第74回 牛乳・乳製品から「食と健康を考える会」開催

「食品表示一元化について」

【日時】
平成25年5月13日(月)15:00 ~ 17:00
【会場】
乳業会館 3階 A会議室
【講師】
消費者庁 食品表示課 課長補佐 今川 正紀
(現:厚生労働省 食品安全部 監視安全課 輸入食品安全対策室 室長補佐)
今川 正紀
【出席者】
「牛乳・乳製品から食と健康を考える会」委員
消費生活アドバイザー 碧海 酉癸
管理栄養士 荒牧 麻子
江上料理学院 院長 江上 栄子
消費生活コンサルタント 神田 敏子
作家・エッセイスト 神津 カンナ
日本大学芸術学部特任教授 菅原 牧子
科学ジャーナリスト 東嶋 和子
産経新聞社 文化部記者 平沢 裕子
(50音順)
乳業メーカー:広報担当者
乳業協会:小板橋専務 他
【内容】
消費者庁では、JAS法、食品衛生法、健康増進法の食品表示に関連するルールを統合し、消費者、事業者双方に分かり易い制度とすることを目的に、新食品表示制度の創設に関し、4月5日に食品表示法案が閣議決定された。そこで今回は、このホットな話題に関し、消費者庁 食品表示課 今川正紀課長補佐に「食品表示一元化について」をテーマに、ご講演をいただくことにした。

1. はじめに

消費者庁ができて約3年半が経過した。なぜ消費者庁ができたかというと、様々な消費者問題、事故、例えばエレベータ事故、ガス湯沸かし器事故、食品分野でもコンニャクゼリー等の消費者事故に対し、重大事故や各省に落ちない隙間事案などを消費者の立場で一元的に管理する省庁が必要である、との判断から消費者庁ができた。
組織的には、内閣総理大臣直轄で消費者庁ができており、消費者担当大臣(現在は、「食品安全および消費者担当大臣」)を置き、現在、森まさこ大臣が担当している。以下副大臣、政務官がおられ、消費者庁は内閣府の外局という位置付けになっており、内閣府に属している。さらに消費者庁には消費者庁長官が置かれており、現在3代目で、民間人から任命された阿南久長官が担当している。人数は300名弱で、厚生労働省、農林水産省と比較すると、1つの局プラスアルファ程度の規模のイメージである。
食品表示課は、JAS法、食品衛生法、健康増進法、米トレーサビリティー法を所管しているが、その中でも表示に特化して所管している。つまりJAS法本体は農水省の管轄、食品衛生法および健康増進法の本体は厚労省の管轄であるが、各々の表示の部分だけを切り取って消費者庁に持ってきたという状態になっている。なぜそうしたかは、食品表示は消費者にとって大切であり重要な問題であるが、これまで色々な法律に分かれていたものを、一元化した法律を作る必要がある、その前に組織を一元化する必要があるとの考えから、まず組織の一元化を先行して行った。そこで消費者庁が表示に関し一元的に所管するようになった。
法律の一元化に関しては、消費者庁ができた当初からの課題であり、その作業を色々な検討を経て、今般ようやく法案を国会に提出したという状況である。

消費者庁の組織

消費者庁の組織

2. 食品表示とはどうなっているか

食品表示は、主に二つの法律からなっている。JAS法と食品衛生法で、それぞれの法の目的は異なっている。JAS法は、品質の違いによる商品選択で、一方食品衛生法は、安全および公衆衛生上の表示となっており、それぞれ「品質」と「安全」と法の目的が違っている。したがって目的が違うことにより必要な表示事項も異なってくる。重なる項目としては、名称、賞味期限(品質、安全両面)等があり、重ならない部分としては、JAS法では原材料名、内容量、原産地等、食品衛生法ではアレルギー表示、添加物表示等がある。
それから法律としてもう一つ、健康増進法の表示がある。最近増えてきているのが栄養成分表示で、エネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウムの5項目を表示する場合が増えている。これは、健康増進法に基づいて表示されており、現在この栄養成分表示は任意表示となっている。ただし表示する場合はルールに則った表示が必要とされている。現在の加工食品は主にこの3つの表示から成り立っている。

食品表示に関する制度

食品表示に関する制度

3. 食品表示の基準について

食品表示の基準に関しては、JAS法や食品衛生法の法律の条文自体は、「表示基準を作ること」程度の表現に留まっており、具体的な細かい表示基準は内閣府令や告示というかたちで規定されている。JAS法では、告示で定めており、主に「生鮮食品品質表示基準」「加工食品品質表示基準」の二つの品質表示基準に分けて示されている。一方、食品衛生法の場合には、内閣府令で定めており、「乳製品に関する表示(=乳等表示基準府令)」「それ以外の全般の表示(=表示基準府令)」の二つに分けて示されている。そもそも表示を司る基準が異なることが、食品表示が複雑な理由の一つとなっている。

食品表示の基準について

食品表示の基準について

具体的には、スーパーにマグロの刺身が単品で売られる場合、JAS法の場合は、生鮮食品品質表示基準に従う。しかし、これに調味をした場合やマグロ以外の刺身を盛り合せた場合は、加工食品品質表示基準に従うことになる。大まかに言えば、切っただけなどの「一工程」の場合は生鮮の品質表示基準、それにさらに調味などの工程が加えられ「二工程」になると加工の品質表示基準になるというように分かれている。何れにしても、JAS法では「生鮮」の品質表示基準か「加工」の品質表示基準かのどちらかにはっきりと分かれることになっている。
一方食品衛生法では、例えば今、例に挙げたマグロの刺身を考えた時、平成13年に腸炎ビブリオによる食中毒発生の防止に資するために規格基準として数値規定を設けた(腸炎ビブリオ最確数で1g中100以下など)。そしてその規格基準に該当するような生食用の魚介類(マグロの刺身など)に対して、「生食用」などの表示が必要となる表示基準を策定した。腸炎ビブリオは、魚介類の表面をちょっと湯通した程度や3%程度の塩漬けなどの塩分ではなかなか全部は死なないため、腸炎ビブリオの規格基準としては、少々の表面の加熱や調理を施した魚介類であっても、生食用であればこの規格基準に合致する必要がある。このように、微生物が死ぬかどうかの規格基準に合致するものに「生食用」などの表示が必要になるので、加工したから、調味したからという観点で表示の要否を決めているのではなく、腸炎ビブリオがなくなっているかの観点での表示基準となっている。
このように、一つの例を取り上げてもJAS法と食品衛生法では表示の考え方が異なり、それが表示の複雑さにつながると考えられ、これは、事業者にとっても、行政にとっても、消費者にとっても難しいと常々言われている。そのために表示の一元化が必要であり、何とかしようという動きに繋がった。

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