これは牛乳・乳飲料のうち常温保存可能品ということで、今では店頭で見掛けることが少なくなってきましたが、これも昭和60年ですから、1985年に、それまでは常温保存ではなく要冷蔵であったということで、いわゆるLL牛乳、ロングライフミルクと言われていたもので、10度以下で保存することを要しないと当時の厚生大臣が認めたものを常温保存可能品ということで規定をして、その中で表示については常温保存可能品ということと、保存の方法ということで、常温を超えない温度で保存をするということ。それからもう一つ。これが一番最初だったのですが、品質保持期限ということですね。これは、常温保存可能品ということで最初は2か月ぐらいの期限表示だったと思いますが、今までにない、それまでは製造年月日表示ということだったのですが、品質保持期限を表示するとされました。
その後、添加物対策はまだ終わっていなくて、先ほど申し上げたように昭和63年ですが、化学的合成品である添加物、それからこれと同一の物質ということで、全て表示の対象としましょうと。ただし、化学的合成品である添加物について、その栄養強化の目的の添加物。それから加工助剤というのは例えば濾過をする時にいろいろな濾過助剤と言うのですが、そういったものを使用したり、キャリーオーバーは原材料に添加物を使っていて、それが製品に移行することを言いますが、製品に移行してしまうということで、これを除いて全て表示しましょうとされて、今の流れにかなり近付いて、物質名・用途名を表示しましょうと。それから、化学的合成品以外の添加物は、いわゆる天然添加物と称していたわけですが、化学的合成品である添加物と差異を設けないということで、天然のものの方が安全だとか優位だとか優良だとかですね。そういったことの表現の使用を認めないことにしましょうというふうになります。
その後、翌年、平成元年に化学的合成品以外の添加物の表示について、規則等の改正により化学的合成品か否かにかかわらず、全て表示ということです。表示はこうなったのですが、食品衛生法自体には添加物の規制がありまして、認められた添加物しか使用してはならないとなっていたわけです。それは化学的合成品だけだったのですが、平成7年に食品衛生法の一部改正ということで、先ほど申し上げた添加物の範囲を化学的合成品の添加物から、天然香料、一般に食品として飲食に供されているものを除いた添加物ということになり、その飲食に供されているものというのは、通常食品としても食べるけれども、例えば色を付けるとか、そういった用途にも使う場合は、食品だからいいでしょうということで、天然香料も問題ないでしょうということで、それ以外の化学的合成品であろうとそうでなかろうと、認められたものしか添加物として使用できませんというのが、この時の改正になっています。従って、併せて先ほどの添加物の表示というのが基本的にということですが、全ての添加物の表示にすべきことになったということになります。先ほど申し上げた昭和の終わりぐらいから平成に掛けてということですが、最初に私が申し上げていたように、添加物は認められたものしか使用できないわけですから、基本的に使い方さえ間違えなければ全然問題ないわけです。ただ、そこに何らかの問題があると思われる方が非常に多かったということで、取り締まりと言うよりは、情報提供ですか、そういう形に大きく変わったなと思います。だから食品衛生法が変わったわけじゃなくて、そのような世の中の流れの中で、添加物が象徴的な存在であったと思いますけれども、食品衛生法の目的と言うよりは、表示制度が衛生上の取り締まりという観点からプラスアルファと言うか、情報提供と言うのか、その流れが今につながってきているのだと思います。これは私自身がそう思ったということですが、そのような流れで動いていったということです。
それ以降、そのような流れは非常に大きくなりまして。国際基準、CODEXはご存じだと思いますが、そういったところの流れもあったのですが、平成13年にアレルギー物質を含む食品の表示、いわゆる特定原材料の義務化ですね。現在はエビ・カニ・小麦・そば・卵・乳・落花生ということで7品目が特定原材料ということで、それ以外に特定原材料に準じるものとして推奨表示として20品目あります。ほとんどの牛乳・乳製品は乳成分主体ですから、乳という言葉がどこかにあれば問題ないと思いますが、アレルギー表示も非常に大きな変化ということですね。それからもう一つは、遺伝子組換えということですが、これもご存じだと思います。遺伝子を組み換えた食品が問題かどうかというと、事前に審査をしていますから、実際に審査がOKなものは問題ないという結論ですが、これも情報提供と言うか、そういった形で安全性審査と表示が義務化されたという流れになっています。
