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第12回定時社員総会を開催

去る5月29日(金)、一般社団法人日本乳業協会の第12回定時社員総会をホテルメトロポリタンエドモントで開催いたしました。総会での会長挨拶と来賓挨拶を掲載いたします。

- 定時社員総会 宮原会長 挨拶 -

定時社員総会 宮原会長 挨拶

本日はご多用の中、第12回定時社員総会にご出席を賜り誠にありがとうございます。また、会員各位には当協会の事業運営に対し、平素より格段のご支援ご協力を頂いておりますこと心よりお礼申し上げます。それでは、総会開催に当たり一言ご挨拶申し上げます。

2019年度末からの懸案であった新型コロナウイルス感染症については、その対策に係る制限が大幅に緩和され、レジャーやショッピングと大変賑わったゴールデンウィーク以降は感染症法上の位置づけも2類から5類となり、個人の自主的な感染対策の下、新しい生活様式への移行が進んできております。また、外国人観光客も3月には180万人を超えるまでに戻ってきており、経済の回復が期待されるところです。

一方で、ロシアのウクライナ侵攻は収束する気配が見えず昨年来の物価上昇は続き、来月以降も食料品の値上げやエネルギー費の上昇が見込まれております。消費者物価指数も上昇していることから生活者の消費マインド、生活防衛意識は未だ高く、厳しい市場環境が続いております。牛乳類の販売も昨年11月の乳価改定とそれに伴う製品価格の改定以降、それまでの減少傾向にさらに拍車がかかるような状況となっております。
この様な中で生乳生産は、生産者による生産抑制努力によって前年を大きく下回る状況が続いていることから、学校給食用牛乳の供給が休止されるゴールデンウィーク期間中も大きな混乱もなく乗り切ることができました。しかしながら、牛乳類の消費の不振が続いていることから需給については依然として不安定な状況が続いております。

4月からは乳製品向け全用途の乳価を引き上げましたが、製品価格への転嫁が進んでいないため今後の価格転嫁の動向に加え、販売への影響についても注視していく必要があります。また、8月からの飲用向け乳価の再度の改定に伴う小売価格への転化に向けては国や関係団体と連携し、引き続き理解醸成や消費拡大の取り組みを進めていく必要があると考えております。
このため、当協会としては国が措置した「牛乳乳製品のインバウンド等消費拡大緊急対策」の事業実施主体として、訪日外国人観光客や子ども食堂等を対象とした牛乳乳製品の消費拡大対策を実施するとともに、消費拡大の下支えとして牛乳乳製品に関する知識をTwitterやYouTubeを利用して広く消費者向けに発信する取り組みを行って参ります。
また、会員等に対して農林水産省とJミルクが主催し当協会が共催する「牛乳でスマイルプロジェクト」への参画を促すとともに「酪農緊急パワーアップ事業」の事業実施主体として、昨年度に引き続き流通販売形態の変更や消費拡大のプロモーションなどの取り組みを支援して参ります。
さらに、今年度も都道府県協会会員と連携した施策を検討しておりますので、内容が固まり次第ご案内させていただきます。会員各位におかれましては、引き続きご協力をお願いいたします。

当協会では、昨年9月に全国の事業者に対しHACCPに沿った衛生管理状況の実態調査を行いました。約7割の事業者から回答があり、特に小規模事業者の方々から当協会の現地指導を希望していることが分かりました。このため、各種講習会の内容を充実・強化するとともに今年度より実際の製造現場での支援を計画しております。
「食の安全と消費者からの信頼確保」は当協会にとって最重要課題のひとつであり、これらの事業を通じて乳業者の「人材の育成」と「組織力の向上」を図っていきたいと考えています。
また、牛乳乳製品の衛生規制の見直しについては、容器包装規格の改正、LL牛乳の大臣承認制度の廃止、乳児用調製乳への追加添加物申請などについて厚生労働省との協議を実施しています。
さらに、牛乳や乳製品の各種ガイドラインの改訂作業を行うとともにフードロスの観点から商慣習の見直しに向けた対応の検討も必要と考えております。

世界の潮流としてSDGsへの貢献や環境規制が強化されており、環境に配慮した取り組みが重視されています。
このような中、乳業者としてSDGsに貢献するために温室効果ガス削減、容器包装の環境配慮、廃棄物の削減及び再利用化促進などの環境問題への取り組みを進めていくことに合わせて、会員、都道府県協会傘下会員の取り組みを収集して発信するなど乳業全体の取り組みとなるよう支援していきます。
政府では「ビジネスと人権に関する行動計画」が2020年に策定され、サプライチェーン全体で人権尊重に貢献することが求められてきております。さらに、農林水産省では食品企業のサプライチェーンの人権尊重を促すために2023年夏までに独自の指針を取り纏めることとしております。
酪農乳業界においても、この様な指針と歩調を合わせた対応が求められていくことからJミルクなど他団体と連携した取り組みが必要だと認識しております。

