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第87回 食品表示制度と乳・乳製品

牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

それを受けて平成25年に食品表示法が制定されました。先程の基本的認識ということで、食品を摂取する際の安全性の確保と自主的・合理的な食品選択機会の確保ということになっています。それから、法律には表示内容を規定していなくて、表示基準の策定に必要な事項を規定して、一般消費者の利益増進を図るとともに、国民の健康保護・増進、この辺が厚生労働省由来のところです。それから食品の生産・流通の円滑化、食品の生産の振興に寄与するということで、これは農林水産省由来の目的ということで、二つ合わさったような形で目的が規定されています。従って、それぞれ要求される表示、必要な表示事項というのは、優先順位もあるでしょうし、安全性もあるでしょうし、健康増進というのもあるでしょうし、あるいは生産の振興もあるということで、見方を変えていく必要があります。全部通り一辺倒で理解しようとすると、なかなか理解がしにくいのかなと思います。

食品表示法(平成25年法律第70号)

食品表示法の基本理念として、消費者基本法の第2条1項に規定する消費者施策の一環として同じことが書かれています。ただ、最後の方でお話をしますが、原料原産地の表示検討でも言われていますが、食品の生産・取引、消費の現況、将来の見通しということで、小規模事業者の活動に及ぼす影響、事業者間の公正な競争に配慮するということで、消費者の権利や自立の支援というのももちろん大切ですが、生産の状況、流通事業者の負担とか、いろいろなことがあるということなので、そういうことを考えましょうということで、実際問題としては栄養表示基準についても、義務化されるということなのですが、非常に小規模の事業者に対してはそこを除外したとか、そのようなことで手当てされています。ただ、安全性にかかわることは除外されてないということです。

食品表示法

こちらは食品表示事項として、義務表示と任意表示があります。それも食品表示基準の中で、入り組んで決められているので、なかなか理解するのが難しいのですが。その辺の考え方が書いてありまして、もし後で食品表示基準をごらんになった時にみていただければいいかと思うのですが、食品の安全性確保に関する情報が確実に提供されるということです。だから、先程私が申し上げたように、最初はやはり取り締まり、例えば何か事件が起こったときに、誰が製造したのか、そういう元をたどっていくような情報が必要だったわけですが、今では消費者が食品の安全性確保に関する情報の提供を受けるということが重要であるとなっています。安全性確保にかかわらないことについては、消費者にとって重要性は異なるということです。表示の義務付けですが、規模の大小を問わず全ての事業者が実行可能なものであるか否か検討が必要ということです。これは当然ですが、非常に難しいことです。さらに、事業者の実行可能性に影響を及ぼすようなコストの増加、それから監視のコスト、社会コストなどを総合的に勘案した上で、消費者にとってメリット・デメリットをバランスさせていくことが重要だと。その通りなのですが、義務表示を考える上で非常に難しいことだなと思います。パッケージに表示することは自ら限界があるわけです。そうすると文字を小さくすればいいのか、パッケージ以外のもので情報提供したらいいのか。でもそれは具体的には何なのか、あるいは、インターネットで情報提供すればいいのかと。では、どれだけの人が買い物に行ってインターネットを見るのだと。今はスマホがあるから見ようと思えば見られるかもしれませんけど、そういうことがって本当に現実的なのかどうか、いろいろ考えなくてはいけないということだと思いますが非常に難しいと思います。

義務表示事項の範囲

食品表示法に基づいて、食品表示基準が決められておりまして、その中でここに基本的なものしか書いていないですが、いわゆる表示の方法ですか、この枠内表示でどういう事項を書かなければいけないのか。そして、栄養成分表示についても、義務化されたものがありますので、そういう部分についてはこういう形で書いてくださいということで、ナトリウムという記載があったと思うのですが、新しい基準では食塩相当量という記載になっております。
実際の製品をお示しできれば良かったのですが、それができなくて、乳協の会員に協力をいただいて、新しい表示があるのかということで聞きましたが、まだほとんどのものが新しい表示に移行していないと思います。猶予期間が5年間ありますので、平成32年だったと思いますが、それまでに順番に新しい表示に移行していくということになっています。

表示の方式(食品表示基準)

では、食品表示制度における新たな適用ということで、今までなかったものがあります。これもあまり詳しく説明している時間がないので申し訳ないですが、機能性表示食品。これもだいぶ世の中に出回っていますのでご存じかと思います。これは食品表示基準が平成27年4月からできたと同時に実施をしている制度で機能性表示については、全部新表示ですので、それを見てみれば新しい表示がどんなものか分かるということです。その他、以前から問題になっている、例えばアレルゲン、アレルギー物質の取り扱いについて、先程のようにパッケージがあるものはいいのですが、いわゆる中食や外食でどう取り扱ったらいいのか。これも検討はされているのですが、まだ結論は出ていないということです。それから、加工食品の原料原産地表示ということで今検討中です。これも新聞等で報道されていますのでご存じかと思います。

