうかも検査する。あとは運動を加えて大丈夫かまで必要なら検討する。
有症率の山が小さくなって、より早く治ってくれたらいいなと思って、日々患者さんたちと力を合わせて診療と研究を行なっている。