- 4. BSE発生の推移 -
どのように発生していたかを示した図をみると、1989年から年間発生頭数が増加し、ピーク時には36,000頭以上になっている。ここに示したのは症状を出して倒れた牛の頭数であり、もし全頭検査を行った場合は、これ以外にこの数字の何十倍かになったものと推察する。その後減少し、今では以前感染したものが僅かに出ているという状況にある。殆ど発生は見られない。
国別の数字では、イギリスで最初に確認され、1992年にピークを迎え、その後減少しているが、去年、今年もまだ1頭出ている。欧州全体では、イギリスよりもやや後にピークを迎え、イギリスから順次拡がったことを示している。日本でも36頭出ているが、症状が出て倒れたわけではなく、検査で見つかったものである。
資料は、2012年9月3日現在のOIEウェブサイト情報に基づく。
※1:2012年については、英国(2012年7月6日現在)、アメリカ(2012年4月26日現在)、他4か国について報告されている。
※2:うち1頭はアメリカで確認されたもの。
※3:カナダの累計数は、輸入牛による発生を1頭、米国での最初の確認事例(2003年12月)1頭を含んでいる。
※4:日本については、2012年9月3日現在。
資料は、2012年9月3日現在のOIEウェブサイト情報に基づく。
※1:2012年については、英国(2012年7月6日現在)、アメリカ(2012年4月26日現在)、他4か国について報告されている。
※2:うち1頭はアメリカで確認されたもの。
※3:カナダの累計数は、輸入牛による発生を1頭、米国での最初の確認事例(2003年12月)1頭を含んでいる。
※4:日本については、2012年9月3日現在。
- 5. 専門調査会における検討結果について -
専門調査会で何をやったかというと、「自ら評価」といって、市場には発生国の肉がないため、諮問を受けずにそれら発生国の評価を独自に行っていた。その前は2005年頃アメリカ、カナダの発生があった後の日本の措置とアメリカ、カナダの措置の同等性を評価して輸入しようと考え、日本とアメリカ、カナダの肉の比較を行った。アメリカ、カナダが20カ月月齢以下でSRMを除けば、その肉は日本の全月齢の今の処置の肉とリスクは変わらないということになった。その後リスク評価は「自ら評価」しかやられてなかった。
今回諮問があり5カ国、日本、アメリカ、カナダ、フランス、オランダのリスク評価を行うことになった。やり方は、感染の状況の確認として、SRMの月齢、つまり何カ月以内であれば蓄積されず大丈夫なのかを判断しなければならず、感染実験のデータが重要な意味を持ってくることになる。牛群の感染状況等を見ながら、感染経過に対するプリオン蓄積状態をデータとして持ち、これを基にしてSRMを決定し、検査の対象月齢を決めていった。そのような肉が影響し、vCJD(変異型クロイツフェルト・ヤコブ病)が発生するかどうかを最終的に考察する。ただし、主に定性的判断での実施となった。
- 6. BSE発生状況 -
グラフでは日本の場合、1992年生まれが最も年齢が高く、次に1996年生まれの群にピークが、更に1999年から2001年生まれに再度ピークが現れた。1996年に飼料への肉骨粉使用禁止通達を行っているが、この段階では完全に止まってはいなかったことを示している。2001年はBSEが日本で初めて見つかった年であるが、9月に見つかり、10月には肉骨粉使用禁止SRMの除去・焼却を実施した。ただし、残ったものがあったのか2002年に若い牛であるが、21か月齢の時に見つかっている。2002年1月生まれで2003年に一般の屠畜場で確認された。
アメリカの場合は、かなり高齢の牛しか見つかっていない。殆どの牛は20カ月齢位で食用になっているためで、見つかった牛は、ほぼ高齢の繁殖用のメス牛であった。1997年に一度飼料の規制を行っている。しかしOIE(国際獣疫事務局)が決めている方法に準じた国際的には完全な禁止という規制ではない。つまり哺乳動物のタンパク質を反芻動物に禁止する。というようなレベルで、豚、鳥、馬には与えていた。2009年10月に牛の脳・せき髄を家畜用に全て禁止しており、この段階で90%以上が除去できる状況になった。
カナダも1997年にアメリカと同時に規制を行ったが、その後も依然生まれている。2007年にはEU並みの規制を行っている。
