食料・農業・農村政策審議会 畜産部会(平成30年度第1回)における意見表明について

平成30年12月3日(月)に農林水産省三番町共用会議所で開催された「食料・農業・農村政策審議会平成30年度第1回畜産部会」に当協会宮原会長が臨時委員として出席し、以下の通り乳業者の立場から、酪農乳業政策に関する意見を述べましたのでご報告致します。

【酪農乳業政策に関する意見・要望等】

1:畜産経営安定法の改正に伴う制度運用の検証

1点目は、畜産経営安定法の改正に伴う制度運用の検証についての要請です。
本年4月より、新たな畜産経営安定法の下で、生乳流通等の酪農に係る制度が運営されることとなりました。近年、生乳需給がタイトに推移する中で、しかも制度改正1年目ということもあり、基本的には、まだ大きな変化は見られないと認識しております。しかしながら、いくつかの点では変化も見られ、関係者から多少の懸念が表明されているところです。

具体的には、生産者が生乳の出荷先を自由に選びやすくなった環境の中で、契約社会である酪農先進国ではほとんど例がみられないとされる二股出荷や、年度途中での契約の破棄などにより、生乳需給の安定や信頼関係を損ないかねない例が生じているようですので、新たな制度の運用がわが国酪農乳業の発展に資するものとなっているか、検証していただければと思います。その際には、制度改革に当たっての議論の集大成である国会決議を基本として、指定団体の機能が維持される仕組みとなっているか、生産者・乳業者双方の公平性は確保される仕組みとなっているかなどを検証し、必要に応じて、制度の運用改善を図っていただくようお願いいたします。

2:TPP11等の発効と平成31(2019)年度交付対象数量・輸入数量の決定

2点目は、TPP11等の発効に伴う平成31(2019)年度交付対象数量やバター・脱脂粉乳の輸入数量の決定についてです。
来年度の交付対象数量等の決定に当たっては、12月30日から発効するとされているTPP11及び来年2月に発効する可能性があるとされる日EU・EPAの影響を考慮に入れる必要があります。その場合、バター・脱脂粉乳の民間貿易によるTPP11枠及びEU枠については、初年度が来年の3月31日までとなることから、来年度は実質的に2年度目となります。このため、本年12月30日から来年度にかけて、TPP枠及びEU枠の2年分(正確にはTPP11で1年4か月分)、生乳換算で合計約10万トン相当のバター及び脱脂粉乳が民間貿易により輸入される可能性があります。

したがって、交付対象数量及びバター・脱脂粉乳の輸入数量の決定に当たっては、こうした可能性を考慮に入れて決定する必要があると考えます。ただし、近年のバター及び脱脂粉乳の輸入数量を考慮すれば、交付対象数量にまでは影響がおよばない可能性が高いところですが、バター・脱脂粉乳の輸入数量の決定には直接的な影響があるものと考えられます。その他にも、「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」における国産生乳の需要及び生産目標にも影響するものと考えられます。

行政におかれては、その影響を直視し、わが国酪農乳業の安定と発展に資するよう、適切に決定されるようお願いいたします。

なお、若干話がそれますが、農林水産省による乳製品の輸入発表や放出等の運用が弾力化され、バター全体の不足感は解消されているところですが、国産バターについては、需要に対して生産が相当に不足していることにもご留意の上、政策を推進していただくようお願いいたします。

3:「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」の見直し及び酪農生産基盤強化

3点目は、「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」の見直しと酪農生産基盤の強化についてです。
一昨年の本畜産部会で当協会の前会長が申し上げましたが、規制改革会議の発足から畜産経営安定法の改正までの一連の議論については、本来、そのための専門部会である畜産部会では議論ができず、大変残念な思いをいたしました。今回の「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」の見直しに当たっては、その反省を踏まえ、畜産部会において酪農乳業に係る実務関係者の意見をしっかりと聞いて、見直しに反映していただきたいと考えます。

生乳流通については、北海道胆振東部地震により、北海道から都府県への生乳の移出量が制限されるという事態が発生し、小売段階において、一時的に飲用牛乳の品切れなどが発生するなど、消費者の皆様には大変ご迷惑をおかけしてしまいました。

11月の意見交換会でも申し上げましたが、今回の地震で改めて明らかになった酪農乳業の課題は、北海道と都府県のバランスを保った生産が必要であるということです。今回のような地震に限らず、台風の襲来などでも北海道から都府県への生乳の船舶による輸送は停止してしまいます。したがって、都府県の生産が減少傾向にある中では、平時にあっても飲用牛乳等の供給が不安定になる事態が生じるおそれは否定できません。行政には、全国、特に都府県酪農を中心として、生産基盤の強化を図っていただけるようお願いいたします。

なお、地震による停電に限らず、サプライチェーンの一部でも途切れれば製品供給はできなくなるということをご認識いただき、生処が安心して事業継続ができるよう、サプライチェーン全体の強靭化にもお力添えを賜るようお願い申し上げます。

4:物品貿易協定(TAG)交渉開始に当たっての具体的な要請

最後の4点目は、先月開催された意見交換会でも申し上げましたが、9月に開催された日米首脳会談において交渉の開始が表明された日米物品貿易協定(TAG:Trade Agreement on Goods)についての要請です。
その中で、「日本としては農林水産品について、過去の経済連携協定で約束した市場アクセスの譲許内容が最大限であること」という立場を米国は尊重するとされています。これを受けて、農林水産大臣は、繰り返しTPPの水準が最大限であり、これを超える譲許は行わない旨表明しています。

したがって、今後開始されるTAG交渉においては、
1:TPPを超えるような譲許は行わないこと。具体的には、米国向けにバター・脱脂粉乳の新たな輸入枠は設けないこと。
2:また、日EU・EPAの譲許内容は参考としないこと。具体的には、米国向けにソフト系チーズの新たな関税割当枠は設けないこと。

をお願いしたいと思います。
併せて、交渉内容等については公開できないことが多いことと思いますが、可能な限り、関係者にも情報提供していただきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。