第89回 牛乳・乳製品から食と健康を考える会 開催

「現地見学会開催 ~宮城県 一般財団法人蔵王酪農センター~」

【日時】
平成29年5月22日(月) 8:30~19:00
【出席者】
牛乳・乳製品から「食と健康を考える会」委員
毎日新聞記者 今井 文恵
消費生活コンサルタント 神田 敏子
元日本大学教授 菅原 牧子
科学ジャーナリスト 東嶋 和子
産経新聞 文化部記者 平沢 裕子
(50音順)
乳業メーカー:広報担当者
乳業協会:本郷常務理事 他
【内容】
今回の開催は、宮城県蔵王町の山麓に位置する実際の施設見学により、酪農の持つ自然循環サイクルを最大限に活用した牛乳・乳製品の価値向上、「蔵王チーズ」「蔵王爽清牛」ブランドで6次産業化の最先端をいく取り組みを知ると共に、総合的な酪農・乳業経営のサポート役として、体験施設による人材研修に努めている姿について、認識を深めることができた。
【訪問先】
一般財団法人蔵王酪農センター
  • 一般財団法人蔵王酪農センター
  • 一般財団法人蔵王酪農センター
  • 一般財団法人蔵王酪農センター
  • 一般財団法人蔵王酪農センター
<会社概要>

■代表者 理事長 小原 實
■設立 昭和35年
■事業内容 酪農、乳製品製造業

<見学内容>

・「良い土は良い牧草を育て、良い牧草は良い牛を育む。そして、良い牛は良い牛乳を出し、良い牛乳からは良い乳製品ができる。牛と牧草でできる堆肥は良い土を作る」という考えの基、1次産業である酪農業、2次産業である乳製品の製造、3次産業である店舗販売を一貫して行い、6次産業化の推進に取り組んでいる。
・将来的な家畜飼料の確保と産業廃棄物の削減を目指し、茶殻やチーズホエイを活用した産業廃棄物の飼料化に取り組み、地域活性化にも繋げている。
・多岐に亘る事業施設を見学しながら、収益事業と公益事業を紹介頂いた。
・牧場事業として、「哺育・育成センター事業(子牛たちの幼稚園)」、「蔵王爽清牛」の取組みや新設した搾乳ロボット活用型研修農場について学んだ。
・TMRセンターでは、資源循環型ブランド牛の構築の為の発酵混合飼料「乳茶餌」(ニューチャージ)の生産・供給を学んだ。
・ナチュラルチーズ製造工場では、国産NC製造技術者研修会を通して、これまで数多の技術者を養成してきた歴史や乳清活用について学んだ。
・販売(酪農普及)では、乳製品・チーズ料理等普及店舗や施設を見学し、「ラクロネット」(チーズの鉄板焼き)を食し楽しんだ。

  • 見学内容
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【現地見学の感想】
今回は、見学した委員の皆様の感想を掲載。

1.5月下旬の晴れた1日、蔵王酪農センターを見学させていただく機会に恵まれた。酪農の機械化については、これまでもいろいろと見せてもらってはいたが、今回の搾乳ロボットは目が点になるようなすごいものだった。個々の牛の特徴を記憶し、その牛が入ると乳の位置から搾る強さまで、個別対応するという。手で絞っていた頃からわずか数十年で、技術はここまで進歩したのか、と驚いた。人手を極限まで省けるこのロボット、ぜひ稼働しているところを見たいものだ。
茶殻とホエイを牧草に混ぜて開発したエコフィード「乳茶餌」もユニークな試みで、なんだかワクワクした。それまで廃棄処理していたものでより高品質な飼料を作り、新たなブランド「蔵王爽清牛」を育てる…。まさにだれもがにっこりのウインウインの取り組みである。自然にも牛にも、そしてメーカーや消費者にも。酪農には、まだまだこんな工夫がいろいろと出てくる可能性があるのだ、と改めてうれしくなった。
 またこのセンターは、家族連れなどが楽しめるレジャースポットであることも魅力的だった。たっぷりの溶けたチーズに野菜やベーコンを絡めて食べるラクロネットのおいしかったこと。広い草原で動物と触れ合ったり、バターを作ったりと、蔵王山麓でのんびりとリフレッシュできる。今頃はバラ園のバラが見事な花を咲かせていることだろう。

