第71回 牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

「食品と放射能」

【日時】
平成24年8月27日(月)15:00 ~ 17:00
【会場】
乳業会館 3階 A会議室
【講師】
消費者庁 消費者安全課企画官 金田 直樹
【出席者】
「牛乳・乳製品から食と健康を考える会」委員
消費生活アドバイザー 碧海 酉癸
管理栄養士 荒牧 麻子(座長)
毎日新聞社 編集局記者 今井 文恵
江上料理学院 院長 江上 栄子
消費生活コンサルタント 神田 敏子
評論家・ジャーナリスト 木元 教子
作家・エッセイスト 神津 カンナ
科学ジャーナリスト 東嶋 和子
産経新聞社 文化部記者 平沢裕子
(50音順)
乳業メーカー:広報担当者
乳業協会:小板橋専務 他
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【内容】
昨年度は、東日本大震災ならびにその後の東京電力福島第一原子力発電所の事故により、消費者への牛乳・乳製品の安定供給が滞る事態を招いた。
その後も、放射性物質汚染の影響が深刻な問題として食生活にも影響を及ぼし、消費者の放射性物質に対する不安の高まりの中、安心・安全の確保が喫緊の課題と考えている。このような状況の中、昨年度は放射性物質に関連するテーマを3回取り上げた。
新年度に入り、牛乳・乳製品を含めた「放射性セシウムの新基準値」による管理が施行されており、今回は、放射性物質の新基準施行の背景とその後の状況を確認する目的から、消費者庁消費者安全課企画官 金田直樹様のご講演を基に委員の皆様にご討論いただく内容で「牛乳・乳製品から食と健康を考える会」を開催した。

1.はじめに

昨年の夏、消費者庁に来るなり、当時の消費者庁長官から「食品と放射能」のリスクコミュニケーションを100ヶ所やるように言われた。食品はともかく、放射能、放射性物質、放射線等、表現の違いもあるものの、かなり専門分野に特化した話で、多くの消費者にはなじみの少ない問題でもあり、100ヶ所意見交換会せよとのことで、いろいろなやり方を試みた。
現在では、放射性物質、放射能、放射線の基本的な説明をした後、食品中の放射性物質の基準値や行政の取り組み、検査結果の概要を説明し、さらに意見交換することで、消費者の皆様は今何を不安に思っているのか、疑問に思っているのかをある程度掴むことができた。また、いろいろな学説がいろいろな媒体を通して拡がっている現状を踏まえた上で、この1年間の経験を基に説明することとする。

2.放射線、放射能、放射性物質はどう違うのですか。

「すべての物質は原子でできており、原子の中には自然に壊れて欠片を放出する物があり、欠片や発する波を放出する原子が放射性物質で、飛び出した欠片や発する波がどれだけ飛んで行くかという能力が放射能で、飛び出した欠片や発する波が放射線である。」消費者の皆様には、まずこの様に説明している。
欠片や波の大きさや、性質により、紙で止められるけれど力のあるアルファ線、遠くまで透過するが比較的力の小さいガンマ線等の種類がある。

放射線の種類と透過力

3.放射線は人体へどんな影響を与えるのですか。

一度に大量の放射線を浴びると確定的影響がある。「はだしのゲン」のマンガの主人公の様に、髪が抜けてしまうといった影響が現れる。あのマンガの主人公は恐らく2000ミリシーベルト程度を一度に浴びたと考える。2000ミリシーベルトとは、日本人は普通に生活していても自然放射線を一年間に1.5ミリシーベルト浴びることから1300年分を一時に浴びたことになる。
13年前の東海村のJCOの事故で亡くなられた二人の方は17000ミリシーベルトを一時に浴びている。
今日本人が直面しているのは、確定的影響ではなく、原発由来の放射性物質を原因として少量の放射線を浴びた場合の影響はどうなのかということである。日本人は普通に生活していても自然放射線を一年間に1.5ミリシーベルト浴びている。なお、最近2.1ミリシーベルトではないかとの新たな見解が公表された。これへの追加として、福島原発由来の放射線を浴びることになってしまった。この追加被ばくの累積によって、癌や白血病になる可能性はあるのかというのが現状の消費者の不安要因である。
放射線の影響は、大人より細胞分裂が活発な乳幼児・子ども・妊産婦(胎児)の方が受けやすい。これは26年前のチェルノブイリ原発事故の結果、事故の数年後に影響を受けたベラルーシ等の国々で、子供が甲状腺癌になる例が見られた。また白血病のリスクが高まった。ただ、確実に影響があったと言えるのは国連の調査でも認めているように甲状腺癌だけで、白血病は科学的に証明されているのか否か議論がある。国の食品安全委員会が世界の3300の文献を集めた中では、チェルノブイリ事故の影響として子供の白血病が増えたのではないかとする論文について、ある程度確からしいと評価している。
なぜ影響が大きいかと言うと、放射線は細胞に直接影響し、細胞を構成するDNAを破壊してしまう。人間(生物)は壊れたDNAを再生する能力(自然治癒力)があるが、繰り返し行うことで間違って再生してしまうことがあり、間違って再生したものが癌になってしまう。このため、成長期にあり細胞分裂が盛んな子供たちのほうが影響が大きいという論理が成り立つ。
原発事故由来の放射線を被ばくした福島の子供たちはどうなのかと言うと、今の医学では、仮に放射線による影響が出たとしても、今の時点で癌になっているということは考えられない。チェルノブイリの例を見ても、癌が現れたのは数年後となっている。さらに、福島県立医大および福島県庁の調査でも、癌になるような放射線の累積被ばく量を浴びた人は福島県の中でもいなかった。
国としての食品健康影響評価の基礎は、一生涯に追加による累積被ばくが100ミリシーベルト(通常浴びている年間1.5ミリシーベルト以外に)以上浴びると癌のリスクが明らかになってくるとの考え方である。今まで福島で調べた結果では、殆どの人は100ミリどころか追加被ばくの値が高い人でも数ミリから十数ミリ程度だった。

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