このように課題山積の乳業界ではありますが、2023年度はアフターコロナでの生活様式がより進むとともに経済の安定が望まれる中、日本の酪農乳業界の足元の混乱への柔軟な対応、そして将来を見据えた取り組みと難しいかじ取りが求められております。
当協会では変化し続ける酪農乳業界の発展に向けて乳業事業の改善並びに牛乳乳製品の衛生及び品質の向上、普及・啓発、環境への対応を図るため、常に会員の要望や期待される機能を踏まえ関係団体・関係企業と連携して取り組むという基本方針の遂行により、一層の力を発揮して参りたいと考えております。引き続き皆様方にはご支援、ご協力のほどお願い申し上げます。

本日は、これより2023年度事業計画書と収支予算書についての報告並びに2022年度事業報告書案及び決算書案、また、本年度の会費徴収等についてご審議いただくこととなっております。慎重審議と円滑な議事進行にご協力をお願い申し上げまして、私のご挨拶とさせていただきます。

- 厚生労働省医薬・生活衛生局 三木食品監視安全課長 挨拶 -

厚生労働省医薬・生活衛生局 三木食品監視安全課長 挨拶

ご紹介いただきました厚生労働省食品監視安全課の三木でございます。
本日は日本乳業協会の総会にお招きいただき、誠にありがとうございます。
本来であれば審議官も同席する予定でしたが、本日は衆議院の厚生労働委員会が開催されているため欠席となりました。審議官からはご出席の皆様方によろしくお伝えくださいとの言伝を承っていることをご紹介させていただきます。
まずはじめに、本日お集まりの皆様方におかれましては、平素より厚生労働行政にご理解ご協力を賜りまして、また乳及び乳製品の安全確保にご尽力いただいておりますことに厚く御礼申し上げます。
新型コロナウイルス感染症につきましては、5月8日から感染症法上の位置づけがインフルエンザと同じ5類感染症に変更され、今後人の往来や事業活動などますます活発化していくことが予想されます。引き続き自主的な感染対策とこれからの季節は食中毒対策にご協力をお願い致します。
さて、平成30年に食品衛生法が改正され、平成3年6月からHACCPに沿った衛生管理の義務化、営業許可の見直しなどいろいろな制度が本格的に施行されております。厚生労働省としても引き続き制度の円滑な運用に努めてまいりたいと思いますので、皆様方のご理解ご協力をお願い致します。
農林水産物の食品輸出は、現在円安で非常に好調となっておりますけれど、2030年に輸出額5兆円という大きな目標がありますので、この達成に向けて政府一丸となって取り組みを進めているところでございます。牛乳乳製品の輸出につきましては、引き続き農林水産省とも連携をして、厚生労働省としては食品安全を所管する立場でございますので、今後とも必要な技術的な支援等に努めて行く所存でございます。

さて、本国会では食品を含む生活衛生行政の機能強化を目指した法案を提出しておりました。衆・参議院の厚生労働委員会等で議論がなされて本日可決されたということでございます。これによりまして令和6年の4月から食品の規格基準の設定等の業務、いわゆる食品基準行政が厚生労働省から消費者庁に移管されるという状況になっております。
移管後も消費者庁の方では現在と同様に科学的な知見に基づく行政を行なっていくと国会等で申しておりました。厚生労働省としましても引き続き食品監視業務については引き続き担っていきますので、食品衛生行政は消費者庁と連携しながら一体的に進めていくことにしております。具体的な業務の割り振りにつきましてはこれから調整してまいりますが、皆様方の不安が生じないように、これまで同様に進めてまいりますので、ご理解ご協力をお願い致します。

最後になりますが、日本乳業協会ならびに本日ご出席の皆様方のご健勝と益々のご発展を祈念いたしまして、挨拶とさせていただきます。

- 農林水産省畜産局 牛乳乳製品課 中坪乳製品調整官 挨拶 -

農林水産省畜産局 牛乳乳製品課 中坪乳製品調整官 挨拶

ご紹介いただきました農林水産省畜産局牛乳乳製品課で乳製品調整官を務めさせていただいている中坪と申します。本来であれば、牛乳乳製品課長の大熊がこの場に出席させていただいてご挨拶申し上げるべきところでございますが、本日国会等の対応のため出席できないということで、私の方から本日の定時総会の開催に当たりましてひと言ご挨拶申し上げたいと思います。

本日ご参会の皆様方におかれましては日頃より農林水産行政、とりわけ酪農畜産そして牛乳乳製品行政施策の推進にご理解ご協力、そして何よりわが国酪農乳業の発展に各方面でご尽力いただいておりますことを、この場を借りまして厚く御礼申し上げます。