2.蔵王山麓の広大な牧草地に爽やかな風が吹いていました。こうした良い環境で育てられた牛からは、それだけでもいいお乳が出そうです。
国産ナチュラルチーズの製造・研究に先駆的に取り組み、紆余曲折もあったそうですが、当初の思いがぶれることなく、ここまで事業を発展させて来たことに、感心いたしました。帰宅後、お土産にいただいたゴーダチーズをワインとともに楽しみました。味にコクがあり深みがあり、本当においしいチーズでした。そのことからも、しっかりとした事業を行って来たことが伺えます。
牛乳10Kgからナチュラルチーズ1Kg、副産物であるホエイが9Kgできるとお聞きし、驚きました。チーズは貴重な食品であること、そしてホエイの活用は重要であることが、よく分かりました。この副産物を廃棄処分することなく、研究を重ねてエコフィードとして活用していること、地域の飲料メーカーと連携していること、そしてその飼料で肥育した牛を、蔵王町ブランド牛として普及していること等、素晴らしい取り組みだと思います。
このブランド牛は、脂肪分が少なく、しかも柔らかいお肉のようですから、昨今のヘルシー志向や高齢化に向けて、大いに消費拡大が期待できると思います。ただ、願わくば「庶民」の食卓に上りやすい価格帯で提供していただけると、なお嬉しいのですが、それは無理な相談でしょうか?
一日ゆっくり見学させていただきました。循環型酪農や6次産業の取り組みだけではなく、当初より酪農研修会や体験学習などの公益事業にも力を入れており、「企業の社会的役割」もしっかり果たされていると感じました。これからも、こうした総合的な取り組みと同時に、消費者の意見・要望等にも十分耳を傾けていただき、いい商品、素敵なサービス提供を続けてくださるよう、心から期待しております。

3.東京が今年初めての真夏日になった5月22日、宮城県蔵王町にある「蔵王酪農センター」を訪問しました。蔵王山麓に東京ドーム20個分の広さの牧場やチーズ工場、売店、宿泊施設などを持つ雄大な施設です。子供連れの一般客の方々も沢山訪れていました。蔵王山麓だから涼しいだろうの期待に反して眩しい陽光は痛いほどの暑さ。ここは標高の高い分、太陽に近いのだと思い知らされました。溢れるような新緑の中でいよいよ見学会はスタートしました。
「良い牛を育み、良い牛乳を得、良い乳製品を作る」を基本理念に運営されているセンターの先ずは牧場を見学。現在は70頭の乳牛を飼育しているとの事。如何にものんびりした顔でゆったりと餌を食べています。餌は「乳茶餌(ニューチャージ)」と名付けられた発酵混合飼料。実はこの飼料、産業廃棄物の再利用アイディアから生まれた優れもの。清涼飲料・爽健美茶の茶殻(ハト麦、大麦等15種類)とチーズ製造工程で出来るホエイ(乳清)を使い作り出した発酵混合飼料なのです。それまで廃棄されていたものが栄養満点の飼料に生まれ変わり、産廃の減量にも家畜飼料の国内生産にも役立っているのです。発酵した美味しそうな匂いがする餌で、牛も喜んで食べているそうです。
次に見せて頂いたのは出来たばかりの牛舎、AIを搭載した搾乳ロボットを備えています。24時間稼働の搾乳ロボットは、お乳の張った牛が自分で装置の中に入り搾ってもらうのだそうです。牛には個体別の情報入りチップが付けてあり、AIから飼育者の端末に牛の状態の報告が送られるようになっているのだそうです。蔵王酪農センターでは新規の酪農希望者の研修、そして省力化機械を活用した新たな家族酪農の経営スタイル普及にも力を注いでいるのです。