それからアレルギーについて言うと、当時は今までの経緯から行くと、原材料としてそういう情報を知るというのはあるのだけれども、アレルギー患者さんはもともとアレルギーだということを自覚しているのであれば、そういったものを避けているはずだから、自分で注意すれば問題ないのではないかと当時は私も思っていたのですが、今となってみると、やはりその表示が頼りと言いますか。昔は例えばお店に買いに行って、お店の人に何が入っていますかと聞けば良かったのだけれど、今はほとんどパッケージされて、売られているというのが実態ですので、そういったものは表示を見て避けると言うか、そういったことが重要だということと、やはり一度発症すると非常に重篤な症状になる可能性が高いということから、現在はこの表示は非常に重要なのだと思っております。
それからもう一つ、日付表示ですが、これはもう最近のことですので、ご承知だと思います。これもきっかけは輸入食品の関係で、外国から要請されたということだと思います。ただ、その先ほどの昭和からの連綿とした表示の流れで、製造年月日でないと信用できないとかいろいろありましたが、そのことによって過度な鮮度追求と言うか、例えば牛乳だったら日付表示のある日に売っているとか、夜中から作業をしているという。当時Dゼロっていうのがありましたが、それは良くない問題であろうと思います。もちろん過当競争になるのも良くないし、環境上も良くないのではないかと。適正な流通期間を取って、適正な販売期間、あるいは実際に消費されるまでどのぐらい必要なのかというのが当然食品によってそれぞれあるわけですから、その十分な販売期間で捨てたり余ることなく消費しましょうというのが一番だと思います。その辺が当時、なかなか理解が難しかったようです。今では当たり前のことだと思うのですが、平成6年に期限表示ということで、製造又は加工の年月日に代えて、定められた方法によって保存することを前提として、その期限年月日だけではなくて、併せて保存の方法を表示することにされたということです。
その後に平成15年ですけれども、これは後でもまた出てきますが、食品衛生法とJAS法というのがありまして、その中で表現、同じように表示の規定があったわけですが、表現が違って分かりにくいということで、消費期限、先ほど申し上げた品質保持期限という言葉を使っていたのですが、食品衛生法とJAS法で定義を合わせるということと、食品衛生法で使っていた品質保持期限という言葉を消費期限に変えて、混乱をしないようにしましたということです。そういった表示の一元化というような、そういった流れの中からこうしたことが出てきて、まだこの時代、なかなかうまく行きそうで行かないようなところでしたので、この後に現在の消費者庁に至る流れが出てくるわけです。
平成15年当時の乳等省令に規定された表示事項です。今も同様ですが、現在、表示行政の部分が全部消費者庁に移ってしまいましたが、厚労省の当時の内容ということです。これはご存じの通りで、お手元にあるものとあまり変わっていないと思いますが、種類別○○、常温保存可能品であれば、それが可能である旨。それから殺菌の温度・時間。期限表示、それから主要成分・主要原料・主要混合物。アレルギー物質を含む旨。それから保存の方法。添加物を含む旨。それから製造所所在地、製造業者ということで、こういったことが基本的な表示事項ということです。
今まで食品衛生法の表示事項の変遷でしたが、あとはいろいろあるのですが、あまり詳しい分野ではないということと、事項が多いのでまとめて話をしたいということです。一つは先ほども申し上げた農林水産省でやっていた農林物資規格法、いわゆるJASを作っていたということで、昔は原料牛乳であるとか、乳製品についても日本農林規格がありました。過去の時代ですので、当時あまり品質が良くなかったこともあって、こういう規格を定めて品質の水準を上げることが目的であったと思います。