はじめに酪農乳業をめぐる状況について、でございます。
先月から加工向け乳価が引き上げられ、本年8月には昨年11月に続いて飲用向け乳価が引き上げられると承知しております。各乳業メーカーにおかれましては、物価高騰等の中で難しい経営判断になっていると理解しておりますけれども、その中で生産者団体と協議いただいて乳価を引き上げていただいたことに敬意を表したいと思います。
また、現在バターと脱脂粉乳の(需給)跛行性の課題は解消していないわけですが、需給に与える要因としては今後期待されるインバウンド需要、乳価の状況、それから今後1年以内に搾乳牛になると見込まれている牛が昨年よりも1万頭程度多いということ等あり、状況を注視しながらこれからも行政対応していく必要があると思っております。
目下の取り組みとしては、値上げに伴う需要減退を招かないように需要拡大対策、消費拡大対策に取り組んでいくことが重要であると考え、国としてもこれまでの取り組みに加えて本年3月28日に取りまとめました畜産酪農緊急パッケージにおいて訪日外国人観光客やこども食堂などを対象とする牛乳乳製品の消費拡大対策を新たに実施することとして、Jミルクさんを実施主体として空港、観光地での(牛乳)無料配布、牛乳割引クーポン券の配布等の実施に向けて現在空港等の関係機関と調整を行っているところです。引き続き、皆様におかれましても牛乳乳製品の需要拡大、消費拡大にご協力いただけたらと思います。

それから積極的な情報発信について、でございます。これまで消費者や酪農家の皆様に酪農乳業の課題に対する業界の取り組みや国の対策、生乳の需給状況などについて、私たちの情報提供が十分に行き届いていなかったのだろうと思っております。その中で消費者からさまざまなご質問、ご意見をいただきました。酪農牛乳乳製品に対してお問い合わせの多かった事項を中心に消費者はじめ皆様方にできるだけ分かりやすい言葉でていねいに説明をするQ&Aを、動画も交えて農林水産省のホームページで3月に公表いたしました。これからも丁寧な情報発信を続けていかねばならないと考えております。

先月に開催いたしました「畜産酪農の適正な価格形成に向けた環境整備推進会議」においても、消費者への理解醸成の重要性について各方面からご意見をいただいているところです。引き続き、酪農乳業の現状について消費者の皆様ご理解いただけるように積極的に情報発信に努めてまいります。
それから、現在の生乳需給の状況を表すものとして脱脂粉乳の在庫水準がございます。脱脂粉乳の在庫については、生処連携して進めている在庫対策の効果によって、最大10万4,000トンまで積み上がったものが、今年3月末には6万4,000トンまで減少している状況にございます。しかしながらこれは官民挙げた脱脂粉乳の在庫低減対策、あるいは4月の乳製品価格値上げ前の駆け込み需要の影響等によるものもあり、まだ需給ギャップが解消されたとは言い難い状況にあると考えております。今年度は乳価引き上げによる需要減退等の影響により再び脱脂粉乳の在庫が積み上がる懸念も示されております。Jミルクさんにおいて在庫低減対策を継続することが決定されていると伺っており、国としても需給改善に必要な取り組みとして引き続き支援を行うこととしております。皆様方におかれましてもぜひ在庫対策基金への拠出をはじめ本取り組みの実施にご協力いただけますよう、お願い申し上げます。

わが国人口減少に伴う国内市場の縮小が叫ばれております。牛乳乳製品の需要は拡大して行かなくてはならないものと考えており、酪農の生産基盤の維持、確保、増加に関しても海外で高まるニーズをとらえて輸出拡大といったことも重要なポイントになってくると考えております。現在農林水産物、食品の輸出額は、昨年は1兆円を超えましたが、政府としてはこれを2025年には2兆円、2030年には5兆円に拡大する大きな目標を掲げております。この中で輸出重点品目のひとつである牛乳乳製品については、2030年に720億円という目標を掲げております。2022年の牛乳乳製品の輸出額は対前年比で約30%増の320億円と、過去最高の水準になっております。この様な状況を引き続き推進、展開していくこととして、農林水産省としてもオールジャパンのプロモーション等に加えて生産者、乳業メーカー、輸出事業者からなるコンソーシアムの取り組みへの支援を通じて更なる輸出拡大に取り組んでいきたいと考えております。

最後になりますが、今後も酪農乳業ともにむずかしい環境が続くと見込まれます。しかしながら需要に見合った生乳生産と牛乳乳製品の消費拡大の取り組みの両方をしっかりと進め、生乳の需給ギャップを改善していくことが重要であり、これらを実現するためにも本日お集まりの皆様のご協力と力強いリーダーシップを強くご期待申し上げまして私からのご挨拶とさせていただきます。