- 講演後の質疑応答 -
- Q1.基本的な質問ですが、ブッシェルという単位は重さなのか容量なのかどちらなのでしょうか。
- A1.
- 容量の単位です。重量に直しますと、トウモロコシの1ブッシェルは約25kgだと思います。この値段を40倍すると1トン当たりの値段になります。
- Q2.酪農経営の収益性のグラフで、平成18年のところで北海道も都府県も「所得」「労働報酬」が急に低下している理由を教えて下さい。
- A2.
- このグラフは指数のグラフなので、額を表しているものではないことに留意ください。所得は、粗収入から生産費用合計を引いたものであり、生産費用の伸びが粗収入の伸びを上回ったために急低下しています。理由は生産費用の中の飼料価格が高くなったことによります。この後の平成24、25年の統計は出ていませんが、「所得」が減少傾向で推移する可能性はあると思います。
- Q3.酪農乳業の今後の課題として、「輸入飼料への依存軽減」が第一に挙げられていますが、飼料の輸入と国産の比率と価格差がどのくらいあるのかを教えていただきたい。また、もし国内産飼料が増えて行った場合に「安全性」「国産品」等の付加価値が付いて、割高でもこちらの方がいいとの可能性を教えて下さい。
- A3.
- 国産と輸入のバランスは、北海道では配合飼料以外は自分で賄うのが過半数で、都府県の場合、配合飼料はもちろん、粗飼料も過半数が輸入と思います。両者を併せると、半分は海外品と思います。コストの問題は、自前で作った方が必ずしも安いと言えない状況ですし、耕作面積の関係から賄いきれないと思います。
品質に関しては、残念ながら海外の粗飼料の方が一般的に良質です。天候的に刈り取りの時期に乾燥する等の天候条件から傷みの少ないものができます。そうは言っても、海外での天候如何によっては、日本の酪農が大きな打撃を受けるため、影響をなるべく小さくするためにも国内の土地活用は今以上に進めることは重要と考えます。
- 国産と輸入のバランスは、北海道では配合飼料以外は自分で賄うのが過半数で、都府県の場合、配合飼料はもちろん、粗飼料も過半数が輸入と思います。両者を併せると、半分は海外品と思います。コストの問題は、自前で作った方が必ずしも安いと言えない状況ですし、耕作面積の関係から賄いきれないと思います。
- Q4.国内の田畑有効利用についての農林水産省の指導とかアドバイス等はどのようになっているのですか。旅行すると空いている田畑が多く見うけられますので。
- A4.
- 行政サイドは、国土の有効利用を進めることを重要と考えておられますし、畜産酪農の産業分野においてもコスト構造を踏まえ国土の有効活用は重要な課題として掲げておられるはずです。具体的な取組は情報を持ち合わせておりませんが、取組はやられていると思います。
- Q5.海外、特にアメリカとかオーストラリアの酪農をみるとレベルの違いを感じますが、そのような国に比較し日本がこれだけ頑張っていることは大したものだと思います。しかし国民の中には生乳の輸入があってもいいのではないかとの声があります。原料として生乳は輸入できますか。
- A5.
- 今国内の乳業は、海外の生乳を買わなければならない事情に無いのが現状です。また、国内で手に入るような品質の状態で海外から入れることが可能かというと、生乳というのは殺菌前の牛乳ですから冷却状態で迅速に乳業工場に搬入しないと品質は当然劣化するし、また輸入通関の手続きがどうあるかということも含め、考え難いと思います。
(乳協)法律上は自由に入る環境にはあります。
- 今国内の乳業は、海外の生乳を買わなければならない事情に無いのが現状です。また、国内で手に入るような品質の状態で海外から入れることが可能かというと、生乳というのは殺菌前の牛乳ですから冷却状態で迅速に乳業工場に搬入しないと品質は当然劣化するし、また輸入通関の手続きがどうあるかということも含め、考え難いと思います。
- Q6.土地利用ですが、空いている土地に対し、酪農に対する理解はどうでしょうか。住宅地が拡がっていくと、糞尿の処理等で嫌がる方がおられるとの意見を伺います。追いやられていく傾向にあるのでしょうか。
- A6.
- そのような傾向はあると思います。都市近郊の養豚養鶏も含めた畜産経営では糞尿の問題から派生する、一般市民との臭い等の問題はあると思います。
- Q7.消費者が牛乳を選択する場合、脂肪分とかサイズとかで選びますが、年令別牛乳というのは考えたことありますか。65歳以上が増えていく環境に対し、シニア向け牛乳とか対象をセグメントにしてもいいのではと思います。
- A7.
