- 10. 乳牛の飼養管理 -
どのくらい牛は餌を食べるのか、北海道と都府県では自給飼料の耕作地がかなり違うため、分けて考えてそれぞれ表に示した。ビートパルプとは砂糖大根の糖分を絞った残渣の繊維質の部分であり、サイレージとはトウモロコシや牧草を発酵させて保存したものである。北海道と都府県では平均飼養頭数が異なるが、酪農家1戸当たりのエサ代として表にした。
- 11. 生乳生産費の推移
酪農家1戸当たりの生乳生産費用を昭和56年を1とした指数で表した。この30年間でどのように変化したかを見ると、ほぼどのコストも右肩上がりで推移している。その他物財費とは牛の種付け代、治療代、機材購入などの諸経費を示している。副産物とは、子牛や堆肥の売却額だ。北海道と都府県を示したが、ほぼ同傾向を示している。右肩上がりではあるが、労働費は平成10年あたりから横ばいで推移している。
- 12. 酪農経営の収益性
酪農家の収入と費用を加味して収益性を示した。家族労働報酬が最終的に自分の手に残る報酬であるが、平成23年は3,576千円だが昭和56年対比で1.9倍になっている。また、労働時間も頭数が増え乳量も増えたということで1.9倍になっている。規模拡大で収入も増えているが、連動して費用も労働時間も増えているのが実態である。
- 13. 穀物需給
次に、穀物の値動きに関する情報を示す。世界の穀物の需要量は、途上国の人口増、所得水準の向上等に伴い、右肩上がりに増加し、1970年に比べ約2倍の水準に達している。一方生産量は主に単収の伸びで需要量の増加に対応してきている。需要が伸びれば単収を伸ばす工夫で追いついてきている。需要量の動きで注目すべき点として、中国の影響をみる必要が出てきたことある。中国は大きな国土があるものの、インフラ整備がなされていないために耕作に適さない土地が多く、巨大な穀物輸入国に変身してしまい、アメリカ、南米からの穀物を大量に買い付けている。中国のこれからの経済発展が今の勢いがあるとすれば、購入量は更に増加すると思われる。心配な点は、中国に買い負けることがないかということであり、今後の動向を注視する必要がある。
- 14. トウモロコシのシカゴ相場
トウモロコシのシカゴ相場を示した。以下のグラフにあるように、穀物相場というのは、気象状況、経済状態等いろいろな需給事情で大きく乱高下し、変動していることがわかる。トウモロコシは2012年8月21日に過去最高値831.25セント/ブッシェルを記録している。この値段を付けた理由は、アメリカの主産地が熱波で収量が落ちことに起因する。その後値段が下がってきており、最近では豊作予想により、7月25日以降は5ドル/ブッシェルを下回っている。
- 15. 国際的な穀物価格の動向
長いスパンで国際的な穀物価格の動きを眺めると、トウモロコシは、以前から2ドル/ブッシェルが一般的な相場だったのが、2006年以降上がってきている。これは新興国の経済的発展により需要が大きくなってきていることに起因する。今後は5ドル/ブッシェルのレベルで上下するのではないかとみられている。2ドルのステージが5ドルに変ったことで、これまでのような安いトウモロコシは、今後、手に入らないのではないかと言われており、5ドル/ブッシェルでコスト計算を行った。
- 16. 配合飼料価格への影響要因
配合飼料価格への影響要因は、トウモロコシの国際価格、大豆油かす等原料穀類の価格の動き、日本に持ってくるための海上運賃(平成20年に高騰したのは北京オリンピックの影響)、もう1つは為替の影響の4つの要因からなっている。直近の為替が円安にシフトしたために、原料価格の高騰とダブルで影響したことにより配合飼料価格が高騰している。
- 17. 生乳生産費推計の考え方
以上の項目を背景にして、生乳生産費が今後どうなっていくかを推計した。生乳生産費は、畜産物価格統計という統計法上の基幹統計で、長い歴史のある統計に掲載されている。年に1回公表されており、24年度のものが今年の秋に出る予定のため、現在は23年度版が最新値となる。そこで、24年度、25年度はどうなのかを推計したのでその経緯を示す。
牛乳生産費は表に示す項目(種付け料、飼料費、敷料・・・)で構成されている。これらの値は統計に公表されるのみで、期中の動向がわからない。そこで、それぞれの費目の代理変数を見つけて、その変数の動き、つまり変化率によって推計した。例えば、種付け料の場合は、消費者物価指数の医薬品健康保持用摂取品の指数を代理変数とし、毎月発表される指数を使って種付け料がどの程度変化したかを求めた。24年度について、23年度実績の数値に代理変数の変化率を乗じて推計した。25年度は推計の推計となるため、全項目を見直すのは危険性が高いため、24年度の流通飼料費のみ直近の変化動向で推計した。その他は全て24年度の数値を用いている。
この流通飼料費の変化動向については、配合飼料は、既に今年の第2四半期の価格改定が公表されており、この値上げ額と安定基金補てん金を勘案して配合飼料の25年度の費用を推計した。その他の流通飼料費については、直近トレンドを第1四半期まで延長させ、第2四半期以降は固定する手法で計算した。