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第107回 現地見学会開催
~神奈川県川崎市 コアレックス三栄株式会社 東京工場~

牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

第107回 現地見学会開催 ~神奈川県川崎市 コアレックス三栄株式会社 東京工場~
日時
2022年11月28日(月)
【 出席者 】
「牛乳・乳製品から食と健康を考える会」委員
元 毎日新聞社記者 今井 文恵
ジャーナリスト 岩田 三代
消費生活コンサルタント 鷺  仁子
科学ジャーナリスト 東嶋 和子
株式会社Food Connection 代表取締役 橋本 玲子
産経新聞社記者 平沢 裕子
(50音順)
乳業メーカー広報担当
日本乳業協会:沼田専務理事、伊藤常務理事、本郷常務理事 他
【内容】
神奈川県川崎市にある、循環型社会の理念に賛同する企業・行政機関から幅広く利用され、その存在意義を高めているコアレックス三栄株式会社東京工場を訪問し、紙パックリサイクルの流れと最近の動向について理解を深め、最先端の循環型製紙ラインと独自の技術で、大規模な処理機能に加えて世界初の「ゼロ・エミッション製紙工場」として注目を集める工場を見学した。

【訪問先】コアレックス三栄株式会社 東京工場

  • コアレックス三栄株式会社 東京工場
  • コアレックス三栄株式会社 東京工場
  • コアレックス三栄株式会社 東京工場
- 施設概要 -

■名称:コアレックス三栄株式会社 東京工場
■場所:神奈川県川崎市川崎区水江町6-10
■代表者:代表取締役社長 黒﨑 暁
■設立:1963年7月4日
■敷地面積:約26,400㎡

【現地見学の感想】

1.料理を食べた後の汚れた紙皿が、洗浄後に再生紙として甦る!技術はそこまで来たのか、と驚かされたのが、東京オリンピック・パラリンピックの選手村食堂から出た紙皿を回収し、再資源化するという取り組みの報告でした。焼却することしか考えられなかったものが、新たな製品の材料となるというのは、なんとワクワクすることでしょう。
異物除去装置により、金属やプラスチックなどを取り除き、防水加工された紙や写真なども処理できるという東京工場は、広い空間にほとんど人の姿を見かけない中、機械が粛々と再生紙生産に向けた作業を行っていました。機密文書が、トラックで運ばれてくるやいなやベルトコンベアに乗せられ、溶解槽へと運ばれていくのは、痛快な場面でした。除去された金属類もまた近隣でリサイクルされるという、「ゼロ・エミッションの鏡」とも言うべき先進的な工場。「ゴミ」という概念が大きく変わってきている、ということを強く実感した一日でした。

2.リサイクル工場はここまで進化したのか、そんな印象の工場見学でした。牛乳パックから企業の秘密文書まで、受け入れた紙資源がいくつかの工程を経て私たちになじみのトイレットペーパーにリサイクルされていく。工場の1階から3階に移動する間にあーら不思議と巻き取られるロールを眺めてしまいました。
特に印象的だったのは書類をクリップやホッチキスなどがついたまま受け入れ、金物を取り出して金属に再生する技術。職場で苦労して取り除いていた経験を思い出しました。
こうした書類やアルミ加工された雑紙なども受け入れ、7割は紙に再生し、残りの3割はセメントや蒸気として活用する。ゼロ・エミッション工場で技術の進化を実感するとともに、限られた資源を活用し尽くす、これからの社会の方向性を確認しました。一方で私たち消費者も無駄を省き、リサイクルに協力できるところでは労を惜しんではいけないとも考えました。東京オリンピックの選手村の汚れた紙皿や異物は少しショックでした。

