第14回定時社員総会を開催
去る5月23日(金)、一般社団法人日本乳業協会の第14回定時社員総会をホテルメトロポリタンエドモントで開催いたしました。
今回の総会終了をもって会長が交代となりましたので、総会での会長挨拶と懇親会での新会長挨拶を掲載いたします。
- 定時社員総会 松田会長 挨拶 -

本日はご多用の中、第14回定時社員総会にご出席をいただき誠にありがとうございます。また、会員各位には当協会の事業運営に対し、平素より格別のご支援ご協力を頂いておりますこと心よりお礼申し上げます。それでは、総会開催に当たり、一言ご挨拶申し上げます。
新型コロナウイルスの分類が5類へと変更されたことで、企業、生活者の行動は活性化しており、特に訪日外国人客数は継続的な円安も影響し4月で約391万人とコロナ禍以前の状況以上に回復しております。また、春の労使交渉では大企業に限らず中小企業でも賃上げが広がったことから消費の回復が期待されるところであります。
一方で、円安や世界各地での紛争の継続などの影響もあり、日本国内の物価やサービスの価格は高止まりの状態が続いておりおります。そのため消費者の生活防衛意識は依然として高いことから牛乳・乳製品の消費は低迷が続いております。このような中、牛乳・乳製品の栄養的価値や酪農乳業の状況について紹介する理解醸成活動、あるいは消費拡大活動を会員企業の皆様や他団体と連携して、継続して実施していく必要があると考えております。
また、業界の課題である「脱脂粉乳」の在庫低減策の一つとして、脱脂粉乳の最大の需要先である「ヨーグルト」の消費拡大を目指すプロジェクトを展開しております。今後もヨーグルトの「価値」の更なる啓発をはじめ、消費者の行動変容につながる施策強化とともに、関連団体・会員企業各社との連携を強め、生産者も含めた業界全体の取組みとして2025年度も継続して取り組みを推進して参ります。
さて、話は変わりますが生乳生産は北海道を中心として回復してきており、こちらは明るい兆しと言えますが、消費については今後予定されている生乳取引価格及び製品価格の引き上げの影響が懸念されるところであります。他方、下期からは搾乳牛頭数が前年を割ると見込まれることから、今後の生乳需給の推移に注視が必要であると考えております。
また、学校給食がストップする春休みやゴールデンウイーク期間において、生乳生産量の回復及び牛乳消費の低迷により廃棄乳の発生が心配されたところでありますが、北海道・都府県の乳製品工場でのフル稼働あるいは市乳工場での貯乳量の調整などの協力を行って頂いた結果、大きな混乱もなく乗り切ることができました。ご協力頂きました会員の皆様には、感謝申し上げます。
さて、「食料・農業・農村基本法」は25年ぶりに改正が行われ、この改正を受けて「食料・農業・農村基本計画」が策定されるとともに、酪農乳業にとっては重要な「酪肉近代化基本方針」の5年に1度の見直しも行われました。
昨年の3月から関係者からのヒアリングが開始され、当協会では乳業基本問題検討委員会を開催し乳業者としての考え方の検討を行い、「需給と価格の安定」「輸出拡大を含めた需要の確保」「生産性の向上」などの視点を持って、乳業者としての意見反映に努めて参りました。
また、この基本法の中で合理的な価格形成についても触れられております。農林水産省において足掛け3年にわたり議論が行われてきた「適正な価格形成」に向けた検討では、新法の制定ではなく既存法律を改正する形で3月7日に「食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律及び卸売市場法の一部を改正する法律案」として国会に提出されております。具体的な内容については、今後協議されることと思われますが、「適正な価格形成に関する協議会」「飲用牛乳ワーキンググループ」等の場で引き続き乳業者の意見が反映されるよう取り組んで参ります。
当協会では会員の皆様方の要望を踏まえ、牛乳・乳製品の制度改正を行政に働きかけており、これまで「LL牛乳の大臣承認制度の廃止」「牛乳等の用途別容器包装の規格の廃止」等、一定の進捗がみられております。これらの制度改正により、乳業者の選択肢が広がっているところではありますが、一方で長年培ってきた牛乳等の安全性に対する消費者の信頼や期待に引き続き応えていかなければならないと考えております。このため、各種ガイドラインの作成の他、HACCPに関する講習会や現地指導による衛生水準の向上に向けた取り組みを推進して参ります。
