第82回 牛乳・乳製品から「食と健康を考える会」開催

「現地見学会開催 ~福島県 会津中央乳業・小池牧場~」

【日時】
平成27年5月25日(月)8:00~19:30
【出席者】
牛乳・乳製品から「食と健康を考える会」委員
消費生活アドバイザー 碧海 酉葵
毎日新聞記者 今井 文恵
ジャーナリスト・実践女子大学講師 岩田 三代
評論家・ジャーナリスト 木元 教子
科学ジャーナリスト 東嶋 和子
産経新聞 文化部記者 平沢 裕子
(50音順)
乳業メーカー:広報担当者
乳業協会:白川専務、石原常務 他
牛乳・乳製品から「食と健康を考える会」委員
【内容】
今回の開催は、実際の乳業現場の工場見学と酪農家見学を実施した。改めて、乳業や酪農の問題点等について、現場に従事する方々と直接、意見交換をすることで認識を深めることができた。
【訪問先】
会津中央乳業株式会社

代表者 代表取締役 二瓶 孝也氏

<会社概要>

■代表者 代表取締役 二瓶 孝也氏
■資本金 6,000万円
■従業員数 27名
■製造品目 牛乳、乳飲料、発酵乳、乳製品、アイスクリーム
■創業 1948年4月 二瓶牛乳創業

<現在の状況>

・東日本大震災後4年が経過する中で、首都圏での販売で一度失った定番売り場の復活に取り組んでおり、売上高は震災前レベルまで回復しつつあるが、諸費用の高騰で利益的には当時の水準まで回復していない。
・会津の良質な生乳を厳選使用し、85℃15分殺菌でコクがあり風味豊かな付加価値の高い「会津のべこの乳」の拡売に傾注している。
・発酵乳では「会津のべこの乳 のむヨーグルト」「べこの乳発 会津の雪」の生乳の風味を十分に生かした濃厚で滑らかな味わいのヨーグルトを製造販売している。

  • 「食と健康を考える会」現地見学の感想
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【訪問先】
小池牧場

代表者 小池 徳男氏

<牧場概要>

■代表者 小池 徳男氏
■飼育頭数 32頭
■1頭当りの年間泌乳量 11,000kg程度

<現在の状況>

・中央酪農会議の教育ファームを実施。
・酪農体験を積極的に開催。震災後、応募者は減少したが徐々に増加となってきている。
・福島県では放牧地の除染は費用が多額なため、できないことから放牧を中止している。
・会津地区の酪農家は後継者がいるため、継続する酪農家は多い。
・長命多産を理想とする経営を目指している。

  • 「食と健康を考える会」現地見学の感想
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【現地見学の感想】
今回は、見学した委員の皆様の感想を掲載。

1.福島・会津の空は、心も澄みわたるような青い空でした。都会の喧噪から離れ、日常の仕事から解放され、子供の頃の心を取り戻したようでした。
会津中央乳業では、酪農家の顔が見える製品づくりを改めて実感し、北海道とは違う本州東北・会津ならではの工夫と、酪農家の愛情深い「牛飼い精神」を尊重する乳業の原点を再確認できた思いです。
小池牧場では、「牛たちはストレスもなく、まさに健康そのもの」というメッセージを、牛たちに「会って」、背中をそっと触って、撫でて、十分納得しました。
ここまで努力された日々と、根性ある酪農精神に頭の下がる思いで、「ありがとう」と一杯の牛乳につぶやき、生産者と消費者がお互い「いい生き方」をしようと、理解し合える「場」が、この現地見学にあるのだ、と納得しています。
牧場の匂いは、懐かしいような、嬉しいような、生きていることを実感させてくれる匂いでした。有り難うございました。

