第91回 牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

指定団体制度のしくみ

酪農家が指定団体に生乳を出荷して、指定団体が乳業メーカーに生乳を売っていく。補給金は指定団体を通じて酪農家に交付され、国が直接酪農家に交付するのではなくて、指定団体を経由して酪農家に分配される仕組みになっていた。ただし指定団体への出荷は義務ではなく、指定団体に出荷しなくてもいいと。

農協共販に独占させる意味

これは価格交渉力を強めるという意図があった。指定団体制度ができる前は、大きな乳業メーカーと小さい酪農協がいっぱいあり、大きいのと小さいのが交渉をすると、乳業メーカーもなるべく安く買いたいので、不利な価格になってしまうことが多かったが、バラバラになっていた酪農家が一つにまとまることで、フェアな価格交渉ができるようになるということが目指された。

生乳流通制度改革の経過

この制度を変えようという話が、去年から出てきた。実はこれより前から、指定団体制度は変えた方がいいのではないかという話が政府の中であったのは確かだが、表だって出てきたのは去年の3月。規制改革会議からの意見という形で、指定団体制度を廃止するべきだという提言が出てきた。途中、「廃止」が「抜本的改革」になったり、若干表現が変わってきているが、最終的には去年の11月に農業競争力強化プログラムの中の一つで、この生乳流通制度の改革の中身が決まった。このプログラムに基づいて、今年の5月に畜安法(畜産経営の安定に関する法律)の改正案が国会に提出され、6月に成立して、来年4月から新しい制度が始まることになった。

今回の制度改革の特徴

今回の制度改革は、いくつか特徴があるが、まず一つ目が通常の農政改革とは全く異なるやり方で実施されたということ。酪農に限らず最近の農協改革、あるいは農業以外の教育分野などでもそういうやり方でやっているようだが、官邸主導で改革をやった。特にこの指定団体制度改革はその典型的と言うか、かなり露骨な形で行われた。直接的には規制改革推進会議主導で進められて、酪農の制度なので本当は農林水産省が責任官庁のはずだが、農林水産省は実質的に改革にほとんどタッチできない形で改革が進められた。
農業で一番大事な法律に食料・農業・農村基本法という法律があるが、その法律に基づいて政策審議会があり、農業に関する政策を変える場合は必ず議論する。政策審議会で議論する中身は、指定団体制度を始めとする補給金の制度のことも議論するとはっきり書いてあるにもかかわらず、実は政策審議会では、今回の改正畜安法も含めて、指定団体制度改革に関する議論が行われていない。ここをスキップして、いきなり国会に法律を出して変えるというすごいやり方が行われている。つまり、通常行われるべき法的・制度的手続きは無視された。一応規制改革推進会議で有識者の方々でいろいろ議論はされているが、議事録を見れば分かるが、もう結論ありきの一方的な議論が行われていて結構ひどい。酪農家とかいろいろな関係者の意見は聞いているが、ごく一部の人たちだけの意見を聞いて改革が進められているという、そういう印象を受ける。

生乳流通制度改革の目的?

二つ目の問題が、目的がはっきりしないということ。なぜこの改革をやるのかが実は曖昧で、しかも一貫していないという非常に重大な問題。政府なり規制改革推進会議がなぜこの指定団体制度改革をやるのか、一応説明はしているが、これが今年の5月に出た第1次答申で、「酪農家が出荷先を自由に選べる環境の下、経営マインドを持って創意工夫しつつ所得を増大」するためにやると言っている。酪農家が出荷先を自由に選べるように改革すれば所得が増えるとの理屈だが、そもそも今でも自由で、この辺を前提としてもいろいろ問題がある。

生乳流通制度改革の真の目的

別の問題もある。例えば酪農家の販売の選択肢が自由になれば、今は農協に出荷している人が、農協以外のところに出荷するようになれば、別の言い方をすると、生乳販売を巡る競争が活溌になれば、なぜ所得が増えるのかということに関して、具体的な記述はない。自由に選べるようにすれば所得が増えるとしか言っていない。実際の今年の5月、6月の国会審議でも特にこの点が問題視された。なぜ所得が増えるかというのを実は政府側も十分に説明できていない。私も農林水産委員会で意見陳述をしたが、与党側の参考人もこの辺は明確に答えられなかったと言うか、それで所得が単純に増えるとは言えないのではないかとまで言っていた。
この辺が非常に不可思議なところで、なぜこんなことになっているかというと、一般的に改革というのは、現実に何か問題があるので、この問題を解決するために改革は普通行われるが、今回の場合は現実に大きな問題がないにもかかわらず、改革そのものが目的としか思えないわけである。
この間の他の農協改革の経緯を踏まえると、農協共販を国の政策として、優遇している現在の指定団体制度をとにかくなくして、生乳販売における競争を強化することが今回の改革の目的だったのであろうと思う。普通は目的があって改革するのが、要は目的がなくて、改革したいということ自体が目的だったということだと理解する。

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