当協会では、乳業界におけるカーボンニュートラルや循環型社会形成といった経団連の自主行動計画を中心とする目標に取り組んでおります。今後はSDGsを含め人権問題や企業のガバナンス等、従来よりも大きな枠組みの問題解決にチャレンジしていかなければならないと考えております。
この他にも、農林水産省では農林水産物・食品の輸出拡大に向けてオール畜産としての取組みを強化しております。当協会と致しましても事務局を務めております「牛乳乳製品輸出協議会」の活動を通じて輸出拡大に貢献できるよう努めているところであります。
また、「食品ロス削減」については、昨年7月1日を皮切りに「納品期限の緩和」と「リードタイムの確保」をターゲットに各会員個社にて流通業と商談を開始しております。「商習慣を見直す」ことによる社会の効率化など、単に一企業のロスを減らすのではなく業界全体の仕組みを最適化することにより、諸課題を複合的に解決していく事を目的としており、この取り組みに関しては多くの量販店での理解を得られていることから、更に推進を図りたいと考えております。
当協会では、2025年度の事業推進にあたり、変化し続ける酪農乳業界の発展に向けて、会員の皆様はもとより関係団体・関係企業と連携して取り組むことで一層の力を発揮して参りたいと考えております。
引き続き皆様方には、ご支援、ご協力のほど、お願い申し上げます。
- 定時社員総会 佐藤新会長 挨拶 -

ただ今、ご紹介いただきました佐藤でございます。
この度、松田会長の後任として日本乳業協会会長に就任いたしました。
何卒宜しくお願いいたします。
さて、2024年度(昨年度)の日本における「生乳生産量」は、皆さんご承知の通り「737万トン」でありましたが、先日、ふと気になり、私が乳業会社に入社した昭和60年(1985年)はいったいどのくらいの生産量だったのか「牛乳乳製品統計」を改めて確認したところ、なんと「738万トン」と、ほぼ昨年度と同じ生産量でありました。
しかし、当時と現在では、取り巻く環境は全く違うようであります。
1985年度以降は、最も生産量が多かった1996年度の865万トンまで伸長のトレンドでありました。
しかしその後、緩やかな減少トレンドに転じ、今年度、2025年度の生乳生産量の見通しは、728万トンと予測されております。
この様な減少トレンドの中、2025年度の酪農乳業界を取り巻く環境は、「生乳需給の安定」「牛乳・乳製品の 安全性確保や品質の向上」「SDGsを念頭においた 持続可能な酪農・乳業の実現」「国際化の進展への対応」など、「酪肉近代化基本方針」で掲げる5年後の目標乳量である732万トン、10年後の目標780万トンに向け、引き続き解決しなければならない課題が山積しております。
更に、6月より「乳製品向け」、8月より「飲用・発酵乳向け」乳価の値上げを控えております。
これは、折からの様々なコスト高などを受け、酪農家の離農が加速し、生産現場の疲弊が続いている実態をしっかりと受け止めたものでありますが、一方で、消費者の生活防衛意識の高まりを背景に飲用消費が不安定であることから、引き続き注視が必要であると考えています。
こうした課題を一つ一つ地道に解決していくことが、今後の「我が国酪農乳業界の価値向上」に繋がり、持続的に成長し「魅力ある酪農乳業」になる事が出来るのではないでしょうか。
その目指すべき酪農乳業に向け、2025年度の事業活動は、昨年度に引き続き、5つの重点課題を柱に精力的に取り組んでまいります。
事業推進にあたっては、会員の皆様のご意見・ご要望を傾聴し、闊達な議論を重ね、より一層酪農乳業界が一丸となり、需要の拡大に取り組むことで新たな消費につながる好循環を生み出していきたいと考えます。
酪農乳業界が大変厳しい局面を迎える中での会長職となりますが、引き続き関係官庁をはじめとする皆様のご支援を賜りますようお願い申し上げまして、簡単ではございますが私のご挨拶とさせていただきます。