3.環境問題といえばプラスチック、とくにマイクロプラスチックの海洋汚染が問題視されてきましたが、今回は紙のリサイクル。製紙業先進のゼロ・エミッション工場の見学ということで期待をもって参加しました。
工場の概要説明とビデオ鑑賞の後、工場に潜入。ストックヤードから古紙を溶かすパルパーへ、いくつかの工程を経てジャンボロールからトイレットペーパーへと自動で再生されていく様子は期待通り圧巻でした。とくに印象に残ったのは、「溶解処分」として納入された機密文書類がクリップやバインダーなどの金属部分を分別することなくリサイクルが可能とした技術です。さらに、アルミや窓付き封筒などの雑紙もすべてリサイクルできるということ。しかしこれらの「手間のいらないリサイクル」はコアレックス様の技術力あってのことです。
残念ながら私の住んでいる自治体では、行政から古紙問屋、リサイクル業者を通して、すべての紙がリサイクルできる体制は整っていません。情報も少なく住民の意識もまだまだ低いように感じます。今後は技術をもった業者の選定、住民の知識の向上や広報活動の必要性について、積極的に行政に働きかけていこうと思いました。
ただ、金属などの異物を含んだ機密文書や汚れのついた紙容器がリサイクル可能であっても、事業者も消費者も回収前に可能な限り分別することはリサイクルの大前提ではないかと感じました。いろいろと刺激を受けた見学会でした。行動につなげていければと思います。

4.「紙は紙から」をモットーに独自の技術で難再生古紙の再生に取り組んでおられる最新鋭の工場を見学する機会で、多くの学びを得ました。以前静岡で取材させていただいた時より、格段に包括的な取り組みになっていたのが印象的でした。
トイレットペーパー製造の過程で出るプラスチック、金属、排水などを丁寧に再利用または浄化して自然に戻すことで、ゼロ・エミッションを実現しておられることに感銘を受けました。好事例として、ぜひ多くの企業で採り入れていただきたいものです。
 紙の再生のみならず、文書の秘密保持という利点も多くの方に知ってもらい、もっと活用してもらえればと願います。その際、異物を除去できるとはいえ、電池などの有害物を混ぜないといった最低限の配慮が欠かせません。牛乳パックリサイクルも同様ですが、一人ひとりの小さな配慮と行動が環境を守る貴重な機会になることを、私自身も訴えていきたいと思います。
また、教育課程で児童・生徒に見学してもらうと、よい学びの機会になると思いました。

5.独自の再生技術を使い、新聞や牛乳パック以外にもありとあらゆる「古紙」を資源と考え、最高品質のトイレットペーパーが作られていることに驚きました。また、トイレットペーパーの製造過程で生じる熱エネルギーや灰なども再利用し、家庭で使われた水も工場用水として有効活用するなど、全ての廃棄物が資源としてリサイクルされるビジネスモデルに感銘を受けました。
実際に目で見るのと違い、工場のスケールの大きさや製造されるトイレットペーパーの量の多さなどは伝わりにくいと思いますが、製造過程の「動画」を一人でも多くの方に見ていただき、日頃、何気なく捨てている紙が大切な資源であること、また、古紙の原料が減少していることなどをもっと積極的に発信してもよいのではないかと感じました。
 東京オリンピック・パラリンピックの選手村メインダイニングの使用済み紙製容器を資源化された取り組みも、今後、多くのメガスポーツイベントやキャンプ地、スポーツチーム・団体が力を入れていく活動の一つだと思います。大会主催者やフードサービス業界、スポーツ業界(チーム・団体・ファン)などとも連携しながら、少しでも古紙回収率アップにつながることを期待しています。

6.私自身、紙製品は極力リサイクルしようとしておりましたが、アルミ加工された紙容器や窓付き封筒はリサイクルできないと思い、これまで燃やすごみとして捨てておりました。今回、こうしたものもすべてリサイクルして活用できることを知ることができたのは大きな収穫です。
ただ、この技術がコアレックス様独自ということに課題も感じました。ゴミ収集は自治体によって異なるため、私が担当する全国に届く紙面では、こうした雑紙をリサイクルに回すよう呼びかけるのはちょっと難しいかなと思ったところです。ただ、牛乳の紙パックは全国どこでも回収してリサイクルできるので、まずはそちらの啓発をしていきたいと思います。
また、コアレックス様の貴重な原料である古紙が輸出されてしまうのもゆゆしき問題と思いました。収集業者の利権も絡むだけになかなか難しい問題ですが、国内の古紙は国内でリサイクルという流れを促すような仕組みづくりが必要と思いました。