2.道路沿いに小さなショップも構える、従業員27人の会津中央乳業。85℃で15分ゆっくり殺菌した「会津のべこの牛乳」を試飲させてもらった。牛乳独特の甘みと香りが口に広がる。初夏の陽気にのどが渇いていたとはいえ美味の一言。飲むヨーグルトもおいしい。社長の二瓶孝也氏から1948年の創業以来、誠実に牛乳と向き合ってきた歴史や東日本大震災後の苦労話を聞いた後だけにおいしさが倍加したのかもしれない。売り上げは、かつての水準に戻りつつあるが利益は低迷したままだという。震災から4年余がたっても風評被害が続いている厳しい現実に胸が痛む。
会津中央乳業に生乳を納入している小池牧場も訪ねた。牛舎の中に32頭の乳牛が並ぶ。掃除が行き届いているためか臭いはさほど気にならない。こまめな世話が乳の品質につながるという。妊娠中の牛を初めて間近に見た。放射能汚染の心配があり子牛の放牧は今もできない。昨年、奥様を亡くされたご主人の思い出話は切々として、ご夫婦が力を合わせて牧場を営んできた日々を感じさせた。改めて、一日も早い福島の復興を祈りたい。

3.東北新幹線・郡山駅から東北道・磐越西線を経て、磐梯山やまだ雪解け前の飯豊山系に感心しながら会津盆地に入る。坂下(ばんげ)町の目的地について、さっそく自分の認識の甘さに気付いた。冒頭から原子力発電所事故が、牛乳の生産や営業に与えた影響の話である。山系を一つ越えれば新潟県で、太平洋側とは随分離れているのに、風評により、あるいは流通の自粛により、若干高値だが上質な製品の生産が減少しているとのこと。85℃15分殺菌というのが一番おいしいという話は参考になり試飲で実感。しかし、少人数の家族で1リットルパックを購入するわが家の現状では、やはり超高温殺菌牛乳を使う。二瓶社長のご苦労はこれからも多いと推察。
後半の小池牧場では、放牧を一切せず、一生を牛舎で暮らす牛から乳を搾るという酪農方式をはじめて見学した。牛達に不審の眼で見られて、いささか居心地が悪い。
会津の、時間当たりの空間放射線量は東京の倍くらいだが、年間で1ミリシーベルト前後と、まったく案じることはないのに。なんとかしなければという思いを強めた見学だった。

4.地域に根ざした乳業会社も、生き残りのためには大消費地の首都圏を目指さなければいけない現実に複雑な思いを抱きました。そして、一度奪われた売り場の棚を取り戻すことの難しさ。スーパーやデパートの棚の争奪戦の話は聞いていましたが、当事者の方から直接うかがうことができて、大変さを実感いたしました。
ていねいに製造された牛乳やヨーグルトは本当においしかったです。ただ、私自身が普段使いにするかというと、価格の高さは大きなネックです。東京にたくさん運べればもう少し安くなるとのことですが、流通をどうするかは頭の痛い問題だと思いました。そんな中で、特色のあるチーズ作りに力を入れているということ。ぜひ「べこの牛」でしか出せない味や食感のチーズを目指してほしい。東嶋さんも指摘していましたが、マスカルポーネのようなフレッシュタイプのチーズこそおいしさが際立つような気がするので、再検討してほしいです。
乳牛の飼育現場では、乳牛のさまざまな話をうかがえて勉強になりました。ヘルパー制度があるということで、小さな酪農家さんも休みが確保できるようになっているのは、いい取り組みだと思いました。

5.五月晴れ、という言葉通りの青空のもと、訪れた会津で深く心に残ったのは、牛乳作りに携わる男たちの、女性への深い愛情でした。
「会津中央乳業」の商品で使われているかわいい女の子の絵。モデルは二瓶社長の満州で亡くなったお姉ちゃんだそうで、「あのとき牛乳があったら」という思いが込められている、と語る社長の笑顔がとても印象的でした。中温殺菌で作られた「べこの乳」は本当に甘みとコクがある、おいしい牛乳でした。
雄国山麓の「小池牧場」では小池徳男さんが、がんで逝った妻、佐代子さんの話をされる様子が心に沁みました。どんなに熱心に多くの酪農体験者を受け入れ、牛との橋渡しをしてきたか…。壁に並んだ牛の名前の中に「サヨコ」がいて、小池さんの深い思いや寂しさが胸に迫りました。家族で牛を育て、乳を搾り、加工する。それが運ばれて、ようやく都会の私たちが飲める。その流れの源に、心から感謝したくなる現地見学会でした。