フランスは1990年に「ほ乳動物由来たん白質を牛用飼料に使用禁止」を行っているが、その後多くのBSE感染牛が生まれている。2000年に「すべての動物由来たん白質のすべての家畜飼料への使用を禁止」を行ったが、残念ながら2004年生まれが1頭見つかっている。
オランダでは、1989年に規制をかけているが十分ではなく、多くのBSE感染牛が生まれている。2000年に完全な飼料規制を行ったが、日本と同じく、6ヶ月後に生まれた牛にBSE患畜が見つかっている。飼料規制が行われた直後において、前の飼料が全て焼却されずに残っていたものの影響が出たものと推測している。
BSE発生状況は、対象の5カ国の発生状況全てを見ても、2004年9月以降生まれ後8年間はBSE感染牛は見つかっていない。
評価対象の5か国では、飼料規制の強化後に生まれたBSE感染牛は、日本の1頭、フランスの3頭、オランダの1頭以外に確認されておらず、飼料規制はBSE発生抑制に大きな効果が見られた。
- 7. SRM除去と食肉処理 -
各国のSRM除去の状況をみると、日本の場合は、全月齢の牛の頭部(舌及び頬肉を除く。)、せき髄及び回腸(盲腸との接続部分から2メートルまでの部分に限る。)および全月齢のせき柱(胸椎横突起、腰椎横突起、仙骨翼及び尾椎を除く。)を除いている。
アメリカでも似たようなことが行われているが、月齢が30カ月以上となっている。
カナダも30カ月月齢、その他は殆ど同じになっている。ただ頭を全体と言わずに、頭蓋、脳、三叉神経節等細かく記述されている。また、扁桃が除去部分として記述されている。
EUでは、12か月齢超の頭蓋(下顎を除き脳、眼を含む。)及びせき髄と、低い月齢になっている。なぜ12カ月にしてあるかは、OIEの国際的な基準では、リスクの不明な国についてはSRM除去は12カ月となっている。EUの中のブルガリア、ルーマニア2カ国はまだリスク不明な国となっている。これを評価しないかぎりEU全域がリスク管理された国とはならないためとなっている。
OIEの基準は、管理されたリスクの国においては、30か月齢超の脳、眼、せき髄、頭蓋骨及びせき柱および全月齢の扁桃及び回腸遠位部となっている。日本は、管理されたリスクの国でこの範疇に入っており、現在OIEに「無視できるリスクの国」を申請中であり、通ると来年6月の総会で日本が認められることになる。
感染の状況を知るための重要な項目としてサーベイランスがある。
日本では、と畜場でと畜解体される全ての牛(21か月齢未満の牛は自主検査)及び24月齢以上の全ての死亡牛について検査を実施ということで、まだ現在でも全頭検査を実施している。アメリカでは、BSE臨床症状牛等に加え、30か月齢以上の歩行困難等の高リスク牛を対象に、年間4万頭程度検査しており、100万頭に1頭未満の有病率の変化を検出できる水準として設定している。アメリカのと畜頭数は年間4,000万頭であるため、4万頭の検査で検出できるとなっている。
カナダでは年間3万頭検査し、100万頭に2頭の有病率が調べられる。
フランスでは、健康と畜牛の検査月齢が上がっており、現在72ヶ月月齢超のものしか行っていない。その他は、24か月齢超の臨床症状牛、死亡牛、緊急と畜牛を検査している。
オランダも健康と畜牛に対しては同じ対応を取っている。その他は、48か月齢超(2008年12月までは24か月齢超)の臨床症状牛、農場死亡牛、緊急と畜牛を検査している。
日本の場合は、と畜場での健康牛の検査は、サーベイランスではなく食肉の検査として行っている。
サーベイランスは、感染の状況を知る検査であり、有病率を見つけるのが目的であり、フランス、オランダでは健康な牛に関しては検査月齢を上げている。
各国のと場での食肉処理の状況は、日本では生体検査として獣医師による目視検査とBSE検査を全月齢で実施している。アメリカ、カナダは歩行困難牛をサーベイランスとして実施。フランス、オランダは72か月齢超の健康と畜牛を対象に実施、SRMは除去されていることを検査官が確認している。
SRMと食肉処理について、SRMの定義は、国際基準のSRMの範囲と同じか、より広い範囲(カナダの扁桃を除く)となっている。5か国とも、SRM除去およびピッシング(屠殺後の牛の足が痙攣的に跳ね上がることを防止するために、前頭骨にあけた穴にワイヤーを挿入し、脳・脊髄を破壊する工程で、これにより破壊された脳と脊髄は血液循環を介して肉を汚染する可能性がある。)禁止等のリスク低減措置を実施した。現在は電気ショックで不動化処置を行っている。