第91回 牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

農協共販の必要性①

二つ例を挙げると、一つがまず実際の販売価格の話。農協共販でやっている場合と、仮に農家がバラバラで売った場合にどうなるかという話で見ると、生乳は最終的に何になるかで値段が違う。北海道の乳価では、飲む牛乳になる場合は1kg120円ぐらい。しかし、チーズの場合は1kg70円ぐらいで、結構差がある。農協を通さずに農家がバラバラに販売すると、牛乳工場の近くにいる酪農家は1kg120円で売れるが、チーズ工場の近くにいる酪農家は1kg 70円でしか売れず、非常に不公平になる。要は酪農家がどの地域にいるか、あるいはどの工場の近くで経営をしているかによって全然販売条件が変わってしまう。もしも自分の町にチーズ工場を今度建てますと言ったら反対運動が起きる。低くなるのは嫌だから。
しかし実際は農協共販によって平均販売、あとは共同計算をする。117円と68円の単純平均が93円なので、農協共販を通すと、牛乳工場の近くにいる酪農家もチーズ工場の近くにいる酪農家も同じ93円を受け取ることになる。どの工場の近くにいても、同じ代金を受け取ることができる。ただし、全く同じになるわけでは当然なくて、乳質によって価格差はある。細菌が少ない生乳を作れば当然より高く代金を取れるし、あとは体細胞が少なければより高い代金を受け取れるが、基本的には牛乳になるのかチーズになるのかという価格差はなくなることになる。

農協共販の必要性②

同じことがコストにも言える。生乳を酪農家から工場に運ぶ時のコストが一番販売コストの中で掛かっていて、乳製品工場の近くとか、あるいは関東に持っていく場合は船で持っていくので港に生乳を持っていくが、港とか工場の近くにいる酪農家は当然輸送コストが安くて、遠くの酪農家ほど高くなる。農協を通さず仮にバラバラでやった場合にこういう問題が起きる。これも特定の地域の人は安く済むが、遠い人はとてもコストが掛かる。しかし、農協共販で販売費用をプール、割り勘すると、この場合1円と5円の平均なので仮に3円としているが、3円になって近くにいる酪農家も遠くの酪農家も同じ3円の負担で済むことになる。
その他にも酪農家が個人でバラバラでやると運営できない施設も、みんなで一緒にお金を出し合うことでできるようになる。例えば生乳の検査施設や、あるいは生乳を一時的に貯蔵するクーラーステーションという施設があるが、こういうのは酪農家個々人でやるのは無理。農協を通じてみんなでお金を出し合うことによって、初めて施設も持つことができて、生乳の安全性をより高めているということになる。

農協共販の必要性③

要は農協を通すことによって、北海道でも都府県でも同じことだが、例えば北海道内の酪農家であれば、同じ販売条件で酪農経営をすることができる。つまり、地域的に偏りがなくバランス良く酪農を発展させるという面で、農協共販は非常に重要。北海道で言うと十勝とか釧路・根室に関しては工場とか港が近いので割といい条件だが、宗谷だと港が非常に遠いので、バラバラでやっているとこの辺の酪農家は非常にコストが掛かってしまう。しかし、農協共販でやることによって、販売コストをみんなで分かち合うことによって、宗谷地域でも酪農経営がしっかりできている。消費者にとっても、安定的に必要とされる生乳が供給されるという面からも、農協共販の意義は大きいということになる。

加工原料乳補給金制度の目的

その上で国の制度の話に移る。加工原料乳補給金制度、不足払い制度と言われることもあるが、日本で酪農に関して一番重要な制度と言ってもいいかと思う。これがちょうど50年前、1966年に作られた制度である。この制度が作られた背景が、その当時非常に牛乳・乳製品の供給が不安定であったということ。これは輸入が今と比べるとかなり自由に行われていたので、そういう影響も大きかったと言われている。また、酪農家が受け取る生乳価格が、非常に不安定であった。さらには、酪農家の組織、農協が今と比べるとかなり小さかったので、乳業メーカーと価格交渉をした場合、非常に不利な状況に置かれていたという問題があった。これらの問題をどうにかしようということで、この補給金制度が作られた。
補給金制度の目的は二つあり、一つ目が牛乳・乳製品を安定供給。二つ目が合理的な乳価形成、要は酪農経営が成り立つようにするというのが補給金制度の目的である。
この目的を達成するためにいろいろなことが行われたが、大きく言うと二つの事業があって、一つが補給金を酪農家に支払うことと、あとは主要な乳製品の輸入管理。これは国家貿易制度と言われている。

補給金交付の2要件

補給金はどんな酪農家にも配るものではなくて、当然条件があった。大きく二つの条件があり、一つ目が対象となる生乳の仕向け先であり、脱脂粉乳・バター・チーズ・生クリーム・脱脂濃縮乳等液状乳製品向け。時代によって、対象になっている乳製品が変わっているが、今の時点で言うと、主にこの四つの乳製品に処理される生乳、つまり乳製品向けの生乳である。乳製品に加工される生乳を生産している酪農家には補給金を払う。なぜ乳製品だけなのかと言うと、乳製品向けの乳価は非常に安いので、補給金を払わないと赤字になってしまうので補給金を払う。
二つ目が今回の話の柱の一つになるが、指定生乳生産者団体(指定団体)に生乳を出荷している酪農家に補給金を払う。指定団体は、特定の地域毎にある農協である。一定条件を満たす農協を法律に基づいて特定地域内の一団体だけを指定する。こういう仕組みで現在、指定団体が10ある。これが指定団体制度である。

全国の指定団体

指定団体は、昔は都道府県ごとに一つあったが、都府県の方で広域合併が進んで、かなり数が少なくなっている。北海道はホクレンという一つの指定団体だが、関東の場合は複数の都県で指定団体が作られている。関東生乳販売農業協同組合連合会というのが関東地方の指定団体。沖縄は1県1指定団体だが、その他に8つの都府県の連合会がある。

酪農政策と一体化した農協共販

これが一体何を意味するのかということだが、酪農家に補給金を払う場合の条件の一つに、指定団体に生乳を出荷するという条件を付けた。これは実は法律に明確に書いてあるわけではないが、その当時の政府の意図としては、酪農家を指定団体へ集めることを目指して、この制度を作った。つまり、特定の地域の大部分の生乳を取り扱う地域独占的な農協共販の形成を政策的に誘導した。地域独占と言うと聞こえが悪いが、過去の電力会社のような意味での地域独占ではなく、指定団体というのは、酪農家が指定団体に生乳を出荷するかどうかはあくまでも自由で、出荷してもいいし、出荷しなくてもいい。出荷しないと確かに補給金はもらえないが、別に出荷しなくてもいい。強制ではない。
政府は何を狙っていたのかというと、こういう大きな農協共販を作ることによって、効率的な需給調整、つまり、足りなくなった時、余った時の調整を効率的にやったり、乳業メーカーとの乳価交渉力を強くすることを意図していた。このことがまさに補給金制度の目的で、牛乳・乳製品の安定供給と、酪農経営が持続的に続けていけるように、大きな農協共販に誘導していくことを政府は行った。

1 2 3 4 5 6 7