4.食と健康を考える会の見学会で5月下旬、宮城県蔵王町にある一般財団法人蔵王酪農センター(小原實理事長)を訪ねた。
同センターは、「蔵王爽清牛(ざおうそうせいぎゅう)」の生産における地域資源循環の取り組みが評価され、この3月に「第4回食品産業もったいない大賞」の農林水産省食料産業局長賞を受けた。
半世紀以上にわたって蔵王山麓で農場経営から牛肉・乳製品の生産、加工、教育、普及、販売に先駆的な取り組みをしてきただけに、日本の酪農の歩んできた道のり、これから進むべき道が、ひと筋の光のように輝いて見えた。
国産ナチュラルチーズの生産を牽引してきた同センターでは、副産物であるチーズホエイを飼料に有効利用できないかと、実験を重ねた。
その結果、町内のコカ・コーライーストジャパン蔵王工場から排出される飲料「爽健美茶」の茶殻とホエイ、乾草、乳酸菌などを混ぜて発酵させた飼料を開発した。
この飼料は大いに牛に好まれるうえ、育成期に問題だった下痢や、乳牛の乳房炎がほとんどなくなったという。
乳牛のメスと黒毛和牛のオスを交配させ、このエサをもりもり食べて育った牛を「蔵王爽清牛」と名づけて、蔵王町のブランド牛として売り出した。肉質は「適度な脂肪を含む赤肉で、非常に柔らかくヘルシー」という。
というのも、旨味成分を測る尺度となるオレイン酸が、黒毛和牛で55%なのに対し、「蔵王爽清牛」では63%。この差はエサに由来すると考えられ、「牛自身も非常に健康に育っている。健康志向の方に安心して美味しく食べていただける牛肉」と、センターの皆さんは胸を張っておられた。
生乳はもちろん、ブルーチーズのアイスクリーム、種々のチーズを溶かして焼いていただくラクロネットを味わった。どれも絶品!
広く清潔な牛舎で悠々と過ごす牛たちを見て、牛の健康あってこその、牛乳や牛肉のおいしさであり、ヘルシーさであると改めて感じた。

5.「乳酸菌の力、恐るべし」―。ヒトの健康にいいとして乳酸菌をはじめとする発酵食品が見直されているが、牛にとっても役に立っていることを今回の見学会で知ることができたのは大きな収穫だ。
 乳酸菌を含んだ牛の餌「乳茶餌」が、もともとは産業廃棄物だった爽健美茶の「茶殻」と蔵王チーズの「乳清」を活用してできたことにも感銘を受ける。「乳茶餌(ニューチャージ)」や「蔵王爽清牛」のネーミングは、商品特性を的確に表わしているのはもちろん、初めて目にした人に「何これ?」と思わせくすりと笑わせてくれ、商品のPRに寄与していると思う。
ランチでいただいたチーズの鉄板焼き「ラクロネット」は、私自身は今回が初体験だった。ホットプレートがある家庭なら、チーズとフランスパン、そしてトマトやハムなどの常備食品で簡単にできる料理だが、楽しくておいしく、パーティー料理にぴったりだ。何よりチーズがたくさん食べられ、消費拡大に役立つといえる。チーズを使った料理といえばチーズフォンデュが有名だが、ラクロネットについても調理法の普及をもっと図るべきではないか。
また、「電力を酪農に活用しよう」というセンター創設時の理念が今、自動搾乳マシーンの導入など最先端技術の活用という形で受け継がれており、日本の酪農・畜産の発展にセンターの事業が欠かせないことを知った。生産者の高齢化や後継者不足など、酪農・畜産の経営を巡る状況が依然として厳しい中、センターの今後の活躍に期待したい。