第91回 牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

2007年以降、生乳生産量の減少に伴う需給逼迫の断続的発生

酪農家の規模はここ15年ぐらい拡大してきており、10年ぐらい前の飼料等の生産資材価格の高騰で経営が大きく悪化したが、最近は乳価が上がってきたりして、所得が10年前以前の状態に戻りつつある。しかし、それでも生産の減少が止まらないというのが大きな問題である。その結果、バターが時より足りなくなるので、乳製品輸入が増加している。もともと日本国内で全てまかなえるはずなのが、足りないので輸入せざるを得ない状況になっている。

生乳生産増加に向けた阻害要因

では、生産が減っているのは何故か。生乳生産を増やそうとした場合にどういうことが問題かという全国の酪農家を対象に中央酪農会議が採ったアンケートであるが、都府県と北海道で微妙に違い、北海道では労働力不足。4割近い酪農家が挙げている。2番目が、酪農政策が今後どうなるか分からない。非常に不安である。あとは施設とか設備とか機械が足りない。都府県だと経営者が高齢化している。購入飼料、買っている餌の価格が今後どうなるか分からない。あとは労働力不足という問題が出てきている。

酪農家から乳業工場へ

生乳の流通は、酪農家のところで絞られて生産され、そこからミルクローリーで乳業メーカーの工場に運ばれる。

生乳の流通チャネル(商流ベース)

現在の日本の生乳流通のアウトラインで、一番左側に酪農家がいて、一番右側に乳業メーカーがいる。大きく分けると二つのタイプの流通があり、ポイントになるのが赤いところの指定生乳生産者団体。略して指定団体と呼ばれている農協があるが、生乳は大きく分けると指定団体を経由しているものと、指定団体を経由していないものと二つに分けることができる。
指定団体を経由する流通の比率が圧倒的に高く、おおむね97%ぐらいである。単位農協というのはいわゆる地元の農協で、地元の農協に出荷して、そこからさらに指定団体。北海道だとホクレンという指定団体があり、関東だと関東生乳販連という指定団体があるが、そういうところに出荷されて乳業メーカーに販売されることになっている。
最近は、MMJという生乳を専門で扱う卸売業者が脚光を浴びており、取扱量を増やしている。ただし、日本全体で今5~6万tぐらいの量を扱っている程度である。

生乳の直接販売は難しい

酪農家からメーカーに直接売った方がいいんではないかという話はよく言われる。これは酪農に限らず、米・野菜でも直接販売した方が中間コストが掛からなくていいんではないかと。でも、特に生乳の場合は直接販売が非常に難しい農産物である。
一つは消費の季節性。要は消費量が季節によって変わるということ。飲む牛乳に関しては夏場の消費量が多くて冬場は減るという季節変動がある。バター・生クリームに関しては、クリスマスの時にお菓子とかケーキとかがたくさん売れるので、年末に消費量が偏るという傾向がある。
もう一つは、生乳の生産の特性もある。生乳を作ろうとしても、子牛が生まれてからその子牛が成長して、実際に子牛を出産するまで大体2年ぐらい掛かる。子牛が生まれてその子牛が成長して、妊娠して出産して初めて生乳が生産されるので、それまで2年間掛かるので、今増やそうと思っても実際に増やせるのは乳用種の種付けからみると約3年後であるということ。あと実際に乳が出始めると、量を調節するのが難しい。出るものは全部搾ってやらないと病気になってしまう。搾り始めたらいらないから搾らずに置いておこうという対応はできない。あとは生乳の生産量も季節によって変動する。春先が一番多く、夏から秋に掛けて少なくなる。夏に減ってしまうのは、ホルスタインはもともと寒い地域の牛で、夏バテして減るということになる。
牛乳の方は夏に消費量が増えて、逆に生乳の生産は減ってしまうということで、真逆の動きをする。この辺の調整が難しいが、要は消費に合わせて生乳の生産量を調整するのが難しいということである。
さらに生乳は日持ちをしない。5度で冷やしておいてもせいぜい3日が限界だと言われている。生乳は日持ちしないということと、乳業メーカーは基本的には自分たちが必要な量しか買いたくない。乳業メーカーが買いたい量と、酪農家が実際に生産している量が合わない。これが非常に大きな問題である。直接酪農家と乳業メーカーが1対1で取引しているとその調整が難しいので、酪農家と乳業メーカーとの間に入って調整する組織というのが必要になってくる。日本で言うと特に農協がそういった役割を中心的に担っている。

農協による共同販売(共販)の特徴

制度の話に移るが、酪農家と乳業メーカーとの間に入って調整する組織は日本では主として農協がやっているが、これは日本に限らず、ヨーロッパやアメリカでも同じ。必ずしも農協ではない場合もあるが、それでも何らかの酪農家の組織が間に入って、酪農家の生乳を乳業メーカーに販売するというのが一般的。日本だけが特殊なわけではなくて、農協みたいなものが間に入るのはどの国でも同じである。
農協による生乳の販売の仕方だが、農協というのは酪農家が集まって作った組織であり、生協と同じで共同出資をして農協は作られている。農協による販売の仕方は、共同販売と呼ばれ、略して共販と言われる。この農協共販には三つのルールがある。この三つのルールに則って農協は酪農家から生乳を集めてきて、乳業メーカーに販売している。これは酪農に限らず米でも、野菜でも同じこと。平均販売・共同計算・無条件販売委託と言われているルールである。
一つ目の平均販売は、一元的に集荷した農産物を、地域的・時間的に平均分荷して農家に有利な販売を目指すことで、酪農を例にすると、生乳を農協に集め、いろいろな地域にいる乳業メーカーに毎日、特に生乳の場合は毎日生産されるので毎日来るのは当たり前だが、そういう形でむらなく販売することで、酪農家に有利な販売を目指すというのが平均販売である。
二つ目の共同計算は、一種の割り勘みたいなもので、売上から販売費用を除いた一定期間の販売成果をプールして、平均価格を算出して農家へ精算する。分かりやすく言うと、1年間で農協で共同販売した結果、100万円売上があって、販売費用が10万円掛かったとすると、100万から10万を引いて90万円が販売成果。例えば農協に入っている酪農家が90戸いたとする(ただし、生産量は全員同じ)と、一人ずつ1万円渡して生産するというやり方である。農協で共同販売した結果が90万円。酪農家が90戸いたら1人1万円ずつ渡して成果をみんなで分け合うというのが共同計算というやり方である。
三つ目の無条件販売委託は、農協に販売委託する際に、農家は特定の販売条件を求めないとある。要はどこにどういうふうに販売するかは、農協に全部お任せするということ。実はこれは平均販売と共同計算の前提である。農協に任せるやり方にしないと平均販売もできないし、共同計算もできない。酪農家が自分の生乳はどこどこのメーカーにしか売りたくないとかって言ったら平均的に売ることができなくなってしまう。輸送コストが掛かるのが嫌だから近くの工場にしか売りたくないというのもなかなか難しい。販売コストをみんなで割り勘するということが、できなくなってしまうので三つのルールに基づいてやっている。

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