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第74回 食品表示一元化について

牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

- 11. 加工食品の原料原産地表示の拡大 -

これまで加工食品の原料原産地表示は、平成13年以降表示項目を増やしてきた経緯がある。原料原産地表示というのは、例えば「ウナギの蒲焼き」の場合、原料にウナギ、タレなどと使用原料を書いていくが、原料の「ウナギ」のところに「ウナギ(鹿児島県)」など原料の原産地を書くという表示である。こうした原料原産地表示をだんだんと拡げてきている。たださらに拡げる必要があるとの意見も多く、閣議決定されている文書などにも拡大の方向で記載されている。
これらの作業は、これまではJAS法の下で行ってきた。しかし、拡大に限界を感じているのが実状である。その理由として、選定要件が、
1. 原産地に由来する原料の品質の差異が、加工食品として品質に大きく反映されると一般的に認識されている品目
このうち、
2. 製品の原材料のうち、単一の農畜水産物の重量の割合が50%以上である商品
に表示が義務付けられており、これに則って22の食品郡を増やしていったが、これ以上拡げようとすると食品の加工度が高いものが多くなってくるため、品質の違いがなくなり、品質要件があることで拡げるのが難しくなってくる。もともとJAS法の仕組みで行っており、その法の目的が「品質」であることから「品質」に縛られるため、JAS法の下ではこれ以上原料原産地表示を広げようとすると限界となる。このような背景から、新法では食品衛生法や健康増進法の観点も入るため、「品質」以外の観点での議論も可能となり、新法の下で議論を継続して行うことになった。結果的には、一元化検討委員会でかなりの検討を行ったが、結論は得られなかった。そこで、原料原産地表示に特化した中で再度議論するとの結論に至った。

加工食品の原料原産地表示の拡大
加工食品の原料原産地表示の拡大
- 12. 現在の栄養表示制度 -

現在、国際的には栄養表示は義務化の方向にある。食品の基準を作る国際会議CODEXの食品表示部会では、栄養表示は、これまでは任意であるが、この1、2年で原則義務にしようということになっている。もともと栄養表示は1994年にアメリカで始まり、2000年以降もカナダ、オーストラリア、ニュージーランド、中国、韓国を含めて義務化になっている。最近でも2011年にEUにおいても義務になっており、実際の施行は5年後となっている。このような環境から、今、栄養表示を考えるのであれば、義務化の方向で進めるべきであり、一元化の話の中で進めることになったのである。
もともと我が国でどうして栄養表示が議論されるようになったかは、トランス脂肪酸の話が元になっている。国際的に、トランス脂肪酸の摂り過ぎに注意とのデータが出されたことから、各国とも調査が始まった。日本においても摂り過ぎでないかどうかの議論を含め、安全性の面で食品安全委員会が、表示の面で消費者庁が検討を始めた。そのような中で、トランス脂肪酸の議論は、それはそれとして行う必要があるが、それ以前に栄養表示全体としての義務化の要否についても検討が必要なのではないか、ということが背景となり、栄養表示の義務化に係る議論がスタートした。結果的には、義務化の要否の結論は得られず、さらなる検討が必要との宿題となり、一元化検討会で議論を行うことになった。

現在の栄養表示制度
現在の栄養表示制度
- 13. 食品表示一元化検討会報告書の概要 -

一元化検討会の中では、栄養表示に関しては、基本的に義務化は賛成との意見であるが、きちんと環境整備しないと難しいという議論になった。
栄養表示の義務化は、消費者側・事業者側双方の環境整備を行う必要があり表裏一体である。ここで言う消費者側の環境整備とは、例えば、「ナトリウム」など表示してある成分がなぜ表示されているのかが分からない、などの問題がある。また、販売している食品そのものを検査して数値を記載している訳ではないので、実際の値と表示値との差がある場合が想定されるが、そういった正確な値の表示でなくても中長期的に見て健康管理するのに重要な表示であること、などを消費者に理解していただく必要があるということである。一方、事業者側の環境整備とは(行政側の準備でもあるが)、任意表示ではなく義務表示ということは、基本的に全ての品目に関し全ての事業者が表示しなければならなくなる。つまり表示するための数値の分析が必要となってくるが、お金をかけて分析しなくてもいい方法としての「計算値」の導入は、それに必要なデータベースを揃える必要性等の環境整備を行う必要があり、これらの環境整備を平行して行わないと栄養表示の義務はかけられないということである。
義務の対象としては、原則として、全ての加工食品、全ての事業者に義務付けとなる。ただ原則全てというには例外もあり、例えばミネラルウォーターのように栄養学的に義務表示の必要性が低いもの、香辛料のように全体の使用量に対し、使用量の少ないものなどに対して義務をかける必要があるのか、除いてもいいのではないのかという議論、また家族経営で1日数十食しか作らない事業者等に対し義務をかけるのは難しいなどの例外はある。環境整備をしつつ義務化の方向に、との検討会の結論になっている。
対象とする栄養成分の検討は、従来からの5成分プラスCODEXでも取り上げられている飽和脂肪酸、糖類を加えた7成分にするかどうかなど、法の施行までに広く検討していくことになっている。計算値などの導入の方法も検討が必要である。環境整備をしつつ、消費者への普及啓発もしつつ、データベースも作りつつ、新法施行後、概ね5年以内を目指し義務化していくこととなった。
今提出している法案には、新法の施行を2年に設定している。故に、2年プラス5年を目指し、7年以内に義務化の完全施行を行う方向で検討することになっている。
総論としては、「食品表示の機能は、適切な商品選択のための情報提供と、実際にその食品を摂取する段階での安全性の確保」が重要との観点で、今日的な課題は何かとなると、「食生活の多様化」、「高齢化の進展」、「様々な情報伝達手段の普及」が挙げられる。
国際的な動向も踏まえて表示法案を作る必要があるとの問題意識の下、「新たな食品表示制度の基本的な考え方」として、「現行制度の枠組みと一元化の必要性」即ち、食品衛生法、JAS法、健康増進法のうち、表示部分の一元化が必要である。ただ検討の段階で、牛トレサ法、景品表示法などもこの一元化に含めるかどうかは議論の対象となったものの、最終的に前述の3法に絞ることになった。
「消費者基本法の理念と食品表示の役割」としては、消費者基本法において消費者の権利とされている「消費者の安全の確保」、つまり食品を摂取する際の安全性の確保、そして「消費者の自主的かつ合理的な選択の機会の確保」の両方を実現することが目的になっている。最終的に法の文言には、「消費者の権利」と「自立の支援」も入った。