食品表示制度における新たな適用範囲

これ以降、政府機関が出している様々な取り組みです。特に最近は内閣主導と言いますか、政府でもって取り組むべき事項というのがあらゆる分野で決められておりまして、ずっと今まで流れてきた表示の機能、食品衛生の取り締まりとか、あるいは消費者に対する情報提供とかからもうちょっと先に進んでいるということだと思います。だからこの辺も私自身なかなか理解しにくい部分ですが、そういう時代だからと思っています。
例えばこれは消費者基本計画、新たな食品表示制度ということで、先程の機能性表示も含めた円滑な施行について、昨年から施行されてから何年間か見ていきましょうと。それから健康食品も含めた表示広告の適正化、これは別な話題になりますが、これも消費者庁等で担当しているということです。食品表示の監視・取り締まりも引き続き実施しているということです。
これは農林水産省ですが、食料・農業・農村基本計画ということで、食品の安全性確保と消費者の信頼確保のうち、消費者が適切に食品を選択するための機会の確保、それから需要に即した食品生産の振興ということで、そこで加工食品の原料原産地表示について実行可能性を確保しつつ、拡大に向けて検討するという内容になっています。これが平成27年3月ですから、既定路線ということになっていると思います。
これもご存じだと思いますが、TPP協定はもう衆議院が終わりそうというところですが、平成27年11月に総合対策本部決定で、攻めの農林水産業への転換ということで、消費者の国産農林水産物・食品に関する認知度をより一層高めて、消費者の選択に資する。これは非常にいいことです。だから農林水産業をもっと活発にしていこうというその中の一つとして、原料原産地表示について先程と一緒です。実行可能性を確保しつつ拡大に向けた検討を行うという内容になっています。
もう一つ、日本再興戦略は本年6月2日。これは今の安倍内閣になってから毎年出てくるものですが、攻めの農林水産業への転換と輸出力です。輸出強化があります。TPPですからもちろん輸入も関係するのですが、日本から輸出することも強化をしていきましょうという内容です。消費者の自主的かつ合理的な選択の機会の確保に資するよう、原料原産地について全ての加工食品についての導入に向けて、実行可能な方策について検討を進めるということで、端的に言えば国産品であることを明らかにして、消費者に選んでもらおうということかと思います。この辺が先ほど言った食品表示法の義務化事項とのかかわりと言うんですか。その辺をどう考えるのか、今まさに検討されているところだと思います。

消費者基本計画(抜粋)(平成27年3月24日閣議決定)工程表(平成28年7月19日改定)
食料・農業・農村基本計画(平成27年3月31日閣議決定)
総合的なTPP関連政策大綱(抜粋)(平成27年11月25日TPP総合対策本部決定)
日本再興戦略2016(抜粋)(平成28年6月2日閣議決定)

資料の最後だと思いますが、原料原産地表示制度に関する検討会ということで、今までに10回開催されていて、11月の会議で中間取りまとめ案が示されて、今後取りまとめられると聞いております。私からは説明がしづらいのですが、こちらの参考資料というのが付いているかと思います。先程来の政府の方針で、全ての加工食品ということになっています。検討会の結論として、こういう方向で考えましょうということで、結論ではないのでしょうけれども、こういう方向ということになっております。全ての加工食品が対象で、表示すべきものが重量割合上位1位のみとなっています。ただ、1位でもいろいろな表示方法があります。現在、加工食品の一部では、原料原産地表示が義務付けられているものもあるので、その表示方法は基本的には同じような考え方ということですが、お手元を見ていただいて、今までの原料原産地表示のやり方同様に、重量割合1位の原材料について、国別・重量別に記載をしてくださいということになっています。これが基本ということですね。これが一番分かりやすいと思います。その次に可能性表示ということで、原材料産地の切り替えなどの都度表示を変えなければならないということで、過去の実績に基づいた表示ということを書いた上で、または計画という言葉を使いましょうということになっています。それでもできなければ、大括り表示ということで、産地切り替えの度にその可能性表示であっても、表示の変更が生じるといった場合に、ここに書いてあるのは輸入と国産とあります。それでもできないということであれば、大括り表示プラス可能性表示という形で書かれております。これも具体的にどうなるのかというのは、これだけ見ても難しいのですが、実際に義務化ということになれば非常に影響が大きいと思っております。
もう一つは中間加工原材料ということで、これも乳製品の中でも多くありますが、中間加工だからどこで加工はしているわけなので、そこは分かるのですが、その前はどこなのかが分からない場合です。一番上に書いてある表示方法が現行同様というのは、基本的なものですけれども、その下に行くに従ってちょっと情報が不明確になってくるということですが、事業者の負担であるとか、実行可能性とか、そういったことを考慮して、このような形でまとめる予定ということです。

参考資料1:加工食品の原料原産地表示の拡大(出展:平成28年11月2日 消費者庁・農林水産省)
参考資料1:加工食品の原料原産地表示の拡大(出展:平成28年11月2日 消費者庁・農林水産省)
参考資料2:表示方法のイメージ図(出展:平成28年11月2日 消費者庁・農林水産省)
参考資料2:表示方法のイメージ図(出展:平成28年11月2日 消費者庁・農林水産省)
加工食品の原料原産地制度