- (乳協)答えにはならないかもしれませんが、我々乳業メーカーとしては、牛乳だけではなく国内生乳を使った色々な製品トータルで、付加価値を高めて国産の生乳の需要を膨らませよう対応することが大きな使命と考えています。そのためには、必要な国産生乳を確保することが重要で、川上の原料が付いてこられるような体制を確保していく必要があります。
- Q8.「成分的な取引基準の見直し」の項で、低脂肪化の傾向がある現状から、脂肪率3.5%でなければいけない理由は何なのでしょうか。
- A8.
- 「3.5%でなければならない。」という理由はないと思います。多分、昭和62年までが3.2%で62年度から3.5%に上がりました。それまでの状況は、現在のように成分無調整ではなく、脂肪抽出が行われ、3.4とか3.5%あった場合は脂肪を抜いて3.2%に合わせた牛乳を作っていました。牛の資質の向上、飼い方の向上、また当時は乳脂肪の需給が緩んでいたこともあり、表示的に高い数字がいいという競争もあり、綜合的な結果として3.5%の基準に持ちあげたと思います。3.5%がいいから3.5%にしたわけではないと思います。当時の消費者の方々は、3.2%の時代に3.5、3.6%の牛乳はよりいいものという判断があったと思います。
- Q9.脂肪率3.5%は、消費者の要望というよりも、生産者サイドの事情から3.5%がなかなか変えられない、との感触なのですが如何でしょうか。
- A9.
- その通りだと思います。何が本当なのか読み辛いところがあり、いろいろな角度から指摘はいただいています。例えば、国の関与では、改良増殖目標は、現状でも高能力となっており、これに基づいた個体改良の水準があり、脂肪分が低いものでもいいという議論にはならない状況にあります。法律で位置付けられている乳等省令では、低いところに数字はあります。取引の基準点は生処の問題、あるいは消費者の皆様のご理解の問題なのかと思います。
- Q10.価格への転嫁というのは今の状況からどのように考えていればいいのか聞かせていただければと思います。
- A10.
- 価格転嫁に関しては、納入価格の改定状況と売り場の値付けの問題は必ずしも一対一ではないため、納入価格をどのように改定しても、最後の値段では10円単位になってしまうため、消費者のみなさんへの影響はダイレクトではないと考えます。乳業会社がプレスリリースで出しているのは、流通のみなさんへの卸価格の改定で1~4%。これがOKとなっても、それぞれの値付けをするときにいくらにするかはわかりません。
- Q11.いろいろたくさんの課題を抱えた日本の酪農事情ですが、海外の酪農に対抗するためにはどのようにして行けば、私たちはどのように努力をするべきかを考えされられました。Jミルク様には、大局を見据えてリードしていただき、国民を指導していただきたいと思います。高齢化社会を迎え、カルシウム、ビタミンの重要性、また精神的な安定のために必要な要素を兼ね備えたミルクをもっともっとプレゼンしていただきたいと思います。
- A11.
- 今年Jミルクは、協力をしていただいている先生方の組織を外部組織として、「乳の学術連合」に組織化しました。医療・栄養系の「牛乳乳製品健康科学会議」、社会文化系の「乳の社会文化ネットワーク」、食育・教育系の「牛乳食育研究会」から横断的に協力者を募り組織化し、それぞれの視点から新しい価値訴求をしていこうという研究を行い、分かり易い情報として広くお伝えしていこうと取りかかっています。まだ成果は出ていませんが、頑張っていこうと思っております。
- 参加者からのコメント -
●ご講演を伺い、日本の食料自給率向上に対し、生乳にこだわる必要はないという感想を持ちました。つまり穀物のエネルギー比率が、輸入の比率が落ちることから、日本の食料自給率を上げようことに逆行している部分もあるわけで、エネルギーベースでどうかをみる必要があり、あまり無理をする必要はないのではという印象を持ちました。「今後の課題」で示された、「成分的な取引基準の見直し」に対し、国はどの程度真剣にやっていて、どこを着地点とするのか。例えば規格外のトマトを一箱いくらで外食産業に販売するとかが日常的になっていますが、それと同じ考え方が生乳はできないのでしょうか。
●配合飼料とか輸入粗飼料の価格動向を見ますと、2008年の時と同じ状況を示していると思います。生産基盤の弱体化も以前から見られた傾向かと思います。この間いろいろな努力をされたと思うのですが、それがなかなか見えてこないので、現象が変わらないもどかしさを感じながらお話を伺いました。また、消費者への理解醸成の中にも、現状の厳しさ、現実に厳しい状況にあると思いますが、それだけでは弱音を吐いているというような受け止めしかできないと思います。経営努力について理解して欲しいと言われましたが、どのような努力をしているかが伝わってくればより理解醸成になると感じました。