次に、同じ頃まず栄養改善法という法律ができまして、その中で特殊栄養食品ということで、非常に懐かしい響きですが、当時は栄養強化食品とか、ビタミン等を添加したものがあったと思います。その後、昭和57年に今でもある乳児用調製粉乳の表示許可。それから平成3年に、これは特保と言われていますが、特定保健用食品の表示許可制度ができています。その後、これもご存じだと思いますが、平成8年に栄養成分表示制度。当初は任意の制度であったわけなのですが、栄養改善法も制定当時の昭和20年代から比べればどんどん時代が進むに従って内容が変わり、平成14年に健康増進法が制定されましたが、その食品の規定部分については受け継がれているということで、栄養改善法は廃止されたという流れになって、これがまた後で出てくる食品表示法の一部になっています。
もう一つ、農林物資規格法の一部改正ということで、これは昭和40年代の消費者保護やその前の昭和30年代にもいろいろな例えばこの下に出てくるような不当表示というようないろいろな事件があったこともあったと思いますがけれども、農林物資の規格化、それから品質表示の適正化に関する法律ということで、JAS法ということに変更されて、最初はいわゆるJASが設定されたものに、その品質表示をするという方法であったわけですが、平成13年からは、加工食品品質表示基準を義務化したということで、これも今の食品表示法の一つの源泉となっているものです。
それから不当景品類及び不当表示防止法。景品表示法と言ったりしますが、これは食品だけではなくて、あらゆる商品取引と言いますか、消費者に優良誤認をさせるものを取り締まります。これは食品だけではないので、なかなか先ほど言っていた取り締まりがなかなか難しいのですが、牛乳・乳製品についても過去にいろいろなことがあったとのことです。昭和43年に牛乳・加工乳・乳飲料の表示に関する公正競争規約が制定され、今もずっと続いているものです。その他にも、ナチュラルチーズ・プロセスチーズ・チーズフード、アイスクリームや発酵乳乳酸菌飲料・殺菌乳酸菌飲料について公正取引規約を制定して、公正取引規約ですから取り締まりと言うよりは、事業者の自主的な対応を求めるものですね。自主的に法律を遵守しましょうと、今で言うとなかなか日本語に訳しにくいコンプライアンスという言葉がありますが、そういったような形でこの公正取引規約というものを考えればいいと思います。
その次が、最初消費者保護基本法という名前であったと思います。昭和43年当時です。その後平成16年に改正されて消費者基本法という名前になったということです。保護をしなくてもいいだろうということだと思います。ただ、その中に商品及び役務について消費者の自主的・合理的な選択の機会の確保とあります。これは食品表示だけではないと思いますが、これは一つ大きな考え方になっているということと、もう一つは消費者の自立を支援することを基本とするということで、それまでの消費者保護から、こういった合理的な選択ということと、自立を支援するという形に変わったということだと思います。この辺までは前回のお話でも出てきたかもしれません。
食品表示一元化検討会ということで、今申し上げたように消費者施策の基本は消費者保護であったが、平成16年、消費者基本法に法律名を改正して、消費者の権利の尊重、それから自立の支援ということになったということで、先程の自主的・合理的な選択というのはもちろんあるわけですが、やはり何が食品表示で優先されるかという優先順位だと思うのですが、食品の安全性を確保するために重要な機能を果たしているということです。それから、安全性に関する情報を最優先として、商品選択上の判断に影響を及ぼす重要な情報が提供されることと位置付けるということになっています。それを受けて、表示というのは最初にお話しましたが、いろいろな観点からの受け取り方があって、必ずしも全ての消費者が同じ表示を見ているわけではないということです。ただ、安全性に関するものは、それはもし間違っていたりすると、アレルギー表示ではないですが、重篤なことが起こるということであれば、非常に重要視しなければいけないと、優先順位を考えましょうということだと思います。