食品表示一元化検討会報告書の概要
食品表示一元化検討会報告書の概要
食品表示法案の骨格
食品表示法案の骨格

上記の「食品表示法案の骨格」にも示したが、「食品の生産の現況等を踏まえ、小規模の食品関連事業者の事業活動に及ぼす影響等に配慮」という一文を入れている。また、ここには書かれておらず「等」の中に入っているが、「事業者間の公正な競争の確保に配慮」も含めており、この2つに配慮することも必要と述べている。このような目的と基本理念の下、4条で「食品表示基準」を策定しなければならないとなっている。
「食品表示基準」の策定に関しては、「内閣総理大臣は、食品を安全に摂取し、自主的かつ合理的に選択するため、食品表示基準を策定」となっており、内容としては2項目あり、1つ目は、「名称、保存の方法、消費期限、原材料、添加物、栄養成分の量及び熱量、原産地その他食品関連事業者等が表示すべき事項」で、食品表示法案の本体でもこの程度の表現になっている。詳細は下位法令で示すことになっており、これらは今後検討すべき課題と考えている。この方法は、現行の食品衛生法やJAS法でも同じであり、食品衛生法に関してはこのような項目も挙げずに「必要な基準を定めることができる。」としか書いてない。それを下位法令である内閣府令で詳細を書くという形を取っている。一方、現行のJAS法は、名称、原材料、保存の方法、原産地その他表示すべき事項となっている。食品表示法案はこれをそのまま移行した形になっている。賞味期限や遺伝子組換えなどは、その他の表示すべき事項に含めている。
2つ目は、「前号に掲げる事項を表示する際に食品関連事業者等が遵守すべき事項」で、例えば、枠内に表示が必要とか文字の大きさなどの規定はここに含まれてくる。
この食品表示基準を策定・変更する場合は、厚生労働大臣・農林水産大臣・財務大臣に協議、消費者委員会の意見聴取となっている。厚生労働大臣や農林水産大臣への協議は現行規定のスライドだが、今回新たに、今後酒類の規定で何らかの表示基準を作る必要が生じた場合などを想定し、財務大臣に協議を入れている。
表示基準の順守は、現行規定と同じで、「食品関連事業者等は、食品表示基準に従い、食品の表示をする義務」としている。指示や命令の規定は、違反があった場合、改善を指示して、さらに命令して、という仕組みがJAS法にあるため、そのまま移行している。ただ食品衛生法には指示や命令の規定がないため、食品衛生法の分野で見るとプラスアルファとなっている。立入検査も現行規制のまま入れている。ただ文言的に、書類等の提出命令や質問調査権を明示している。申出制度は、現行のJAS法の制度をそのまま移行している。食品衛生法と健康増進法にはなかったためプラスアルファとなっている。
全く新しいものとして、差止請求権を入れている。現在は消費者契約法、特定商取引法、景品表示法の3法に同様の規定があり、これを食品表示法の分野にも入れたものである。権限の委任に関しては、基本的には現行規定のスライドである。罰則に関しても、基本的に現行と同じであるが、法人への最高罰が現行1億円であったものを3億円に引き上げている。
附則としては、先程述べたように、公布の日から2年を超えない範囲内で政令で定める日から施行となっている。さらに、通常新しい法律ができた場合や改正法を行った場合に付く文言であるが、施行から5年後に見直す旨の規定を設けている。以上が法律である。
これ以外に、法律ではないが表示基準として、一元化検討会で多くの宿題が残っている。例えば、以下に関しては、別の場で検討を継続することになっている。
○中食・外食(アレルギー表示)、インターネット販売の取扱い
○遺伝子組換え表示、添加物表示の取扱い
○加工食品の原料原産地表示の取扱い
○食品表示の文字のポイント数の拡大の検討 等
以上が法案の成り立ちから、法案そのものの説明である。