3. 生産と製造をむすぶ「生乳取引」 ~乳製品の価格が決まるまでのしくみ~

生産と製造をむすぶ「生乳取引」~乳製品の価格が決まるまでのしくみ~

■酪農生産者と組合組織の構造

集められた生乳はどう取引されるの?

酪農家のもとで生産された生乳はどんな経緯でメーカーの製造工場に届くのでしょうか。
酪農家により生産された生乳は、そのエリアの指定団体によって集められ、指定団体は複数の乳業メーカーに販売を行います。これを「一元集荷 多元販売」といいます。
酪農生産者の多くは、農協などの組合組織に属し、農協は都道府県単位で農協連合会等を形成しています。この連合会がさらに、全国10のブロック、北海道、東北、北陸、関東、東海、近畿、中国、四国、九州、沖縄でブロック団体を形成しています。この10団体は「加工原料乳生産者補給金等暫定措置法」に基づき、農林水産大臣または知事から「指定生乳生産者団体」として法的に指定を受けています。乳業メーカーは、この指定団体と生乳の取引を行っています。また、この指定団体に属さない生産者もあり、乳業メーカーとの直接取引も行いますが、国による酪農補助政策等の援助を受けることはできません。

生産と製造をむすぶ「生乳取引」~乳製品の価格が決まるまでのしくみ~

■用途別取引とは

用途によって変わる「乳価」

牛乳・乳製品の原料となる生乳の価格を「乳価」と呼びます。乳価の決定については、“日持ちがしない”という特徴や、国の政策なども関わって、特有の仕組みがあります。
乳価は一般的に、「飲用向」(飲用牛乳に仕向けられる生乳)、「加工向」(特定乳製品に仕向けられる生乳)など、取引される生乳の仕向け用途別に違います。これは「用途別取引」と呼ばれ、「用途別に価格を定めて取引をする」ことと、「処理した結果(用途が決まった後)で価格が決定する」ことが特徴です。つまり、牛乳、バター、チーズなど、用途が異なる品種の乳製品を製造している工場では、複数の用途別乳価が発生し、構成比によって乳価も変動することになります。
取引価格を含めた取引条件は、4月から翌年3月までの1年間を契約期間とし、通常1年を通して同じ条件で取引されています。

図12:用途別取引の例
図12:用途別取引の例

■乳価形成のしくみ

安定した価格で製品を供給するために

乳価は、乳業メーカーと酪農生産者(団体)との間での合意によって決められます。合意形成の過程を「乳価交渉」と呼びますが、この交渉には、生乳需給状況、市場動向や経済環境、乳業者や酪農生産者の経営状況など、さまざまな要因を総合的に勘案して行われます。これらの環境は乳業メーカー、酪農生産者団体ごとに異なる要因や条件があるため、合意される結果(乳価)は取引ごとに変化します。ただし、大筋では業界全体で同じような傾向になるようです。
用途別乳価や指定団体との取引などは、加工原料乳生産者補給金等暫定措置法等に規定されている内容、また加工原料乳に対する補給金(チーズ向け生乳を含む)、生クリーム等向けに対する補助政策など、国の政策に大きく影響を受ける側面もあります。

■加工原料乳生産者補給金制度

安定した酪農経営のために、補助制度があります

特定乳製品向け生乳(加工原料乳)の量は、生乳需給の変動の影響を大きく受ける性格を有しています(2.乳製品の製造工場とは【製造と消費の動向】<バター・脱脂粉乳の場合>を参照)。このため、加工原料乳地域の酪農経営を安定させ、生乳の再生産の確保を図るため、国が制定した補助制度のひとつに「加工原料乳生産者補給金制度」があります。以前この制度は、加工原料乳生産者の生乳生産費と乳業メーカーの支払い可能価格の差額を、補給金として国が補填することから「不足払い法」と呼ばれていましたが、平成13年度より、前年度の補給金単位に生産費の変動率を乗じて、当年度の補給金単位を決める方法に変わりました。なお、補給金対象となる生乳には限度数量として上限が定められています。
平成26年度の補給金単価は、加工原料乳1㎏あたり12.80円、限度数量180万トン、チーズ向け生乳1kgあたり15.41円、交付対象数量52万トンと定められています。